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「薬局」2015年6月 Vol.66 No.7

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2015年6月 Vol.66 No.7
第1特集 徹底理解! SGLT2阻害薬
第2特集 2型糖尿病におけるmultimorbidity

定価:2,160円(本体2,000円+税8%)

特集の目次

第1特集 徹底理解!SGLT2阻害薬
■特集にあたって(清野 裕)
■SGLT2阻害薬の過去・現在・未来(原島 伸一 ほか)
■エビデンスによる徹底比較! SGLT2阻害薬はココが違う!
・SGLT2阻害薬のクラスエフェクト(三浦 正樹 ほか)
・SGLT2阻害薬のドラッグエフェクト(坂田 道教 ほか)
■要チェック! SGLT2阻害薬の体内動態とPK-PD相互作用
・薬物動態学的にみたSGLT2阻害薬の特徴(北村 正樹)
・SGLT2阻害薬の薬力学的相互作用の考え方(濱口 良彦)
■活用するためのヒント! SGLT2阻害薬Q&A
・実際にSGLT2阻害薬を使用してみてどうでしたか?(田島 一樹 ほか)
・SGLT2阻害薬で注意すべき副作用とその対処法は?(保泉 学 ほか)

第2特集 2型糖尿病におけるmultimorbidity
■特集にあたって(松岡 健平)
■2型糖尿病×うつ病×認知症(伊藤 眞一 ほか)
■2型糖尿病×高血圧×大血管障害(河盛 隆造)
■2型糖尿病×高血圧×慢性腎臓病(梅林 亮子 ほか)
■2型糖尿病×結核×慢性閉塞性肺疾患(海老原 明典 ほか)
■2型糖尿病×骨粗鬆症×関節障害(岡田 洋右)
■2型糖尿病×末梢神経・血流障害×潰瘍・壊疽(渥美 義仁)

TOPICS

・市中肺炎患者にステロイドは投与すべきか?
・MRSAに対するバンコマイシンの耐性化抑制
・多発性骨髄腫に対する次の選択肢 ―ポマリドミドへの期待― 
・妊娠糖尿病に対してグリベンクラミドとメトホルミンは有用!?

シリーズ

■子どもの皮膚トラブル -薬局・薬店でのアドバイスのコツ-
(山本 一哉)
■目指せ感染症マスター! 副作用・相互作用マネジメントの超実践アプローチ
帯状疱疹発症後の意識障害
(藤居 賢/山田 和範/岸田 直樹)
■薬剤師よ,心電図を読もう!
4つのステップで不整脈を見分ける①
(大八木 秀和)
■がん治療への薬学的介入と症例サマリ
エベロリムスによる乳がん治療に対する薬学的介入
(藤堂 真紀/佐伯 俊昭)
■医療従事者のギモンや困ったに答える! トラブルに巻き込まれない著作権のキホン
(服部 誠)
■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
医療の基本構造から見た理性と感性の役割は? ~医療の論理と倫理の誕生~
(中野 重行)
■Pharm.D.を取り巻く医療環境レポート
・集学的医療グループの訪問による心不全患者の管理
・処方のアドヒアランスを改善するための処方時における医師サポート
(木村 利美 ほか)
■メディカル・アプリ情報室
メディカル・アプリのその後と未来
(澁谷 正則)

Report

■ネットワーク・メタ分析を用いた文献の読み方-②
ISPOR質問票に沿った吟味
(村山 隆之)

第1特集

特集にあたって
 SGLT2阻害薬は現在までに6種類が2型糖尿病治療薬として承認されている.SGLT2阻害薬の特徴としては,第一に腎臓を標的としていることが挙げられる.すなわち,糖尿病では腎臓におけるグルコースの再吸収が亢進していることが知られており,SGLT2阻害薬は再吸収にかかわるトランスポーターであるSGLT2を阻害することでグルコース排泄閾値を低下させ,尿糖排泄を促進することで血糖値を下げようという薬剤である.2型糖尿病患者においては,100g程度のグルコースの尿中排泄がみられる.これまでの糖尿病治療は尿糖をいかに減らすかという治療であったのに対して, この薬剤は尿糖を増やすことによって血糖値を下げようとするものであり,まさに逆転の発想である.
 第二にインスリンに依存せずにその効果が現れる点である.血糖値が下がることにより糖毒性が軽減する結果,インスリン抵抗性やインスリン分泌能が改善することが期待されている.SGLT2阻害薬の臨床試験においては,血糖値の低下作用だけではなく,体重減少作用,内臓脂肪減少作用,血圧低下作用,血中の中性脂肪・尿酸の低下作用なども報告されている.一方で,市販後死亡例や尿路感染や性器感染,重症低血糖,脂肪やタンパク質分解の亢進によるケトアシドーシス,サルコペニア,脱水による脳梗塞や心筋梗塞など,さまざまな副作用も報告され注意喚起されている.
 本特集では,糖尿病治療の専門家に,この薬剤についてさまざまな視点から解説いただいた.今後,この新しいSGLT2阻害薬の作用機序や副作用を踏まえた使用上のコンセンサスの形成が必要であろう.

清野 裕
関西電力病院 院長


第2特集

特集にあたって
 糖尿病は基礎的疾患であり,患者の高齢化とともに罹病年数が伸び,糖尿病合併症以外に,動脈硬化性疾患,慢性閉塞性肺疾患,骨・関節症状,など多くの問題を持つ例が増えている.それらに対する投薬による相互作用や副反応が複雑化し,処方内容の利点と不利益の評価がなされていないのが現況である.このような状態を“multiple chronic conditions”と呼ぶ.Johns Hopkins医科大学はミッションスクールであるが,そのホームページでは,「multimorbidityによる重荷から解き放ち,患者のために実用的な治療ガイドを作成し,患者の可能性の評価はもとより,予防策の研究を促進すること」を強調している.
 ニューヨークタイムス(2009年3月30日号)に深刻な記事が出ていた.高コレステロール,高血圧,心筋虚血などで治療中の84歳の老婦人の記事である.骨粗鬆症もあって転倒による骨盤骨折となり,さらにうつの既往もあるためか,都合13種の薬を飲まなければならない.薬は高価であるし,多剤カクテルが治療を複雑怪奇にし,食道・胃逆流症の薬も加わって,説明不能で我慢できない症状が出る.さらに不幸なことに,2歳上のご主人は彼女よりもっと虚弱で老老介護に耐えられない,とのことである.わが国でも「よくある出来事」である.記者は「米国で80歳以上の68%が多種健康問題を持ち,このような患者が長期入院となり,予防可能な病気を背負い,簡単な服薬で済んでいる例より先に死亡する.Multimorbidity例の多くが,患者の全体像ではなく,機能低下した部分の治療に薬で対処し,その副作用にさらなる薬剤を投与している.高齢患者にとって何がよくて,何がよくないか,考えるときだ.」と結んでいる.米国では,現行の医療制度は個々の診断名に対応しているが,多疾患状態に苦しむ患者の擁護者はいない,という.確固としたガイドラインがないので,EBMを実践するにも地図もない.1回の受診で3~6ヵ月分の長期処方が多く,その間に別な問題が生じて重複処方となることもある.こうしたことがmultimorbiditiesを作るようである.
 日本では「お薬手帳を見れば分かる」とばかり言ってはいられない.患者の中には行きつけの薬局以外にもう一冊持っている人もいる.かかりつけ医にも秘密なのであろう.さらに,病院の電子カルテは医療保険点数の請求には強いが,糖尿病のような年余にわたる長期経過を俯瞰するには不便である.だから他科の処方を見る機会も少ないのであろう.10分足らずの診療時間の壁も問題である.患者の訴えを聞き,主治医自身が治療計画の優先順位を考える暇もなく,自らを犠牲にしなければならないことも間々あると思う.
 電子カルテの処方作成欄では7種類以上処方すると,「コンピュータ様」から,「7種以上だけど大丈夫ですか?」との表示が出る.しかし,患者が複数科にかかっている場合,他科の処方内容に無関心な先生もいる.数年前,ある医学関連の新聞に「○○科の医師が治療する糖尿病」などというコラム記事もあり,別な抗糖尿病薬を出されることがあった.患者は「糖尿の先生には申し訳ない」と思いながら,迷惑とは思っていないようで,通院回数が1回減ってありがたい,と思うようである.「こんなにたくさん飲んで大丈夫か」と思いながらそれを訴える先がない,とこぼす患者もいる.
 最近の高齢者には初期のコンピュータ世代をすごした人も多く,健康を自己管理できるようにするには,うつ状態からの開放や,身体活動能力改善の方が重要ではないか?と言う患者もいる.そのような方から,「だけど,欠けているのは私の健康を全体的に診てくれる誰かだ.信頼できそうなウェブサイトを見るのと,長年連れそった家内の励ましが唯一の救いだ」と言われると,もう答えようがない.
 この特集の目的は,調剤薬局の薬剤師と臨床医はチームとして,服用する患者のアドヒアランスをよく観察・検討し,多剤処方から生じるmultimorbidityの問題を理解していただくことである.薬を手渡すとき,何を「一言」とするか,診療側との密接な連携プレーで考えるきっかけにしたいものである.

松岡 健平
東京都済生会中央病院 顧問
東京都済生会渋谷診療所 糖尿病内科