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「薬局」2016年6月 Vol.67 No.7

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2016年6月 Vol.67 No.7
心房細動と抗血栓療法
エビデンスに裏づけられた臨床現場での実践の極意Q&A

定価:2,160円(本体2,000円+税8%)

特集の目次

■特集にあたって(奥山 裕司)
■心房細動の病態生理と日本人の特徴(山下 武志)
■抗凝固療法の開始! エキスパートは何をどう考え投与設計する?!
・いつ・どの心房細動患者で抗凝固療法を開始する?低リスク群でも治療開始すべき?(臼田 和生)
・NOACとワルファリンのどちらを使う?(庭野 慎一)
・患者・薬剤特性を考慮して,どのNOACをどの用法・用量で始める?(矢坂 正弘)
・抗凝固療法で注意すべき薬物相互作用は?相互作用がある場合はどうする?(篠原 徹二 ほか)
■抗凝固療法開始後のフォローアップのポイント!
・いつ・どのタイミングで何を評価する? 患者への指導のコツは?(小田倉 弘典)
・ワルファリンのオーバー/アンダーユースの評価と投与量の匙加減はどうする?(井手本 明子 ほか)
・NOACの作用をどう評価して薬剤選択・変更する?(味岡 正純)
・抗凝固薬間のスイッチングはどう行う? 注意点は?(鈴木 信也)
・抗凝固療法中に出血/虚血性イベント以外で注意すべき副作用は?(志賀 剛)
・抗凝固療法中に出血イベント発生! 継続・中止・再開をどう考える?(玉井 佳子)
・薬剤師が果たすべき抗凝固療法の薬学的管理のポイントは?(木村 健)
■手術・アブレ−ションを受ける患者における抗凝固療法のマネジメント!
・周術期の抗凝固薬の継続・中止・再開をいかに考え実践する?(井上 耕一)
・抗凝固療法中の患者で緊急の手術が必要になったときはどう対応する?(原田 将英 ほか)
■心房細動症例での抗血小板薬と抗凝固療法! ココがポイント!
・抗血小板薬の使用目的を見極める! 出血リスク増大があっても抗血小板薬が必要なのはどんなとき?!(橋本 洋一郎 ほか)
・虚血性心疾患症例に心房細動を発見! 心房細動症例に冠動脈狭窄を発見! どう治療を実践する?!(樋口 義治)
■併存症のある心房細動症例—この患者の抗凝固療法はどうするか?! ・慢性腎臓病・透析患者(湯澤 ひとみ ほか)
・認知症や転倒リスクの高い患者および独居高齢者(長尾 毅彦)
・担癌患者(向井 幹夫)

シリーズ

■データで読むクスリ
感染症治療薬 最新の処方動向は?
(浜田 康次)
■薬剤師よ,心電図を読もう!【最終回】
卒業試験
(大八木 秀和)
■「治療」「薬局」合同連載 ポリファーマシー “処方整理力”を鍛える!
痛いものは痛いんです!
(矢吹 拓)
■医療従事者のギモンや困ったに答える! トラブルに巻き込まれない著作権のキホン
(服部 誠)
■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
心と身体の関係をどのように考えるか? そして,どのように対応するか? 〜生物心理社会モデル(biopsychosocial model)が誕生した意義〜
(中野 重行)

巻頭言

 心房細動患者における心原性塞栓症は非常に重篤である.近年の心房細動に関する理解,治療の進歩は目覚ましいものがあり,それらを十分に知って,よりよい治療につなげていくことが医療者全員にとって重要になっている.
 さて,心房細動というものはどのようなものととらえればよいのであろうか? 冠動脈疾患が全身の動脈硬化の一表現型として現れるもので,根治という状態にはならないことに異論はなかろう.当面の虚血解除とともに,さまざまな冠危険因子に十分な介入を行って,少しでも動脈硬化の進展にブレーキをかけ続ける必要がある.心房細動も心房の“老化現象”に近いものを基盤として発生すると理解されるようになってきた.仮に,何らかの魔法で心房細動を消し去ることができても,もともと心房細動を発症していない人に比べて“老化現象”が進んでいるととらえるべきである.冠動脈疾患と同じように,心房細動も総合的な病態としては根治させることはできない.
 アブレーション治療が盛んに行われている.動悸などの不快な症状が抗不整脈薬に比べ高い確率で軽減することは間違いないが,かなりの割合で無症候性の心房細動が残存していることも報告されている.問診,随時心電図・ホルター心電図では心房細動が出ていないかどうかは分からない.ましてや近い将来再発するかどうかは予測できない.動悸が再発すればまたアブレーションなり抗不整脈薬を使用すればよいが,脳梗塞になってしまってはまず取り返しがつかない.つまり抗凝固療法の適応はアブレーション治療をやるかどうかとは関係なく,脳梗塞危険因子に合わせて考えるべきである. 近年相次いで使用できるようになった4つの新規経口抗凝固薬(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)について,どれも同じ性能との考えもあるかもしれない.しかし,対照となったワルファリン治療の質と患者背景を考えに入れれば,性能の良し悪しや向いていない患者像は自ずと浮かび上がってくる.直接比較をしていないから比べられないのであれば,横並びとも言えないはずである.ましてや使い分けというのは比べているから使い分けられるのである.減量基準を守らない不適切な低用量は患者も医療者も危険にさらすだけと考えるべきであろう.前者は心原性塞栓の予防が不十分な状態という危険にさらされ,後者は不適切な治療で患者の信頼を失うとともに訴訟リスクを背負うことになるかもしれない. 本特集がよりよい治療につながり,一人でも心原性塞栓症で不幸な転帰となる患者が減ることに役立てばと思う.

奥山 裕司
国立病院機構大阪南医療センター 循環器疾患センター 部長