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「薬局」2016年9月 Vol.67 No.10

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2016年9月 Vol.67 No.10
処方箋検査値 トレーシングレポート 活用術
地域医療連携に薬立つ「知恵」と「コツ」

定価:2,160円(本体2,000円+税8%)

特集の目次

■特集にあたって(松原 和夫)
■まずはしっかりと押さえよう! 臨床検査値Q&A
・院外処方箋に記載される検査項目にはどのようなものがありますか?またそれらからどのような情報を得ることができるのでしょうか?(矢野 育子)
・基準範囲と臨床判断値の違いは何ですか?また,「共用基準範囲」とはどのようなものなのでしょうか?(市原 清志)
・検査値が変動する要因としてどのようなものがありますか? また,それらの影響をどのように考え検査値を判読すればいいでしょうか?(三宅 一徳)
■併病/多病のケースで考える!薬学的管理における処方箋検査値の活用術!
・脂質異常症×非アルコール性脂肪肝炎×糖尿病(新井 さやか ほか)
・うつ病×アルコール性肝疾患×慢性疼痛(中川 貴之 ほか)
・慢性腎臓病×脂質異常症×脳梗塞(齋藤 秀之)
・慢性腎臓病×心房細動×慢性閉塞性肺疾患(上田 和正 ほか)
・認知症×糖尿病×感染症(村川 公央 ほか)
・肺癌×慢性閉塞性肺疾患(田川 慎二 ほか)
・大腸癌×糖尿病(原 景子)
・胃癌×心房細動(鈴木 毅 ほか)
■トレーシングレポート活用事例から地域医療連携の実践ポイントを学ぶ!
・京都大学医学部附属病院でのトレーシングレポート活用事例(松原 和夫 ほか)
・旭川医科大学病院でのトレーシングレポート活用事例(大滝 康一 ほか)
・福井大学医学部附属病院でのトレーシングレポート活用事例(古俵 孝明 ほか)
・三重大学医学部附属病院と処方箋応需薬局間でのトレーシングレポート活用事例(畑中 知笑美 ほか)
・滋賀医科大学医学部附属病院でのトレーシングレポート活用事例(松田 雅史 ほか)
■トレーシングレポートをうまく書くコツ(萱野 勇一郎 ほか)

シリーズ

■子どもの皮膚トラブル −薬局・薬店でのアドバイスのコツ−
(山本 一哉)
■「治療」「薬局」合同連載 ポリファーマシー “処方整理力”を鍛える! 第6回
毒をもって毒を制す?!
(矢吹 拓)
■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
上達のコツ〜基本的な「型」を身につけ,その「型」に「血(心)」を通わせて自分の「形」をつくる!〜
(中野 重行)
■医療従事者のギモンや困ったに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン
(服部 誠)

巻頭言

 質が高く,安心・安全な医療を求める患者・家族の声が高まる中,医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲弊が指摘されるなど,医療のあり方が根本的に問われている.そのような状況下,「チーム医療」の実践がわが国の医療のあり方を変えうるキーワードとして注目を集めている.チーム医療を説明するポンチ絵として,中央に患者がいてその周囲にさまざまな医療従事者の輪が描かれる構図がよく用いられる.これは,20年近く前に提唱された「患者中心の医療」を説明する時に使われた絵と同じである.一方,現在のチーム医療(多職種協働による医療)は,複数の医療従事者が横並びの絵で表現され,MD Anderson Cancer Centerはアメリカンフットボールに例えて説明している.つまり,医師はクォーターバックであり,そのボールを受け取るレシーバーやランニングバックが薬剤師や看護師であり,患者や患者の家族もチームの重要な一員である.基本的なことは,それぞれの職種がその専門性を遺憾なく発揮して(責任をもって),治療というボールを患者とともにエンドゾーンまで運ぶことである.専門職の誰一人かけても,あるいは技量が乏しければ,チームはボールをエンドゾーンまで運ぶことは難しい.チーム医療の実践で最も重要なことは,それぞれの医療職間の密接なコミュニケーション(情報共有)と責任ある専門性の実行である.入院医療にあっては,情報共有の中心は診療録(カルテ)であり,それぞれの専門職が患者の状態を分析し提案することが必要である.具体的には,診療録にそれぞれの専門職が積極的に書き込むことが肝要である.

 一方,わが国の医療制度は,医療費増大とそれに見合う負担の増大に国民の合意は得られず,制度疲労が顕著となってきた.そこで,高度経済成長時代を支えてきた団塊の世代(800万人)が75歳以上となる2025年を目安として,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的とし,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)へ移行しようとしている.このためには,医療施設における病床の機能的再編(高度急性期,一般急性期,亜急性期,長期療養,介護施設,居住系,在宅)が進められ,機能的に分化した医療施設(在宅を含む)間での患者情報の共有化の推進が今後の大きな課題となる.では,どのような情報共有手段が考えられるだろうか? まずそのモデルとして,外来患者における情報共有を考えなくてはならない.保険薬局薬剤師の患者への対応に関して,「的外れの説明」や「知りたいことに応えてくれない」などというような苦情はよく耳にする.これらの多くは,保険薬局薬剤師が患者に関する情報をほとんどもっていないことに起因する.理想的な情報共有手段は電子カルテの共有であるが,現時点で確実に利用できるものは処方せん,お薬手帳,双方向のトレーシングレポート,退院時服薬サマリーなどであろう.本特集では,院内外での情報共有の手段としての処方せんのあり方およびトレーシングレポートの活用について紹介する.今後の薬剤師が関与する医療連携の推進につながれば幸いである.

松原 和夫
京都大学医学部附属病院 薬剤部 教授・薬剤部長