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「薬局」2018年4月 Vol.69 No.5

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2018年4月 Vol.69 No.5
所得格差時代の薬物治療
“経済的負担を軽減したい”患者の訴えにいかに応えるか

定価:2,160円(本体2,000円+税8%)

特集の目次

■特集にあたって(名郷 直樹)

■わが国の貧困問題の現状と展望(駒村 康平)

■臨床の場で「患者の意向・希望」にどう応えるか?:Shared decision making〈SDM〉の視点から(中山 健夫)

■診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢
・高血圧(藤原 健史ほか)
・不整脈(小田倉 弘典)
・糖尿病(岩岡 秀明)
・脂質異常症(岡田 唯男)
・うつ病(宮岡 等)
・認知症・BPSD(福士 元春)
・消化性潰瘍(矢吹 拓)
・気管支喘息(倉原 優)
・骨粗鬆症(岡田 悟ほか)
・感染症(岩田 健太郎)
・がん(勝俣 範之)

■エビデンスと経済合理性に基づいた薬剤選択指針“フォーミュラリー”の基礎と実践
・わが国におけるフォーミュラリーの重要性と今後の課題(前田 幹広)
・病院におけるフォーミュラリー導入・運用の実践(上田 彩)

■ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと医療技術評価(五十嵐 中)

シリーズ

■Dr. ヤンデルの言葉のネタ帳 〜“病院ことば”の,じっくり,例えば,結局は〜
世界に一つだけのエビ 〜 Note 13. 「エビデンス」を言い換える〜
(市原 真)

■薬立つブレイクスルー! メディカル・レコード書き方講座
入院から退院まで患者に継続してかかわろう
(基村 佳世/寺沢 匡史)

■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
「いのち」の「体積」と「重さ」というイメージ
〜「いのち」には「長さ」だけでなく,「体積」・「大きさ」と「密度」・「重さ」がある!〜
(中野 重行)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
妊娠中の解熱鎮痛薬といえば……
(八鍬 奈穂/中島 研)

巻頭言

 所得格差は以前からあった.別に新しいことではない.しかし,それが問題とされなかった時代から,問題とされる時代に変わったというのが,新しいことだろう.
 以前問題とならなかった所得格差がなぜ今頃になって問題になるのか,それが問題である.一つは所得が伸びなくなったということだろう.個人個人の所得が伸びないだけでなく,国民総生産は人口の減少とともに減っていくのが今後の流れに違いない.もう一つは,価値が多様化して,何にどれだけお金をかけるかを決めるのが困難になっているということがあるかもしれない.健康や医療に費やすくらいなら,もっと別の幸せに使った方がいいと考える人も多くなっている.
 この2点で考えたときに,所得をさらに伸ばして解決するというのは困難である
し,健康に関しても,どんなに濃厚な医療を提供したところで最期は死んでしまうのを避けることはできない.所得が伸びない中で,あれにもこれにもお金を使いたいという中,医療にどれほどコストを振り向けるか,できればそれは最小限にしたいということが問題となっているのが現代である.そう整理できるかもしれない.
そういう時代の中で,この特集が組まれた.少し視点を変えれば,たくさんお金が欲しいという欲望にも限界が訪れ,そんなに金持ちになったところで大して幸福になれず,より健康になりたいと思って健康にとことん気をつけ,医療に多くのコストを使ったところで大して幸せにはなれない,ということを多くの人が知ってしまった,というふうに言った方が通りがいいかもしれない.所得を増やそうという欲望も,より健康になりたいという欲望も,どちらもきりがなく,結局は不幸をもたらすだけ,そんな諦めの時代の,より幸せな生き方の模索の一つとして,この特集で何かを提供しようということである.
 安かろう,悪かろうの時代から,安いが,案外よかろうの時代へ,次に来たるべき新しい世の中を見据え,この特集がある.コストをかけない方がより幸福な時代,一切の医療を受けずに,保険料だけを払って死んでいく人生,それが最高,そんな時代の到来を告げる一歩がここに踏み出されていることを信じ,特集にあたっての序文としたい.

名郷 直樹
武蔵国分寺公園クリニック 院長