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とびだせ、薬剤師!
臨床現場で活躍する薬剤師の知識やスキルのおさらい&アップデートをサポートする雑誌

月刊:毎月5日発行 B5判 定価:2,200円(本体2,000円+税10%)※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0044-0035

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※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0044-0035

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2021年7月 Vol. 72 No.8

片頭痛

病態の理解と薬物療法の最前線

定価

2,200(本体 2,000円+税10%)

  • 巻頭言
  • 目次
巻頭言
2021年新薬登場
 2000年のスマトリプタン皮下注の発売を皮切りにトリプタン製剤が次々に登場し,2000年代に片頭痛診療が大きく変貌した.トリプタン製剤で片頭痛発作をうまく頓挫できるようになったが,トリプタン製剤のみでは問題は解決できず,患者に「痛み止めはその場をしのいでいるだけです.しっかり生活習慣を修正して,必要に応じて予防薬をうまく活用しましょう」と言ってきた.
 20年以上経過しても,片頭痛発作で生活に支障がある患者は数多くおり,さらに数十年にわたって片頭痛に苦しんでいる患者もいる.目の前にいる片頭痛患者に2剤,3剤と予防薬を併用しても片頭痛をコントロールできないことも多い.このようななかで,抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide : CGRP)抗体や抗CGRP受容体抗体の臨床試験で,劇的に片頭痛が改善する患者を数多く経験することになった.
 2020年は東京オリンピック・パラリンピックの年と期待していたが,新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の年となり,熊本の疫病退散の妖怪「アマビエ」(1846年肥後国の不知火海に出現)が脚光を浴びることになった.また『鬼滅の刃』(集英社)がブレイクした.このような世情のなかで片頭痛治療薬は,どのように変わってゆくのだろうか.表1に私が調べ得た片頭痛の新薬開発状況を示す.治験した抗CGRP抗体・受容体抗体3剤が2021年に登場予定である.また経口剤であるditan系薬剤やgepant系薬剤の開発も進んでいる.2021年は片頭痛診療の新たな展開が期待できそうである.

片頭痛の疾病負担
 世界で一番疾病負担の大きい領域は神経疾患であり,そのなかでの第1位が脳卒中,第2位が片頭痛である.片頭痛で命をなくすことはないが,頭痛発作のために学校や会社を休んだり(アブセンティズム),勉強や仕事の効率が極端に低下したり(プレゼンティズム)して,患者本人がつらいのみならず,社会的損失も大きい.
 片頭痛は摩訶不思議な病気で,頭が痛くて寝込むだけではなく,悪心・嘔吐,車酔い(小学生のころ発症),腹痛(腹部片頭痛),めまい,光過敏・音過敏・臭過敏,両眼/単眼の閃輝暗点・半盲(両眼)・一過性黒内障(単眼)などの視野異常,一過性の失語・感覚障害・片麻痺,変形視・小視症・大視症(不思議の国のアリス症候群)を伴ったり,卵円孔開存の併存,体位性頻脈症候群,可逆性脳血管攣縮症候群,脳梗塞,脳動脈解離,心筋梗塞などをまれに併発したりする.
 片頭痛患者は雨が降るのがわかる方が多いし(2日前からわかるという人もいる),フィリピン沖に台風ができると頭が痛くなるという患者が熊本には結構いる.

新たな片頭痛治療の実際
 図1に2021年の片頭痛の治療戦略を示す.生活習慣の修正を行い,頭痛発作時の頓挫薬,予防薬をバランスよく使い,頭痛体操などの非薬物療法も活用する.薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)からの離脱も重要である.脳梗塞や心筋梗塞の既往のある患者ではトリプタン製剤が使えないため,積極的に予防療法を行って軽減して,通常の痛み止めを使うしかない.ditan系薬剤が登場すれば脳梗塞既往のある患者には使える(米国では禁忌なし).
 片頭痛患者の初診時にはA4判2枚の資料を使って説明するが,情報量が多いため,図2に示した片頭痛患者の生活習慣修正の5つのポイントとして,①「いらいらしない」,②「ほっとしすぎない」,③「寝不足・寝過ぎを避ける」,④「肩の凝らない生活」,⑤「痛み止めは必要な分だけ」を伝えている.
 抗CGRP抗体のガルカネズマブ(エムガルティ?)が登場し,最適使用推進ガイドラインが作成されており,これに従って使用している.表2に一部を抜粋して示す1).高価な薬剤であることが欠点であろう.費用対効果も考えながら活用しなければならない.
 本特集では片頭痛治療の新たな時代を迎えた2021年以降の片頭痛治療について,頭痛診療のトップランナーの方々に解説いただく.

引用文献
1)厚生労働省:最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ(遺伝子組換え)薬生薬審発0420第1号(令和 3年4月20日).

熊本市民病院 脳神経内科 科長・首席診療部長
橋本洋一郎
目次
(特集)

■特集にあたって(橋本洋一郎)

■片頭痛の診断・疫学と片頭痛が及ぼすインパクト(菊井祥二 ほか)

■片頭痛の病態生理と治療薬の作用機序(柴田 護)

■片頭痛の予防・治療戦略! いつ・どの患者に・どの薬剤を・どう使う?!
・ 片頭痛の急性期療法(永田栄一郎)
・ 片頭痛の予防療法(立岡 悠 ほか)

■小児,妊娠可能な女性/妊婦・授乳婦における片頭痛薬物療法の留意点
・ 小児片頭痛における薬物療法の留意点(山中 岳 ほか)
・妊娠可能な女性/妊婦・授乳婦における片頭痛薬物療法の留意点(五十嵐久佳)

■片頭痛薬物療法の新たな潮流! 新薬の最新エビデンス
・ 抗CGRP抗体・抗CGRP受容体抗体(滝沢 翼 ほか)
・ CGRP受容体拮抗薬(gepant系薬)(古和久典)
・ セロトニン5―HT1F受容体アゴニスト(ditan系薬)(松森保彦)

■併存症のある片頭痛へのアプローチ
・ てんかん×片頭痛(森 仁)
・ 睡眠障害×片頭痛(鈴木圭輔)
・ うつ病×片頭痛(村﨑舞耶 ほか)
・ 脳梗塞(既往を含む)×片頭痛(橋本洋一郎 ほか)
・ 月経異常×片頭痛(牧田和也)

■片頭痛に対する漢方薬の使い時・使い方(來村昌紀)

■片頭痛マネジメントにおける“ワザ”と“知恵”
・ 片頭痛における頭痛ダイアリー活用術(工藤雅子)
・ 片頭痛患者における 薬物有害事象・相互作用のチェックポイント(山室蕗子 ほか)

■Exercise

(シリーズ)

■臨床薬物動態のPITFALL ―その常識,ウソ? ホント?―
 定常状態は平衡状態のことであり,薬物濃度は血中と組織で等しくなる?
 (浜田幸宏/海老原文哉/塩見真理)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
 レンサ球菌菌血症を研究せよ!
 (望月敬浩/倉井華子)

■薬剤師が三ツ星シェフ ?業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ?
 経静脈栄養に用いる輸液製剤 ―脱水の種類と用いるべき製剤―
 (東 敬一朗)

■フォーミュラリー道場 ―医薬品の適正使用を目指して―
 フォーミュラリーがもたらす経済効果
 (赤瀬朋秀)

■毒舌妻と統計家 ―臨床試験論文を読んでみる― 第?回
 ランダム化臨床試験の限界
 (今井 匠/井出和希)

■医療マンダラ ~思考と感性のセンスを磨く~
 プラセボ反応に関与する要因:自分の病気についての「意味づけ」と「物語づくり」
 (中野重行)
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