「薬局」2018年増刊号 Vol.69 No.4

2018年増刊 Vol.69 No.4

病気とくすり2018

基礎と実践 Expert's Guide

書評

川添 哲嗣 先生(医療法人つくし会南国病院 薬剤部)

 「病気とくすり」というタイトルは,薬剤師の歴史に照らし合わせると少し感慨深いものがある.今から約30年前,医師が病気と薬を患者に説明し,薬剤師は調剤の後ほとんど説明せずに投薬するだけだった.約25年前,ようやく薬の説明をし始め,20年ほど前から病気と薬の両方を説明するようになった. そして現在ではそれがスタンダードになっている.「病気とくすり」の両方を知り,適切な薬物治療を提案できる薬剤師を,医師,看護師そして患者が求める時代になったのである.本当に感慨深いものがある.
 本書を一言で表すと「薬のことしか語れない薬剤師から,病気のことも語れる薬剤師になるための実践本」だろう.執筆陣は現場の第一線で活躍されている基幹病院や大学病院などの医師,大学教員そして薬剤師であり,大変実用的かつ実践的内容となっている.
 本の内容をもう少し詳しく解説しよう.末梢神経系,中枢神経系,免疫・炎症・アレルギー,循環器,呼吸器,消化器などに分類され,それぞれに解剖と生理の解説が詳しく書かれている.続いて分類ごとの各種疾患が「疫学,病態生理,診断・検査,治療」について解説され,薬物治療は処方例とその解説付きで登場する.
 この解説が非常に分かりやすい上に詳しい.例えば「パーキンソン病」の項目では,治療の目的から始まり,治療開始のタイミング,初期治療,進行期と順を追い,それぞれに処方例と解説が記されている.そして運動合併症として起こる,運動症状の日内変動やジスキネジアの対処方法について,さらに非運動症状の起立性低血圧や排尿障害に対する治療についても詳しく述べられている.言葉にすると分かりづらいwearing offやpeak-doseジスキネジアの治療についてはアルゴリズムで図説されている.
 これらだけでも相当な薬物治療の知識となるが,上記解説の後に,あらためて疾患別治療薬についての「薬理,薬学管理上の注意点そして薬剤作用機序」が図説付きでまとめられている.これほどの完璧な構成はほかのどの書にもない.多くの薬剤師は,「治療薬のマニュアル本」と同じではないかと想像していると思うが,全く内容は違う.断然こちらの方が詳しく,病気と薬についてエキスパートになれる.
 さて,まとめに入ろう.本書「病気とくすり」はサブタイトルとして「基礎と実践Expert’s Guide」と付けられている.つまり,ロングバージョンタイトルを付けるとすれば,「病気とくすりの両方を患者にわかりやすく伝えるために,疾患と薬剤の基礎的情報を満載にした,エキスパート薬剤師のための実用的なガイドブック」となる.薬物治療における真のエキスパートになりたい方はすぐに手に入れ,実臨床に活かしてほしい.皆さんの患者さんのために.