「薬局」2018年増刊号 Vol.69 No.4

2018年増刊 Vol.69 No.4

病気とくすり2018

基礎と実践 Expert's Guide

書評

狭間 研至 先生(ファルメディコ株式会社 代表取締役社長)

「対人業務必携の一冊」
 手にとって,驚いた.純粋に面白い.何が面白いかというと,日常診療の中で遭遇するほとんどの疾患が,病気の仕組みや成り立ち,治療の基本的方針,薬物治療の薬理的知識がコンパクトに整理されている.医師である私が時間を忘れて読み込んでしまう. なるほど執筆者一覧にはその疾患領域で著名な医師が数多く見られる.では,医師向けの書籍かというとそうではない.薬剤師向け月刊誌の増刊号である本書のことであるから,当然薬剤師の執筆者が大半で,薬剤師だけが理解できる薬理的な知識が非常に詳細に書かれている.
 私たち医師も薬理学の勉強はしてきたが,本書の薬理的内容は正直言って半分しかわからない.その一方で病理や治療方針については,医師として若干物足りなく感じる部分もある.この絶妙とも言える味付けが本書の最大の特色である.
 薬剤師の業務は今,「対物業務」から「対人業務」へと変わりつつある.言葉を換えれば,「薬を渡すまで」ではなく「薬を飲んだあとをフォローする」ところまでを薬剤師が担当し,ポリファーマシーの改善や残薬の解消を含めた薬物治療を適正化することが求められている. そのためには,薬剤師が患者の疾病,医師の治療方針を理解するとともに,自らが調剤する薬剤の薬理を十二分に理解して患者に接することが欠かせない.とはいえ,前者2つを理解するのには医学書は詳しすぎる.薬理学の教科書を読み込んでも日常業務で出会う患者の状態とはリンクしづらい. 本書はその間を埋めるものであり,薬剤師が対人業務を行うためには必携の一冊であると言えよう.絶妙な味付けを是非実感していただきたい.