ブックタイトル免疫学コア講義 改訂4版

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概要

免疫学コア講義 改訂4版

276学研究を扱う「医療統計学」,ゲノムデータを対象とした「遺伝統計学」があげられる(図27-1).3)母集団と標本集団 事象を構成するデータ全体の集合を母集団といい,母集団から取り出されて観測されたデータの集合を標本集団という.母集団の全容を観測することは一般に不可能であり,われわれは観測可能な標本集団の情報に基づき,母集団がとる分布の推定を行う.母集団の分布の推定は,分布の代表値である,平均値,標準偏差,分散,中央値,最頻値などを計算することや標本数を増やすことにより経験的に実施可能であるが,それだけでは分布の詳細な決定は困難なことが多い. 特定の条件下でのサンプリングにより得られた標本集団については,数学的に母集団の分布を定義することが可能である.実際の統計解析においては母集団の分布を理論的に仮定する場合が多い.一様分布,t 分布,正規分布,カイ二乗分布,F27-1 統計学入門1)統計学とは 統計とは,調査によって得られた数量に基づき事象を把握することであり,統計に関する学問分野や検討方法が「統計学」である.たとえば,「サイコロ」という事象を把握するために,「サイコロを振る」という調査を行い,「サイコロを振って出た目」という数量を調べるのは統計学の一例である.「サイコロを振ると1から6までの目が均等に出現する」という周知の事実は,サイコロの物理的な構造に基づく解釈というより,統計学の成果が一般的に認識された結果ととらえることができる.このように,統計学はわれわれの日常の生活に深くかかわっている.2)統計学の体系 ほかの基礎学問と同じく,統計学は幅広い裾野をもつ学問である.数式を用いて事象の確率や分布の記述を試みる「数理統計学」が広く知られているが,その他にも特定の事象に特化した統計学が多く存在する.熱力学など微視的な物理現象の記述を行う「統計力学」,経済活動の指標の理論的な予測を行う「経済統計学」,保険商品の設計を支える「保険統計学」,オリンピックでの陸上記録など極値の挙動を記述する「極値統計学」,複数の事象の因果関係の推定を行う「統計的因果推論」,事前分布に基づき事後確率を推定する「ベイズ統計学」,天体の動きから恒星の状況を調べる「恒星統計学」,文章データから法則を見いだす「テキストマイニング」など,多彩な局面で活用されている統計学分野が多く存在する.医学研究と関連した統計学分野(医学統計)としては,生物学で得られたデータを扱う「生物統計学」,臨床医27 医学統計の基礎─免疫疾患における活用─臨床免疫学統計学数理統計学統計力学経済統計学保険統計学極値統計学統計的因果推論ベイズ統計学恒星統計学テキストマイニング生物統計学医療統計学医学統計遺伝統計学図27-1 遺伝統計学の位置づけ