ブックタイトル臨床現場で実践する薬学研究のススメ

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概要

臨床現場で実践する薬学研究のススメ

45STEP1 情報を収集して研究計画を立てる研究のポイント 母集団薬物動態解析は通常の薬物動態解析に個人差の概念を導入し,解析対象の平均的な薬物動態の挙動とそのバラつきを定量的に評価する方法論である.TDMで得られるような個々の採血点が少ないデータも,それらをまとめて解析することで薬物動態の変動要因を探索することが可能となる.また,個人差を定量的に評価するため,本研究のように確率的シミュレーションが可能であり,結果を臨床応用に展開しやすい.なお,誌面の都合から詳しく取り上げなかったが,本研究ではリネゾリド誘発性の血小板減少を母集団薬物動態/薬力学モデルにより経時的に表現することに成功し,さらにその母集団モデルに基づいたシミュレーションから,有効性(AUC/MIC>100)に加え,血小板減少症のリスクも考慮し,腎機能・肝機能に応じた用量調整を提案した.このように,母集団解析は非常に柔軟で,強力な手法である.自分が困った課題は,皆に共通の課題であることが多く,この課題の解決が研究であり,その成果が論文となる.メタ・アナリシスは,過去の独立した研究を系統的に収集し,それぞれの結果を抽出・整理・統合することによって,より客観的で質の高いエビデンスを得る一連のプロセスを指す.日常業務で戸惑う課題を解決する有用な方法である.いかに関連の論文を読み込み,著者が導入する研究方法や工夫を自分のものにするか,が研究遂行と質の決め手となる.母集団薬物動態解析は通常の薬物動態解析に個人差の概念を導入し,平均的な薬物動態の挙動とそのバラつきを定量的に評価する方法論である.少採血ポイント数などの問題点を解決しながら,動態に影響する要因の絞り込みが可能で,臨床応用への展開が容易である.クレアチニンクリアランス(mL/分) 肝障害の有無AUC/MIC>100の達成率1,200 mg/日600 mg/日100 無87.1 24.250 無99.5 67.730 無100 90.910 無100 100100 有99.9 90.9MICは2.0μg/mLを想定した. (文献4)より引用)腎障害,肝障害を想定した仮想患者におけるAUC/MIC>100に到達する割合と表1 投与量との関連(確率的シミュレーション)