ブックタイトル薬局69巻6月号

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概要

薬局69巻6月号

26 2532 薬 局 2018 Vol.69, No.7はじめに2014年夏に発生した代々木公園(東京都渋谷区)を中心とするデング熱の流行は,日本脳炎患者の激減後長く経つわが国において,蚊媒介感染症の脅威を感じさせる機会となった.この70年ぶりの国内流行は,インドネシアなどで以前に検出されたウイルス株によることがわかっており,わが国から地理的に近いアジア太平洋地域におけるデング熱の流行が背景にあると考えられる1).また,近年の東南アジアにおける経済発展,格安航空会社の普及,査証免除などの通商外交政策による訪日外国人の増加との関連も指摘できる.蚊媒介感染症は感染経路による分類であり,公衆衛生対策上は重要であっても,患者の診療や介護を担当する医療機関においては必ずしも有用ではない2).むしろ,発熱性疾患,中枢神経疾患の患者の中に蚊媒介感染症が含まれるという捉え方が実践的であろう(表1)3).現在,多くの蚊媒介感染症は輸入感染症である.蚊は環境中にありふれた存在であり,蚊の刺咬は「特別な曝露」と意識されないことも多い.このため,問診で蚊の刺咬を認めなくても,海外旅行者に発熱性疾患や中枢神経疾患をみた場合には,蚊媒介感染症も考慮することが重要である.蚊媒介感染症は一般に熱帯・亜熱帯では雨季から乾季の初め,温帯では夏から秋にかけて流行することが多い.蚊媒介感染症はいずれも人から人に直接伝播する感染症ではない.しかし,急性期には病原体が血中に存在することがあり,患者血蚊媒介感染症蚊媒介感染症は感染経路による分類であり,医療機関においては発熱性疾患,中枢神経疾患の中に蚊媒介感染症が含まれるという捉え方が実践的である.海外旅行者における発熱性疾患ではデング熱とマラリアが比較的多く,いずれも蚊媒介感染症である.それぞれ東南・南アジア,サハラ以南のアフリカで感染する患者が多い.訪日外国人では蚊媒介感染症に対する認識に日本の医療従事者とギャップがあるかもしれない.また,免疫の影響により,デング熱では重症,マラリアは比較的軽症の経過をとることがある.注射用抗マラリア薬は国内未承認である.重症マラリア患者はキニーネ注射薬の臨床試験に参加している熱帯病治療薬研究班の協力研究機関に紹介する.■ 感染症を見逃さない・対応するための知識とノウハウ?? ?加藤 康幸国際医療福祉大学医学部 感染症学 教授