ブックタイトル薬局69巻6月号

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概要

薬局69巻6月号

32 2538 薬 局 2018 Vol.69, No.7はじめに2014年に日本国内のインド料理店で提供されたサラダが原因と思われる腸チフスの集団食中毒事例が発生した1).この事例では,保菌者であったネパール出身の調理人が,手指衛生が不十分な状態で調理を行い,食中毒が発生したと考えられている.この事例が示すように,訪日外国人数が急激に増加している今日においては,流行国在住の外国人が日本に渡航する際や,日本在住の外国人がいわゆるVFR(visiting friends and relatives:友人・親族訪問を目的とした旅行)後に帰国する際にも,腸管感染症やその病原微生物が持ち込まれる可能性があることを認識しておく必要がある.本稿では,重症化しやすくかつ公衆衛生的に問題となりやすい腸管感染症である,コレラ,細菌性赤痢,腸チフス,パラチフス,大腸菌について解説する.コレラ1 原因微生物コレラは,グラム陰性桿菌であるVibriocholeraeのserogroup O1およびO139のうちコレラ毒素を産生する菌に感染することで発症する.2 疫学と流行地域流行地域はアフリカ,南アジア,東南アジア,カリブ海周辺国であり,2010年にはハイチでアウトブレイクが起こり,ドミニカ共和国,キューバに広がったことは記憶に新しい.近年の国内での報告例は年間10例以下である(図1)2).細菌性腸管感染症海外旅行から帰国する日本人以外の経路で,細菌性腸管感染症が国内に広がるリスクを理解する.糞口感染する疾患が多いため,二次感染を防ぐには手洗いが重要である.診断の鍵は培養検査.便培養での検出には選択培地が必要なことがあるため,微生物検査部門に臨床状況を伝える.コレラ,細菌性赤痢,腸チフス,パラチフス,腸管出血性大腸菌感染症はいずれも三類感染症であり,診断後はただちに保健所に報告して,公衆衛生的な対応を求める.■ 感染症を見逃さない・対応するための知識とノウハウ?? ?馳 亮太日本赤十字社成田赤十字病院 感染症科 部長