ブックタイトル薬局69巻6月号

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概要

薬局69巻6月号

48 2554 薬 局 2018 Vol.69, No.7インフルエンザ1 見逃さないために注意すべき患者背景インフルエンザは,「冬の感染症」のイメージ通り,日本では例年12月から3月にかけて大流行を生じ,年間1,000万人前後が感染・発病する.一方で,南半球では7~8月が最も寒い「冬季」であり,この時期にインフルエンザ流行のピークを迎える.シンガポールなどの赤道直下の国では,気温や湿度などの気象の影響と渡航者の移動により,5~8月(南半球からの波及),12 ~3月(北半球からの波及)に流行のピークを迎える.日本でも,夏休みシーズンに南半球や東南アジアなどからの帰国者とその濃厚接触者にインフルエンザの散発をみることがある(図1)1).鳥インフルエンザウイルスA(H7N9)およびA(H5N1)による感染症は,中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome :MERS)や結核と同様に二類感染症に分類されている.ヒト感染の報告事例のほとんどはトリ→ヒト感染であり,ヒト→ヒト感染は限定的である.しかし,特にH7N9型は容易にヒト→ヒト感染を生じる「新型インフルエンザ」に変異する危険が高いと懸念されている.H7N9型のほとんどは中国から発生しており,生鳥を扱う市場が最も危険である.H5N1型は2003年以降最も注目を浴びた致死率の高い高病原性鳥インフルエンザウイルスであるが,最近の報告はエジプトとインドネシアが主で,2016年以降は激減している.2 症 状潜伏期間は,1~3日,最長でも7日である.基本的にはウイルスは上気道粘膜に感染するため,咽頭痛,鼻汁などの上気道炎症状インフルエンザ・中東呼吸器症候群・結核グローバル化が進む現代,「感染症に国境はない」.海外渡航歴のある患者の感染症診療においては,国や地域の渡航歴,渡航時期の確認が極めて重要である.急性・慢性呼吸器感染症は,医療従事者への感染リスクが高い.咳嗽を有する患者には咳エチケットを励行する.激しい咳嗽,肺結核疑い,吸痰などの侵襲的処置,人工呼吸器装着などの際には,標準予防策に加えて積極的に接触・飛沫・空気感染予防策を追加する.海外で感染した結核に関しては,特に多剤耐性結核菌感染の可能性を念頭におく必要がある.■ 感染症を見逃さない・対応するための知識とノウハウ?? ?髙﨑 仁国立国際医療研究センター 呼吸器内科/国際感染症センター