ブックタイトル薬局69巻6月号

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概要

薬局69巻6月号

54 2560 薬 局 2018 Vol.69, No.7外国人患者診療における性感染症診療の問題点訪日外国人増加とよく耳にすることが多いが,どのような群を「外国人」と呼称するか,多くの医療スタッフ,いや日本人では非常に混乱しているように思える.日常生活で日本人は私見では肌の色,瞳の色,言語をもって日本人か外国人かを規定していることが多いと感じる.例えば,見た目がアジア系で流暢な日本語をしゃべることができる日系4世の米国人はなぜか多くの日本人は外国人と捉えない.逆に日本国籍を有し,流暢な関西弁を話す,ヨーロッパ系の肌の色と瞳を有する日本人が外国人とされているのを周囲や医療現場では見かける.個人的には国籍または無期限の在留と労働資格を有しているのであれば日本人としてしまってよいのではと思う.このような先入観に往々にして医療従事者が捉われてしまうと国籍よりもっと大事な支払いについて忘却してしまっていることは問題である.また,支払い能力の点からもどのような滞在期間の外国人が受診するのかに気をつけた方がよいだろう.A:数週間程度の短期滞在外国人が受診するのか,B:1年単位の長期滞在外国人が受診するかであり,前者は日本の医療保険を有していないことが一般的であり,支払い能力の確認がより重要である.通常,性行為感染症は多くの場合Bのパターンが多いと思われる.そもそも人の医療現場への受診動機としては,①何らかの異常な症状や外傷を自覚し,それについての診断と必要であれば治療を求める場合,②すでに診断され治療を続けている疾患があり,それについての治療を求める場合,③まったく異常はないものの健康診断目的で受診する場合の3通りがある.また,一部の感染性疾患およびそれを疑われる状況では法律によって患者の権利が制限される場合がある(例:一類感染症患者の就労禁止,黄性感染症外国人患者とひとくくりにするよりは,治療費用の負担という側面をまず気にした方がよい.特にHIV感染症では保険診療でも費用は高額となる.外国人患者においても性行為感染症を1つ見つけたら,他のものについても治療費用に余裕があれば検査を行うことが望ましい.梅毒や淋菌感染症以外に出身地によっては鼠径リンパ肉芽腫症,軟性下疳など特殊な性行為感染症を考える必要がある.■ 感染症を見逃さない・対応するための知識とノウハウ?? ?大路 剛神戸大学大学院医学研究科 微生物感染症学講座感染治療学分野 准教授