ブックタイトル薬局69巻6月号

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概要

薬局69巻6月号

薬 局 2018 Vol.69, No.7 2515 9はじめに過日,感染症関係の某学会で輸入感染症のランチョンセミナーを拝聴した.「患者の渡航歴聴取の徹底は,普段の診療から心がけておく必要がある.」と非常にわかりやすくお話しされていた.ところが,前席で聴講されていた先生が「別世界の話だ.」と隣の方に言うのを耳にし,大いに考えさせられた.検疫所にいる自分の場合は,どのような感染症か把握し,対応方法について自分の身近な問題として考えるわけだが,これまで輸入感染症に触れる機会がなかった場合には,海外で感染症が流行している景色は無関係な遠い世界の出来事で,その感染症について知らないので「怖い」という意識の壁がさらに高くなってしまうのかもしれない.しかし,海外旅行は今や庶民の娯楽であり,バックパックで世界一周するような方も少なくない.日本の津々浦々に外国人旅行客があふれ,外国人労働者や留学生に日常的に遭遇する.日本に定住する外国人が増加した結果,家族や親戚が日本と祖国を行き来することも増えている.このように,自由に人々が往来するボーダレスな時代となったのである.日本人,外国人を問わず,海外から感染症の病原体を持ち込む可能性が常にある,すなわち「感染症に国境はない」と言えるだろう.もはや「輸入感染症が自分とは別世界の問題」とは,誰も言えないほど海外は身近になったのである.海外の感染症情報を知ろう感染症と対峙するには,感染症をよく理解海外感染症の流行状況と訪日外客数増加による輸入感染症リスク~感染症に国境はない~ボーダレスな時代である.「輸入感染症が自分とは別世界の問題」とは,もはや誰も言えない.感染症と対峙するには,感染症についてよく理解しておく必要がある.感染症流行地域から,感染したヒトや媒介動物が病原体の運び屋となって,別の地域で流行が発生する.海外で流行中のラッサ熱,鳥インフルエンザA(H7N9),中東呼吸器症候群(MERS),蚊媒介感染症の輸入例はいつ発生してもおかしくない.対応者のvaccine preventable disease(VPD)ワクチン接種,およびベクターコントロールを徹底し,感染症対策万全で東京2020大会の開催を迎えたい.横塚 由美厚生労働省東京検疫所 検疫衛生課長Feature | 訪日外国人数増加と輸入感染症