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カテゴリー: 小児科学

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親子と取り組む!子供の肥満診療

目標による治療管理とモチベーション維持のコツ

1版

済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 部長 乾あやの 監修
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 副部長 十河 剛 編集

定価

2,750(本体 2,500円 +税10%)


  • A5判  197頁
  • 2021年5月 発行
  • ISBN 978-4-525-28891-4

子供の肥満に介入できていますか?

小児科の日常診療の中で,肥満体型の親子を目の前にしたときに開いてほしい1冊.子供の肥満へ介入する糸口をつかみ,問診・検査から治療の目標を設定し,親子の治療へのモチベーションを維持しながら,肥満診療を実践できるようになるコツを伝授する.

  • 序文
  • 目次
序文
 私が子供だった40年前,昭和の時代,クラスに1人か2人が“太った子”だった.そして,時代は平成,令和となり,娘・息子の授業参観に行くと,3〜5人は“太った子”がクラスにいる.経済的発展,テクノロジーの進歩,生活様式の変容,家庭用ゲーム機の普及など,さまざまな理由はあるが,確実に“太った子”は増えている.一方で,特に女子においては過度なやせ願望が子供達の中にもあり,“太った子”と“やせた子“の二極化がみられるのも,平成,令和の特徴ではないかと思う.男女を問わず,運動する子と運動しない子の二極化も進んでいる.テクノロジーの進歩により,ヴァーチャルな体験が増え,五感をフルに使った実体験の機会が減り,家に居ながら,さまざまなものが手に入る環境に,コロナウイルスの世界的大流行がさらに拍車をかけた.
 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科では,毎年,小児肥満症に関する市民公開講座を開催している.この市民公開講座が画期的な点は,子供達に運動の楽しさを知ってもらうために,千葉大学躰道部と躰道世界チャンピオン中野哲爾先生のご協力を得て,躰道という武道の演武と体験会を病院内で実施していることである.そして,もう1つの目玉企画として,無料で腹部エコーによる脂肪肝検診を実施していることがあげられる.しかし,このエコー検診は,無料であるにもかかわらず,定員30名で事前申し込み制のところ,予約数は半数にも満たない.一方で,小児便秘症に関する市民公開講座で同じく無料のエコーによる便秘検診を募集すると,30名の募集枠がすぐに予約でいっぱいになり,キャンセル待ちになる.これは養育者の問題意識を反映しているようにも思う.肥満であっても,今は痛くも痒くもない.さらに養育者も太っている場合には,肥満を問題とは考えない.しかし驚くことに,エコー検診を受けた子供の約半数には,脂肪肝が存在する.つまり,生活習慣病は気づかぬうちに進行しているのである.
 そして,日本は欧米と比較するとまだ肥満人口が少ないこともあり,特に小児では,医療現場における肥満への取り組みが遅れているかもしれない.本書は,小児肥満に関するわが国では数少ない成書である.本書の特徴は,医療現場での小児肥満症診療に即対応できるよう,医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,公認心理士など肥満症診療に携わる職種それぞれの立場から実践的に記載した.そして,コーチング,心理学を活用した,子供達のやる気を引き出す言葉掛けのコツや,目標設定とその活用法も記載している.また,本書の内容をすべて実践できなくても,それぞれのパートをつまみ食いしながら,読者オリジナルの小児肥満診療が組み立てられるようになっている.さらに,本書に記載したやる気を引き出す言葉掛けのコツ,目標設定とその活用法は,医療現場における良好なコミュニケーション形成にも有効であると考えている.是非,本書の内容を活用して,最高の医療を提供できるチーム作りを実践していただければ幸いである.

2021年3月
十河 剛
目次
第1章 子供の肥満,問題点は何か?
1.疫学
 1)日本人の肥満は増えているのか?
 2)日本の肥満児は増えているのか?
 3)幼児期の肥満  

2.肥満の要因
 1)現代社会の環境と肥満
 2)養育者の貧困経験と子供の現在の肥満との関係
 3)養育者の貧困経験と子供の食生活との関係

3.肥満の病態およびそれに伴う健康障害
 1)肥満はどうして怖いのか?
 2)アディポサイトカインとは?
 3)小児期に重要なアディポシティリバウンド

第2章 子供の肥満・肥満症の診断
1.子供の肥満へ介入するには
 1)かかりつけ医が対象とする潜在的患者数は多い
 2)かかりつけ小児科医の役割の重要性
 3)子供の肥満を疑うきっかけはいつもの身体計測から
 4)どんな肥満の子供を治療対象とするか?
 5)単純性肥満も診療対象になりうる

2.問診のしかた
 1)第一印象が大切,子供・養育者との信頼関係をつくる
 2)症候性肥満の除外
 3)成長曲線
 4)出生歴
 5)家族歴
 6)食事摂取状況
 7)生活歴
 8)社会歴
 9)その他

3.必要な検査,検査所見の評価
 1)身長体重測定
 2)血圧測定
 3)自覚症状,身体所見
 4)画像検査
 5)血液検査
 6)早期動脈硬化

4.肥満の判定のしかた
 1)肥満とは —小児の肥満の定義
 2)肥満を判定する意義
 3)小児の肥満の判定には「肥満度」を使用する
 4)体脂肪蓄積の判定法
 5)実臨床では

5.肥満症の診断のしかた
 1)肥満症とは —小児の肥満症の診断基準
 2)実臨床では

6.メタボリックシンドロームの診断のしかた
 1)小児のメタボリックシンドロームの診断基準
 2)肥満症とメタボリックシンドロームは何が異なるのか?
 3)小児期から成人期のメタボリックシンドロームへの移行を回避するために重要

第3章 子供の肥満の治療へのアプローチとホームケア
1.目標による治療管理とモチベーション維持
 1)浦島太郎はなぜ,玉手箱を開けたのか? —肥満治療へのヒント
 2)ピンクの象さんを1分間考えないでください —ダイエット指導の落とし穴
 3)天使ちゃんと悪魔くん —できないことよりも,できたことに注目する
 4)その褒め方,大丈夫?
 5)やせられないというビリーフ
 6)目的志向型と問題回避型
 7)欠けたりんご
 8)自分で決める目標による治療マネジメント —GROWモデルを使って
 9)「失敗はない.あるのはフィードバックだけである」
《column》
 ・神経言語プログラミング(NLP: neuro linguistic programming)とは
 ・サブモダリティ
 ・症例1)13歳男児 —サブモダリティを変えることでカレーライスの印象を変えた例
 ・なぜ食べちゃうのか? —過食にはタイプがある

2.食事療法
 1)肥満に対する食事療法のための基礎知識
 2)ダイエット法の科学的根拠とその効果
 3)食事教育・指導の実際 —「何を」から「どのくらい(摂取量)」への意識変容を促すアプローチのしかた
 4)管理栄養士が提案する簡単にできるコンビニ総菜アレンジレピ
 5)小児科医の“顔”が子供の食習慣改善へのスイッチになる

3.運動療法
 1)運動するとどれだけよいことがあるのか?
 2)運動する子と運動しない子の二極化が進行
 3)小児肥満に対する運動指導のピットフォール
 4)運動指導に活用できる資材・ウェブサイト —アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)など

4.行動療法
 1)行動療法とは
 2)肥満症の行動療法の実践
 3)小児科医と心理職の連携
《column》臨床心理士と公認心理師

5.薬物療法
 1)小児肥満に対する漢方薬の効果
 2)漢方薬の小児に対する投与量
 3)小児に対する漢方製剤の服用方法の工夫

6.予防方法
 1)養育者への教育・動機づけ
 2)肥満予防のために子供・家族へ臨床医が推奨したいこと

7.専門医へのコンサルト

8.腸内細菌叢と肥満
 1)肥満に関連する腸内細菌叢とは?
 2)正常な腸内細菌叢とは?
 3)肥満とプロバイオティクス —腸内細菌叢の改善のためにできること
 4)期待される今後の研究

9.ヘルシーチャレンジプログラムと市民公開講座
 1)ヘルシーチャレンジプログラムとは —プログラムの名称に込めた願い
 2)プログラムの進め方
 3)プログラムの実際
 4)市民公開講座

《column》
 ・症例2)9歳女児 —偶然発見された肝機能異常がきっかけで治療が開始された肥満症の例
 ・症例3)15歳男児 —全身型若年性特発性関節炎の治療を契機に体重が1年で20㎏増加した例
 ・症例4)10歳女児 —家族の協力が得られ,いったん体重減少がみられたが,環境の変化で再度増加した例
 ・症例5)9歳男児 —患児や保護者のペースに合わせて指導を行っていくことが必要であった例

付表(食事療法)
 付表1)年齢別の標準的食事例
 付表2)年齢別の標準的食事例(付表1)の材料と重量(g)
 付表3)簡単に野菜をいっぱい食べよう!—管理栄養士が提案するコンビニ総菜アレンジレシピ
 付表4)弁当の詰め方の工夫
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