知らないでは済まされない

　皆さんは，自分の患者がOTC薬・健康食品をどれくらい使っているか知っているであろうか．また，プライマリ・ケア診療の現場では，患者から「病院に行くのは面倒．市販の胃薬を買って飲んだらよくなったので，このまま続けてもよいか？」とか，「骨が弱くなってきたのでサプリメントを飲みたいが，何を飲んだらよいか？」などと聞かれることもよくあるが，このような場合，皆さんはどう答えるであろうか．
　1つ1つに答えを出すまでとことん調べて，患者にとって最もよいOTC薬・健康食品を紹介する医師もいるであろうし，患者の自己責任に任せる医師もいるだろう．またOTC薬・健康食品に代わる医薬品を出す医師もいるであろうし，OTC薬・健康食品にはエビデンスが少ないのでその使用を否定する医師もいるだろう．
　どれが正しいかは一概にはいえないが，OTC薬・健康食品はすでに存在し，その年間市場規模は各々8,000億円にもなる．これに対して医療用医薬品市場規模が約10兆円であることを考えても，いかに多くのOTC薬や健康食品が実際に使われているかがわかるであろう．そして，その使用が患者の健康に多大な影響を及ぼすことが否定できないにもかかわらず，患者の健康に責任をもつべき主治医が，その使用を知らないで済まされるものではない．
　そこで，本特集では，OTC薬・健康食品を選ぶうえで必要な知識や使用上の注意点などを知るのはもちろんのこと，OTC薬・健康食品ならではの利点や，医療用医薬品をOTC薬・健康食品に置き換えていくためのコツなどを，薬剤師を中心とした執筆陣にお書きいただいたので，日々の診療にお役立ていただきたい．

〔編集幹事〕
石橋クリニック
石橋幸滋