ジェネラリストが
「いま」必要な情報を届ける雑誌
月刊:毎月1日発行 B5判 定価:2,970円(本体2,700円+税10%) ※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0022-5207
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とことん深めるライフストーリー
職業編
定価
2,750円(本体 2,500円+税10%)
- 今月の視点
- 特集の目次
- 連載
今月の視点
患者はどんな人生を歩んできたのか
2018年のThe New England Journal of Medicineに投稿された「The Name of the Dog」1)という論文をご存知だろうか.概要を説明すると,仕事を始めたばかりの研修医が,犬の散歩の後に胸痛をきたして入院した患者のことを指導医に回診でプレゼンした際に,「犬の名前はなんですか?」と聞かれたところから始まる.研修医は犬の名前が鑑別診断に役立つとは思えず困惑していたが,指導医が患者のベッドサイドで犬の名前を尋ねたところ,「ロッキーです」と答え,その様子がなんとも温かみのある光景にみえたというのだ.このエピソードは,患者を1人の人間としてみることの大切さに気づかせてくれる(ほかにも治療方針を決定するエピソードなども記載されている.興味のある方はご一読いただきたい).
医師は学生時代から「病歴が大事」と指導医から教えられてきたであろう.だがそれは正しい診断を下すためであることが多い.本特集では,「診断のための病歴聴取」ではなく,患者を1人の人間として「どんな人生を歩んできた方だろう」という視点で理解を深めていくための特集である.
家庭医は医師-患者関係を深めるためにコンテキストを大事にしている.患者はどのような仕事をしていて,何人家族で,家族のなかではどのような役割で,どんな地域に住んでいるのかという視点である.
「そんなことは医療に関係ないのでは」と思われるかもしれないが,仮に薬を出すにしても「職場が遠距離で帰りが遅く,内服のタイミングが守れない」ということもあるだろう.あるいは「会社の食堂には麺類か定食しかないので,食事指導は難しい」という場合もあるのではないだろうか.ほかにも父親の介護をしている,早期退職で趣味を楽しんでいる,孫の面倒をみるのが楽しみ…….疾患名でみている患者ではなく,1人の人間として理解することで,診断,治療,生活改善において,より個別性の高いアプローチを提供できるのである.
患者がどのような治療を希望しているか,ひいてはどのような人生を希望しているのかをイメージできるようになるためのヒントとなる企画となれば幸いである.
〔編集幹事〕
南砺市民病院 内科・総合診療科
大浦 誠
参考文献
1)Safder T:The Name of the Dog.N Engl J Med,379(14):1299-1301,2018.
2018年のThe New England Journal of Medicineに投稿された「The Name of the Dog」1)という論文をご存知だろうか.概要を説明すると,仕事を始めたばかりの研修医が,犬の散歩の後に胸痛をきたして入院した患者のことを指導医に回診でプレゼンした際に,「犬の名前はなんですか?」と聞かれたところから始まる.研修医は犬の名前が鑑別診断に役立つとは思えず困惑していたが,指導医が患者のベッドサイドで犬の名前を尋ねたところ,「ロッキーです」と答え,その様子がなんとも温かみのある光景にみえたというのだ.このエピソードは,患者を1人の人間としてみることの大切さに気づかせてくれる(ほかにも治療方針を決定するエピソードなども記載されている.興味のある方はご一読いただきたい).
医師は学生時代から「病歴が大事」と指導医から教えられてきたであろう.だがそれは正しい診断を下すためであることが多い.本特集では,「診断のための病歴聴取」ではなく,患者を1人の人間として「どんな人生を歩んできた方だろう」という視点で理解を深めていくための特集である.
家庭医は医師-患者関係を深めるためにコンテキストを大事にしている.患者はどのような仕事をしていて,何人家族で,家族のなかではどのような役割で,どんな地域に住んでいるのかという視点である.
「そんなことは医療に関係ないのでは」と思われるかもしれないが,仮に薬を出すにしても「職場が遠距離で帰りが遅く,内服のタイミングが守れない」ということもあるだろう.あるいは「会社の食堂には麺類か定食しかないので,食事指導は難しい」という場合もあるのではないだろうか.ほかにも父親の介護をしている,早期退職で趣味を楽しんでいる,孫の面倒をみるのが楽しみ…….疾患名でみている患者ではなく,1人の人間として理解することで,診断,治療,生活改善において,より個別性の高いアプローチを提供できるのである.
患者がどのような治療を希望しているか,ひいてはどのような人生を希望しているのかをイメージできるようになるためのヒントとなる企画となれば幸いである.
〔編集幹事〕
南砺市民病院 内科・総合診療科
大浦 誠
参考文献
1)Safder T:The Name of the Dog.N Engl J Med,379(14):1299-1301,2018.
特集の目次
■お仕事を聞いたらどこまで深める?
総論:なぜ,職業を聴くのか?(大浦 誠)
総論:実際に職業を聴くための 4 つのスキル(大浦 誠)
キーワードで深める職業聴取(小川太志,伊藤恭平,大澤真治,佐藤 匠)
職業を推理し「その人」の理解を深める外来診療 ─The Name of the Car─(今村弥生)
働くのがつらそうな人が来たら ─産業医の立場から─(安藤明美)
■地域性を踏まえたアプローチ
都市部でのアプローチ(東本晃尚,大島民旗)
地方でのアプローチ(武藤 理,井階友貴)
■症状から仕事を妄想しよう
仕事と健康は不可分 ─症状,疾患,マネジメントと職業─(石丸裕康)
しぶとい尿路感染(天野雅之)
「職業:○○」で終わらない! 仕事内容をくわしく知ることが謎を解く鍵(岩間秀幸)
両腕がだるいんですけど……(稲葉哲士,川島篤志)
価値観の形成と職業歴 ─患者さんというひとりの人から人生の智慧を学ぶ─(官澤洋平)
季節性の意図しない体重変動(小坂鎮太郎)
へき地で毎日遭遇する Common な職業×Common な職業病(佐藤健太)
人も無視できない(西澤俊紀)
難治性の手荒れの原因は?(森川 暢)
納豆を食べた後に……(矢吹 拓)
■身体所見から仕事を妄想しよう
皮膚症状や経過から職業を妄想して治療する(伊藤明子)
歯の摩耗,欠損,舌などの状態から仕事を考える(松本朋弘)
スポーツ選手特有の訴え(近藤慶太,濱井彩乃)
声を使う職業の方の音声障害(小川真智子)
■特別座談会
スーパードクターに聞く ライフストーリーの深め方(大浦 誠,藤沼康樹,徳田安春,岡田唯男,志水太郎)
総論:なぜ,職業を聴くのか?(大浦 誠)
総論:実際に職業を聴くための 4 つのスキル(大浦 誠)
キーワードで深める職業聴取(小川太志,伊藤恭平,大澤真治,佐藤 匠)
職業を推理し「その人」の理解を深める外来診療 ─The Name of the Car─(今村弥生)
働くのがつらそうな人が来たら ─産業医の立場から─(安藤明美)
■地域性を踏まえたアプローチ
都市部でのアプローチ(東本晃尚,大島民旗)
地方でのアプローチ(武藤 理,井階友貴)
■症状から仕事を妄想しよう
仕事と健康は不可分 ─症状,疾患,マネジメントと職業─(石丸裕康)
しぶとい尿路感染(天野雅之)
「職業:○○」で終わらない! 仕事内容をくわしく知ることが謎を解く鍵(岩間秀幸)
両腕がだるいんですけど……(稲葉哲士,川島篤志)
価値観の形成と職業歴 ─患者さんというひとりの人から人生の智慧を学ぶ─(官澤洋平)
季節性の意図しない体重変動(小坂鎮太郎)
へき地で毎日遭遇する Common な職業×Common な職業病(佐藤健太)
人も無視できない(西澤俊紀)
難治性の手荒れの原因は?(森川 暢)
納豆を食べた後に……(矢吹 拓)
■身体所見から仕事を妄想しよう
皮膚症状や経過から職業を妄想して治療する(伊藤明子)
歯の摩耗,欠損,舌などの状態から仕事を考える(松本朋弘)
スポーツ選手特有の訴え(近藤慶太,濱井彩乃)
声を使う職業の方の音声障害(小川真智子)
■特別座談会
スーパードクターに聞く ライフストーリーの深め方(大浦 誠,藤沼康樹,徳田安春,岡田唯男,志水太郎)
連載
在宅医療の質を高める!(9)
「治す医療」から「治し,支える医療」への変革(永井康徳)
えびさんぽ(21)
めまいの症状には,どんな治療が効果的ですか?(青島周一)
─ ランドマークスタディと路地裏エビデンス
─ 臨床での使い方
疲れた消化器をサポートする漢方処方プロセス(1)
胸やけ(谷川聖明)
「治す医療」から「治し,支える医療」への変革(永井康徳)
えびさんぽ(21)
めまいの症状には,どんな治療が効果的ですか?(青島周一)
─ ランドマークスタディと路地裏エビデンス
─ 臨床での使い方
疲れた消化器をサポートする漢方処方プロセス(1)
胸やけ(谷川聖明)