とびだせ、薬剤師!
臨床現場で活躍する薬剤師の知識やスキルのおさらい&アップデートをサポートする雑誌
月刊:毎月5日発行 B5判 定価:2,200円(本体2,000円+税10%)※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0044-0035
とびだせ、薬剤師!
臨床現場で活躍する薬剤師の知識やスキルのおさらい&アップデートをサポートする雑誌
月刊:毎月5日発行 B5判 定価:2,200円(本体2,000円+税10%)
※増刊号・臨時増刊号を除く ISSN 0044-0035
めまいを起こす薬・治す薬
原因・症状のおさらい&薬剤性めまいを見逃さない
定価
2,200円(本体 2,000円+税10%)
- 巻頭言
- 目次
巻頭言
特集にあたって
めまいは最も頻度の高い症状の一つである.めまいの原因の一つに薬剤があり,薬剤により引き起こされるめまいを薬剤性めまいとよぶ.めまいを引き起こす可能性のある薬剤は多岐にわたるが,抗不安薬,睡眠薬,抗うつ薬などの鎮静作用のある薬剤がめまいや転倒を引き起こすリスクが高く,処方頻度も高いと思われるので注意が必要である.市販のかぜ薬にも鎮静作用のある第一世代の抗ヒスタミン薬が含まれていることが多い.男性高齢者では,前立腺肥大症に対するα遮断薬による起立性低血圧もめまいや転倒を引き起こすことがある.また,降圧薬による低血圧や糖尿病治療薬による低血糖が招くめまいにも注意する必要がある.さらに,抗菌薬,不妊治療薬,片頭痛治療薬,パーキンソン病治療薬,抗てんかん薬,抗がん薬のなかにはめまいを引き起こす頻度の高い薬剤があるので注意する必要がある.
薬剤性めまいは高齢者に多く認められる.その原因の一つに高齢者の多剤服用(polypharmacy)がある.高齢者の多剤服用は,転倒のリスクを高める重要な要因である.めまいを訴える高齢の多剤服用患者に対しては,薬剤師が医師や看護師などの多職種間で連携をとり,めまいを引き起こす可能性のある薬剤の推定や服薬アドヒアランスの確認を行い,医師へフィードバックをしながら可能性のある薬剤の中止や変更,処方薬剤数を減らす提案をすることが,薬剤性めまいによる転倒事故を防ぐために重要である.
一方,薬剤師にはめまいを治療する薬剤に関する知識も必要である.めまいには回転性のめまい,動揺性(浮動性)のめまい,気が遠くなるようなめまいなどがあり,平衡覚を司る内耳の三半規管や小脳・脳幹の病変だけでなく,心血管病変などでも発症する.抗めまい薬としてよく用いられる薬剤に,ベタヒスチン,ジフェニドール,アデノシン三リン酸などがある.めまいに伴う悪心・嘔吐には,制吐薬であるメトクロプラミドやドンペリドンが用いられるが,第一世代の抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)も効果が高く,よく用いられる.メニエール病などには,その病態である内リンパ水腫を軽減する目的で利尿薬であるイソソルビドが用いられる.薬剤師として,めまい疾患やその発症機序,めまいの治療薬とその作用メカニズムを理解して,めまいで困っている患者の治療効果向上につながるサポートを行うことが重要である.
本特集では,めまいを起こす薬とめまいを治す薬について解説した.薬剤師として,薬剤性めまいを見逃さないと同時に,めまいの治療薬を理解してめまい治療をサポートしていただきたい.
徳島大学 名誉教授
武田憲昭
めまいは最も頻度の高い症状の一つである.めまいの原因の一つに薬剤があり,薬剤により引き起こされるめまいを薬剤性めまいとよぶ.めまいを引き起こす可能性のある薬剤は多岐にわたるが,抗不安薬,睡眠薬,抗うつ薬などの鎮静作用のある薬剤がめまいや転倒を引き起こすリスクが高く,処方頻度も高いと思われるので注意が必要である.市販のかぜ薬にも鎮静作用のある第一世代の抗ヒスタミン薬が含まれていることが多い.男性高齢者では,前立腺肥大症に対するα遮断薬による起立性低血圧もめまいや転倒を引き起こすことがある.また,降圧薬による低血圧や糖尿病治療薬による低血糖が招くめまいにも注意する必要がある.さらに,抗菌薬,不妊治療薬,片頭痛治療薬,パーキンソン病治療薬,抗てんかん薬,抗がん薬のなかにはめまいを引き起こす頻度の高い薬剤があるので注意する必要がある.
薬剤性めまいは高齢者に多く認められる.その原因の一つに高齢者の多剤服用(polypharmacy)がある.高齢者の多剤服用は,転倒のリスクを高める重要な要因である.めまいを訴える高齢の多剤服用患者に対しては,薬剤師が医師や看護師などの多職種間で連携をとり,めまいを引き起こす可能性のある薬剤の推定や服薬アドヒアランスの確認を行い,医師へフィードバックをしながら可能性のある薬剤の中止や変更,処方薬剤数を減らす提案をすることが,薬剤性めまいによる転倒事故を防ぐために重要である.
一方,薬剤師にはめまいを治療する薬剤に関する知識も必要である.めまいには回転性のめまい,動揺性(浮動性)のめまい,気が遠くなるようなめまいなどがあり,平衡覚を司る内耳の三半規管や小脳・脳幹の病変だけでなく,心血管病変などでも発症する.抗めまい薬としてよく用いられる薬剤に,ベタヒスチン,ジフェニドール,アデノシン三リン酸などがある.めまいに伴う悪心・嘔吐には,制吐薬であるメトクロプラミドやドンペリドンが用いられるが,第一世代の抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)も効果が高く,よく用いられる.メニエール病などには,その病態である内リンパ水腫を軽減する目的で利尿薬であるイソソルビドが用いられる.薬剤師として,めまい疾患やその発症機序,めまいの治療薬とその作用メカニズムを理解して,めまいで困っている患者の治療効果向上につながるサポートを行うことが重要である.
本特集では,めまいを起こす薬とめまいを治す薬について解説した.薬剤師として,薬剤性めまいを見逃さないと同時に,めまいの治療薬を理解してめまい治療をサポートしていただきたい.
徳島大学 名誉教授
武田憲昭
目次
特集
めまいを起こす薬・治す薬
原因・症状のおさらい&薬剤性めまいを見逃さない
■特集にあたって(武田 憲昭)
■見落とすまい! 薬剤性めまい ─めまいを起こす薬の薬学的フォロー
・治療中断・転倒事故を起こさない! 薬剤性めまいを見逃すな(肥塚 泉)
・糖尿病治療薬(桒原 宏貴)
・降圧薬(梶原 洋文)
・抗菌薬(山田 和範)
・睡眠薬・抗不安薬(村阪 敏規)
・抗うつ薬(別所 千枝)
・片頭痛治療薬 (ラスミジタン)(山室 蕗子 ほか)
・抗パーキンソン病薬(大村 友博 ほか)
・抗てんかん薬(山本 吉章)
・抗がん薬(川上 和宜)
■軽視しない! めまいの薬物治療 ─めまいを治す薬の薬学的フォロー
・知っておきたいめまいの知識(岩﨑 真一)
・めまい治療薬の特徴と使い分け(佐藤 豪)
・急に起きためまいの薬物治療(宇野 敦彦)
・長く続くめまいの薬物治療(堀井 新)
・継続治療を妨げる要因への薬学的介入(山田 和範)
・生活習慣を見直してめまいを改善しよう(北原 糺)
・コラム OTC医薬品の“乗り物酔い”の薬,どうやって使い分けたらよいですか?(児島 悠史)
シリーズ
■症状・体質からしっかり選べる!フローチャートでわかる 漢方薬虎の巻
〈第5回〉腹痛•胃痛
(永田 郁夫)
■えびさんぽ
めまいの症状には,どんな治療が効果的ですか?
(青島 周一)
■くすりのかたち外伝 わかる!使える!まいにち薬会話
〈第21回〉「前回の薬よりも作用(副作用)が〇〇です」(後編)
(浅井 考介 柴田 奈央)
■飲み合わせ研究所 子どもの服薬Tips
〈第09回〉ペリアクチン®散1%
(小嶋 純 米子 真記)
■現場で働く薬剤師のための臨床薬学研究のオモテ・ウラ
〈第21回〉上司の理解を得るためのオモテ・ウラ
(大井 一弥)
■医薬品適正使用・育薬 フラッシュニュース
・服薬時の姿勢で錠剤の吸収速度が変わる?
・ポリファーマシーへの介⼊の影響
(佐藤 宏樹 澤田 康文)
■Gebaita?! 薬剤師の語ログ
〈第21回〉ある4月の金曜日
(大西 伸幸)
■腫瘍薬学ハイライト
がんゲノム医療の発展に繋がる分子標的治療薬の開発
(川西 正祐)
■薬剤師力の型 新たな思考と行動プランを手に入れろ!
〈弐拾壱ノ型〉現在の服用薬だけに囚われるな!
(花田 聖典)
めまいを起こす薬・治す薬
原因・症状のおさらい&薬剤性めまいを見逃さない
■特集にあたって(武田 憲昭)
■見落とすまい! 薬剤性めまい ─めまいを起こす薬の薬学的フォロー
・治療中断・転倒事故を起こさない! 薬剤性めまいを見逃すな(肥塚 泉)
・糖尿病治療薬(桒原 宏貴)
・降圧薬(梶原 洋文)
・抗菌薬(山田 和範)
・睡眠薬・抗不安薬(村阪 敏規)
・抗うつ薬(別所 千枝)
・片頭痛治療薬 (ラスミジタン)(山室 蕗子 ほか)
・抗パーキンソン病薬(大村 友博 ほか)
・抗てんかん薬(山本 吉章)
・抗がん薬(川上 和宜)
■軽視しない! めまいの薬物治療 ─めまいを治す薬の薬学的フォロー
・知っておきたいめまいの知識(岩﨑 真一)
・めまい治療薬の特徴と使い分け(佐藤 豪)
・急に起きためまいの薬物治療(宇野 敦彦)
・長く続くめまいの薬物治療(堀井 新)
・継続治療を妨げる要因への薬学的介入(山田 和範)
・生活習慣を見直してめまいを改善しよう(北原 糺)
・コラム OTC医薬品の“乗り物酔い”の薬,どうやって使い分けたらよいですか?(児島 悠史)
シリーズ
■症状・体質からしっかり選べる!フローチャートでわかる 漢方薬虎の巻
〈第5回〉腹痛•胃痛
(永田 郁夫)
■えびさんぽ
めまいの症状には,どんな治療が効果的ですか?
(青島 周一)
■くすりのかたち外伝 わかる!使える!まいにち薬会話
〈第21回〉「前回の薬よりも作用(副作用)が〇〇です」(後編)
(浅井 考介 柴田 奈央)
■飲み合わせ研究所 子どもの服薬Tips
〈第09回〉ペリアクチン®散1%
(小嶋 純 米子 真記)
■現場で働く薬剤師のための臨床薬学研究のオモテ・ウラ
〈第21回〉上司の理解を得るためのオモテ・ウラ
(大井 一弥)
■医薬品適正使用・育薬 フラッシュニュース
・服薬時の姿勢で錠剤の吸収速度が変わる?
・ポリファーマシーへの介⼊の影響
(佐藤 宏樹 澤田 康文)
■Gebaita?! 薬剤師の語ログ
〈第21回〉ある4月の金曜日
(大西 伸幸)
■腫瘍薬学ハイライト
がんゲノム医療の発展に繋がる分子標的治療薬の開発
(川西 正祐)
■薬剤師力の型 新たな思考と行動プランを手に入れろ!
〈弐拾壱ノ型〉現在の服用薬だけに囚われるな!
(花田 聖典)