医療従事者のギモンに答える!
トラブルに巻き込まれない著作権のキホン
1版
阿部・井窪・片山法律事務所 服部 誠 著
定価
2,750円(本体 2,500円 +税10%)
- B5判 151頁
- 2018年3月 発行
- ISBN 978-4-525-03021-6
知りたいところがすぐわかる著作権の強化書!
論文作成,出版,講義・プレゼン,ブログなど著作権のトラブルは頻繁に生じる.職や学位を失うことすらある.しかしこれを回避するための情報リテラシーは医学系教育機関等で十分教育・指導されているとは言い難い.本書は医療・教育現場から寄せられた著作権に関する不安や疑問を取り上げ、基礎と実践力を身につけられる解説書である.
- 序文
- 目次
- 書評1
- 書評2
- 書評3
序文
本書は、株式会社南山堂から出版されている月刊誌『薬局』において、2015年1月号から2016年12月号までに掲載された、読者の方からの著作権に関する疑問に答えるコーナーである「医療従事者のギモンや困ったに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン」に加筆修正を加えるとともに、全6章に構成を整え、新たに5つの「トピック」を加えたものです。
「第1章 著作権の基礎」においては、著作権の内容や保護期間、職務著作、特許権との関係など、著作権に関する基礎的な内容を解説しています。「第2章 論文を作成するときのギモン」では、論文を作成する際に著作権法上留意すべき点を説明しています。「第3章 論文を投稿するときのギモン」では、投稿規程と著作権法との関係を説明しつつ、二重投稿の禁止の意義などについて解説しています。「第4章 図書を出版するときのギモン」では、出版契約書の内容を解説すると共に、出版社と契約する際の留意点を解説しました。「第5章 共著論文についてのギモン」では、共同で論文を執筆した際の著作権法上の注意点を説明しています。最後に、「第6章 講演・プレゼンテーションのときのギモン」では、講演や講義において、イラストや写真などの他人の著作物を利用する際の留意点を整理しています。
全体を通じて、具体的な裁判例や具体的な事例を豊富に盛り込んでおり、初学者の方がどこの章から読んでも理解できるように工夫しました。本書が、医療従事者の方々が、論文を作成されたり、講演をされる際に抱かれる疑問に答え、安心してそれらの活動に従事していただくことの一助になれば幸いです。
最後に、この場をお借りして、本書を企画し、丁寧に校正して下さった『薬局』編集部の根本英一編集長、須田幸司様、谷田直輝様に厚く御礼申し上げます。
2018年2月
服部 誠
「第1章 著作権の基礎」においては、著作権の内容や保護期間、職務著作、特許権との関係など、著作権に関する基礎的な内容を解説しています。「第2章 論文を作成するときのギモン」では、論文を作成する際に著作権法上留意すべき点を説明しています。「第3章 論文を投稿するときのギモン」では、投稿規程と著作権法との関係を説明しつつ、二重投稿の禁止の意義などについて解説しています。「第4章 図書を出版するときのギモン」では、出版契約書の内容を解説すると共に、出版社と契約する際の留意点を解説しました。「第5章 共著論文についてのギモン」では、共同で論文を執筆した際の著作権法上の注意点を説明しています。最後に、「第6章 講演・プレゼンテーションのときのギモン」では、講演や講義において、イラストや写真などの他人の著作物を利用する際の留意点を整理しています。
全体を通じて、具体的な裁判例や具体的な事例を豊富に盛り込んでおり、初学者の方がどこの章から読んでも理解できるように工夫しました。本書が、医療従事者の方々が、論文を作成されたり、講演をされる際に抱かれる疑問に答え、安心してそれらの活動に従事していただくことの一助になれば幸いです。
最後に、この場をお借りして、本書を企画し、丁寧に校正して下さった『薬局』編集部の根本英一編集長、須田幸司様、谷田直輝様に厚く御礼申し上げます。
2018年2月
服部 誠
目次
第1章 著作権の基礎
1 著作権とは?
2 著作権の保護期間は何年か?
3 職務上執筆した論文の著作権者は誰?
4 メーリングリストへの書き込みも著作権侵害となる?
5 著作権と特許権との関係は?
第2章 論文を作成するときのギモン
1 論評することで著作権侵害となるのか?
2 引用と転載の違いは?
3 政府刊行物の利用は自由か?
4 他人の図表を使うと著作権侵害となるか?
5 他人の文章のまとめサイトは安全か?
6 外国著作物を引用する際の注意点
7 著作権の利用料に上限はないのか?
第3章 論文を投稿するときのギモン
1 投稿規程と著作権法との関係は?
2 論文の二重投稿禁止の意味
第4章 図書を出版するときのギモン
1 出版契約書は理解する必要があるか?
2 契約の落とし穴
第5章 共著論文についてのギモン
1 共同執筆の著作権法上の注意点は?
2 どこまで手伝ってもらうと共著論文にする必要があるか?
3 共著論文でも勝手に雑誌に投稿できる?
第6章 講演・プレゼンテーションのときのギモン
1 講義において他人の著作物を利用する際の留意点は?
2 図表に著作物性はあるのか?
3 他人のイラストの利用は著作権侵害となるか?
4 他人の写真を利用すると著作権侵害になるか?
トピック
① 「All rights reserved.」等の表記の意味
② 肖像権とは?
③ 試験問題と著作権法
④ 図書館での複写
⑤ 動画サイトへの動画の投稿
1 著作権とは?
2 著作権の保護期間は何年か?
3 職務上執筆した論文の著作権者は誰?
4 メーリングリストへの書き込みも著作権侵害となる?
5 著作権と特許権との関係は?
第2章 論文を作成するときのギモン
1 論評することで著作権侵害となるのか?
2 引用と転載の違いは?
3 政府刊行物の利用は自由か?
4 他人の図表を使うと著作権侵害となるか?
5 他人の文章のまとめサイトは安全か?
6 外国著作物を引用する際の注意点
7 著作権の利用料に上限はないのか?
第3章 論文を投稿するときのギモン
1 投稿規程と著作権法との関係は?
2 論文の二重投稿禁止の意味
第4章 図書を出版するときのギモン
1 出版契約書は理解する必要があるか?
2 契約の落とし穴
第5章 共著論文についてのギモン
1 共同執筆の著作権法上の注意点は?
2 どこまで手伝ってもらうと共著論文にする必要があるか?
3 共著論文でも勝手に雑誌に投稿できる?
第6章 講演・プレゼンテーションのときのギモン
1 講義において他人の著作物を利用する際の留意点は?
2 図表に著作物性はあるのか?
3 他人のイラストの利用は著作権侵害となるか?
4 他人の写真を利用すると著作権侵害になるか?
トピック
① 「All rights reserved.」等の表記の意味
② 肖像権とは?
③ 試験問題と著作権法
④ 図書館での複写
⑤ 動画サイトへの動画の投稿
書評1
「知らなかったのか? 著作権からは逃げられない」
市原 真 先生(JA 北海道厚生連 札幌厚生病院 病理診断科 医長)
参ったなあ,と声が出た.どうにかしないとなあ,と続く.書店で思いもよらない本に出会ったとき,SNS で自分がまったく触れたことのないジャンルの本を教えてもらうとき,いつもワクワクするぼくが,今度ばかりはビクビクしていた.
法律のことはちっともわからない.ため息まじりにページをめくる.学術研究における著作権? 考えたこともなかった.データの引用と図版の引用の違い? 論文でそんなこと気にしてなかった.二重投稿禁止の意味? 学会の都合だろ,と思っていたが思いのほか学術的な意味が隠されていた.本を出すときの注意点? 知らずに何冊か本書いちゃったよ,どうしよう.講演のときに画像をどう使うか? わあ,まずい,今日からさっそくプレゼンを見直さなきゃ!
踏切で一時停止せず走って行こうとした車を,隠れて見張っていたパトカーが呼び止める.そこで一時停止しないのは違反ですよ.切符を切られた運転手は,怒気混じりにつぶやくだろう.「そんなこと知らなかったぞ.」けれども,ぼくたちオトナは知っている,交通法規は「知らなかったから守れなかった」では済まないということを.
たぶん同じなのだ.医術の世界に生きるぼくらは,もちろん法律の専門家ではないが,著作権を知らなかったでは済まされない.
本書を読み進めているうちに気づくこと.現代,ぼくらは昔よりもはるかに多くの情報を発信し,受信をしている.検索して,引用して,一日一善ならぬ一日一クリエイションに励んでいる.ぼくらが無意識に行っている引用は「正当な引用」だろうか? ぼくらは「無断転載を禁ずる」の意味を知っているか? 知らないうちに踏切を突っ切ってはいないか?
この貴重な読書体験をシェアしようと思い,初期研修医室の扉を叩いた.初期研修医たちは,「今度はどんな本を持ってきたんですか?」と目を輝かせた後,すぐに顔を曇らせる.
「著作権?」うん,気持ちはわかるぞ.でもぼくらはもう,逃げられない.
市原 真 先生(JA 北海道厚生連 札幌厚生病院 病理診断科 医長)
参ったなあ,と声が出た.どうにかしないとなあ,と続く.書店で思いもよらない本に出会ったとき,SNS で自分がまったく触れたことのないジャンルの本を教えてもらうとき,いつもワクワクするぼくが,今度ばかりはビクビクしていた.
法律のことはちっともわからない.ため息まじりにページをめくる.学術研究における著作権? 考えたこともなかった.データの引用と図版の引用の違い? 論文でそんなこと気にしてなかった.二重投稿禁止の意味? 学会の都合だろ,と思っていたが思いのほか学術的な意味が隠されていた.本を出すときの注意点? 知らずに何冊か本書いちゃったよ,どうしよう.講演のときに画像をどう使うか? わあ,まずい,今日からさっそくプレゼンを見直さなきゃ!
踏切で一時停止せず走って行こうとした車を,隠れて見張っていたパトカーが呼び止める.そこで一時停止しないのは違反ですよ.切符を切られた運転手は,怒気混じりにつぶやくだろう.「そんなこと知らなかったぞ.」けれども,ぼくたちオトナは知っている,交通法規は「知らなかったから守れなかった」では済まないということを.
たぶん同じなのだ.医術の世界に生きるぼくらは,もちろん法律の専門家ではないが,著作権を知らなかったでは済まされない.
本書を読み進めているうちに気づくこと.現代,ぼくらは昔よりもはるかに多くの情報を発信し,受信をしている.検索して,引用して,一日一善ならぬ一日一クリエイションに励んでいる.ぼくらが無意識に行っている引用は「正当な引用」だろうか? ぼくらは「無断転載を禁ずる」の意味を知っているか? 知らないうちに踏切を突っ切ってはいないか?
この貴重な読書体験をシェアしようと思い,初期研修医室の扉を叩いた.初期研修医たちは,「今度はどんな本を持ってきたんですか?」と目を輝かせた後,すぐに顔を曇らせる.
「著作権?」うん,気持ちはわかるぞ.でもぼくらはもう,逃げられない.
書評2
羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹かないために!
狭間 研至 先生(ファルメディコ株式会社 代表取締役社長)
医師にしても薬剤師にしても,免許を取ってしばらくすると「学会発表してみてよ!」と言われます.そんなの無理!と思いながらなんとか頑張ってこなすと,ちょっとした達成感もあるし医療における階段を一歩上がったような気もして機会を見つけて発表するようになります.
そうこうしていると,「ペーパー(論文)にしてみてよ!」と言われます.忙しい毎日でそんなヒマ(!?)あるかいな!と思っても,周りを見渡すとなんとなく書いている人もいるし上司からのプレッシャーもあるし,見よう見まねで書いてみます.すると確かに大変だけれど学会発表とは比べものにならない充実感があって,「次は何を書こうかな?」と思うようになります.
そういった活動を続け,臨床経験も積む中で,自分の専門領域ができてきます.するとひょんなところから「ちょっと記事を書いてもらえませんか?」と原稿依頼が来たりします.話を聞くと,自分も読んでいる専門誌の特集記事の依頼だったりするので,ついうれしくなって書いてしまいます.そうするとありがたいことにまた別のご依頼をいただくようになります.
こうなると「○○の専門家」となっていきますから,「一般の方向けの講演会に出ていただけませんか?」と言われたり,メディアの取材の依頼が来たりするようになります.最初は何の気なしに始めた学会発表からあたかも「わらしべ長者」のように次々に仕事がつながっていくというのは医師も薬剤師もしばしば経験することだと思います.
こんなときに一貫して気をつけないといけないことが二つあります.
一つは依頼があったときには「頼まれごとは試されごと」の精神で,まず受けてみることです.返事は,0.2秒で「ハイ」か「イエス」なのです.もちろん,毎日は忙しいのですが,頼まれたというのは「ご縁」です.断る理由はいくつもありそのストーリーも完璧だとしても,そこをあえて挑戦してみるのです.私の先輩で論文をコンスタントに書いている先生に「どうやってそんなに書けるのですか?」と聞いたことがあります.するとにこっと笑って「1日1文ずつ書くって決めるんだよ」と言われました.1文書くとついまとめて書いてしまうとも.確かに時間は作るものですね.
そしてもう一つが「著作権」の問題です.学会発表,論文,依頼原稿,講演会などさまざまな場面で自分の専門領域をお話ししたり,少し興味をもって聞いてもらおうとしたりすると,キーになる有名な図表を使ったり,有名タレントの写真をスライドに映してみたりしたくなるものです.しかし,インターネットの普及も背景に起こりやすい安易な「コピペ」は後々「著作権侵害」という大変な問題を引き起こします.とはいえ「著作権」を恐れ過ぎて過度に萎縮していては自分のメッセージが伝えられないというジレンマに陥ります.そうならないための懐刀のような一冊が本書です.
日常的に執筆や講演を行っている中堅からベテランの先生はもとより,これから学会発表を始めようという若い先生にも,ぜひご一読いただき,「羮に懲りて膾を吹く」ことのないようにしながら存分に自分の専門性を高めていただく一助にしていただければと思います.
狭間 研至 先生(ファルメディコ株式会社 代表取締役社長)
医師にしても薬剤師にしても,免許を取ってしばらくすると「学会発表してみてよ!」と言われます.そんなの無理!と思いながらなんとか頑張ってこなすと,ちょっとした達成感もあるし医療における階段を一歩上がったような気もして機会を見つけて発表するようになります.
そうこうしていると,「ペーパー(論文)にしてみてよ!」と言われます.忙しい毎日でそんなヒマ(!?)あるかいな!と思っても,周りを見渡すとなんとなく書いている人もいるし上司からのプレッシャーもあるし,見よう見まねで書いてみます.すると確かに大変だけれど学会発表とは比べものにならない充実感があって,「次は何を書こうかな?」と思うようになります.
そういった活動を続け,臨床経験も積む中で,自分の専門領域ができてきます.するとひょんなところから「ちょっと記事を書いてもらえませんか?」と原稿依頼が来たりします.話を聞くと,自分も読んでいる専門誌の特集記事の依頼だったりするので,ついうれしくなって書いてしまいます.そうするとありがたいことにまた別のご依頼をいただくようになります.
こうなると「○○の専門家」となっていきますから,「一般の方向けの講演会に出ていただけませんか?」と言われたり,メディアの取材の依頼が来たりするようになります.最初は何の気なしに始めた学会発表からあたかも「わらしべ長者」のように次々に仕事がつながっていくというのは医師も薬剤師もしばしば経験することだと思います.
こんなときに一貫して気をつけないといけないことが二つあります.
一つは依頼があったときには「頼まれごとは試されごと」の精神で,まず受けてみることです.返事は,0.2秒で「ハイ」か「イエス」なのです.もちろん,毎日は忙しいのですが,頼まれたというのは「ご縁」です.断る理由はいくつもありそのストーリーも完璧だとしても,そこをあえて挑戦してみるのです.私の先輩で論文をコンスタントに書いている先生に「どうやってそんなに書けるのですか?」と聞いたことがあります.するとにこっと笑って「1日1文ずつ書くって決めるんだよ」と言われました.1文書くとついまとめて書いてしまうとも.確かに時間は作るものですね.
そしてもう一つが「著作権」の問題です.学会発表,論文,依頼原稿,講演会などさまざまな場面で自分の専門領域をお話ししたり,少し興味をもって聞いてもらおうとしたりすると,キーになる有名な図表を使ったり,有名タレントの写真をスライドに映してみたりしたくなるものです.しかし,インターネットの普及も背景に起こりやすい安易な「コピペ」は後々「著作権侵害」という大変な問題を引き起こします.とはいえ「著作権」を恐れ過ぎて過度に萎縮していては自分のメッセージが伝えられないというジレンマに陥ります.そうならないための懐刀のような一冊が本書です.
日常的に執筆や講演を行っている中堅からベテランの先生はもとより,これから学会発表を始めようという若い先生にも,ぜひご一読いただき,「羮に懲りて膾を吹く」ことのないようにしながら存分に自分の専門性を高めていただく一助にしていただければと思います.
書評3
著作権は奥深い!
本書を読んでの感想.「ヘエー!」「アラ!」「危ナーイ!」「ナンダ!」「勉強になりました!」である.
本書は,論文・書籍・ブログなどの執筆やプレゼンテーションなどで生じる著作権の基本について,医療従事者向けに具体的にQ&Aの形式で解説されたものである.著作権については,以前話題になったコピペ原稿.さすがに,これは駄目でしょうとの認識はあるが,さて,私自身が原稿を書くときなど気にしていたかというと,「引用を記載しておけば大丈夫だよね」という何とも大雑把な考えで対処していた.「危ないことをしていたかも」と,少々不安になってきた.
本書は,まさにトラブルに巻き込まれないために,著作権に対する不安を解消するために知っておくべき基本が収められており,知らないで著作権侵害をしてしまう人がいないようにとの思いが込められている.その一方で,気にしていたデータの取り扱いに関しては,「基礎研究や臨床試験の過程で得られたデータなどは著作物にはあたらない」とのことである.まさに「ナンダそうだったのか!」である.
Q&A集というと,単なる「ハウツー物」と思われがちであるが,著者が弁護士であることから,解説は判例に基づいており,随所に紹介されている事案を拾い読みするだけでも何だか謎解きをされている気分になる.製薬企業の製品の包装箱のデザインの判例,写真の取り扱いなど,どうぞ本書を一読されることをお勧めします.
本書を読んでの感想.「ヘエー!」「アラ!」「危ナーイ!」「ナンダ!」「勉強になりました!」である.
本書は,論文・書籍・ブログなどの執筆やプレゼンテーションなどで生じる著作権の基本について,医療従事者向けに具体的にQ&Aの形式で解説されたものである.著作権については,以前話題になったコピペ原稿.さすがに,これは駄目でしょうとの認識はあるが,さて,私自身が原稿を書くときなど気にしていたかというと,「引用を記載しておけば大丈夫だよね」という何とも大雑把な考えで対処していた.「危ないことをしていたかも」と,少々不安になってきた.
本書は,まさにトラブルに巻き込まれないために,著作権に対する不安を解消するために知っておくべき基本が収められており,知らないで著作権侵害をしてしまう人がいないようにとの思いが込められている.その一方で,気にしていたデータの取り扱いに関しては,「基礎研究や臨床試験の過程で得られたデータなどは著作物にはあたらない」とのことである.まさに「ナンダそうだったのか!」である.
Q&A集というと,単なる「ハウツー物」と思われがちであるが,著者が弁護士であることから,解説は判例に基づいており,随所に紹介されている事案を拾い読みするだけでも何だか謎解きをされている気分になる.製薬企業の製品の包装箱のデザインの判例,写真の取り扱いなど,どうぞ本書を一読されることをお勧めします.