医療・福祉職のための量的研究入門
研究構想から統計解析,論文執筆まで
1版
淑徳大学短期大学部健康福祉学科 教授 三田寺裕治 著
定価
2,200円(本体 2,000円 +税10%)
- A5判 174頁
- 2023年7月 発行
- ISBN 978-4-525-04041-3
量的研究を始めるための本
「量的研究」とひとことで言っても,統計解析のほかに,解決したい疑問の発見や,先行研究の探索,研究計画書の作成,調査票の作成・配布・回収,論文の執筆など,必要な手順は多岐にわたります.量的研究を始めたいけど,具体的に何から手をつければいいのかわからない,という方も多いのではないでしょうか.そこで本書は,リサーチクエスチョンの検討から,データの収集・統計解析を経て,論文の執筆に至るまで,量的研究のプロセスをまるごと解説しました.「研究ってそもそも何をすればいいの?」から「研究結果をどうやって論文にまとめたらいいの?」まで,量的研究に関する疑問をつぶさに解決し,実際に研究を始めるための手引書です.
- はじめに
- 目次
はじめに
本書は量的研究を体系的に学習するための入門書である.初めて量的研究に取り組む医療・福祉職の方や,それを目指す学生を主な読者として想定し執筆を行った.
研究とは,既存の知識体系の上に立って,新たな知識を加える論理的思考の営みであるが,その知識体系は教科書のように明示されているわけではないため,研究者自ら規定しなければならず,初学者にとっては難関である.
また,付け加える知識は新しいものでなければならないが,新しければ何でもよいわけではなく,意味のあるものでなければならない.しかし,初学者にとっては何が「意味あるもの」なのか,そもそもわからないことが多い.さらに,本格的な論理的思考のトレーニングを受けてこなかった者にとっては,論理的思考を行うこと自体,大きな心理的負荷がかかる.
そのため,初めて研究に取り組む人のなかには,壁に直面し挫折したり,論文としてうまくまとめられなかったりして,苦慮している人もいるのではないだろうか.実は筆者自身も苦慮した一人である.研究の進め方や論文の書き方についての手引書を作成し,研究に苦慮している方の一助になればとの思いから,本書の執筆をスタートさせた.本書が少しでも皆様の研究活動の助けとなれば幸いである.
研究には直接必要がないもの,難解なものなどはコラムに収めた.読まなくても研究に支障はないが,理解を深めたり知見を広げたい場合は,一読をおすすめする.
なお本書は,医療福祉分野の一般的な量的研究の方法について述べたものであり,学問分野やジャーナルによっては,本書の内容があてはまらない場合があることに注意いただきたい.例えば心理学系や医学系では,より厳密な統計処理が求められたり,経済学系では,独特の統計処理(時系列分析など)が使われたりすることがある.またジャーナルによっては,結果のなかに方法の一部(調査研究における統計処理の方法など)が含まれたり,考察のなかに結論が含まれたりすることもある.
すでに研究指導を受けている方で,本書の記述と指導教官の指示が異なる場合は,指導教官に従っていただきたい.また,わかりやすさを第一にしたため,やや正確さを犠牲にした部分もあるが,ご容赦願いたい.
本書の刊行にあたって,南山堂編集部の原山星舟氏に大変お世話になった.ここに記して厚く御礼申し上げる.
2023年7月
三田寺裕治
研究とは,既存の知識体系の上に立って,新たな知識を加える論理的思考の営みであるが,その知識体系は教科書のように明示されているわけではないため,研究者自ら規定しなければならず,初学者にとっては難関である.
また,付け加える知識は新しいものでなければならないが,新しければ何でもよいわけではなく,意味のあるものでなければならない.しかし,初学者にとっては何が「意味あるもの」なのか,そもそもわからないことが多い.さらに,本格的な論理的思考のトレーニングを受けてこなかった者にとっては,論理的思考を行うこと自体,大きな心理的負荷がかかる.
そのため,初めて研究に取り組む人のなかには,壁に直面し挫折したり,論文としてうまくまとめられなかったりして,苦慮している人もいるのではないだろうか.実は筆者自身も苦慮した一人である.研究の進め方や論文の書き方についての手引書を作成し,研究に苦慮している方の一助になればとの思いから,本書の執筆をスタートさせた.本書が少しでも皆様の研究活動の助けとなれば幸いである.
研究には直接必要がないもの,難解なものなどはコラムに収めた.読まなくても研究に支障はないが,理解を深めたり知見を広げたい場合は,一読をおすすめする.
なお本書は,医療福祉分野の一般的な量的研究の方法について述べたものであり,学問分野やジャーナルによっては,本書の内容があてはまらない場合があることに注意いただきたい.例えば心理学系や医学系では,より厳密な統計処理が求められたり,経済学系では,独特の統計処理(時系列分析など)が使われたりすることがある.またジャーナルによっては,結果のなかに方法の一部(調査研究における統計処理の方法など)が含まれたり,考察のなかに結論が含まれたりすることもある.
すでに研究指導を受けている方で,本書の記述と指導教官の指示が異なる場合は,指導教官に従っていただきたい.また,わかりやすさを第一にしたため,やや正確さを犠牲にした部分もあるが,ご容赦願いたい.
本書の刊行にあたって,南山堂編集部の原山星舟氏に大変お世話になった.ここに記して厚く御礼申し上げる.
2023年7月
三田寺裕治
目次
chapter 01 量的研究の方法と基本的プロセス
Ⅰ データの種類による研究方法の分類
Ⅱ 仮説探索的研究と仮説検証的研究
Ⅲ モデルの構築
Ⅳ 量的研究のプロセス
chapter 02 リサーチクエスチョンの検討
Ⅰ 研究の出発点
Ⅱ リサーチクエスチョンを設定する際のヒント
Ⅲ リサーチクエスチョンの構造化
Ⅳ FINER によるチェック
Ⅴ 新規性(独創性)とは何か
column 01 研究を通して身につく力とは
column 02 再現性の危機とは
chapter 03 先行研究の探索
Ⅰ 先行研究探索の必要性
Ⅱ 文献を芋づる式に探索する
Ⅲ データベースを利用した文献検索の方法
Ⅳ 代表的な文献データベース
Ⅴ 論理演算子を用いた検索
Ⅵ 論文の基本的構造の理解
Ⅶ 先行研究の整理方法
chapter 04 研究デザイン
Ⅰ 研究デザインの種類
Ⅱ 介入研究
Ⅲ 観察研究(非実験研究)
Ⅳ 交絡バイアスとは
Ⅴ 交絡因子の影響を排除する方法
Ⅵ その他のバイアス
column 03 バイアスはゼロにできるか
chapter 05 研究計画書の作成
Ⅰ 研究計画書を作成する意義
Ⅱ 研究計画書の構成
column 04 STROBE声明
chapter 06 調査票の作成
Ⅰ 質問紙調査とは
Ⅱ 質問紙調査の長所と短所
Ⅲ 質問紙調査の種類
Ⅳ 概念の操作化
Ⅴ 尺度の活用
Ⅵ 調査票の基本構成
Ⅶ 回答方法の種類
Ⅷ ワーディングと質問紙作成上の留意点
chapter 07 データ収集
Ⅰ 全数調査と標本調査
Ⅱ 標本抽出(サンプリング)とは
Ⅲ 無作為抽出法の種類
Ⅳ サンプルサイズ
column 05 サンプルサイズの算出方法
chapter 08 データの基礎集計
Ⅰ エディティング
Ⅱ コーディング
Ⅲ データの入力とデータクリーニング
Ⅳ データの種類
Ⅴ 量的データの分布の記述(記述統計)
Ⅵ 質的データの分布の記述(記述統計)
Ⅶ データの代表値
chapter 09 確率分布と推定
Ⅰ 確率分布
Ⅱ 正規分布と確率
Ⅲ 母集団と標本,推定
Ⅳ 標本誤差
Ⅴ 点推定・区間推定
Ⅵ 母平均の区間推定
Ⅶ 母分散未知のときの区間推定
Ⅷ 母比率の区間推定
column 06 正規分布における確率の求め方
column 07 国勢調査とコンピュータ
chapter 10 統計的検定
Ⅰ 統計的仮説検定の考え方と検定の手順
Ⅱ 統計的仮説検定の例(母平均の検定)
Ⅲ 第1種の過誤と第2種の過誤
Ⅳ 代表的な検定の例
chapter 11 相関と回帰
Ⅰ 相関係数
Ⅱ 回帰分析
chapter 12 分析方法の選択
Ⅰ 群間比較
Ⅱ 2変数の関連
Ⅲ 影響
column 08 統計学と機械学習の違い
chapter 13 論文の基本構成と執筆方法
Ⅰ 研究成果を公表する意義
Ⅱ 学術論文の書き方
Ⅲ 引用義務と引用の方法
column 09 質の高い研究を行ううえで必要なスキルとは
付録 標準正規分布表
索引
Ⅰ データの種類による研究方法の分類
Ⅱ 仮説探索的研究と仮説検証的研究
Ⅲ モデルの構築
Ⅳ 量的研究のプロセス
chapter 02 リサーチクエスチョンの検討
Ⅰ 研究の出発点
Ⅱ リサーチクエスチョンを設定する際のヒント
Ⅲ リサーチクエスチョンの構造化
Ⅳ FINER によるチェック
Ⅴ 新規性(独創性)とは何か
column 01 研究を通して身につく力とは
column 02 再現性の危機とは
chapter 03 先行研究の探索
Ⅰ 先行研究探索の必要性
Ⅱ 文献を芋づる式に探索する
Ⅲ データベースを利用した文献検索の方法
Ⅳ 代表的な文献データベース
Ⅴ 論理演算子を用いた検索
Ⅵ 論文の基本的構造の理解
Ⅶ 先行研究の整理方法
chapter 04 研究デザイン
Ⅰ 研究デザインの種類
Ⅱ 介入研究
Ⅲ 観察研究(非実験研究)
Ⅳ 交絡バイアスとは
Ⅴ 交絡因子の影響を排除する方法
Ⅵ その他のバイアス
column 03 バイアスはゼロにできるか
chapter 05 研究計画書の作成
Ⅰ 研究計画書を作成する意義
Ⅱ 研究計画書の構成
column 04 STROBE声明
chapter 06 調査票の作成
Ⅰ 質問紙調査とは
Ⅱ 質問紙調査の長所と短所
Ⅲ 質問紙調査の種類
Ⅳ 概念の操作化
Ⅴ 尺度の活用
Ⅵ 調査票の基本構成
Ⅶ 回答方法の種類
Ⅷ ワーディングと質問紙作成上の留意点
chapter 07 データ収集
Ⅰ 全数調査と標本調査
Ⅱ 標本抽出(サンプリング)とは
Ⅲ 無作為抽出法の種類
Ⅳ サンプルサイズ
column 05 サンプルサイズの算出方法
chapter 08 データの基礎集計
Ⅰ エディティング
Ⅱ コーディング
Ⅲ データの入力とデータクリーニング
Ⅳ データの種類
Ⅴ 量的データの分布の記述(記述統計)
Ⅵ 質的データの分布の記述(記述統計)
Ⅶ データの代表値
chapter 09 確率分布と推定
Ⅰ 確率分布
Ⅱ 正規分布と確率
Ⅲ 母集団と標本,推定
Ⅳ 標本誤差
Ⅴ 点推定・区間推定
Ⅵ 母平均の区間推定
Ⅶ 母分散未知のときの区間推定
Ⅷ 母比率の区間推定
column 06 正規分布における確率の求め方
column 07 国勢調査とコンピュータ
chapter 10 統計的検定
Ⅰ 統計的仮説検定の考え方と検定の手順
Ⅱ 統計的仮説検定の例(母平均の検定)
Ⅲ 第1種の過誤と第2種の過誤
Ⅳ 代表的な検定の例
chapter 11 相関と回帰
Ⅰ 相関係数
Ⅱ 回帰分析
chapter 12 分析方法の選択
Ⅰ 群間比較
Ⅱ 2変数の関連
Ⅲ 影響
column 08 統計学と機械学習の違い
chapter 13 論文の基本構成と執筆方法
Ⅰ 研究成果を公表する意義
Ⅱ 学術論文の書き方
Ⅲ 引用義務と引用の方法
column 09 質の高い研究を行ううえで必要なスキルとは
付録 標準正規分布表
索引