保健統計・疫学
改訂7版
元国立公衆衛生院 部長 福富和夫 著
藤田医科大学 名誉教授 橋本修二 著
定価
2,640円(本体 2,400円 +税10%)
- A5判 228頁
- 2023年8月 発行
- ISBN 978-4-525-05337-6
保健統計と疫学のスタンダードテキスト
保健統計と疫学の基礎を, 実例から効果的に学習できる教科書.
改訂7版では「感染症疫学」の項を新設, また, 保健統計手法の現状に合わせて内容を全面的に見直し, 統計データの更新も行った.
予備知識として役立つコラムも充実, 今回の改訂では「新型コロナウイルス感染症と疫学デザイン」を加えた.
- 序文
- 目次
序文
人にはいろいろな個人差がある.ある地区に居住する集団を考えてみよう.そこには様々な年齢の男女が生活し,体格,体力も一人ひとり違う.世帯の生活様式,生活水準も異なる.保健統計学と疫学はこのような集団を対象に健康の課題を取り上げ,絡み合った要因を解きほぐして健康水準を高める対策を探ることを目的としている.ヘルスサイエンスに係わる者にとって,その方法と課題を学ぶことはとくに大切といえる.
本書は,保健統計学と疫学の基礎を解説した教科書である.4部から構成され,第Ⅰ部の「保健統計とその見方」では各種の保健統計の概要,統計を読む際の諸注意,保健指標の性格と意味,既存統計資料の簡単な解析法(とくに図表現)を説明している.第Ⅱ部の「データ収集と記述的解析」では,統計調査法と調査票作成,質的データのクロス集計ならびに数量データの記述的解析のねらいと技法についての習得を目指している.第Ⅲ部の「統計的推論」では確率や理論分布の基礎,区間推定ならびに仮説検定の概念の理解に重点を置くとともに,保健統計学と疫学の分野で適用頻度の高いSMRの検定,生存時間分析などの実際的技法を取り上げている.第Ⅳ部の「疫学的方法」では疫学の基本概念や用語の解説,疫学独特のデータ収集法や解析法を解説している.本書では感染症,生活習慣病,環境汚染による疾患などの各論には触れないが,重要な実例はできるだけ取り上げるよう考慮している.
保健統計学と疫学は実際問題を解決する応用科学で,意味のある解釈を試みることが基本的である.本書もできる限り実際のデータを素材に,方法と一体化させて解釈するように心掛けている.以下の点を考慮されると一層効果的に学習できよう.
1.本書は4部で構成されているが,各部独立して学習できるように工夫しており,必要に応じて参照すべき頁を(→○○頁)で示している.
2.指標の計算や図表作成のために練習用データを巻末に載せてあるが,さらに,「国民衛生の動向」(厚生労働統計協会発行)などの最新の統計資料を利用することを薦めたい.
3.文中,主要な技術用語を太字で示し,定義,意味について簡潔に説明してある.索引を引き保健統計学と疫学の用語集として活用することができる.外国語の索引には略語のフルスペリングも示している.
4.計算練習,図表作成は,技術の習得のみならず,指標や特性値の性格を理解する上で大切であり,できるだけ演習を行うことを薦める.
改訂にあたっては,学問の進歩,社会の動向,教育の課題への対応に心がけ,ヘルスサイエンスに係わる教育課程モデルコアカリキュラムや国家試験の出題基準に配慮している.2019年末より,新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し,流行状況や予防対策に注目が集まっている.今回の主な改訂としては,第Ⅳ部に「感染症疫学」の節と「新型コロナウイルス感染症と疫学研究デザイン」のコラムを新たに加えた.また,データベースの構築と利用の拡大が進んでおり,保健統計への利用も例外ではない.保健統計の変更状況に合わせるとともに,全般的に統計データを更新した.
本書の刊行にあたって終始お世話頂いた南山堂関係者の皆様に厚く御礼申し上げる.
本書は1990年に「保健統計」として刊行し,1995年には疫学方法論の内容を加え,「保健統計・疫学」と書名を改めた.構想から細部に至るまで,福富和夫先生と私が議論しながら作り上げてきた.4版企画後まもなく福富先生が逝去された.その後の改訂より,私が編集を担当したが,福富先生の意思を受け継ぎ,保健統計学と疫学の基礎を実例で学べる教科書として育てていきたい.
最後に,福富先生のご冥福を心よりお祈り申し上げる.
2023年6月
橋本修二
本書は,保健統計学と疫学の基礎を解説した教科書である.4部から構成され,第Ⅰ部の「保健統計とその見方」では各種の保健統計の概要,統計を読む際の諸注意,保健指標の性格と意味,既存統計資料の簡単な解析法(とくに図表現)を説明している.第Ⅱ部の「データ収集と記述的解析」では,統計調査法と調査票作成,質的データのクロス集計ならびに数量データの記述的解析のねらいと技法についての習得を目指している.第Ⅲ部の「統計的推論」では確率や理論分布の基礎,区間推定ならびに仮説検定の概念の理解に重点を置くとともに,保健統計学と疫学の分野で適用頻度の高いSMRの検定,生存時間分析などの実際的技法を取り上げている.第Ⅳ部の「疫学的方法」では疫学の基本概念や用語の解説,疫学独特のデータ収集法や解析法を解説している.本書では感染症,生活習慣病,環境汚染による疾患などの各論には触れないが,重要な実例はできるだけ取り上げるよう考慮している.
保健統計学と疫学は実際問題を解決する応用科学で,意味のある解釈を試みることが基本的である.本書もできる限り実際のデータを素材に,方法と一体化させて解釈するように心掛けている.以下の点を考慮されると一層効果的に学習できよう.
1.本書は4部で構成されているが,各部独立して学習できるように工夫しており,必要に応じて参照すべき頁を(→○○頁)で示している.
2.指標の計算や図表作成のために練習用データを巻末に載せてあるが,さらに,「国民衛生の動向」(厚生労働統計協会発行)などの最新の統計資料を利用することを薦めたい.
3.文中,主要な技術用語を太字で示し,定義,意味について簡潔に説明してある.索引を引き保健統計学と疫学の用語集として活用することができる.外国語の索引には略語のフルスペリングも示している.
4.計算練習,図表作成は,技術の習得のみならず,指標や特性値の性格を理解する上で大切であり,できるだけ演習を行うことを薦める.
改訂にあたっては,学問の進歩,社会の動向,教育の課題への対応に心がけ,ヘルスサイエンスに係わる教育課程モデルコアカリキュラムや国家試験の出題基準に配慮している.2019年末より,新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し,流行状況や予防対策に注目が集まっている.今回の主な改訂としては,第Ⅳ部に「感染症疫学」の節と「新型コロナウイルス感染症と疫学研究デザイン」のコラムを新たに加えた.また,データベースの構築と利用の拡大が進んでおり,保健統計への利用も例外ではない.保健統計の変更状況に合わせるとともに,全般的に統計データを更新した.
本書の刊行にあたって終始お世話頂いた南山堂関係者の皆様に厚く御礼申し上げる.
本書は1990年に「保健統計」として刊行し,1995年には疫学方法論の内容を加え,「保健統計・疫学」と書名を改めた.構想から細部に至るまで,福富和夫先生と私が議論しながら作り上げてきた.4版企画後まもなく福富先生が逝去された.その後の改訂より,私が編集を担当したが,福富先生の意思を受け継ぎ,保健統計学と疫学の基礎を実例で学べる教科書として育てていきたい.
最後に,福富先生のご冥福を心よりお祈り申し上げる.
2023年6月
橋本修二
目次
第Ⅰ部 保健統計とその見方
統計資料の見方
人口動態統計
感染症発生動向調査
国勢調査
患者調査
国民生活基礎調査
傷病量の概念
統計分類
統計の誤差と偏り
学校保健統計調査
国民健康・栄養調査
レセプトと医療統計
介護関連統計
保健指標
傷病量の表現
指標の標準化
生命表
年次推移の観察
季節変動の観察
平滑化
コホート観察
パネル調査とレコードリンケージ
将来予測
出生力指標
統計的法則
評価指標
第Ⅱ部 データ収集と記述的解析
データとは
データの種類と尺度
統計調査の計画と実施
調査票の作成
実査の方法
統計調査と事例調査
単純集計とクロス集計
度数分布表
ヒストグラム
代表値
散布度
パーセント点
箱ひげ図
平均と標準偏差の計算
散布図と相関係数
関連性の解析
第Ⅲ部 統計的推論
事象と確率
確率分布
乱数による実験
期待値
正規分布表
正規確率紙
推定
仮説検定
分割表の検定
数量データの解析
順序データの解析
多群の比較
生存時間データの解析
ポアソン分布に従うデータの解析
回帰分析
第Ⅳ部 疫学的方法
疫学とは
疾病罹患の要素
疫学研究とデータの変動因
記述疫学
分析疫学
介入研究
リスクとその比較
偏り(バイアス),交絡,誤分類
交絡の調整
反事実モデル
スクリーニング
感染症疫学
臨床疫学
量反応関係
因果関係
疾病対策と評価
付表
1.保健統計一覧
2.国際疾病分類(ICD)
3.感染症の分類
4.職業・産業大分類,世帯の種類の分類
5.保健指標一覧
6.統計図表のまとめ
7.正規分布表(上側確率)
8.t分布のパーセント点
9.乱数表
10.計算練習用データ(1)―出生時体重
11.計算練習用データ(2)―健康診断データ
付図
1.県境白地図
2.片対数方眼紙
3.正規確率紙
統計資料の見方
人口動態統計
感染症発生動向調査
国勢調査
患者調査
国民生活基礎調査
傷病量の概念
統計分類
統計の誤差と偏り
学校保健統計調査
国民健康・栄養調査
レセプトと医療統計
介護関連統計
保健指標
傷病量の表現
指標の標準化
生命表
年次推移の観察
季節変動の観察
平滑化
コホート観察
パネル調査とレコードリンケージ
将来予測
出生力指標
統計的法則
評価指標
第Ⅱ部 データ収集と記述的解析
データとは
データの種類と尺度
統計調査の計画と実施
調査票の作成
実査の方法
統計調査と事例調査
単純集計とクロス集計
度数分布表
ヒストグラム
代表値
散布度
パーセント点
箱ひげ図
平均と標準偏差の計算
散布図と相関係数
関連性の解析
第Ⅲ部 統計的推論
事象と確率
確率分布
乱数による実験
期待値
正規分布表
正規確率紙
推定
仮説検定
分割表の検定
数量データの解析
順序データの解析
多群の比較
生存時間データの解析
ポアソン分布に従うデータの解析
回帰分析
第Ⅳ部 疫学的方法
疫学とは
疾病罹患の要素
疫学研究とデータの変動因
記述疫学
分析疫学
介入研究
リスクとその比較
偏り(バイアス),交絡,誤分類
交絡の調整
反事実モデル
スクリーニング
感染症疫学
臨床疫学
量反応関係
因果関係
疾病対策と評価
付表
1.保健統計一覧
2.国際疾病分類(ICD)
3.感染症の分類
4.職業・産業大分類,世帯の種類の分類
5.保健指標一覧
6.統計図表のまとめ
7.正規分布表(上側確率)
8.t分布のパーセント点
9.乱数表
10.計算練習用データ(1)―出生時体重
11.計算練習用データ(2)―健康診断データ
付図
1.県境白地図
2.片対数方眼紙
3.正規確率紙