戸田新細菌学
改訂34版
九州大学大学院 教授 吉田眞一 編集
九州大学大学院 教授 柳 雄介 編集
九州大学生体防御医学研究所 教授 吉開泰信 編集
定価
17,600円(本体 16,000円 +税10%)
- 四六倍判 1104頁
- 2013年8月 発行
- ISBN 978-4-525-16114-9
本書は病原微生物について広く解説したテキストである.細菌,ウイルス,真菌,原虫の生活環,性状,感染症などはもちろん,感染免疫や微生物の培養法といった周辺領域も詳しい.改訂34版では,図を多色で表現することで,理解を深めやすくしている.医学,薬学,歯学領域の学生だけでなく,研究者,感染症にかかわる専門の方にもお勧めする.
- 序文
- 目次
序文
現代医学においては,抗菌薬やワクチンといった微生物に対抗する手段が発達したため,感染症は恐ろしいという認識が薄れつつありました.しかし近年,トリインフルエンザウイルス,コロナウイルスなどの新型病原体の出現とその流行が地球レベルで起こっています.国内ではSFTS(重症熱性血小板減少症候群)による死者が報告され,また腸管出血性大腸菌による感染症はヨーロッパや日本で大規模な集団感染が発生し,病原体蔓延の深刻さを身近なものとして実感せざるを得なくなってきました.戸田新細菌学(改訂34版)が発行される2013年も,トリインフルエンザウイルスH7N9のパンデミー(世界的流行)が危惧されています.ではなぜ,新しい病原体が出現し,克服は難しいのでしょうか.
これにはさまざまな要因が挙げられますが,ひとつには微生物自体が生き物として種を保存し,生命を維持する機構がはたらいていることがあります.たとえば,腸管出血性大腸菌はストレスの多い環境中やウシの腸管で生き続け,ヒトに感染するとやがて自らの生きやすい環境を整え毒素を産生します.インフルエンザウイルスでは,トリのウイルスに突然変異や遺伝子組換えが起こりヒトに感染できるようになります.さらには,渡り鳥や国外からの積み荷などによって病原体が運びこまれることに象徴されるように,病原体にとって国境はなく,感染症は本質的にグローバルです.ですから,対策も国を越えて地球レベルで行われなくてはなりません.同時に,ローカルな視点でみると,病原体の蔓延は,目にはみえませんが身の周りで進行しています.こういったことから教えられることは,微生物の生活サイクルを十分に理解していないと,感染症を防ぐという微生物学を学ぶ最終目標の実現は難しいということです.
戸田新細菌学では「医学」のための微生物学という観点から,主にヒトに感染症を起こす病原微生物を取り扱っています.とくに病原微生物の形態,生理,生化学のほか,感染症を引き起こすメカニズム,微生物の生態,感染源や感染経路,感染症の診断,治療,予防を解説しているほか,さらに感染防御機構として進化した免疫について概説しています.これらのいずれの事項も,遺伝子やタンパク質など分子レベル,細胞レベル,個体レベル(感染個体の症状や生死が問題となる),社会レベル(感染対策)について,ミクロからマクロまでを含めて総合的にまとめています.
『戸田新細菌学』は1939年に戸田忠雄教授(当時は九州帝国大学)の単著による微生物学の教科書として出版されました.初版からその内容は細菌のみならず,ウイルス(濾過性病原体と呼ばれていた),真菌,原虫,免疫を含むものでした.以後,新しい研究成果を加えつつ微生物学の教科書として70年以上の間,医学生をはじめ,大学院生,研究者,検査技師,衛生行政に携わる方々に活用されてきました.そしてこれからは,感染制御専門薬剤師・認定臨床微生物検査技師・感染管理認定看護師など,各分野の感染症エキスパートを目指す人にも有益でしょう.本書は数年毎の大幅な改訂を行い,改訂の都度,世界の微生物学の急速な進歩に対応して内容を更新してきました.改訂34版が微生物とその感染症の学習,研究,教育,行政のためにお役に立てば編者,執筆者の喜びとするところです.
2013年5月 編者記す
これにはさまざまな要因が挙げられますが,ひとつには微生物自体が生き物として種を保存し,生命を維持する機構がはたらいていることがあります.たとえば,腸管出血性大腸菌はストレスの多い環境中やウシの腸管で生き続け,ヒトに感染するとやがて自らの生きやすい環境を整え毒素を産生します.インフルエンザウイルスでは,トリのウイルスに突然変異や遺伝子組換えが起こりヒトに感染できるようになります.さらには,渡り鳥や国外からの積み荷などによって病原体が運びこまれることに象徴されるように,病原体にとって国境はなく,感染症は本質的にグローバルです.ですから,対策も国を越えて地球レベルで行われなくてはなりません.同時に,ローカルな視点でみると,病原体の蔓延は,目にはみえませんが身の周りで進行しています.こういったことから教えられることは,微生物の生活サイクルを十分に理解していないと,感染症を防ぐという微生物学を学ぶ最終目標の実現は難しいということです.
戸田新細菌学では「医学」のための微生物学という観点から,主にヒトに感染症を起こす病原微生物を取り扱っています.とくに病原微生物の形態,生理,生化学のほか,感染症を引き起こすメカニズム,微生物の生態,感染源や感染経路,感染症の診断,治療,予防を解説しているほか,さらに感染防御機構として進化した免疫について概説しています.これらのいずれの事項も,遺伝子やタンパク質など分子レベル,細胞レベル,個体レベル(感染個体の症状や生死が問題となる),社会レベル(感染対策)について,ミクロからマクロまでを含めて総合的にまとめています.
『戸田新細菌学』は1939年に戸田忠雄教授(当時は九州帝国大学)の単著による微生物学の教科書として出版されました.初版からその内容は細菌のみならず,ウイルス(濾過性病原体と呼ばれていた),真菌,原虫,免疫を含むものでした.以後,新しい研究成果を加えつつ微生物学の教科書として70年以上の間,医学生をはじめ,大学院生,研究者,検査技師,衛生行政に携わる方々に活用されてきました.そしてこれからは,感染制御専門薬剤師・認定臨床微生物検査技師・感染管理認定看護師など,各分野の感染症エキスパートを目指す人にも有益でしょう.本書は数年毎の大幅な改訂を行い,改訂の都度,世界の微生物学の急速な進歩に対応して内容を更新してきました.改訂34版が微生物とその感染症の学習,研究,教育,行政のためにお役に立てば編者,執筆者の喜びとするところです.
2013年5月 編者記す
目次
I.微生物学と感染症
1.微生物学の対象と目的
2.微生物学の歴史
3.感染症の現状と対策
II.細菌学 総論
1.細菌の分類
2.細菌の構造
3.細菌の生理と生化学
4.バクテリオファージとバクテリオシン
5.細菌の遺伝
6.滅菌と消毒
7.化学療法
8.環境と微生物
9.食品の腐敗と食中毒
10.常在微生物叢
11.細菌感染の機構
III.細菌学 各論
1.ブドウ球菌とその関連球菌
2.レンサ球菌
3.淋菌・髄膜炎菌とナイセリア属の細菌
4.緑膿菌とブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌
5.レジオネラとコクシエラ
6.ブルセラ,フランシセラとバルトネラ
7.百日咳菌とボルデテラ属
8.ヘモフィラスとパスツレラ
9.カンピロバクター属,ヘリコバクター属とその他の類縁細菌
10.腸内細菌科の細菌
11.ビブリオ属とエロモナス属の細菌
12.炭疽菌とバシラス属の細菌
13.ラクトバシラス(乳酸菌)
14.リステリアとブタ丹毒菌
15.偏性嫌気性菌
16.ジフテリア菌とコリネバクテリウム属
17.結核菌と抗酸菌(マイコバクテリア)
18.アクチノマイセス,ノカルジア
19.スピロヘータ
20.マイコプラズマ
21.リケッチア
22.クラミジア
IV.ウイルス学 総論
1.ウイルスとは何か
2.ウイルスの構造と分類
3.ウイルスの増殖
4.ウイルス感染の機構
5.ウイルスに対する宿主の防御機構
6.ウイルスによる発癌
7.化学療法・免疫療法
8.ウイルスの進化
V.ウイルス学 各論
1.ポックスウイルス科
2.ヘルペスウイルス科
3.アデノウイルス科
4.パピローマウイルス科とポリオーマウイルス科
5.パルボウイルス科
6.ピコルナウイルス科
7.カリシウイルス科およびアストロウイルス科
8.コロナウイルス科
9.トガウイルス科
10.フラビウイルス科
11.オルトミクソウイルス科
12.パラミクソウイルス科
13.ラブドウイルス科,フィロウイルス科およびボルナウイルス科
14.アレナウイルス科およびブニヤウイルス科
15.レオウイルス科
16.レトロウイルス科
17.肝炎ウイルス
付.伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体
VI.真菌学 総論
VII.真菌学 各論
1.深在性真菌症の原因菌
2.皮下真菌症の原因菌
3.表在性真菌症の原因菌
4.その他の真菌症とその原因菌
VIII.原虫学
IX.免疫学 総論
X.免疫学 各論
1.自然免疫
2.サイトカインと受容体,シグナル伝達
3.獲得免疫
4.感染防御とエスケープ機構
5.免疫異常
6.腫瘍免疫,移植免疫
7.感染防御のための免疫応答の操作 ―ワクチン
XI.病院内感染とバイオハザード対策
1.病原微生物の取り扱いと安全
2.微生物株,細胞などの保存と輸送
3.病院内感染とその制御
XII.微生物学で用いる手技・手法
1.形態学的検査法
2.細菌学的検査法
3.ウイルス学的検査法
4.真菌学的検査法
5.細胞の培養
6.発育鶏卵実験法
7.動物実験法
8.その他の手技・手法
1.微生物学の対象と目的
2.微生物学の歴史
3.感染症の現状と対策
II.細菌学 総論
1.細菌の分類
2.細菌の構造
3.細菌の生理と生化学
4.バクテリオファージとバクテリオシン
5.細菌の遺伝
6.滅菌と消毒
7.化学療法
8.環境と微生物
9.食品の腐敗と食中毒
10.常在微生物叢
11.細菌感染の機構
III.細菌学 各論
1.ブドウ球菌とその関連球菌
2.レンサ球菌
3.淋菌・髄膜炎菌とナイセリア属の細菌
4.緑膿菌とブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌
5.レジオネラとコクシエラ
6.ブルセラ,フランシセラとバルトネラ
7.百日咳菌とボルデテラ属
8.ヘモフィラスとパスツレラ
9.カンピロバクター属,ヘリコバクター属とその他の類縁細菌
10.腸内細菌科の細菌
11.ビブリオ属とエロモナス属の細菌
12.炭疽菌とバシラス属の細菌
13.ラクトバシラス(乳酸菌)
14.リステリアとブタ丹毒菌
15.偏性嫌気性菌
16.ジフテリア菌とコリネバクテリウム属
17.結核菌と抗酸菌(マイコバクテリア)
18.アクチノマイセス,ノカルジア
19.スピロヘータ
20.マイコプラズマ
21.リケッチア
22.クラミジア
IV.ウイルス学 総論
1.ウイルスとは何か
2.ウイルスの構造と分類
3.ウイルスの増殖
4.ウイルス感染の機構
5.ウイルスに対する宿主の防御機構
6.ウイルスによる発癌
7.化学療法・免疫療法
8.ウイルスの進化
V.ウイルス学 各論
1.ポックスウイルス科
2.ヘルペスウイルス科
3.アデノウイルス科
4.パピローマウイルス科とポリオーマウイルス科
5.パルボウイルス科
6.ピコルナウイルス科
7.カリシウイルス科およびアストロウイルス科
8.コロナウイルス科
9.トガウイルス科
10.フラビウイルス科
11.オルトミクソウイルス科
12.パラミクソウイルス科
13.ラブドウイルス科,フィロウイルス科およびボルナウイルス科
14.アレナウイルス科およびブニヤウイルス科
15.レオウイルス科
16.レトロウイルス科
17.肝炎ウイルス
付.伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体
VI.真菌学 総論
VII.真菌学 各論
1.深在性真菌症の原因菌
2.皮下真菌症の原因菌
3.表在性真菌症の原因菌
4.その他の真菌症とその原因菌
VIII.原虫学
IX.免疫学 総論
X.免疫学 各論
1.自然免疫
2.サイトカインと受容体,シグナル伝達
3.獲得免疫
4.感染防御とエスケープ機構
5.免疫異常
6.腫瘍免疫,移植免疫
7.感染防御のための免疫応答の操作 ―ワクチン
XI.病院内感染とバイオハザード対策
1.病原微生物の取り扱いと安全
2.微生物株,細胞などの保存と輸送
3.病院内感染とその制御
XII.微生物学で用いる手技・手法
1.形態学的検査法
2.細菌学的検査法
3.ウイルス学的検査法
4.真菌学的検査法
5.細胞の培養
6.発育鶏卵実験法
7.動物実験法
8.その他の手技・手法