カテゴリー: 衛生・公衆衛生学
国際保健医療のキャリアナビ
1版
日本国際保健医療学会 編集
定価
2,970円(本体 2,700円 +税10%)
- 四六倍判 208頁
- 2016年12月 発行
- ISBN 978-4-525-18301-1
国際保健医療への扉が開く!
国際保健医療の仕事をめざす学生・社会人向けのキャリアガイド.30人のキャリアパスの実例を紹介した上で,仕事に就くための学び方や働き方を詳説.さらに,学生の質問に編集委員が答える座談会も掲載した.大学院等への進学や留学,インターンシップや履歴書の書き方等,役立つ情報が満載の本書は,国際保健医療の世界へ飛び立つための必携書.
- 序文
- 目次
序文
国際保健医療に憧れて滑走路でたたずむ
テレビや新聞などで難民や飢餓のことを見聞きしたことがきっかけとなり,あるいは,外国人の学生と友達になったり,自分自身で開発途上国を旅したりして,国際保健医療に関心をもつ人々が増えている.格安航空会社(LCC)を使えば安価な海外旅行も可能となり,多言語によるインターネットを使えば現地のディープな情報が入手でき,一度知り合った海外の友人とはその後もLINEやFacebookでつながっていられる.
従来に比較して海外との交流が非常に容易になった反面,実際に国際保健医療の仕事を目指して一歩踏み出そうとすると,なかなかうまくいかない.
将来の仕事として,国際保健医療に携わるためには,何を勉強すればよいのだろうか? アジア,アフリカ,中南米,大洋州などの地で,私にも何かできることがないだろうか? 大学生のときは将来働きたいと思う国々にバックパッカーとして旅行したが,就職先はどう選べばよいのだろうか? 将来は国際機関で働きたいが,臨床医療の研修は必要なのだろうか?
大学に入る以前から開発途上国で働きたいと思いつつ,なかなか“国際保健医療の仕事”にたどりつけない.卒業後の進路は靄と霞の中で,将来設計も見いだせないままに,先輩たちが飛び立っていくのを滑走路でたたずみ眺めている若き学徒たち.国際保健医療のキャリアパスは一直線ではないと理解していても,臨床医や看護師として着々と経験を積み重ねていく同輩を見ていると,焦る気持ちは抑えられない.国際保健医療を目指すためにはどの学問の扉をたたけばよいのか,戸惑っている社会科学系の学生も少なくない.
国際保健医療には,さまざまな現場がある.WHO(世界保健機関)などの国際機関の本部,先進国の大学や研究所,先進国のNGO/NPO本部やコンサルタント会社などでは,冷房の効いたオフィスでコンピュータを使って仕事し,国際会議で英語を駆使して討議する日々が続く.国際機関や政府機関の事務所の多くは開発途上国の首都にあるが,プロジェクト事務所となると相手国政府の保健省や公立病院の建物の一角にある.ときには雨風が吹き込んできたり,停電したり,会議はいつも1時間遅れで始まったり,相手国のペースでしか仕事が進まない.青年海外協力隊や民家を間借りした事務所で働くNGOスタッフは,人々の暮らしの中で仕事をさせてもらっているというのが実感である.現地の言葉を使い,みんなと同じ食事をとる中で,多くの人と友達になり,現地の様子がわかりかけ,少しずつ仕事がはかどっていくことになる.
これだけ多様な国際保健の仕事場なので,当然のことながら,求められる職種もさまざまである.医師,看護師,助産師,保健師,薬剤師,診療放射線技師,臨床検査技師,栄養士,理学療法士,作業療法士といった日本での保健医療専門職だけでなく,公衆衛生学修士の需要も多い.また,保健医療プロジェクトでは,コミュニケーション,マーケティング,視聴覚教材などの専門職や医療経済学,病院管理学,社会学,人類学,教育学など他分野の専門家に参加してもらうことも少なくない.
国際保健医療という学問分野が新しいからキャリアパスの進路が確立されていないのではなく,多様性に富んだ仕事内容に多職種の方々が参画することになるので,当然のことながら,国際保健医療の仕事に就く道筋が1人ひとり異なることになる.
本書では,国際保健医療の分野で活躍されている方々に,ご自分のキャリアパスを書いていただいた.いろいろなバックグラウンドをおもちの方々の波乱万丈なキャリアパスだけでなく,国際保健医療に関心をもつ動機や仕事を得るきっかけも多種多様であった.キャリア形成は山登りに似ているといわれる.頂上に登るという目的は同じだけれど,それに至る道は無数にある.山頂もさまざまであるので,国際保健医療は連峰登山をイメージするとよいかもしれない.目指す山頂もさまざま,途中の道もいろいろ,どの登山口から入るのか,アプローチの時期も方法も人それぞれ.じっくりと読んでいただき,国際保健医療に携わる方々の多様性に富んだ人生模様の醍醐味を味わっていただけるとうれしい(一部抜粋).
2016年9月
日本国際保健医療学会 理事長
大阪大学大学院人間科学研究科 教授
中村安秀
テレビや新聞などで難民や飢餓のことを見聞きしたことがきっかけとなり,あるいは,外国人の学生と友達になったり,自分自身で開発途上国を旅したりして,国際保健医療に関心をもつ人々が増えている.格安航空会社(LCC)を使えば安価な海外旅行も可能となり,多言語によるインターネットを使えば現地のディープな情報が入手でき,一度知り合った海外の友人とはその後もLINEやFacebookでつながっていられる.
従来に比較して海外との交流が非常に容易になった反面,実際に国際保健医療の仕事を目指して一歩踏み出そうとすると,なかなかうまくいかない.
将来の仕事として,国際保健医療に携わるためには,何を勉強すればよいのだろうか? アジア,アフリカ,中南米,大洋州などの地で,私にも何かできることがないだろうか? 大学生のときは将来働きたいと思う国々にバックパッカーとして旅行したが,就職先はどう選べばよいのだろうか? 将来は国際機関で働きたいが,臨床医療の研修は必要なのだろうか?
大学に入る以前から開発途上国で働きたいと思いつつ,なかなか“国際保健医療の仕事”にたどりつけない.卒業後の進路は靄と霞の中で,将来設計も見いだせないままに,先輩たちが飛び立っていくのを滑走路でたたずみ眺めている若き学徒たち.国際保健医療のキャリアパスは一直線ではないと理解していても,臨床医や看護師として着々と経験を積み重ねていく同輩を見ていると,焦る気持ちは抑えられない.国際保健医療を目指すためにはどの学問の扉をたたけばよいのか,戸惑っている社会科学系の学生も少なくない.
国際保健医療には,さまざまな現場がある.WHO(世界保健機関)などの国際機関の本部,先進国の大学や研究所,先進国のNGO/NPO本部やコンサルタント会社などでは,冷房の効いたオフィスでコンピュータを使って仕事し,国際会議で英語を駆使して討議する日々が続く.国際機関や政府機関の事務所の多くは開発途上国の首都にあるが,プロジェクト事務所となると相手国政府の保健省や公立病院の建物の一角にある.ときには雨風が吹き込んできたり,停電したり,会議はいつも1時間遅れで始まったり,相手国のペースでしか仕事が進まない.青年海外協力隊や民家を間借りした事務所で働くNGOスタッフは,人々の暮らしの中で仕事をさせてもらっているというのが実感である.現地の言葉を使い,みんなと同じ食事をとる中で,多くの人と友達になり,現地の様子がわかりかけ,少しずつ仕事がはかどっていくことになる.
これだけ多様な国際保健の仕事場なので,当然のことながら,求められる職種もさまざまである.医師,看護師,助産師,保健師,薬剤師,診療放射線技師,臨床検査技師,栄養士,理学療法士,作業療法士といった日本での保健医療専門職だけでなく,公衆衛生学修士の需要も多い.また,保健医療プロジェクトでは,コミュニケーション,マーケティング,視聴覚教材などの専門職や医療経済学,病院管理学,社会学,人類学,教育学など他分野の専門家に参加してもらうことも少なくない.
国際保健医療という学問分野が新しいからキャリアパスの進路が確立されていないのではなく,多様性に富んだ仕事内容に多職種の方々が参画することになるので,当然のことながら,国際保健医療の仕事に就く道筋が1人ひとり異なることになる.
本書では,国際保健医療の分野で活躍されている方々に,ご自分のキャリアパスを書いていただいた.いろいろなバックグラウンドをおもちの方々の波乱万丈なキャリアパスだけでなく,国際保健医療に関心をもつ動機や仕事を得るきっかけも多種多様であった.キャリア形成は山登りに似ているといわれる.頂上に登るという目的は同じだけれど,それに至る道は無数にある.山頂もさまざまであるので,国際保健医療は連峰登山をイメージするとよいかもしれない.目指す山頂もさまざま,途中の道もいろいろ,どの登山口から入るのか,アプローチの時期も方法も人それぞれ.じっくりと読んでいただき,国際保健医療に携わる方々の多様性に富んだ人生模様の醍醐味を味わっていただけるとうれしい(一部抜粋).
2016年9月
日本国際保健医療学会 理事長
大阪大学大学院人間科学研究科 教授
中村安秀
目次
1章 私のキャリアパス
〈医学系×国際機関〉
さまざまな出会いでつながった国際保健のキャリアパス(遠藤弘良)
大好きな産業保健の仕事を日本と世界で自由に続ける(川上 剛)
〈医学系×JICA〉
アフリカからグローバルへ ―命を大切にする社会の創造―(杉下智彦)
〈医学系×中央省庁〉
行政官としての国際保健への関わり(田中 剛)
〈医学系×NGO〉
「最も弱い人たちのために働く」ということ(加藤寛幸)
〈医学系×大学・研究機関〉
国際保健の現場経験から公衆衛生教育者へ(髙橋謙造)
〈医学系×病院・地域医療〉
学びと貢献の機会を与えてくれた地域医療と国際保健(高木史江)
日本の地域課題は世界の課題 ―日本の経験を世界で生かすために―(長嶺由衣子)
〈看護系×国際機関〉
原点を指針にキャリアを切り開く ―助産師からUNICEF職員へ―(吉田友希子)
〈看護系×JICA〉
自分の関心とできることを考えて国際保健医療の道へ(平岡久和)
〈看護系×中央省庁〉
小児科ナースから国際保健医療の道へ(當山紀子)
〈看護系×NGO〉
「健康の公平性」の実現へ ―国際保健NGOへ託す思い―(八鳥知子)
〈看護系×大学・研究機関〉
助産師がミャンマーでライフワークを見いだすプロセス(小黒道子)
回り道にもよさはある 遠回りの国際保健への道(西原三佳)
〈看護系×在日外国人保健医療〉
世界中のすべての人に健康を(李 祥任)
〈文系×国際機関〉
モンゴルの草原で芽吹いたグローバルヘルスへの道(竹内百重)
〈文系×JICA〉
世界の健康格差是正のために ―JICAでのキャリアパス―(瀧澤郁雄)
〈文系×中央省庁〉
国際保健を学び外交の世界へ(稲岡恵美)
〈文系×NGO〉
高校留学・大学で世界の旅 国際協力をNGOで実現(青木美由紀)
研究対象だったNGOが仕事場に(溝上芳恵)
〈文系×大学・研究機関〉
哲学から国際保健医療へ ―海外経験を日本の次世代に―(小川寿美子)
〈生化学×大学・研究機関〉
生化学から寄生虫学・熱帯医学,そしてグローバルヘルス(北 潔)
〈歯科×病院・地域医療〉
歯科開業医ができる国際保健医療協力(深井穫博)
〈薬学×大学・研究機関〉
薬剤師が国際保健を探求し続けたらグローバルヘルス百貨店に(奥村順子)
〈作業療法・理学療法×大学・研究機関〉
ライフワークとしてCBRの実践と研究に関わって(渡邊雅行)
〈栄養×大学・研究機関〉
すべての人に必要な食べることからアプローチする国際保健医療(水元 芳)
〈放射線科学×JICA〉
自分の知識と経験を海外に生かす ―放射線科学から国際保健へ―(大里圭一)
〈体育×大学・研究機関〉
誰にでも開いている国際保健への扉(竹原健二)
〈農学×大学・研究機関〉
国際保健ふらり旅(吉岡浩太)
〈理工学×企業〉
グローバル・ビジネスを通じた社会貢献を追求(小柴巌和)
2章 国際保健医療を学ぶ(小川寿美子)
国際保健医療協力に“王道なし”
国際保健医療の“学び方”
何をどこまで学ぶか
国際保健医療協力を目指す人にもっと学んでほしいこと──コンピテンシー
3章 国際保健医療で働く(大西真由美)
国際保健医療の仕事
多様なキャリア構築が可能
国際保健医療の実務経験をどう積むか
生活体験から得た知識や技術を現場で生かす
日本の公衆衛生・地域保健活動との協働
多職種の“強み”を生かして
4章 〈特別座談会〉国際保健医療のキャリアQ&A
(中村安秀,湯浅資之,大西真由美,小川寿美子,加藤美寿季)
巻末資料 国際保健医療に関わる各種団体(湯浅資之)
〈医学系×国際機関〉
さまざまな出会いでつながった国際保健のキャリアパス(遠藤弘良)
大好きな産業保健の仕事を日本と世界で自由に続ける(川上 剛)
〈医学系×JICA〉
アフリカからグローバルへ ―命を大切にする社会の創造―(杉下智彦)
〈医学系×中央省庁〉
行政官としての国際保健への関わり(田中 剛)
〈医学系×NGO〉
「最も弱い人たちのために働く」ということ(加藤寛幸)
〈医学系×大学・研究機関〉
国際保健の現場経験から公衆衛生教育者へ(髙橋謙造)
〈医学系×病院・地域医療〉
学びと貢献の機会を与えてくれた地域医療と国際保健(高木史江)
日本の地域課題は世界の課題 ―日本の経験を世界で生かすために―(長嶺由衣子)
〈看護系×国際機関〉
原点を指針にキャリアを切り開く ―助産師からUNICEF職員へ―(吉田友希子)
〈看護系×JICA〉
自分の関心とできることを考えて国際保健医療の道へ(平岡久和)
〈看護系×中央省庁〉
小児科ナースから国際保健医療の道へ(當山紀子)
〈看護系×NGO〉
「健康の公平性」の実現へ ―国際保健NGOへ託す思い―(八鳥知子)
〈看護系×大学・研究機関〉
助産師がミャンマーでライフワークを見いだすプロセス(小黒道子)
回り道にもよさはある 遠回りの国際保健への道(西原三佳)
〈看護系×在日外国人保健医療〉
世界中のすべての人に健康を(李 祥任)
〈文系×国際機関〉
モンゴルの草原で芽吹いたグローバルヘルスへの道(竹内百重)
〈文系×JICA〉
世界の健康格差是正のために ―JICAでのキャリアパス―(瀧澤郁雄)
〈文系×中央省庁〉
国際保健を学び外交の世界へ(稲岡恵美)
〈文系×NGO〉
高校留学・大学で世界の旅 国際協力をNGOで実現(青木美由紀)
研究対象だったNGOが仕事場に(溝上芳恵)
〈文系×大学・研究機関〉
哲学から国際保健医療へ ―海外経験を日本の次世代に―(小川寿美子)
〈生化学×大学・研究機関〉
生化学から寄生虫学・熱帯医学,そしてグローバルヘルス(北 潔)
〈歯科×病院・地域医療〉
歯科開業医ができる国際保健医療協力(深井穫博)
〈薬学×大学・研究機関〉
薬剤師が国際保健を探求し続けたらグローバルヘルス百貨店に(奥村順子)
〈作業療法・理学療法×大学・研究機関〉
ライフワークとしてCBRの実践と研究に関わって(渡邊雅行)
〈栄養×大学・研究機関〉
すべての人に必要な食べることからアプローチする国際保健医療(水元 芳)
〈放射線科学×JICA〉
自分の知識と経験を海外に生かす ―放射線科学から国際保健へ―(大里圭一)
〈体育×大学・研究機関〉
誰にでも開いている国際保健への扉(竹原健二)
〈農学×大学・研究機関〉
国際保健ふらり旅(吉岡浩太)
〈理工学×企業〉
グローバル・ビジネスを通じた社会貢献を追求(小柴巌和)
2章 国際保健医療を学ぶ(小川寿美子)
国際保健医療協力に“王道なし”
国際保健医療の“学び方”
何をどこまで学ぶか
国際保健医療協力を目指す人にもっと学んでほしいこと──コンピテンシー
3章 国際保健医療で働く(大西真由美)
国際保健医療の仕事
多様なキャリア構築が可能
国際保健医療の実務経験をどう積むか
生活体験から得た知識や技術を現場で生かす
日本の公衆衛生・地域保健活動との協働
多職種の“強み”を生かして
4章 〈特別座談会〉国際保健医療のキャリアQ&A
(中村安秀,湯浅資之,大西真由美,小川寿美子,加藤美寿季)
巻末資料 国際保健医療に関わる各種団体(湯浅資之)