アフターコロナの検疫
1版
元成田空港検疫所 所長/静岡市保健福祉長寿局 理事・保健所長
田中一成 著
定価
2,200円(本体 2,000円 +税10%)
- A5判 142頁
- 2022年7月 発行
- ISBN 978-4-525-18491-9
感染症危機管理の本質が,ここにある!
「そのとき,検疫では何が起きていたのか?」
2019年に始まった地球規模の新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクで,検疫所でのコロナウイルスとの戦いは想定外に次ぐ想定外の問題が発生し,現場は混乱を極めていた.
検疫は,感染症から日本を守る水際対策の砦である.しかし,東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴う選手や関係者の入国という難問も加わり,首都東京を守る成田空港検疫所にとっては前代未聞の問題が山積みとなっていた.
本書は,そのようなコロナ禍での東京五輪の開催に際し,成田空港検疫所で日本の感染症水際対策の中枢を担った検疫所長による,検疫業務の実際と具体的な問題解決の過程を詳細に記した書籍である.
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,検疫に関しての興味・関心は高まっているが,検疫業務の目的やその実践についての認知度はいまだ高いとは言えない.再び同様の惨禍が発生した場合に備え,コロナ禍への対応の経験から導き出された実践知を提言としてまとめた貴重な一冊である.
- 序文
- 目次
- 書評
序文
2019年の大晦日に,中国の武漢市で原因不明の肺炎が発生しているとWHO(世界保健機関)に中国政府から一報がもたらされた.
成田空港検疫所は出入国のラッシュ時期であることと,その年の夏にコンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱のPHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)がWHOから宣言されていた状況でもあることから,検疫所長として緊急事態に備えるため,年末とはいえ外出を控え,都内の自宅で待機しながら新年を迎えようとしていた矢先の出来事であった.
恐らく,この報に接した多くの国際保健や感染症対策に関わる関係者の頭を過ったのは,2002年11月に同じく中国の広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)のアウトブレイクではなかったかと思われる.
後の調査で,中国産の野生動物種(ハクビシン,タヌキ,イタチアナグマ)からSARSの原因ウイルスに類似したコロナウイルスが分離されたことから,広東省の市場で売られていた食用のハクビシンのウイルスが,市場関係者に感染を繰り返すうちにヒトからヒトへの感染能力を獲得したのではないかとも言われるようになったが,真実は定かではない.
その後,SARSは北半球のインド以東のアジアやカナダを中心に感染拡大し,2003年3月12日にWHOから「グローバルアラート」が出され,同年7月5日に終息宣言が出されるまで,32の地域と国にわたり774人の死者を含む約8,000人を超える症例が報告されるに至った.不思議なことに,終息宣言以降は姿を消し新たな患者の発生などは報告されていないが,検疫感染症に指定され,現在もなお検疫所において警戒を要する感染症の1つとなっている.
武漢市の原因不明の肺炎のその後の経緯については,本書でも触れることになるのでここでは詳細は述べないが,SARS-CoV-2を原因ウイルスとする新型コロナウイルス感染症は瞬く間に世界中に感染が拡大し,ウイルスは変異を繰り返しながら5億2千万人の患者と6百万人の死者を発生させた(2022年5月現在).たった1つの感染症が全世界で既存の社会システムを破壊していく有様は,14世紀に欧州を中心に席巻した黒死病(ペスト)の再来を想起させるに十分なものと言えよう.
この国際的なパンデミックの中,わが国においても大流行が発生するに至ったことは,感染症の水際対策の担当官であった身として痛恨の極みであるが,この感染症の持つ性質が従来の検疫のシステムをすり抜けるために進化したのではないかと思われるほどに厄介なものであったことや,感染拡大の速度に法改正を含む検疫システムの改変が追いつけなかったことは不幸としか言いようがない.
さらにわが国においては,このコロナ禍の最中となる2020年にオリンピック・パラリンピック競技大会が首都東京で開催されることになっていたことが,水際対策を含め状況を複雑化させた.首都東京を守る成田空港検疫所にとっては,新型コロナウイルス感染症の水際対策と,オリンピック・パラリンピック競技大会の選手や関係者などの入国という2つの変数を持つ連立方程式の問題を与えられたようなものとなったのである.
本書では,この間に起こったことについても述べることになるが,非公表の事実を暴露するような意図はなく,再び同様の惨禍が発生した場合に備え,今回のコロナ禍への対応の経験から行うべきことは何かを提言として残しておくことを目的としている.当然のこととして,同じ状況を経験しても立場が違えば意見が変わることはあり得るので,本書で提言する内容もこれが絶対に正しいと言い切れるものではないが,読者の方々も自分ならどうしたか,あるいはどのような提言をするのかと考えながら読み進めていただければ幸いである.
当時は,なぜこんなに待たせるのか,どうしてこんなこともできないのかと,多くのお叱りをいただいたが,できないにはできないなりの理由があったのであり,そちらの事情についても可能な限りお示ししたいと考えている.
本書の内容は,基本的に当時取材に来た多くのマスコミ関係者に説明していたものであるが,いわゆる「尺の関係」でマスコミの編集権によりカットされ,報道されなかったものが多い.また,退職後に参加したシンポジウム(第8回 日経・FT感染症会議,第59回 日本医療・病院管理学会学術総会)で発表した内容も含まれているが,著作物として出版するに当たり,守秘義務に相当する内容については触れないよう改めて十分に注意を払ったつもりである.
なお,第1章については,直接的に新型コロナウイルス感染症とは関係のない検疫の話や成田国際空港に関する情報となっている.成田空港検疫所における新型コロナウイルス感染症への対応についての理解を助けるための予備知識として書いたものなので,すでに検疫や本空港について十分な知識を持った読者におかれては,読み飛ばしていただいても構わない.
欧州の中世社会は,ペストのパンデミックにより既存の権威が失墜し,人口減少は人権という概念を発展させ近世社会へと姿を変えたが,アフターコロナがどのような時代となるのかは定かではない.しかしながら,少なくとも検疫システムについては確実にその姿を変えるし,また変わらなければならないと考えている.
その姿がどのようなものとなるか,読者の皆さんとともに見届けたいと思っている.
2022年5月
田中 一成
成田空港検疫所は出入国のラッシュ時期であることと,その年の夏にコンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱のPHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)がWHOから宣言されていた状況でもあることから,検疫所長として緊急事態に備えるため,年末とはいえ外出を控え,都内の自宅で待機しながら新年を迎えようとしていた矢先の出来事であった.
恐らく,この報に接した多くの国際保健や感染症対策に関わる関係者の頭を過ったのは,2002年11月に同じく中国の広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)のアウトブレイクではなかったかと思われる.
後の調査で,中国産の野生動物種(ハクビシン,タヌキ,イタチアナグマ)からSARSの原因ウイルスに類似したコロナウイルスが分離されたことから,広東省の市場で売られていた食用のハクビシンのウイルスが,市場関係者に感染を繰り返すうちにヒトからヒトへの感染能力を獲得したのではないかとも言われるようになったが,真実は定かではない.
その後,SARSは北半球のインド以東のアジアやカナダを中心に感染拡大し,2003年3月12日にWHOから「グローバルアラート」が出され,同年7月5日に終息宣言が出されるまで,32の地域と国にわたり774人の死者を含む約8,000人を超える症例が報告されるに至った.不思議なことに,終息宣言以降は姿を消し新たな患者の発生などは報告されていないが,検疫感染症に指定され,現在もなお検疫所において警戒を要する感染症の1つとなっている.
武漢市の原因不明の肺炎のその後の経緯については,本書でも触れることになるのでここでは詳細は述べないが,SARS-CoV-2を原因ウイルスとする新型コロナウイルス感染症は瞬く間に世界中に感染が拡大し,ウイルスは変異を繰り返しながら5億2千万人の患者と6百万人の死者を発生させた(2022年5月現在).たった1つの感染症が全世界で既存の社会システムを破壊していく有様は,14世紀に欧州を中心に席巻した黒死病(ペスト)の再来を想起させるに十分なものと言えよう.
この国際的なパンデミックの中,わが国においても大流行が発生するに至ったことは,感染症の水際対策の担当官であった身として痛恨の極みであるが,この感染症の持つ性質が従来の検疫のシステムをすり抜けるために進化したのではないかと思われるほどに厄介なものであったことや,感染拡大の速度に法改正を含む検疫システムの改変が追いつけなかったことは不幸としか言いようがない.
さらにわが国においては,このコロナ禍の最中となる2020年にオリンピック・パラリンピック競技大会が首都東京で開催されることになっていたことが,水際対策を含め状況を複雑化させた.首都東京を守る成田空港検疫所にとっては,新型コロナウイルス感染症の水際対策と,オリンピック・パラリンピック競技大会の選手や関係者などの入国という2つの変数を持つ連立方程式の問題を与えられたようなものとなったのである.
本書では,この間に起こったことについても述べることになるが,非公表の事実を暴露するような意図はなく,再び同様の惨禍が発生した場合に備え,今回のコロナ禍への対応の経験から行うべきことは何かを提言として残しておくことを目的としている.当然のこととして,同じ状況を経験しても立場が違えば意見が変わることはあり得るので,本書で提言する内容もこれが絶対に正しいと言い切れるものではないが,読者の方々も自分ならどうしたか,あるいはどのような提言をするのかと考えながら読み進めていただければ幸いである.
当時は,なぜこんなに待たせるのか,どうしてこんなこともできないのかと,多くのお叱りをいただいたが,できないにはできないなりの理由があったのであり,そちらの事情についても可能な限りお示ししたいと考えている.
本書の内容は,基本的に当時取材に来た多くのマスコミ関係者に説明していたものであるが,いわゆる「尺の関係」でマスコミの編集権によりカットされ,報道されなかったものが多い.また,退職後に参加したシンポジウム(第8回 日経・FT感染症会議,第59回 日本医療・病院管理学会学術総会)で発表した内容も含まれているが,著作物として出版するに当たり,守秘義務に相当する内容については触れないよう改めて十分に注意を払ったつもりである.
なお,第1章については,直接的に新型コロナウイルス感染症とは関係のない検疫の話や成田国際空港に関する情報となっている.成田空港検疫所における新型コロナウイルス感染症への対応についての理解を助けるための予備知識として書いたものなので,すでに検疫や本空港について十分な知識を持った読者におかれては,読み飛ばしていただいても構わない.
欧州の中世社会は,ペストのパンデミックにより既存の権威が失墜し,人口減少は人権という概念を発展させ近世社会へと姿を変えたが,アフターコロナがどのような時代となるのかは定かではない.しかしながら,少なくとも検疫システムについては確実にその姿を変えるし,また変わらなければならないと考えている.
その姿がどのようなものとなるか,読者の皆さんとともに見届けたいと思っている.
2022年5月
田中 一成
目次
1.成田国際空港と検疫所
検疫の歴史
わが国の検疫
検疫所とは
成田空港検疫所の沿革
成田空港の概要
旅客ターミナルビルの構造
各旅客ターミナルビルの特徴
2.新型コロナウイルス感染症への対応の推移
新型コロナウイルス感染症への対応以前の状況
前 夜
検疫対応の開始─PHEICの発動─
強化検疫開始直後の対応
混乱を極める検疫の現場
武漢市からの邦人救出便とダイヤモンド・プリンセス号への応援派遣
痛恨のコンタミネーション発生
検疫所が風評被害に
ついに感染者を発見
何もない……
自衛隊の活躍
反転攻勢へ
民間からの応援も始動
中部空港オペレーション
大量入国者の受け入れに向かって
東京五輪への道
変異株への対応
感染拡大の中で
オリンピックシフトへ
パラリンピックへの対応
新たな対応へ─航空機が飛び交う空へ─
3.検疫所における新型コロナウイルスの検査
新型コロナウイルスの検査方法
遺伝子検査
成田空港検疫所のNAT検査
PCRの弱点
成田空港検疫所における検査の隘路
抗原定量検査
検査体制の強化
検査件数のさらなる増加への対応
定量と定性
検査結果
4.強化検疫の変遷について
感染の成立過程
検疫感染症
平時の検疫─サーモ検疫
質問票と健康カード
症例定義に基づく行政検査
対象者の全員検査を実施
対象者の全員待機
オリパラ関係者の検疫
5.検疫所風景点描
「ベッドは送る」……
もっと情報を
検疫所長という立場
外れたアテ
ホテルを使った待機施設について
ロボットの活躍
検疫のコスト
所員のメンタルヘルス対策
6.アフターコロナに向かっての提言
検疫所組織の充実
労働安全衛生法に感染症対策を
検疫法の罰則の手続きを定める
災害救助法レベルの対応を可能に
精度管理の国際的統一
デジタル化の導入
パスポートのICチップの活用
壮大な社会実験を無駄にしない
資 料
おわりに
検疫の歴史
わが国の検疫
検疫所とは
成田空港検疫所の沿革
成田空港の概要
旅客ターミナルビルの構造
各旅客ターミナルビルの特徴
2.新型コロナウイルス感染症への対応の推移
新型コロナウイルス感染症への対応以前の状況
前 夜
検疫対応の開始─PHEICの発動─
強化検疫開始直後の対応
混乱を極める検疫の現場
武漢市からの邦人救出便とダイヤモンド・プリンセス号への応援派遣
痛恨のコンタミネーション発生
検疫所が風評被害に
ついに感染者を発見
何もない……
自衛隊の活躍
反転攻勢へ
民間からの応援も始動
中部空港オペレーション
大量入国者の受け入れに向かって
東京五輪への道
変異株への対応
感染拡大の中で
オリンピックシフトへ
パラリンピックへの対応
新たな対応へ─航空機が飛び交う空へ─
3.検疫所における新型コロナウイルスの検査
新型コロナウイルスの検査方法
遺伝子検査
成田空港検疫所のNAT検査
PCRの弱点
成田空港検疫所における検査の隘路
抗原定量検査
検査体制の強化
検査件数のさらなる増加への対応
定量と定性
検査結果
4.強化検疫の変遷について
感染の成立過程
検疫感染症
平時の検疫─サーモ検疫
質問票と健康カード
症例定義に基づく行政検査
対象者の全員検査を実施
対象者の全員待機
オリパラ関係者の検疫
5.検疫所風景点描
「ベッドは送る」……
もっと情報を
検疫所長という立場
外れたアテ
ホテルを使った待機施設について
ロボットの活躍
検疫のコスト
所員のメンタルヘルス対策
6.アフターコロナに向かっての提言
検疫所組織の充実
労働安全衛生法に感染症対策を
検疫法の罰則の手続きを定める
災害救助法レベルの対応を可能に
精度管理の国際的統一
デジタル化の導入
パスポートのICチップの活用
壮大な社会実験を無駄にしない
資 料
おわりに
書評
古閑比斗志(千葉県松戸健康福祉センター長)
この本は奇しくも7月14日検疫の日に世に出た.
100 年に一度の感染症と言われる新型コロナ(COVID19)は2022年7月現在日本ではオミクロン株BA5による第7波が到来している.
2022 年で大流行は落ち着くであろうがスペイン風邪同様,今後10年間は社会活動へ影響を及ぼすと考えられている.
本書の第一章は検疫及び成田空港検疫所の生い立ちである.
第二章は武漢から始まりオリパラまでの新型コロナとの戦いの歴史である.検疫所は島国日本における輸入感染症の主戦場である.自衛隊の医官はPCR検査のため鼻咽頭検体採取を行った.入管では外国人の入国は止められても,帰国する日本人や配偶者は止められない.オリパラにおける成田空港検疫所の苦労がよくわかる.成田空港に降り立つ観客はいなかったが,多数のプレスや海外選手が入国した.
第三章は成田空港検疫所において実際に行われたPCR・抗原定量検査等が図解つきでわかりやすく解説されている.
第四章では武漢からオリパラまでの検疫の変遷が記載されている.
第五章では成田空港検疫所における検疫プロセスの見える化や危機管理上の段ボールベッドの導入,人的資材の軽減のためロボットの導入が解説つきで見ることができる.前例がないため検疫所長の苦労が偲ばれる.
第六章は本書題名「アフターコロナの検疫」の核心である「アフターコロナへの提言」である.国際保健や渡航医学・輸入感染症は国を挙げて対策を強化すべきである.検疫所や保健所は,行革の嵐でポストも予算も削られ続けていた.今後,人員の確保・検疫法の改正等が必要であろう.また罰則に関しては麻薬取締官同様,司法警察官制度を導入すべきであろう.
本書は成田空港検疫所における田中一成所長(当時)を筆頭とした検疫官達の新型コロナとの壮絶な戦いの証である.歴史は繰り返す.今後すべての検疫官の座右の書としていただくのはもちろんのこと,パンデミック対応に課題を感じている医療関係者にとっても必読の一冊である.
この本は奇しくも7月14日検疫の日に世に出た.
100 年に一度の感染症と言われる新型コロナ(COVID19)は2022年7月現在日本ではオミクロン株BA5による第7波が到来している.
2022 年で大流行は落ち着くであろうがスペイン風邪同様,今後10年間は社会活動へ影響を及ぼすと考えられている.
本書の第一章は検疫及び成田空港検疫所の生い立ちである.
第二章は武漢から始まりオリパラまでの新型コロナとの戦いの歴史である.検疫所は島国日本における輸入感染症の主戦場である.自衛隊の医官はPCR検査のため鼻咽頭検体採取を行った.入管では外国人の入国は止められても,帰国する日本人や配偶者は止められない.オリパラにおける成田空港検疫所の苦労がよくわかる.成田空港に降り立つ観客はいなかったが,多数のプレスや海外選手が入国した.
第三章は成田空港検疫所において実際に行われたPCR・抗原定量検査等が図解つきでわかりやすく解説されている.
第四章では武漢からオリパラまでの検疫の変遷が記載されている.
第五章では成田空港検疫所における検疫プロセスの見える化や危機管理上の段ボールベッドの導入,人的資材の軽減のためロボットの導入が解説つきで見ることができる.前例がないため検疫所長の苦労が偲ばれる.
第六章は本書題名「アフターコロナの検疫」の核心である「アフターコロナへの提言」である.国際保健や渡航医学・輸入感染症は国を挙げて対策を強化すべきである.検疫所や保健所は,行革の嵐でポストも予算も削られ続けていた.今後,人員の確保・検疫法の改正等が必要であろう.また罰則に関しては麻薬取締官同様,司法警察官制度を導入すべきであろう.
本書は成田空港検疫所における田中一成所長(当時)を筆頭とした検疫官達の新型コロナとの壮絶な戦いの証である.歴史は繰り返す.今後すべての検疫官の座右の書としていただくのはもちろんのこと,パンデミック対応に課題を感じている医療関係者にとっても必読の一冊である.