カテゴリー: 精神医学/心身医学
職場不適応のサイン
ベテラン産業医が教える気づきと対応のコツ
1版
大阪樟蔭女子大学 名誉教授/日本産業ストレス学会 前理事長
夏目 誠 著
定価
2,200円(本体 2,000円 +税10%)
- B5判 117頁
- 2020年5月 発行
- ISBN 978-4-525-18571-8
職場のメンタルヘルスを40年以上見てきたベテラン産業医のノウハウを一冊に!
「職場不適応」は社会問題化しており,多くの職場関係者や家族らが悩みうるテーマである.問題が起こる前に予防する,あるいは問題を早期に発見して対処することが望まれるが,その方法は手探りで行われているのが実情である.本書は40年以上,多くの相談を受けてきたベテラン産業医が,豊富な事例を交えて対応のコツをまとめた.
- 序文
- 目次
序文
本書を手にとってくださった皆様へ
日本社会はバブル崩壊以降、不況の影響を強く受けてきました。非正規雇用の増加、サービス残業を含む過重労働の増加、内需縮小によるグローバル化、リストラ不安など、労働者を取り巻く環境は厳しいものといえます。アベノミクスで景気は回復してきたといわれていますが、労働者はその実感もなく、心をすり減らしながら働かざるを得ない状況がいまだ続いています。
そんな今、「職場不適応・適応障害」で悩んでいる人が大変増えています。本書では筆者の「夏目」とこれから産業医を目指す「助手」とともに、症状の特徴をはじめ、早期発見や対応のコツなどを紹介しています。まずは、夏目と助手が昨今の課題と本書の成り立ちについて話し合っているところから、みていきましょう。
夏目:さて、日本に産業医がどのくらいいるか知っているかな?
助手:はい、日本医師会によると、認定産業医の総数は2018年時点で約10万人にまで増えているそうです。産業医の選任が義務付けられたからだと思いますが、毎年増えているようです。これからは働く人の環境は良くなっていきそうですね!
夏目:でもね、産業医は精神科を専門としている方は少なく、大多数は内科医なので、労働者の「メンタル不調」への対応に悩まれる方も多いんだ。とくに「職場不適応・適応障害」への対応だね。
助手:なるほど。たしかに「うつ病」や「大人の発達障害」とかは話題にあがる機会が多いですけど、「職場不適応・適応障害」のことはあまり聞かないですね。
夏目:そうだね。嘱託産業医向けの研修会やセミナーで講師をしていると、「職場不適応・適応障害」にちなんだ質問が非常に多いんだよね。あとはうつ病との鑑別とかね。そうしたなかで、「この疾患はイマイチわかりづらいものなんだなぁ」と実感したんだ。
助手:そこで本書が企画されたんですね!
夏目:うん。40年以上メンタルヘルス一筋で培った経験が役立つんじゃないかと思って、本書を執筆することにしたんだ。助手ちゃんはどんな本だったら読んでみたいと思う?
助手:う~ん(最近、スマホばかり見ていて本を読んでいない)。短時間で要所を把握できて、堅苦しく肩肘張らなくても読めるような本ですかね?
夏目:そんな感じの人を想像してまとめてみたよ(笑)
・実際の場面を想像しやすいように多くの事例で紹介
・事例は1つで汎用性のあるもの、応用のきくものになるよう厳選
・イラストを多用して、キモとなるポイントを整理
助手:おぉ。ありがとうございます!
夏目:どういたしまして(汗)でも助手ちゃんみたいに産業医を目指す人だけでなく、人事担当の方、産業看護職の方、カウンセラー、自身にその疑いがある方にも手にとってほしいと思っているんだ。
助手:幅広いですね。
夏目:メンタル不調者への対応の理解には、相談される側だけでなく、する側の心情も把握していることが望ましいのは言うまでもないよね。だから、あまり小難しい表現をしてわかる人が限られるより、誰にでもすぐにわかる簡潔な表現を心がけたんだ。それぞれの立場をお互いに知っていることが一番望ましいからね。
助手:そうですね。自分の主張したいことも、相手の立場を知らなければ通しづらいですから!
夏目:よくわかってる!! そう。伝えたいことがある時は相手のことをよく知っておくことが大事だよ。
2人の会話は本文でも続きます。ぜひ最後まで見守っていただければ幸いです。
ということで、本書は一般企業・公務員の産業医として、また精神科医の主治医として経験してきた筆者のノウハウを、職場に関わるすべての人に向けて、ギュッと1冊にまとめました。本書を読めば、「職場不適応」の早期発見、対応、専門医の考え方などを俯瞰でき、一連の流れで気づきと対応のコツをつかめるようになっていると自負しています。本書を手にとって頂いたみなさまのお役にたてることを、切に願っています。
2020年4月
夏目 誠
日本社会はバブル崩壊以降、不況の影響を強く受けてきました。非正規雇用の増加、サービス残業を含む過重労働の増加、内需縮小によるグローバル化、リストラ不安など、労働者を取り巻く環境は厳しいものといえます。アベノミクスで景気は回復してきたといわれていますが、労働者はその実感もなく、心をすり減らしながら働かざるを得ない状況がいまだ続いています。
そんな今、「職場不適応・適応障害」で悩んでいる人が大変増えています。本書では筆者の「夏目」とこれから産業医を目指す「助手」とともに、症状の特徴をはじめ、早期発見や対応のコツなどを紹介しています。まずは、夏目と助手が昨今の課題と本書の成り立ちについて話し合っているところから、みていきましょう。
夏目:さて、日本に産業医がどのくらいいるか知っているかな?
助手:はい、日本医師会によると、認定産業医の総数は2018年時点で約10万人にまで増えているそうです。産業医の選任が義務付けられたからだと思いますが、毎年増えているようです。これからは働く人の環境は良くなっていきそうですね!
夏目:でもね、産業医は精神科を専門としている方は少なく、大多数は内科医なので、労働者の「メンタル不調」への対応に悩まれる方も多いんだ。とくに「職場不適応・適応障害」への対応だね。
助手:なるほど。たしかに「うつ病」や「大人の発達障害」とかは話題にあがる機会が多いですけど、「職場不適応・適応障害」のことはあまり聞かないですね。
夏目:そうだね。嘱託産業医向けの研修会やセミナーで講師をしていると、「職場不適応・適応障害」にちなんだ質問が非常に多いんだよね。あとはうつ病との鑑別とかね。そうしたなかで、「この疾患はイマイチわかりづらいものなんだなぁ」と実感したんだ。
助手:そこで本書が企画されたんですね!
夏目:うん。40年以上メンタルヘルス一筋で培った経験が役立つんじゃないかと思って、本書を執筆することにしたんだ。助手ちゃんはどんな本だったら読んでみたいと思う?
助手:う~ん(最近、スマホばかり見ていて本を読んでいない)。短時間で要所を把握できて、堅苦しく肩肘張らなくても読めるような本ですかね?
夏目:そんな感じの人を想像してまとめてみたよ(笑)
・実際の場面を想像しやすいように多くの事例で紹介
・事例は1つで汎用性のあるもの、応用のきくものになるよう厳選
・イラストを多用して、キモとなるポイントを整理
助手:おぉ。ありがとうございます!
夏目:どういたしまして(汗)でも助手ちゃんみたいに産業医を目指す人だけでなく、人事担当の方、産業看護職の方、カウンセラー、自身にその疑いがある方にも手にとってほしいと思っているんだ。
助手:幅広いですね。
夏目:メンタル不調者への対応の理解には、相談される側だけでなく、する側の心情も把握していることが望ましいのは言うまでもないよね。だから、あまり小難しい表現をしてわかる人が限られるより、誰にでもすぐにわかる簡潔な表現を心がけたんだ。それぞれの立場をお互いに知っていることが一番望ましいからね。
助手:そうですね。自分の主張したいことも、相手の立場を知らなければ通しづらいですから!
夏目:よくわかってる!! そう。伝えたいことがある時は相手のことをよく知っておくことが大事だよ。
2人の会話は本文でも続きます。ぜひ最後まで見守っていただければ幸いです。
ということで、本書は一般企業・公務員の産業医として、また精神科医の主治医として経験してきた筆者のノウハウを、職場に関わるすべての人に向けて、ギュッと1冊にまとめました。本書を読めば、「職場不適応」の早期発見、対応、専門医の考え方などを俯瞰でき、一連の流れで気づきと対応のコツをつかめるようになっていると自負しています。本書を手にとって頂いたみなさまのお役にたてることを、切に願っています。
2020年4月
夏目 誠
目次
第1章 「不適応」を知ろう
1. 職場不適応、職場不適応症、適応障害の使い分け
2. 病気と障害の違い
3. 病名・障害名と状態名の違い
4. そもそも不適応とは?
5. 不適応が増加している原因
6. 産業医の役割
・コラム 診断書について
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ1 産業医が何をする人か、ピンとこないようです
第2章 発症要因、タイプ別分類、周囲の役割
1. 職場要因
2. 個人要因
3. 職場要因と個人要因の考え方・扱い方
4. 適応障害 ― 早期発見の手がかり
5. 管理職の役割
6. 病気休業中の人がいる職場や家族などの役割
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ2 中高年者へのアドバイスをください!
第3章 対応のコツ
1. 職場不適応症は中核群とドロップアウト群に分けられる
2. 中核群への対応
3. ドロップアウト群への対応
・コラム 精神生理学的方法を用いた研究から
・補足 産業医から社員に対する説明のコツ
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ3 職場不適応症にはどこまで対応すれば良いでしょうか?
第4章 大人の発達障害・うつ病と適応障害
1. 精神疾患を判断するのは難しい
2. 適応障害と大人の発達障害
3. 適応障害とうつ病
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ4 「大人の発達障害」について
第5章 社会問題から
1. 近年の問題
2. 女性の社会進出・活躍には「光」と「影」がある
3. ハラスメントの増加とその対応
4. リストラとその影響
5. 人事部の役割変化
6. スペシャルトピックス ―対人ストレスに「職場キャラ法」を活用していこう
7. 職場不適応と中小企業の関係
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ5 ハラスメント対応で気をつけるポイントは?
1. 職場不適応、職場不適応症、適応障害の使い分け
2. 病気と障害の違い
3. 病名・障害名と状態名の違い
4. そもそも不適応とは?
5. 不適応が増加している原因
6. 産業医の役割
・コラム 診断書について
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ1 産業医が何をする人か、ピンとこないようです
第2章 発症要因、タイプ別分類、周囲の役割
1. 職場要因
2. 個人要因
3. 職場要因と個人要因の考え方・扱い方
4. 適応障害 ― 早期発見の手がかり
5. 管理職の役割
6. 病気休業中の人がいる職場や家族などの役割
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ2 中高年者へのアドバイスをください!
第3章 対応のコツ
1. 職場不適応症は中核群とドロップアウト群に分けられる
2. 中核群への対応
3. ドロップアウト群への対応
・コラム 精神生理学的方法を用いた研究から
・補足 産業医から社員に対する説明のコツ
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ3 職場不適応症にはどこまで対応すれば良いでしょうか?
第4章 大人の発達障害・うつ病と適応障害
1. 精神疾患を判断するのは難しい
2. 適応障害と大人の発達障害
3. 適応障害とうつ病
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ4 「大人の発達障害」について
第5章 社会問題から
1. 近年の問題
2. 女性の社会進出・活躍には「光」と「影」がある
3. ハラスメントの増加とその対応
4. リストラとその影響
5. 人事部の役割変化
6. スペシャルトピックス ―対人ストレスに「職場キャラ法」を活用していこう
7. 職場不適応と中小企業の関係
・助手ちゃんからのインタビュー!
テーマ5 ハラスメント対応で気をつけるポイントは?