カテゴリー: 総合診療医学/プライマリ・ケア医学 | 医学・医療一般
日本プライマリ・ケア連合学会 基本研修ハンドブック
改訂3版
日本プライマリ・ケア連合学会 編
定価
6,600円(本体 6,000円 +税10%)
- B5判 552頁
- 2021年12月 発行
- ISBN 978-4-525-20213-2
新・家庭医療専門医を目指す医師必携の学会公認テキスト!
2020年度より新しくなった新・家庭医療専門医制度。専門医として求められる資質能力(コンピテンシー)をもとに,研修の基本から家庭医療固有のテーマやアプローチ法まで,専攻医として必要なものを網羅しています.
また,各項目には指導医へのメッセージ,巻末にはポートフォリオの領域ごと推奨文献リストなどもあり,学習者だけではなく指導者にも有用なものとなっております.
- 序文
- 目次
- 書評1
- 書評2
序文
未来はあなたの心から
2019年12月に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大はまたたく間に全世界へと広がるパンデミックとなり,世の中の景色は一変した.以降,次々と突きつけられる課題に対し,世界中の人々は協力して取り組んできた.プライマリ・ケアに携わる私たちも例外ではない.予防,診断,治療のすべてにわたり,プライマリ・ケアの形は,好むと好まざるとにかかわらずダイナミックに変化し,それは今も続いている.
本書の改訂作業は,わが国において第1回の緊急事態宣言が解除された直後に始まった.前版の刊行から約3年が経過し,わが国のプライマリ・ケアをとりまく環境はその時点で,すでに大きな変化を遂げていた.その後も,第2波,第3波,と繰り返す難局を乗り越え,ここに改訂第3版の刊行に至ることができたのは,未来を担うこれからの人々に役立つ書籍を作りたい,という強い思いによるものである.それに加えて,未曾有の状況下,ご尽力いただいた日本プライマリ・ケア連合学会の関係者の皆様,執筆の諸先生方,そしてこれまで本書をご支援いただいた多くの読者の皆様のおかげである.編者一同,心より御礼を申し上げたい.
さて,改訂にあたり,編者として大きな目標を立てた.それは,実践の書であるとともに,一歩先の世界の姿を描く書籍にする,というものである.これまでの私たちの姿に与するのではなく,未来を大胆かつ野心的に見据え,未来のあるべき姿を描く.一言でいうと,「エッジをきかせた書」にする,ということである.そのため,新たな編集委員とともに,未来を意識した議論を重ねた.この試みに対する評価は,これからの読者に委ねることとするが,そのためにも今後も忌憚のないご意見を頂ければ幸いである.
早いもので,第1版の刊行からまもなく10年が経つ.この間,社会は大きな変化を遂げた.もちろん私たちも大きく変化した.いや,すべての生物は,そしてすべての事物は,時間の経過とともに今この瞬間も変わり続け,とどまることはない.
しかし,私たちは時間を制御することはできない.時間を止めることも,時間を進めることも,そして時間を追い抜くこともできない.唯一できることは,明日を見据え,自らの思考を変え,これからの行動を変えることである.一人の変化だけでは不十分である.変化を大きく確かなものにするには,一人の変化を周囲へ,そして世界へと広げなければならない.そのためには,誠実さと美徳とを胸に,対話と交流を続けることで信頼を得て,人々とともに歩み続けることをけして忘れてはならない.
私たちの未来は,今はあなたの心の中にある.しかしあなたの心の変化が,やがて外へと踏み出す一歩に繋がる.そしてその一歩は,周囲を変え,世界を大きく変えるものになる.最後に目にする未来の景色は,いったいどのようなものになるのか.
それは,今,本書を手にするあなたの心の中の小さな変化から生まれるのである.
2021年 秋
編者を代表して
松村真司
2019年12月に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大はまたたく間に全世界へと広がるパンデミックとなり,世の中の景色は一変した.以降,次々と突きつけられる課題に対し,世界中の人々は協力して取り組んできた.プライマリ・ケアに携わる私たちも例外ではない.予防,診断,治療のすべてにわたり,プライマリ・ケアの形は,好むと好まざるとにかかわらずダイナミックに変化し,それは今も続いている.
本書の改訂作業は,わが国において第1回の緊急事態宣言が解除された直後に始まった.前版の刊行から約3年が経過し,わが国のプライマリ・ケアをとりまく環境はその時点で,すでに大きな変化を遂げていた.その後も,第2波,第3波,と繰り返す難局を乗り越え,ここに改訂第3版の刊行に至ることができたのは,未来を担うこれからの人々に役立つ書籍を作りたい,という強い思いによるものである.それに加えて,未曾有の状況下,ご尽力いただいた日本プライマリ・ケア連合学会の関係者の皆様,執筆の諸先生方,そしてこれまで本書をご支援いただいた多くの読者の皆様のおかげである.編者一同,心より御礼を申し上げたい.
さて,改訂にあたり,編者として大きな目標を立てた.それは,実践の書であるとともに,一歩先の世界の姿を描く書籍にする,というものである.これまでの私たちの姿に与するのではなく,未来を大胆かつ野心的に見据え,未来のあるべき姿を描く.一言でいうと,「エッジをきかせた書」にする,ということである.そのため,新たな編集委員とともに,未来を意識した議論を重ねた.この試みに対する評価は,これからの読者に委ねることとするが,そのためにも今後も忌憚のないご意見を頂ければ幸いである.
早いもので,第1版の刊行からまもなく10年が経つ.この間,社会は大きな変化を遂げた.もちろん私たちも大きく変化した.いや,すべての生物は,そしてすべての事物は,時間の経過とともに今この瞬間も変わり続け,とどまることはない.
しかし,私たちは時間を制御することはできない.時間を止めることも,時間を進めることも,そして時間を追い抜くこともできない.唯一できることは,明日を見据え,自らの思考を変え,これからの行動を変えることである.一人の変化だけでは不十分である.変化を大きく確かなものにするには,一人の変化を周囲へ,そして世界へと広げなければならない.そのためには,誠実さと美徳とを胸に,対話と交流を続けることで信頼を得て,人々とともに歩み続けることをけして忘れてはならない.
私たちの未来は,今はあなたの心の中にある.しかしあなたの心の変化が,やがて外へと踏み出す一歩に繋がる.そしてその一歩は,周囲を変え,世界を大きく変えるものになる.最後に目にする未来の景色は,いったいどのようなものになるのか.
それは,今,本書を手にするあなたの心の中の小さな変化から生まれるのである.
2021年 秋
編者を代表して
松村真司
目次
研修を始めるにあたり
プライマリ・ケアを専門とする医師を目指す
Ⅰ.目指すべき家庭医像
1 わが国および世界のプライマリ・ケア,家庭医療,総合診療の歴史と現状
2 かかりつけ医,総合診療専門医,そして新・家庭医療専門医
3 家庭医療・総合診療のコンピテンシーとプログラムの概要
4 専門医取得後のキャリアパス/生涯学習およびフェローシップ
Ⅱ.基本研修リスト
A.家庭医療専門研修領域
1 未分化で多様かつ複雑な健康問題への対応
2 ヘルスプロモーションと疾病予防
3 行動科学・行動変容・行動経済学など各種理論に基づいたアプローチ
4 医療面接,医療コミュニケーション
5 診察法
6 慢性疾患のケア,Chronic Care Model
7 マルチモビディティへのアプローチ
8 継続的な医療,ケア
9 生物心理社会モデルと患者中心の医療
10 関係性と文脈に基づく医療
11 家族志向の医療/ライフサイクルに応じたケア
12 プライマリ・ヘルスケア,地域包括ケアと地域志向性プライマリ・ケア
13 地域診断と地域との協働
14 障害者支援・リハビリテーション
15 プライマリ・ケアにおける教育・指導理論
16 EBM,診療ガイドライン
17 組織運営マネジメント
18 ケア・コーディネーションと地域連携/ケア移行
19 診療におけるリーダーシップ
20 多職種連携と専門職連携実践(IPW)
21 医療・保健・介護・福祉専門職の一覧と特徴
22 システムに基づく診療,患者安全と質管理
23 メンタルヘルス
24 社会的決定要因とアドボカシー・医療アクセス
25 周縁化された人々へのアプローチ
26 ファミリー・バイオレンス
27 ワーク・ライフ・バランスと医療者自身のケア
28 医療倫理・困難事例への対応法
29 プロフェッショナリズム
30 セクシュアルヘルス
31 SOGI/LGBTへの対応
32 緩和ケアおよび人生の最終段階におけるケア
B.基本研修領域
1 病院総合医・病院家庭医
2 診療所における救急医療
3 小児の診療
4 思春期のケア
5 高齢者のケア
6 在宅医療
7 施設入居者・長期療養施設入所者へのケア
8 テレメディシンと遠隔診療
9 筋骨格系診療とスポーツ医学
10 プライマリ・ケアにおける遺伝学・genetics
11 ポリファーマシーへの対策
12 診断推論・診断エラー
13 研究に関する能力開発
14 国際貢献,国際交流/Global health
15 漢方(鍼灸)
16 統合ヘルスケア総論
17 へき地・離島医療
18 災害医療
19 学校保健
20 産業医,産業保健
21 プライマリ・ケアにおける診療情報データベース (疾病分類,健康問題,ICPC)
Ⅲ.家庭医療・総合診療の研修および評価
1 家庭医療・総合診療の教育・学習と学習理論
2 カリキュラム開発における学習と評価について
3 Off-the-job trainingの概要
4 研修手帳の使い方
5 ビデオレビューのプロセスとポイント
6 業務基盤型評価のプロセスとポイント
7 家庭医療専門医試験のデザインとポイント
8 ポートフォリオを用いた研修および作成のプロセスとポイント
9 ポートフォリオ指導と臨床実践・振り返り・勉強会
10 ファカルティ・ディベロップメント
Ⅳ.学びを深めるためのツール
ポートフォリオ・コンピテンシー対応表
ポートフォリオの領域ごと推奨文献リスト
索 引
プライマリ・ケアを専門とする医師を目指す
Ⅰ.目指すべき家庭医像
1 わが国および世界のプライマリ・ケア,家庭医療,総合診療の歴史と現状
2 かかりつけ医,総合診療専門医,そして新・家庭医療専門医
3 家庭医療・総合診療のコンピテンシーとプログラムの概要
4 専門医取得後のキャリアパス/生涯学習およびフェローシップ
Ⅱ.基本研修リスト
A.家庭医療専門研修領域
1 未分化で多様かつ複雑な健康問題への対応
2 ヘルスプロモーションと疾病予防
3 行動科学・行動変容・行動経済学など各種理論に基づいたアプローチ
4 医療面接,医療コミュニケーション
5 診察法
6 慢性疾患のケア,Chronic Care Model
7 マルチモビディティへのアプローチ
8 継続的な医療,ケア
9 生物心理社会モデルと患者中心の医療
10 関係性と文脈に基づく医療
11 家族志向の医療/ライフサイクルに応じたケア
12 プライマリ・ヘルスケア,地域包括ケアと地域志向性プライマリ・ケア
13 地域診断と地域との協働
14 障害者支援・リハビリテーション
15 プライマリ・ケアにおける教育・指導理論
16 EBM,診療ガイドライン
17 組織運営マネジメント
18 ケア・コーディネーションと地域連携/ケア移行
19 診療におけるリーダーシップ
20 多職種連携と専門職連携実践(IPW)
21 医療・保健・介護・福祉専門職の一覧と特徴
22 システムに基づく診療,患者安全と質管理
23 メンタルヘルス
24 社会的決定要因とアドボカシー・医療アクセス
25 周縁化された人々へのアプローチ
26 ファミリー・バイオレンス
27 ワーク・ライフ・バランスと医療者自身のケア
28 医療倫理・困難事例への対応法
29 プロフェッショナリズム
30 セクシュアルヘルス
31 SOGI/LGBTへの対応
32 緩和ケアおよび人生の最終段階におけるケア
B.基本研修領域
1 病院総合医・病院家庭医
2 診療所における救急医療
3 小児の診療
4 思春期のケア
5 高齢者のケア
6 在宅医療
7 施設入居者・長期療養施設入所者へのケア
8 テレメディシンと遠隔診療
9 筋骨格系診療とスポーツ医学
10 プライマリ・ケアにおける遺伝学・genetics
11 ポリファーマシーへの対策
12 診断推論・診断エラー
13 研究に関する能力開発
14 国際貢献,国際交流/Global health
15 漢方(鍼灸)
16 統合ヘルスケア総論
17 へき地・離島医療
18 災害医療
19 学校保健
20 産業医,産業保健
21 プライマリ・ケアにおける診療情報データベース (疾病分類,健康問題,ICPC)
Ⅲ.家庭医療・総合診療の研修および評価
1 家庭医療・総合診療の教育・学習と学習理論
2 カリキュラム開発における学習と評価について
3 Off-the-job trainingの概要
4 研修手帳の使い方
5 ビデオレビューのプロセスとポイント
6 業務基盤型評価のプロセスとポイント
7 家庭医療専門医試験のデザインとポイント
8 ポートフォリオを用いた研修および作成のプロセスとポイント
9 ポートフォリオ指導と臨床実践・振り返り・勉強会
10 ファカルティ・ディベロップメント
Ⅳ.学びを深めるためのツール
ポートフォリオ・コンピテンシー対応表
ポートフォリオの領域ごと推奨文献リスト
索 引
書評1
プライマリ・ケアの学問的基盤を学べる決定版
成瀬 瞳(金井病院 総合診療科)
臓器別・疾患別の医学書は多数出ているが,総合診療・家庭医療に特有の概念についてまとまった参考書は少なく,2021年に家庭医療専門医を取得した私にとって,第2版は研修を進めるにあたり片手に欠かせない存在であった.
今回,最新版となる第3版では,新・家庭医療専門研修プログラムが開始されたことを踏まえ,大幅に内容が拡充されている.まず家庭医療像を理解するために,現代の日本におけるプライマリ・ケアの意義や歴史,求められるコンピテンシー,キャリアパスについて述べられている.次に,研修で学ぶべき領域のエッセンスが,① 家庭医療専門研修領域,② 基本研修領域としてまとめられている.前者では,総合診療・家庭医療に特有の概念やアプローチ法が解説され,従来の基本枠組みに加え,マルチモビディティ,ケア移行,社会的決定要因とアドボカシー,ワーク・ライフ・バランス,SOGI/LGBTなど,時代に則した内容が今回追加されている.後者では,家庭医療で扱う幅広い健康問題について,病院総合医・病院家庭医,施設入所者のケア,遠隔診療,災害医療などの項目が新しく取り入れられ,より多様な局面でプライマリ・ケアの活躍が期待されていることがよくわかる.本書の終盤には,研修支援としてビデオレビュー,ポートフォリオなどについて,専攻医・指導医ともにより深い省察ができるよう充実した解説があり,学びを一歩深めるための推奨文献リストが添付されているのもありがたい.
プライマリ・ケアの第一線で活躍されている先生方の経験に基づく知識・知恵が凝縮された本書は,専攻医や若手指導医に限らず,すでに地域でプライマリ・ケアを実践している,あるいはこれから担うすべての医師に一読を勧めたい.プライマリ・ケアの学問的基盤である総合診療・家庭医療のエッセンスを学び,それを手がかりにさらなる高みへステップアップするために最適な著書であろう.この本を手に,日々の医療現場で実践し,仲間・指導医とともに省察を繰り返すことで成長し,プライマリ・ケアの未来をつくる人材としてともに羽ばたいていけることを願う.
成瀬 瞳(金井病院 総合診療科)
臓器別・疾患別の医学書は多数出ているが,総合診療・家庭医療に特有の概念についてまとまった参考書は少なく,2021年に家庭医療専門医を取得した私にとって,第2版は研修を進めるにあたり片手に欠かせない存在であった.
今回,最新版となる第3版では,新・家庭医療専門研修プログラムが開始されたことを踏まえ,大幅に内容が拡充されている.まず家庭医療像を理解するために,現代の日本におけるプライマリ・ケアの意義や歴史,求められるコンピテンシー,キャリアパスについて述べられている.次に,研修で学ぶべき領域のエッセンスが,① 家庭医療専門研修領域,② 基本研修領域としてまとめられている.前者では,総合診療・家庭医療に特有の概念やアプローチ法が解説され,従来の基本枠組みに加え,マルチモビディティ,ケア移行,社会的決定要因とアドボカシー,ワーク・ライフ・バランス,SOGI/LGBTなど,時代に則した内容が今回追加されている.後者では,家庭医療で扱う幅広い健康問題について,病院総合医・病院家庭医,施設入所者のケア,遠隔診療,災害医療などの項目が新しく取り入れられ,より多様な局面でプライマリ・ケアの活躍が期待されていることがよくわかる.本書の終盤には,研修支援としてビデオレビュー,ポートフォリオなどについて,専攻医・指導医ともにより深い省察ができるよう充実した解説があり,学びを一歩深めるための推奨文献リストが添付されているのもありがたい.
プライマリ・ケアの第一線で活躍されている先生方の経験に基づく知識・知恵が凝縮された本書は,専攻医や若手指導医に限らず,すでに地域でプライマリ・ケアを実践している,あるいはこれから担うすべての医師に一読を勧めたい.プライマリ・ケアの学問的基盤である総合診療・家庭医療のエッセンスを学び,それを手がかりにさらなる高みへステップアップするために最適な著書であろう.この本を手に,日々の医療現場で実践し,仲間・指導医とともに省察を繰り返すことで成長し,プライマリ・ケアの未来をつくる人材としてともに羽ばたいていけることを願う.
書評2
北村 聖(地域医療振興協会 顧問/東京大学 名誉教授)
本書は日本プライマリ・ケア学会が運営する家庭医療専門医を目指す研修の教科書である.タイトルはハンドブックで,マニュアルあるいは手引きのように思われるだろうが,実際は序文「未来はあなたの心から」から最後の推薦文献リストまでどのページを読んでも80余名の著者らの哲学と情熱が込められており,しっかりとした教科書といって過言ではないと思う.ハンドブックや手引書に書評というのはそぐわないと考えていたが,しっかりとした教科書であれば,しっかりとした評価を記すこともあってよいと考える.
本書の1 版は2012 年にプライマリ・ケア連合学会が家庭医療専門研修を始める際に上梓され,その後,日本専門医機構が総合診療専門研修を始める際に守備範囲をより広くして2017 年に第2 版が出版され,さらに,新家庭医療専門医というサブスペシャリティを立ち上げるのを機により広くより深くして改訂3版を世に問うことになった.
実は2010 年前後,3 つの学会が合流して1 つの学会となって日本医学会に加盟したところに立ち会った経緯から,山の源流が集まり大河となるというたとえが示された代表編集者の松村真司先生の序文がわが国の総合診療のこれまでを総括しこれからを示唆しているようで心が動いた.本篇は4章から構成され,第1章の「目指すべき家庭医像」に引き続き,全体の80% を占める第2 章基本研修リストがあり,第3章の研修および評価,第4章の学びを深めるためのツールと続いている.基本研修リストの小項目は目標,基礎知識,学修のポイント,目標となる診療,指導医へのメッセージから構成されている.どの項目も,ポートフォーリオを書けばよいというのではなく,あくまでも実際の診療を通じて指導医とともに振り返ることにより学修するという思想が貫かれている.その意味で,通読するのもよいが,現場でまさにハンドブックとしての利用も有意義であろう.
本書を手にする若き医療者へ:わが国ではいまだ成熟していないものの,総合診療・家庭医療には本書の執筆者をはじめ多くの情熱ある指導者がいる.志した道は「千万人と雖も吾往かん(孟子)」の覚悟で,大海に向かって突き進んでいってほしい.
本書は日本プライマリ・ケア学会が運営する家庭医療専門医を目指す研修の教科書である.タイトルはハンドブックで,マニュアルあるいは手引きのように思われるだろうが,実際は序文「未来はあなたの心から」から最後の推薦文献リストまでどのページを読んでも80余名の著者らの哲学と情熱が込められており,しっかりとした教科書といって過言ではないと思う.ハンドブックや手引書に書評というのはそぐわないと考えていたが,しっかりとした教科書であれば,しっかりとした評価を記すこともあってよいと考える.
本書の1 版は2012 年にプライマリ・ケア連合学会が家庭医療専門研修を始める際に上梓され,その後,日本専門医機構が総合診療専門研修を始める際に守備範囲をより広くして2017 年に第2 版が出版され,さらに,新家庭医療専門医というサブスペシャリティを立ち上げるのを機により広くより深くして改訂3版を世に問うことになった.
実は2010 年前後,3 つの学会が合流して1 つの学会となって日本医学会に加盟したところに立ち会った経緯から,山の源流が集まり大河となるというたとえが示された代表編集者の松村真司先生の序文がわが国の総合診療のこれまでを総括しこれからを示唆しているようで心が動いた.本篇は4章から構成され,第1章の「目指すべき家庭医像」に引き続き,全体の80% を占める第2 章基本研修リストがあり,第3章の研修および評価,第4章の学びを深めるためのツールと続いている.基本研修リストの小項目は目標,基礎知識,学修のポイント,目標となる診療,指導医へのメッセージから構成されている.どの項目も,ポートフォーリオを書けばよいというのではなく,あくまでも実際の診療を通じて指導医とともに振り返ることにより学修するという思想が貫かれている.その意味で,通読するのもよいが,現場でまさにハンドブックとしての利用も有意義であろう.
本書を手にする若き医療者へ:わが国ではいまだ成熟していないものの,総合診療・家庭医療には本書の執筆者をはじめ多くの情熱ある指導者がいる.志した道は「千万人と雖も吾往かん(孟子)」の覚悟で,大海に向かって突き進んでいってほしい.