カテゴリー: 総合診療医学/プライマリ・ケア医学 | 地域医療
病院総合診療科×診療所 病診連携ケースカンファ集
土曜日の紹介は嫌われる
1版
東京北医療センター総合診療科 南郷栄秀 編
東京北医療センター総合診療科 岡田 悟 編
生協浮間診療所 藤沼康樹 編
生協浮間診療所 重島祐介 編
定価
3,850円(本体 3,500円 +税10%)
- B5判 196頁
- 2017年12月 発行
- ISBN 978-4-525-20341-2
病院さん,診療所さん,そろそろぶっちゃけて話し合ってみませんか?
診療所⇔病院総合診療科,紹介はするけれど,「培養とらずに抗菌薬投与して効かないときって紹介して大丈夫?」「土曜の紹介はやめて」など,モヤモヤしたことありませんか?本書ではそんな齟齬を解消するため,お互いの立場や考えを理解すべく,カンファ形式で診療所と総合診療科のスタッフが語り尽くします.
- 序文
- 目次
序文
病院総合診療と診療所家庭医のコラボレーション!
専門医制度の大きな転換期を迎え,新たにできる総合診療専門医は 19 番目の基本領域の専門医としてスタートすることとなった.しかし,「総合診療医はへき地にいればよい」という声が漏れ聞こえ,都市部への集中を防ぐというより,都市部から排除されるのではないかと危惧される状況である.
総合診療医はよく,家庭医と認識される.しかし,家庭医と同様の理論的基盤をもつ総合診療医が病院にいることのメリットは大きい.たとえば都市部では,専門が細分化されすぎた弊害で,「専門外」として救急患者の受け入れ拒否が頻繁に起こっているが,幅広い守備範囲をもつ病院総合診療医がいれば対応可能だ.診療所からの紹介も,病院総合診療医を窓口として一本化できる.
そして病院総合診療医の専門性を語るうえでもっとも重要なポイントは,守備範囲の広さに加え,院内外の連携のハブとしての役割と,マルチモビディティ(multimobidity)や複雑な心理社会倫理的背景をもつ患者の問題解決だろう.本書のタイトル「土曜日の紹介は嫌われる」に象徴される病院?診療所間の関係の閉塞感や停滞感は,病院総合診療医と診療所家庭医が「家庭医療」という共通言語でコミュニケーションを重ねることで解決につながる.
本書の全 10 回のカンファレンスはどれも味わい深く,病院側にも診療所側にもさまざまな気づきをもたらした.東京北医療センターと生協浮間診療所は,たまたま近所に心通わせる者同士がおり,UK カンファ(生協浮間―東京北 病診連携カンファレンス)という形でコミュニケーションが成功した.ぜひ読者も,本書でその臨場感を体験してほしい.そして,このようなカンファレンスが全国の地域医療の現場で行われ,数々の患者の問題を病院と診療所が協働して解決し,地域住民の幸せにつながることを願っている.
最後に,かねてよりの悲願だった UK カンファ開催のきっかけをつくり,本書の製作に尽力してくださった,編集者の宇津木菜緒さんと伊藤毅さん,片桐洋平さんに深甚の感謝を申し上げる.
2017 年 10 月
南郷栄秀
---
地域包括ケアにおける規範的統合の実例として
日本は地域包括ケアの時代を迎えた.地域包括ケアは,医療・介護・福祉の統合に関して地域ごとに最適解を創出することである.地域における問題(個人の問題だけにとどまらない)に関連するさまざまな職種がチームを組んで取り組むこと,これは水平統合と呼ばれる.また,地域にかかわるさまざまな施設,たとえば診療所,小病院,大病院,さらに療養施設などを,1 人の地域住民あるいは患者は状態に応じて移動していくが,この連携がスムーズに行われることを垂直統合という.これらの統合がうまくいくためには,価値や文化の共有あるいは相互理解が必須である.たとえば,健康や病いに関する価値観はしばしば職種ごとに,あるいは施設ごとに異なることがあり,その差異によってケアがスムーズにいかないことがよく生じる.こうした価値観や文化の相互尊重・理解は規範的統合と呼ばれる.
本書に収められた対話は,病院総合診療医と診療所家庭医の連携に必要な規範的統合の枠組みを探る試みであるといえる.たとえば,在宅の発熱の患者を診て病院に送る側,そしてその在宅患者を受ける側が,高齢者の発熱について共通のルールをどのように形成していくかの対話こそが,規範的統合の具体的内実であることがよくわかる.
また,こうしたかなり Sensitive な対話が成り立つのは,病院総合医と診療所家庭医がそこに至るまでの多くのトレーニングの内容が共通であり,患者とは? 健康とは? 医療者はどうあるべきか? といった根本的価値観が共有できているということに他ならない.
本書をきっかけに,多くの地域で規範的統合に向けた,施設間での生産的な対話が生まれることに期待したい.
2017 年 10 月
藤沼康樹
専門医制度の大きな転換期を迎え,新たにできる総合診療専門医は 19 番目の基本領域の専門医としてスタートすることとなった.しかし,「総合診療医はへき地にいればよい」という声が漏れ聞こえ,都市部への集中を防ぐというより,都市部から排除されるのではないかと危惧される状況である.
総合診療医はよく,家庭医と認識される.しかし,家庭医と同様の理論的基盤をもつ総合診療医が病院にいることのメリットは大きい.たとえば都市部では,専門が細分化されすぎた弊害で,「専門外」として救急患者の受け入れ拒否が頻繁に起こっているが,幅広い守備範囲をもつ病院総合診療医がいれば対応可能だ.診療所からの紹介も,病院総合診療医を窓口として一本化できる.
そして病院総合診療医の専門性を語るうえでもっとも重要なポイントは,守備範囲の広さに加え,院内外の連携のハブとしての役割と,マルチモビディティ(multimobidity)や複雑な心理社会倫理的背景をもつ患者の問題解決だろう.本書のタイトル「土曜日の紹介は嫌われる」に象徴される病院?診療所間の関係の閉塞感や停滞感は,病院総合診療医と診療所家庭医が「家庭医療」という共通言語でコミュニケーションを重ねることで解決につながる.
本書の全 10 回のカンファレンスはどれも味わい深く,病院側にも診療所側にもさまざまな気づきをもたらした.東京北医療センターと生協浮間診療所は,たまたま近所に心通わせる者同士がおり,UK カンファ(生協浮間―東京北 病診連携カンファレンス)という形でコミュニケーションが成功した.ぜひ読者も,本書でその臨場感を体験してほしい.そして,このようなカンファレンスが全国の地域医療の現場で行われ,数々の患者の問題を病院と診療所が協働して解決し,地域住民の幸せにつながることを願っている.
最後に,かねてよりの悲願だった UK カンファ開催のきっかけをつくり,本書の製作に尽力してくださった,編集者の宇津木菜緒さんと伊藤毅さん,片桐洋平さんに深甚の感謝を申し上げる.
2017 年 10 月
南郷栄秀
---
地域包括ケアにおける規範的統合の実例として
日本は地域包括ケアの時代を迎えた.地域包括ケアは,医療・介護・福祉の統合に関して地域ごとに最適解を創出することである.地域における問題(個人の問題だけにとどまらない)に関連するさまざまな職種がチームを組んで取り組むこと,これは水平統合と呼ばれる.また,地域にかかわるさまざまな施設,たとえば診療所,小病院,大病院,さらに療養施設などを,1 人の地域住民あるいは患者は状態に応じて移動していくが,この連携がスムーズに行われることを垂直統合という.これらの統合がうまくいくためには,価値や文化の共有あるいは相互理解が必須である.たとえば,健康や病いに関する価値観はしばしば職種ごとに,あるいは施設ごとに異なることがあり,その差異によってケアがスムーズにいかないことがよく生じる.こうした価値観や文化の相互尊重・理解は規範的統合と呼ばれる.
本書に収められた対話は,病院総合診療医と診療所家庭医の連携に必要な規範的統合の枠組みを探る試みであるといえる.たとえば,在宅の発熱の患者を診て病院に送る側,そしてその在宅患者を受ける側が,高齢者の発熱について共通のルールをどのように形成していくかの対話こそが,規範的統合の具体的内実であることがよくわかる.
また,こうしたかなり Sensitive な対話が成り立つのは,病院総合医と診療所家庭医がそこに至るまでの多くのトレーニングの内容が共通であり,患者とは? 健康とは? 医療者はどうあるべきか? といった根本的価値観が共有できているということに他ならない.
本書をきっかけに,多くの地域で規範的統合に向けた,施設間での生産的な対話が生まれることに期待したい.
2017 年 10 月
藤沼康樹
目次
第1回 抗菌薬にまつわるあれこれ
第2回 病診連携の落とし穴
第3回 終末期の連携
第4回 ポリファーマシー
第5回 頻回救急受診
第6回 後医は名医
第7回 red flag
第8回 病院・診療所・福祉との連携
第9回 紹介状
第10回 土曜日の紹介は嫌われる
全 10 回のカンファを振り返って
第2回 病診連携の落とし穴
第3回 終末期の連携
第4回 ポリファーマシー
第5回 頻回救急受診
第6回 後医は名医
第7回 red flag
第8回 病院・診療所・福祉との連携
第9回 紹介状
第10回 土曜日の紹介は嫌われる
全 10 回のカンファを振り返って