カテゴリー: 臨床看護学 | 総合診療医学/プライマリ・ケア医学
多職種で取り組む食支援
急性期から看取りまで 僕なら私なら「こう食べていただきます!」
1版
山梨市立牧丘病院 古屋 聡 編
定価
2,970円(本体 2,700円 +税10%)
- B5判 169頁
- 2017年10月 発行
- ISBN 978-4-525-20731-1
あなたの患者が食べられないとき、誰に相談する?
患者の食支援を進めるための多職種連携ガイドブック.執筆陣には全国各地で活躍しているキーパーソンのほか,領域のトップランナーたちが結集.胃ろうの適応や地域における食支援,災害時の救援活動などあらゆる角度から食支援について取り上げており,摂食嚥下問題を抱える患者に出会ったとき,あなたの周りの頼れる人がみつけられる1冊!
- 序文
- 目次
序文
雑誌『治療』の特集として「摂食嚥下障害」を担当させてもらって1年,多職種の皆さまと取り組んだ結果が現れ,今回書籍化されることになり,たいへんうれしく思います.書名も自然に「摂食嚥下障害」から「食支援」と,さらに広げられたかたちになっています.
内容としては,雑誌の特集時の特徴であった「食支援にあたる多職種が直接のプレーヤーとして,どのように振る舞い,協働していけるかを具体的に示すこと」をベースに,あらためてスタンダードになり得る多職種連携のためのツール「KTバランスチャート」の紹介や,疾病急性期の集約されたかたちとしての自然災害(今回は熊本地震)のつらい経験から得られたDNSTの概念の提案,さらに胃ろうなど人工的水分・栄養補給法(artificial hydration and nutrition:AHN)の論議を踏まえて,エンドオブライフケアにかかわる章も拡充しています.
また,全国で展開される地域活動の紹介に,新たに東京都新宿区(五島朋幸先生),神奈川県厚木市(江頭文江さん),石川県輪島市(中村悦子さん)を加えて,その地であくまで「地道」に積み重ねてきた結果,今花開いているトップランナーたちの活動を紹介していただいています.また堀田聰子さんからは冒頭で「地域包括ケアの展開における食支援の意義」についても言及いただき,最後に患者・家族としてのゆきさん(大熊由紀子さん)にご自身の経験を踏まえた総括的感想もいただきました.
食支援のプレーヤーの基本は決まっています.「患者さん本人が食べたいと思えるように(意識・食思・コミュニケーション),食べることが可能になるように(全身状態・呼吸・口腔,姿勢・食材食形態・食具,そしてケアとトレーニング)準備し,時にそれを手伝う(食介助).そして常に「食べたい(あるいはもしかして食べたくない)」と思う心に寄り添う.
一方で,プレーヤーが覚えるべき知識や,使えるべきスキルは進化しています.リハ栄養の知識や多様化する嚥下補助食品とバラエティを追求する献立,とくに現場で重要な姿勢調整や自助を促進する食具の力,そしてスプーン操作や介助そのもののスキルなどです.今回の刊行では,現代のトレンドを見据え,できるだけ広く対応していますが,今後知見が明らかになってくるであろうものでまだ触れられていないものもあります(たとえば嚥下関連筋の筋膜リリース).
この本もまた進化途上です.患者さんにとっても一般の方々にとっても,専門職にとっても,「食」は普遍的なものであり,誰もが当事者で,人生そのものでもあります.そして「口から食べられること」はまさに基本的人権であるといえます.専門職のスキルに誰もが普遍的にアクセスができて,その利益をすべての人が共有するために,本書はプレーヤーである読者との対話をもって進化を続けていきたいと思います.
2017年9月
古屋 聡
内容としては,雑誌の特集時の特徴であった「食支援にあたる多職種が直接のプレーヤーとして,どのように振る舞い,協働していけるかを具体的に示すこと」をベースに,あらためてスタンダードになり得る多職種連携のためのツール「KTバランスチャート」の紹介や,疾病急性期の集約されたかたちとしての自然災害(今回は熊本地震)のつらい経験から得られたDNSTの概念の提案,さらに胃ろうなど人工的水分・栄養補給法(artificial hydration and nutrition:AHN)の論議を踏まえて,エンドオブライフケアにかかわる章も拡充しています.
また,全国で展開される地域活動の紹介に,新たに東京都新宿区(五島朋幸先生),神奈川県厚木市(江頭文江さん),石川県輪島市(中村悦子さん)を加えて,その地であくまで「地道」に積み重ねてきた結果,今花開いているトップランナーたちの活動を紹介していただいています.また堀田聰子さんからは冒頭で「地域包括ケアの展開における食支援の意義」についても言及いただき,最後に患者・家族としてのゆきさん(大熊由紀子さん)にご自身の経験を踏まえた総括的感想もいただきました.
食支援のプレーヤーの基本は決まっています.「患者さん本人が食べたいと思えるように(意識・食思・コミュニケーション),食べることが可能になるように(全身状態・呼吸・口腔,姿勢・食材食形態・食具,そしてケアとトレーニング)準備し,時にそれを手伝う(食介助).そして常に「食べたい(あるいはもしかして食べたくない)」と思う心に寄り添う.
一方で,プレーヤーが覚えるべき知識や,使えるべきスキルは進化しています.リハ栄養の知識や多様化する嚥下補助食品とバラエティを追求する献立,とくに現場で重要な姿勢調整や自助を促進する食具の力,そしてスプーン操作や介助そのもののスキルなどです.今回の刊行では,現代のトレンドを見据え,できるだけ広く対応していますが,今後知見が明らかになってくるであろうものでまだ触れられていないものもあります(たとえば嚥下関連筋の筋膜リリース).
この本もまた進化途上です.患者さんにとっても一般の方々にとっても,専門職にとっても,「食」は普遍的なものであり,誰もが当事者で,人生そのものでもあります.そして「口から食べられること」はまさに基本的人権であるといえます.専門職のスキルに誰もが普遍的にアクセスができて,その利益をすべての人が共有するために,本書はプレーヤーである読者との対話をもって進化を続けていきたいと思います.
2017年9月
古屋 聡
目次
Ⅰ章 すべての医療職が知っておくべき基礎知識
1 プライマリ・ケアにこそ必要なリハ栄養の知識 ─リハなくして総合診療なし!─
2 早期経口摂取にこそエビデンスあり!─盲目的禁食・絶食の危険を知ろう!─
3 医師はどこで食支援が必要と認知するか? どのように多職種に依頼していくか?
4 当事者主権にもとづく多職種連携のツール“KTバランスチャート”のススメ
Ⅱ章 あなたの患者が困っていたら,誰に相談する?
病院で
病院勤務医
病棟看護師(摂食・嚥下障害看護認定看護師)
言語聴覚士
理学療法士
管理栄養士
歯科医師
栄養サポートチーム(看護師,管理栄養士,言語聴覚士)
在宅で
在宅診療医
訪問看護師
作業療法士
訪問管理栄養士
訪問歯科医師
訪問歯科衛生士
訪問薬剤師
ケアマネジャー
介護現場で
介護士
看護師
管理栄養士
歯科医師
Ⅲ章 強制栄養と看取りをめぐって
1 胃ろうの適応について考える
2 両親の看取り支援から学んだこと
3 両親の介護 ―病院での看取り―
4 人工的水分・栄養補給法や手術,看取りを含めて ―人生に寄り添う食支援を考える―
Ⅳ章 病院でも在宅でも医療機器を活用する
1 摂食嚥下,サルコペニアにもエコーの時代,みんなが現場で使いこなせ!
2 急性期から在宅までにおける歯科と嚥下内視鏡の活用法
Ⅴ章 食支援と地域活動 ―病院NSTから地域へ
1 つながる・つなげる食支援 ―地域づくりの視点から―
2 最期まで口から食べられる街,新宿を仕掛ける!―新宿における地域食支援の実践―
3 駆け込み寺的地域摂食嚥下相談チーム ─ 金沢在宅NST経口摂取相談会の取り組み─
4 食は腹におさめるだけにあらず,生活と文化とこころである
5 「みんなの保健室わじま」からみた食支援
Ⅵ章 熊本地震の際のDNST活動
1 DNSTとは?
2 熊本地震摂食サポートの経験①:摂食・嚥下障害看護認定看護師
3 熊本地震摂食サポートの経験②:言語聴覚士
4 熊本地震摂食サポートの経験③:歯科医師
5 熊本地震摂食サポートの経験④:歯科衛生士
感想にかえて
最期のときを輝かせる居場所・味方・誇り ―家族の立場から―
コラム
姿勢調整の極意にせまる
施設での多職種連携の取り組み ―食支援を通じて気づかされたこと―
テーブル・スプーン・食具を見直そう!
1 プライマリ・ケアにこそ必要なリハ栄養の知識 ─リハなくして総合診療なし!─
2 早期経口摂取にこそエビデンスあり!─盲目的禁食・絶食の危険を知ろう!─
3 医師はどこで食支援が必要と認知するか? どのように多職種に依頼していくか?
4 当事者主権にもとづく多職種連携のツール“KTバランスチャート”のススメ
Ⅱ章 あなたの患者が困っていたら,誰に相談する?
病院で
病院勤務医
病棟看護師(摂食・嚥下障害看護認定看護師)
言語聴覚士
理学療法士
管理栄養士
歯科医師
栄養サポートチーム(看護師,管理栄養士,言語聴覚士)
在宅で
在宅診療医
訪問看護師
作業療法士
訪問管理栄養士
訪問歯科医師
訪問歯科衛生士
訪問薬剤師
ケアマネジャー
介護現場で
介護士
看護師
管理栄養士
歯科医師
Ⅲ章 強制栄養と看取りをめぐって
1 胃ろうの適応について考える
2 両親の看取り支援から学んだこと
3 両親の介護 ―病院での看取り―
4 人工的水分・栄養補給法や手術,看取りを含めて ―人生に寄り添う食支援を考える―
Ⅳ章 病院でも在宅でも医療機器を活用する
1 摂食嚥下,サルコペニアにもエコーの時代,みんなが現場で使いこなせ!
2 急性期から在宅までにおける歯科と嚥下内視鏡の活用法
Ⅴ章 食支援と地域活動 ―病院NSTから地域へ
1 つながる・つなげる食支援 ―地域づくりの視点から―
2 最期まで口から食べられる街,新宿を仕掛ける!―新宿における地域食支援の実践―
3 駆け込み寺的地域摂食嚥下相談チーム ─ 金沢在宅NST経口摂取相談会の取り組み─
4 食は腹におさめるだけにあらず,生活と文化とこころである
5 「みんなの保健室わじま」からみた食支援
Ⅵ章 熊本地震の際のDNST活動
1 DNSTとは?
2 熊本地震摂食サポートの経験①:摂食・嚥下障害看護認定看護師
3 熊本地震摂食サポートの経験②:言語聴覚士
4 熊本地震摂食サポートの経験③:歯科医師
5 熊本地震摂食サポートの経験④:歯科衛生士
感想にかえて
最期のときを輝かせる居場所・味方・誇り ―家族の立場から―
コラム
姿勢調整の極意にせまる
施設での多職種連携の取り組み ―食支援を通じて気づかされたこと―
テーブル・スプーン・食具を見直そう!