在宅で褥瘡に出会ったら
改訂2版
鈴木内科医院 鈴木 央 編著
定価
3,300円(本体 3,000円 +税10%)
- A5判 187頁
- 2016年3月 発行
- ISBN 978-4-525-20892-9
在宅褥瘡治療をバランスよく紹介
在宅での褥瘡ケアは体位変換一つとっても病院と同じに行うことはできない.限られた条件下にある在宅医療だが,そこには病院や施設とは多少異なる褥瘡ケアの確かな方法論がある.本書では在宅医療のプロフェッショナル達が現場で行っている褥瘡ケアについて実践を本位に詳説した.明日からの在宅診療に実際に役立てていただくための1冊.
- 序文
- 目次
序文
ついに本書第2版をお手元に届けられるようになった.本書は,様々な意見がある在宅褥瘡治療において,それらを均等に紹介している.特に第1版よりラップ療法について収載してきたが,近年その有用性が認められガイドラインにも記載されるようになった.
消毒作用のある薬剤の使用についても様々な意見があったが,第1版でも紹介し,その後これらの方法も有用であると高い推奨度で新たなガイドラインに掲載されるようになった.
創傷被覆材についても,エビデンスがさらに集積され,在宅では3週間以上使用できることになった.本書が第1版で強く求めていたことである.今後,在宅における創傷被覆材使用が現場やガイドラインにどのように影響するのか,今はまだよくわからない.しかし,在宅における選択肢が増えたことは間違いなく,歓迎しうるものであろう.
在宅では患者やその家族は生活をしながら療養を行っている.その中では様々な事情があり,必ずしも医学的に最善の治療を受け入れられるわけではない.その事情や「ものがたり」に配慮しながらケアを行うことが,在宅医療の重要な一面であることは間違いのないことである.
今後日本は高齢社会を迎え,褥瘡対策は重要な役割を担うことになる.さらに療養の場所は病院から在宅に移ることは国策となっており,在宅における褥瘡対策はますます重要性を帯びることになる.在宅ではどのような褥瘡ケアが行われるべきなのだろうか.きちんとした理論やエビデンスに基づいた局所治療,本人や家族の「ものがたり」に配慮した様々な気配りや工夫,お互いがその専門性をリスペクトしあうような多職種連携,治癒困難な褥瘡の場合は様々な病態を考慮しながら苦痛を緩和し安楽に過ごさせるケアなどが期待される.そのために知っておくべき知識,知恵や工夫,制度を改めて第2版では収載した.読者がこれから在宅褥瘡ケアにかかわる際に参考にしていただければ幸いと考える.
2016年1月
鈴木 央
消毒作用のある薬剤の使用についても様々な意見があったが,第1版でも紹介し,その後これらの方法も有用であると高い推奨度で新たなガイドラインに掲載されるようになった.
創傷被覆材についても,エビデンスがさらに集積され,在宅では3週間以上使用できることになった.本書が第1版で強く求めていたことである.今後,在宅における創傷被覆材使用が現場やガイドラインにどのように影響するのか,今はまだよくわからない.しかし,在宅における選択肢が増えたことは間違いなく,歓迎しうるものであろう.
在宅では患者やその家族は生活をしながら療養を行っている.その中では様々な事情があり,必ずしも医学的に最善の治療を受け入れられるわけではない.その事情や「ものがたり」に配慮しながらケアを行うことが,在宅医療の重要な一面であることは間違いのないことである.
今後日本は高齢社会を迎え,褥瘡対策は重要な役割を担うことになる.さらに療養の場所は病院から在宅に移ることは国策となっており,在宅における褥瘡対策はますます重要性を帯びることになる.在宅ではどのような褥瘡ケアが行われるべきなのだろうか.きちんとした理論やエビデンスに基づいた局所治療,本人や家族の「ものがたり」に配慮した様々な気配りや工夫,お互いがその専門性をリスペクトしあうような多職種連携,治癒困難な褥瘡の場合は様々な病態を考慮しながら苦痛を緩和し安楽に過ごさせるケアなどが期待される.そのために知っておくべき知識,知恵や工夫,制度を改めて第2版では収載した.読者がこれから在宅褥瘡ケアにかかわる際に参考にしていただければ幸いと考える.
2016年1月
鈴木 央
目次
第1章 在宅における褥瘡ケアの特殊性
1.病院か自宅か
2.家族介護が前提であること
3.看護師や薬剤師,リハビリテーションスタッフとの連携
4.ホームヘルパーおよびケアワーカーとの連携
5.特別訪問看護指示書・主治医意見書
第2章 褥瘡の基礎知識
1.褥瘡のリスクアセスメント
2.創傷管理
A.急性期の褥瘡管理
B.慢性期の褥瘡管理
(1)DESIGNによる定期的評価
(2)TIMEコンセプト
3.全身管理
A.体圧分散寝具の使用
B.ポジショニング
C.清潔保持とスキンケア
D.尾骨部の褥瘡とシーティング
E.栄 養
4.下肢慢性創傷
A.重症下肢虚血と壊疽
B.静脈性下肢潰瘍
第3章 褥瘡を予防する
1.ポジショニング
2.体圧分散寝具の選択
A.体圧分散マットレス
B.体圧分散マットレスの選択
(1)ウレタンフォームマットレスの特徴
(2)エアマットレスの特徴
3.体位交換
4.栄 養
A.当院の特性
B.褥瘡予防と栄養アセスメント
C.介護食で必要栄養量を補う工夫
D.介護食の実際
第4章 褥瘡のアセスメント
1.なぜ褥瘡ができたのか
A.褥瘡のナラティブ
B.介護―病状―栄養状態のバランス
C.各種の褥瘡予防スケールについて
2.褥瘡を観察する
A.深 さ
B.褥瘡の病期
(1)慢性期の褥瘡病期
(2)褥瘡急性期の問題
C.感染の有無
D.ポケット形成の有無
3.治せる褥瘡と治せない褥瘡
ワンポイントアドバイス
・各種の深度分類やアセスメントツールとの付き合い方
第5章 治 療
1.全身的アプローチ
A.介護を導入する
(1)介護保険制度のあらまし
(2)どんなケアマネジャーを選ぶか
(3)ケアマネジャーは何を行っているのか
(4)介護職ができること,できないこと
B.訪問看護を導入する
(1)訪問看護サービスの導入方法
(2)皮膚・排泄ケア認定看護師と訪問看護ステーション看護師との協働
C.栄養管理
(1)栄養サポートの基礎
(2)褥瘡発生時の栄養管理の実際
D.摂食嚥下障害への対応 新谷浩和
(1)摂食嚥下
(2)虚弱・サルコペニア・栄養マネジメント
(3)在宅での摂食嚥下機能評価
(4)摂食嚥下障害への対応
E.全人的対応
(1)なぜ褥瘡治療に全人的対応が必要なのか
(2)家族へのケア
(3)今後の治療方針の選択をめぐって
2.局所的アプローチの基本戦略
A.近年の褥瘡局所療法をめぐる状況
B.褥瘡治癒にとって重要な因子
(1)褥瘡の深さ
(2)湿潤環境
(3)感染への対処
(4)褥瘡急性期における処置
(5)炎症期の褥瘡に対する処置
(6)肉芽形成期の褥瘡に対する処置
(7)表皮形成期の褥瘡に対する処置
(8)ポケット形成褥瘡への対応
C.褥瘡局所治療の3原則
(1)湿潤環境の維持
(2)組織障害性のある薬剤・材料を極力使用しない
(3)創の洗浄,浸出物の除去
D.在宅において使用しやすい方法とは
3.局所的アプローチの実際
A.褥瘡対処の実例
(1)適切なケアの継続により少ない往診回数で治癒した例
(2)抗凝固薬内服中のために病院で切開を行った例
(3)局所治療を工夫して閉創にこぎつけた例
(4)病院との連携で治癒にいたった例
B.外科処置の基本手技
(1)外科処置に必要な器具とその使い方
(2)外科処置の基本と道具の扱い方
(3)壊死組織の除去
(4)ポケットの開放
(5)膿瘍の切開
(6)難治性褥瘡の治癒過程(約8か月の経過)
(7)当院での褥瘡処置原則
4.ラップ療法/開放性湿潤療法(OpWT)の実際
A.褥瘡のラップ療法/開放性湿潤療法(OpWT)
(1)ラップ療法とは?
(2)なぜ,ラップ療法(OpWT)で褥瘡が治るのか?
(3)ラップ療法(OpWT)の基本的な考え方
(4)ラップ療法(OpWT)の実際
(5)在宅医療の褥瘡管理は,ラップ療法(OpWT)で十分
B.医療法人ナカノ会ナカノ訪問看護ステーションでのラップ療法(OpWT)の取り組み〜多職種連携におけるラップ療法(OpWT)の実際〜
(1)症例提示
(2)課題症例
(3)ラップ療法(OpWT)に関するアンケート調査
(4)ナカノ式褥瘡評価基準値の設定とナカノ式褥瘡評価基準表の作成
(5)主治医との連携の問題点
C.ラップ療法(OpWT)と在宅医療
(1)在宅医療と相性のよいラップ療法(OpWT)
(2)ラップ療法(OpWT)は在宅医療だという哲学(コンセプト)
5.在宅でもできる陰圧閉鎖療法の実際
A.陰圧閉鎖療法とは?
B.陰圧閉鎖療法の歴史
C.陰圧閉鎖療法のしくみ
D.陰圧閉鎖療法の利点
(1)創傷治癒環境の充実
(2)処置の回数の軽減
(3)費用対効果
E.専用機器の導入
F.在宅でも活用できる陰圧閉鎖療法
G.外来で使用できる専用機器の導入
H.在宅での陰圧閉鎖療法を普及させるために
6.皮膚の保湿清潔ケアの実際
A.皮膚の清潔方法
B.保 湿
C.保 護
(1)物理的要因の排除
(2)化学的要因の排除
7.褥瘡ケアにおける多職種連携の実際
A.“点”での関わりとチーム医療
B.褥瘡の予防〜家族や介護者との関わり
C.治療の開始
D.ケアにおける多職種連携〜情報の共有
(1)医療者(医師と訪問看護師)の役割
(2)非医療者(家族やホームヘルパー)の役割
(3)介護施設(デイサービスやショートステイ)の役割
(4)ケアマネジャーの役割
8.癌性潰瘍への対応
A.疼 痛
B.出 血
(1)Oozingパターン
(2)血管性パターン
C.悪 臭
D.モーズ軟膏
ワンポイントアドバイス
・褥瘡の治癒が遅れている場合
・肉芽が大きくなりすぎた時
・巨大なポケットに遭遇した時
・専門ナースとの協働
・在宅医療とICT(情報通信技術)
第6章 治療に使用する材料ガイド
1.ドレッシング材
2.外用剤
3.体圧分散寝具
A.ウレタンフォームマットレス
B.エアマットレス
C.ハイブリッド構造マットレス
4.栄養剤
A.総合栄養食品
B.栄養機能食品
(1)蛋白質強化
(2)微量栄養素強化
C.水分・電解質の補給
D.新しい介護食品(スマイルケア食)
E.困った時には
(1)市販の介護食品を利用する場合
(2)介護食を手作りしたい場合
ワンポイントアドバイス
・外用剤の使い方
・保険診療における在宅褥瘡ケア
索 引
1.病院か自宅か
2.家族介護が前提であること
3.看護師や薬剤師,リハビリテーションスタッフとの連携
4.ホームヘルパーおよびケアワーカーとの連携
5.特別訪問看護指示書・主治医意見書
第2章 褥瘡の基礎知識
1.褥瘡のリスクアセスメント
2.創傷管理
A.急性期の褥瘡管理
B.慢性期の褥瘡管理
(1)DESIGNによる定期的評価
(2)TIMEコンセプト
3.全身管理
A.体圧分散寝具の使用
B.ポジショニング
C.清潔保持とスキンケア
D.尾骨部の褥瘡とシーティング
E.栄 養
4.下肢慢性創傷
A.重症下肢虚血と壊疽
B.静脈性下肢潰瘍
第3章 褥瘡を予防する
1.ポジショニング
2.体圧分散寝具の選択
A.体圧分散マットレス
B.体圧分散マットレスの選択
(1)ウレタンフォームマットレスの特徴
(2)エアマットレスの特徴
3.体位交換
4.栄 養
A.当院の特性
B.褥瘡予防と栄養アセスメント
C.介護食で必要栄養量を補う工夫
D.介護食の実際
第4章 褥瘡のアセスメント
1.なぜ褥瘡ができたのか
A.褥瘡のナラティブ
B.介護―病状―栄養状態のバランス
C.各種の褥瘡予防スケールについて
2.褥瘡を観察する
A.深 さ
B.褥瘡の病期
(1)慢性期の褥瘡病期
(2)褥瘡急性期の問題
C.感染の有無
D.ポケット形成の有無
3.治せる褥瘡と治せない褥瘡
ワンポイントアドバイス
・各種の深度分類やアセスメントツールとの付き合い方
第5章 治 療
1.全身的アプローチ
A.介護を導入する
(1)介護保険制度のあらまし
(2)どんなケアマネジャーを選ぶか
(3)ケアマネジャーは何を行っているのか
(4)介護職ができること,できないこと
B.訪問看護を導入する
(1)訪問看護サービスの導入方法
(2)皮膚・排泄ケア認定看護師と訪問看護ステーション看護師との協働
C.栄養管理
(1)栄養サポートの基礎
(2)褥瘡発生時の栄養管理の実際
D.摂食嚥下障害への対応 新谷浩和
(1)摂食嚥下
(2)虚弱・サルコペニア・栄養マネジメント
(3)在宅での摂食嚥下機能評価
(4)摂食嚥下障害への対応
E.全人的対応
(1)なぜ褥瘡治療に全人的対応が必要なのか
(2)家族へのケア
(3)今後の治療方針の選択をめぐって
2.局所的アプローチの基本戦略
A.近年の褥瘡局所療法をめぐる状況
B.褥瘡治癒にとって重要な因子
(1)褥瘡の深さ
(2)湿潤環境
(3)感染への対処
(4)褥瘡急性期における処置
(5)炎症期の褥瘡に対する処置
(6)肉芽形成期の褥瘡に対する処置
(7)表皮形成期の褥瘡に対する処置
(8)ポケット形成褥瘡への対応
C.褥瘡局所治療の3原則
(1)湿潤環境の維持
(2)組織障害性のある薬剤・材料を極力使用しない
(3)創の洗浄,浸出物の除去
D.在宅において使用しやすい方法とは
3.局所的アプローチの実際
A.褥瘡対処の実例
(1)適切なケアの継続により少ない往診回数で治癒した例
(2)抗凝固薬内服中のために病院で切開を行った例
(3)局所治療を工夫して閉創にこぎつけた例
(4)病院との連携で治癒にいたった例
B.外科処置の基本手技
(1)外科処置に必要な器具とその使い方
(2)外科処置の基本と道具の扱い方
(3)壊死組織の除去
(4)ポケットの開放
(5)膿瘍の切開
(6)難治性褥瘡の治癒過程(約8か月の経過)
(7)当院での褥瘡処置原則
4.ラップ療法/開放性湿潤療法(OpWT)の実際
A.褥瘡のラップ療法/開放性湿潤療法(OpWT)
(1)ラップ療法とは?
(2)なぜ,ラップ療法(OpWT)で褥瘡が治るのか?
(3)ラップ療法(OpWT)の基本的な考え方
(4)ラップ療法(OpWT)の実際
(5)在宅医療の褥瘡管理は,ラップ療法(OpWT)で十分
B.医療法人ナカノ会ナカノ訪問看護ステーションでのラップ療法(OpWT)の取り組み〜多職種連携におけるラップ療法(OpWT)の実際〜
(1)症例提示
(2)課題症例
(3)ラップ療法(OpWT)に関するアンケート調査
(4)ナカノ式褥瘡評価基準値の設定とナカノ式褥瘡評価基準表の作成
(5)主治医との連携の問題点
C.ラップ療法(OpWT)と在宅医療
(1)在宅医療と相性のよいラップ療法(OpWT)
(2)ラップ療法(OpWT)は在宅医療だという哲学(コンセプト)
5.在宅でもできる陰圧閉鎖療法の実際
A.陰圧閉鎖療法とは?
B.陰圧閉鎖療法の歴史
C.陰圧閉鎖療法のしくみ
D.陰圧閉鎖療法の利点
(1)創傷治癒環境の充実
(2)処置の回数の軽減
(3)費用対効果
E.専用機器の導入
F.在宅でも活用できる陰圧閉鎖療法
G.外来で使用できる専用機器の導入
H.在宅での陰圧閉鎖療法を普及させるために
6.皮膚の保湿清潔ケアの実際
A.皮膚の清潔方法
B.保 湿
C.保 護
(1)物理的要因の排除
(2)化学的要因の排除
7.褥瘡ケアにおける多職種連携の実際
A.“点”での関わりとチーム医療
B.褥瘡の予防〜家族や介護者との関わり
C.治療の開始
D.ケアにおける多職種連携〜情報の共有
(1)医療者(医師と訪問看護師)の役割
(2)非医療者(家族やホームヘルパー)の役割
(3)介護施設(デイサービスやショートステイ)の役割
(4)ケアマネジャーの役割
8.癌性潰瘍への対応
A.疼 痛
B.出 血
(1)Oozingパターン
(2)血管性パターン
C.悪 臭
D.モーズ軟膏
ワンポイントアドバイス
・褥瘡の治癒が遅れている場合
・肉芽が大きくなりすぎた時
・巨大なポケットに遭遇した時
・専門ナースとの協働
・在宅医療とICT(情報通信技術)
第6章 治療に使用する材料ガイド
1.ドレッシング材
2.外用剤
3.体圧分散寝具
A.ウレタンフォームマットレス
B.エアマットレス
C.ハイブリッド構造マットレス
4.栄養剤
A.総合栄養食品
B.栄養機能食品
(1)蛋白質強化
(2)微量栄養素強化
C.水分・電解質の補給
D.新しい介護食品(スマイルケア食)
E.困った時には
(1)市販の介護食品を利用する場合
(2)介護食を手作りしたい場合
ワンポイントアドバイス
・外用剤の使い方
・保険診療における在宅褥瘡ケア
索 引