カテゴリー: 高齢者医学 | 教養課程の医学教科書
老年医学への招待
1版
洛和会京都治験・臨床研究支援センター 所長/広島大学 名誉教授
中村重信 著
広島国際大学保健医療学部 教授 三森康世 著
定価
2,750円(本体 2,500円 +税10%)
- A5判 291頁
- 2010年11月 発行
- ISBN 978-4-525-20911-7
高齢者が増え続けるわが国では「高齢者とのつき合いかた」は非常に大きな課題となっている.本書は,老年医学に関する総論から,老化がもたらす器官の変化や各種疾患,治療・ケア・リハビリテーションまで,高齢者とうまくつき合っていくための知識をやさしい視点でわかりやすく解説した.高齢者とかかわるすべての医療従事者におすすめできる.
- 序文
- 目次
序文
「子どもは大人を小さくしたものではない」とは,小児科の授業で最初に聞いた言葉である.同様に,「高齢者は成人が年を経ただけのものではない」.最近,わが国で小児科医が不足していることが大きな問題になっている.
しかし,高齢者を専門に診療する「老年科医」が足りないという話は聞いたことがない.そもそも,老年科を標榜する病院や医師がわが国では極めて少ない.わが国だけでなく,ほかの先進国でも同じようなありさまである.
けれども,認知症を介護する人たちは国を問わず「老年科医」を待ち焦がれている.「どうして,老年病を専門にしている医師が少ないのだろうか?」とお互いに不思議がっている.「老年科はセクシーでないためなのだろうか」など,妙な話も交わされる.
高齢者が増え続けるわが国では,老年科専門医不足は深刻な問題であるにもかかわらず,少なからず放置されている.それではいけない!
高齢の患者さんに日々接して苦労されている医療,看護,リハビリテーション,介護にかかわっている方々は不満がたまっておられるに違いない.
このような方々に少しでもお役に立てればと思い,本書を二人で準備した.著者の二人はもともと医学部の老年医学教室に所属して,高齢者を診療していた.その頃よりかなりの時が経たが,現在は二人とも看護,リハビリテーション,介護の学生諸君に老年医学を講義している.
ただ,これらの講義をするに当たって,一貫して高齢者への接し方を医学的に解説した書物が見当たらない.近年,医学の専門化が進み,老年医学のように多分野にわたる本になると,どうしても分担執筆の形式をとらざるを得ない.できれば筋の通った老年医学を志向するため,本書を上梓することにした.できるだけ読みやすく,わかりやすい本にしたいと努力した.ただ,医学は刻々進歩しているため,最新の情報も盛り込んだ.
なお,本書はリハビリテーション・介護従事者の方々にも読んでほしいと考えたため,第Ⅱ章の神経の項が詳しくなったことをご了承いただきたい.
2010年10月
中村重信
三森康世
しかし,高齢者を専門に診療する「老年科医」が足りないという話は聞いたことがない.そもそも,老年科を標榜する病院や医師がわが国では極めて少ない.わが国だけでなく,ほかの先進国でも同じようなありさまである.
けれども,認知症を介護する人たちは国を問わず「老年科医」を待ち焦がれている.「どうして,老年病を専門にしている医師が少ないのだろうか?」とお互いに不思議がっている.「老年科はセクシーでないためなのだろうか」など,妙な話も交わされる.
高齢者が増え続けるわが国では,老年科専門医不足は深刻な問題であるにもかかわらず,少なからず放置されている.それではいけない!
高齢の患者さんに日々接して苦労されている医療,看護,リハビリテーション,介護にかかわっている方々は不満がたまっておられるに違いない.
このような方々に少しでもお役に立てればと思い,本書を二人で準備した.著者の二人はもともと医学部の老年医学教室に所属して,高齢者を診療していた.その頃よりかなりの時が経たが,現在は二人とも看護,リハビリテーション,介護の学生諸君に老年医学を講義している.
ただ,これらの講義をするに当たって,一貫して高齢者への接し方を医学的に解説した書物が見当たらない.近年,医学の専門化が進み,老年医学のように多分野にわたる本になると,どうしても分担執筆の形式をとらざるを得ない.できれば筋の通った老年医学を志向するため,本書を上梓することにした.できるだけ読みやすく,わかりやすい本にしたいと努力した.ただ,医学は刻々進歩しているため,最新の情報も盛り込んだ.
なお,本書はリハビリテーション・介護従事者の方々にも読んでほしいと考えたため,第Ⅱ章の神経の項が詳しくなったことをご了承いただきたい.
2010年10月
中村重信
三森康世
目次
Ⅰ 老年医学とは ―高齢者とつきあうには老年医学が役立つ―
1 老化とは ―歳を重ねると人はどう変わるか―
A 歳をとれば老化するのか
B 時間と老化
C 平均寿命と平均余命
D 人によって老け方が違う
E 老化は病気か
F 病的老化を防ぐ
G 老化とは
H 共 生
2 老年病とは ―高齢者に特有な病気はあるか―
A 老年病は老化と関係が深い
B 老年病の特徴
C 老年病と検査
D 老年病に特有の病状
E 老年病への対応
3 老年医学的総合機能評価 ―高齢者の機能とその障害を総合的に評価する―
A 老年医学的総合機能評価(CGA)とは
B CGAに含まれる内容
C CGAの適応と有用性
D CGAの今後
4 コメディカルと老年医学のかかわり ―高齢者のチーム医療―
A コメディカルに老年医学が必要なわけ
B 高齢者医療を支える人たち
C 高齢者医療にかかわるときの原則
5 高齢者や家族との話し合い ―病気についての情報をどう伝えるか―
A 病態に関する情報
B 告知ということ
C 告知の義務
D 自己決定権
E 病態を上手に伝えるために
Ⅱ 人の老化と老年病 ―老化を基礎にして老年病になる―
6 神経系の老化と病気 ―神経が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 神経系の老化
B 高齢者の神経の病気
ⅰ)脳卒中
ⅱ)認知症
ⅲ)パーキンソン病
ⅳ)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ⅴ)小脳変性症
ⅵ)髄膜脳炎
ⅶ)免疫性神経疾患
ⅷ)末梢神経障害
ⅸ)脳腫瘍
ⅹ)頭部外傷
7 循環器系の老化と病気 ―心臓や血管が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 高血圧
B 動脈硬化
C 老化に伴う心臓の変化
D 心筋梗塞
E 高齢者のその他の循環器病
8 呼吸器系の老化と病気 ―呼吸器の老化が老年病を起こす―
A 老化による呼吸器の変化
B 高齢者の呼吸器の病気
9 代謝・内分泌系の老化と病気 ―ホルモンや代謝は高齢者でどう変わり,病気になるか―
A 代謝回転と老化
B 糖代謝
C 脂質代謝
D 甲状腺
E その他のホルモンや物質の老化による変化と病気
10 消化器系の老化と病気 ―胃や腸などが老化によりどう変わり,病気になるか―
A 老化による消化器の変化
B 高齢者の消化器病
11 皮膚・感覚器系の老化と病気 ―眼,耳,鼻,皮膚が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 眼の老化による変化
B 眼の老化による機能変化
C 眼の病気
D 難聴の分類
E 聴覚機能の評価
F 聴覚の病的状態
G 老化による嗅覚の変化
H 老化による皮膚の変化
I 皮膚の病気
12 骨・運動器の老化とその病気 ―骨,関節,筋肉が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 老化による骨の変化
B 老化による運動器の変化
C 高齢者の骨・運動器の病気
13 腎泌尿器・生殖器系の老化と病気 ―腎臓,膀胱,生殖器が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 老化による腎臓の変化
B 高齢者の腎臓の病気
C 加齢による尿路・生殖器の変化
D 高齢者の尿路・生殖器の病気
E 高齢者と性
14 免疫・血液系の老化と病気 ―身体の防御が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 血液の老化による変化
B 高齢者における血液の病気
C 老化と生体防御機構の変化
D 高齢者の膠原病
15 高齢者の感染症 ―感染症は老化により,どう変わるか―
A 高齢者の感染症
B 高齢者に多い感染症
Ⅲ 老年病の治療,ケア,リハビリテーション,福祉 ―高齢者が楽しく暮らせるようなマネジメント―
16 老年病の予防と治療 ―老年病を予防・治療するとき注意すべき点―
A 老年病の予防
B 薬物療法の問題点
C 高齢者の栄養治療
D 外科治療とその問題点
17 高齢者のリハビリテーション ―年齢によるリハビリテーションの仕方の違い―
A リハビリテーションとは
B 障害の評価
C 高齢者のリハビリテーションの問題点
D 高齢者のリハビリテーションの実際
E 高齢者のリハビリテーションはチームリハビリテーションである
18 リスク管理 ―高齢者の安全を守るために何をすべきか―
A 転 倒
B 誤 嚥
C 褥 瘡
D 脱 水
E 意識障害・失神・てんかん
19 老年病に対する社会的対応 ―社会と高齢者のかかわり合い―
A 介護保険制度
B 老人施設
C 在宅サービス
D 地域密着型サービス
E 介護保険以外のサービス
F 介護保険制度の問題点と対策
G 成年後見制度
H 運転免許
20 終末期医療・ケア ―高齢者が死をどう迎え,どうケアするか―
A 高齢者の死の現況
B 高齢者の終末期の定義とその特徴
C 高齢者終末期医療・ケアの目標
D 摂食障害に対する対応
E 事前指定書
21 老年医学が目指すもの ―これからの老年医学―
A 高齢者の多様性
B 高齢者の尊厳
C 医療の役割
D コメディカルの役割
E これからの老年医学
おわりに
索引
1 老化とは ―歳を重ねると人はどう変わるか―
A 歳をとれば老化するのか
B 時間と老化
C 平均寿命と平均余命
D 人によって老け方が違う
E 老化は病気か
F 病的老化を防ぐ
G 老化とは
H 共 生
2 老年病とは ―高齢者に特有な病気はあるか―
A 老年病は老化と関係が深い
B 老年病の特徴
C 老年病と検査
D 老年病に特有の病状
E 老年病への対応
3 老年医学的総合機能評価 ―高齢者の機能とその障害を総合的に評価する―
A 老年医学的総合機能評価(CGA)とは
B CGAに含まれる内容
C CGAの適応と有用性
D CGAの今後
4 コメディカルと老年医学のかかわり ―高齢者のチーム医療―
A コメディカルに老年医学が必要なわけ
B 高齢者医療を支える人たち
C 高齢者医療にかかわるときの原則
5 高齢者や家族との話し合い ―病気についての情報をどう伝えるか―
A 病態に関する情報
B 告知ということ
C 告知の義務
D 自己決定権
E 病態を上手に伝えるために
Ⅱ 人の老化と老年病 ―老化を基礎にして老年病になる―
6 神経系の老化と病気 ―神経が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 神経系の老化
B 高齢者の神経の病気
ⅰ)脳卒中
ⅱ)認知症
ⅲ)パーキンソン病
ⅳ)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ⅴ)小脳変性症
ⅵ)髄膜脳炎
ⅶ)免疫性神経疾患
ⅷ)末梢神経障害
ⅸ)脳腫瘍
ⅹ)頭部外傷
7 循環器系の老化と病気 ―心臓や血管が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 高血圧
B 動脈硬化
C 老化に伴う心臓の変化
D 心筋梗塞
E 高齢者のその他の循環器病
8 呼吸器系の老化と病気 ―呼吸器の老化が老年病を起こす―
A 老化による呼吸器の変化
B 高齢者の呼吸器の病気
9 代謝・内分泌系の老化と病気 ―ホルモンや代謝は高齢者でどう変わり,病気になるか―
A 代謝回転と老化
B 糖代謝
C 脂質代謝
D 甲状腺
E その他のホルモンや物質の老化による変化と病気
10 消化器系の老化と病気 ―胃や腸などが老化によりどう変わり,病気になるか―
A 老化による消化器の変化
B 高齢者の消化器病
11 皮膚・感覚器系の老化と病気 ―眼,耳,鼻,皮膚が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 眼の老化による変化
B 眼の老化による機能変化
C 眼の病気
D 難聴の分類
E 聴覚機能の評価
F 聴覚の病的状態
G 老化による嗅覚の変化
H 老化による皮膚の変化
I 皮膚の病気
12 骨・運動器の老化とその病気 ―骨,関節,筋肉が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 老化による骨の変化
B 老化による運動器の変化
C 高齢者の骨・運動器の病気
13 腎泌尿器・生殖器系の老化と病気 ―腎臓,膀胱,生殖器が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 老化による腎臓の変化
B 高齢者の腎臓の病気
C 加齢による尿路・生殖器の変化
D 高齢者の尿路・生殖器の病気
E 高齢者と性
14 免疫・血液系の老化と病気 ―身体の防御が老化によりどう変わり,病気になるか―
A 血液の老化による変化
B 高齢者における血液の病気
C 老化と生体防御機構の変化
D 高齢者の膠原病
15 高齢者の感染症 ―感染症は老化により,どう変わるか―
A 高齢者の感染症
B 高齢者に多い感染症
Ⅲ 老年病の治療,ケア,リハビリテーション,福祉 ―高齢者が楽しく暮らせるようなマネジメント―
16 老年病の予防と治療 ―老年病を予防・治療するとき注意すべき点―
A 老年病の予防
B 薬物療法の問題点
C 高齢者の栄養治療
D 外科治療とその問題点
17 高齢者のリハビリテーション ―年齢によるリハビリテーションの仕方の違い―
A リハビリテーションとは
B 障害の評価
C 高齢者のリハビリテーションの問題点
D 高齢者のリハビリテーションの実際
E 高齢者のリハビリテーションはチームリハビリテーションである
18 リスク管理 ―高齢者の安全を守るために何をすべきか―
A 転 倒
B 誤 嚥
C 褥 瘡
D 脱 水
E 意識障害・失神・てんかん
19 老年病に対する社会的対応 ―社会と高齢者のかかわり合い―
A 介護保険制度
B 老人施設
C 在宅サービス
D 地域密着型サービス
E 介護保険以外のサービス
F 介護保険制度の問題点と対策
G 成年後見制度
H 運転免許
20 終末期医療・ケア ―高齢者が死をどう迎え,どうケアするか―
A 高齢者の死の現況
B 高齢者の終末期の定義とその特徴
C 高齢者終末期医療・ケアの目標
D 摂食障害に対する対応
E 事前指定書
21 老年医学が目指すもの ―これからの老年医学―
A 高齢者の多様性
B 高齢者の尊厳
C 医療の役割
D コメディカルの役割
E これからの老年医学
おわりに
索引