カテゴリー: 地域医療 | リハビリテーション医学
リハビリテーションとしての在宅医療
1版
柳原リハビリテーション病院 藤井博之 編集
喜平リハビリテーションクリニック 山口 明 編集
北島病院リハビリテーション部 田中久美子 編集
定価
3,520円(本体 3,200円 +税10%)
- A5判 213頁
- 2011年10月 発行
- ISBN 978-4-525-20921-6
在宅患者の多くは心身に障害を持ち,ADLの維持・向上を目指すリハビリテーション医療の知識や技術は,在宅医療に有効である.本書では多職種との連携でリハビリテーション医療を患者に提供するためのノウハウを具体的に紹介する.在宅患者の暮らしを変える,一歩進んだ在宅医療を可能にする必携書.
- 序文
- 目次
- 書評
序文
在宅医療は,リハビリテーション医療でなければならない.
在宅診療に携わっている医師の多くは,本書のこのメッセージを,たとえ部分的にせよ,肯定的に受けとめてくださるのではないか.
実際,リハ医療の方法を取り入れることで在宅診療は,患者の状態が落ち着いている場合でも,平穏な慢性期医療のイメージから臨床的刺激とダイナミズムに満ちた営みに変貌する.
かねてから在宅診療を行う医師は,寝たきりで暮らす在宅障害者,座敷牢を思い出させるような環境に閉じ込められた精神障害者,時には経管栄養と気管切開の処置を要する障害児の方々を,医療面で支えてきた.常に当事者の暮らしの現場に接しお話を聴き,医師としてのあり方を自ら問い直す経験を重ねてもきた.しかし,診療の提供者としては,血圧を測り聴診器をあて時には採血検査をし薬を処方し,病状に問題が残るとき病院に紹介状を書くのが精一杯という場合も多かった.
一方,リハ医療の世界でリハ医は,症状を機能障害や活動制限,参加制約と捉え,そこからの回復を図ると同時に生活環境を変更するという,両側からの支援を目指すダイナミックな視角と技を整えてきた.障害を引き受けながら暮らす人々を,病院・施設で,在宅で,仕事やスポーツ,レクリエーションなど幅広い社会参加の場面で,生涯にわたって理解し支える役割を引き受けてきた.また,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士らリハ医療のシンボルとなったスタッフや,医療職とは異なる方法や価値観で当事者とその周囲を支援するソーシャルワーカーをはじめ,多職種が協働する可能性にも逸早く光をあててきた.
2000 年を境に,回復期リハ病棟での集中的な機能訓練と退院支援,介護保険制度の下での通所リハ・訪問リハ・福祉機器を使った支援が制度化され,医療・介護におけるリハの現実的役割は拡大したようにみえる.
しかし,急性期医療の中へ,そして施設や在宅,地域社会での生活と介護の奥深くまで,リハの技術,思想,運動が広く浸透し応用されるには,課題が山積している.在宅医療の分野はその最も重要な舞台である.
在宅医療の世界は技術面でも制度面でも大きく進歩・変容してきた.その成果の一つが,シリーズ「在宅医療の技とこころ」に他ならない.本書が加えられることで,多くの在宅診療医がリハ医としての活動を進める一助になれば幸いである.
依頼を受けてから発刊まで2 年以上の長期間を要した.ひとえに編集代表者の責任である.非力を顧みず編著者を引き受けたのは,研修医時代から在宅医療とリハに関心を持ち続けてきたこだわりからであった.病院リハ部門を率いるリハ専門医とかかりつけ医・在宅診療医の経験を合わせもつ山口明医師,病院・施設・在宅の幅広い分野で技術とシステムを追究してきた田中久美子理学療法士が参加されたことで,本書はようやく出版に至った.
ご協力,ご支援を頂いた多くの皆さんに感謝して,序にかえたい.
2011年8月
編著者を代表して 藤井博之
在宅診療に携わっている医師の多くは,本書のこのメッセージを,たとえ部分的にせよ,肯定的に受けとめてくださるのではないか.
実際,リハ医療の方法を取り入れることで在宅診療は,患者の状態が落ち着いている場合でも,平穏な慢性期医療のイメージから臨床的刺激とダイナミズムに満ちた営みに変貌する.
かねてから在宅診療を行う医師は,寝たきりで暮らす在宅障害者,座敷牢を思い出させるような環境に閉じ込められた精神障害者,時には経管栄養と気管切開の処置を要する障害児の方々を,医療面で支えてきた.常に当事者の暮らしの現場に接しお話を聴き,医師としてのあり方を自ら問い直す経験を重ねてもきた.しかし,診療の提供者としては,血圧を測り聴診器をあて時には採血検査をし薬を処方し,病状に問題が残るとき病院に紹介状を書くのが精一杯という場合も多かった.
一方,リハ医療の世界でリハ医は,症状を機能障害や活動制限,参加制約と捉え,そこからの回復を図ると同時に生活環境を変更するという,両側からの支援を目指すダイナミックな視角と技を整えてきた.障害を引き受けながら暮らす人々を,病院・施設で,在宅で,仕事やスポーツ,レクリエーションなど幅広い社会参加の場面で,生涯にわたって理解し支える役割を引き受けてきた.また,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士らリハ医療のシンボルとなったスタッフや,医療職とは異なる方法や価値観で当事者とその周囲を支援するソーシャルワーカーをはじめ,多職種が協働する可能性にも逸早く光をあててきた.
2000 年を境に,回復期リハ病棟での集中的な機能訓練と退院支援,介護保険制度の下での通所リハ・訪問リハ・福祉機器を使った支援が制度化され,医療・介護におけるリハの現実的役割は拡大したようにみえる.
しかし,急性期医療の中へ,そして施設や在宅,地域社会での生活と介護の奥深くまで,リハの技術,思想,運動が広く浸透し応用されるには,課題が山積している.在宅医療の分野はその最も重要な舞台である.
在宅医療の世界は技術面でも制度面でも大きく進歩・変容してきた.その成果の一つが,シリーズ「在宅医療の技とこころ」に他ならない.本書が加えられることで,多くの在宅診療医がリハ医としての活動を進める一助になれば幸いである.
依頼を受けてから発刊まで2 年以上の長期間を要した.ひとえに編集代表者の責任である.非力を顧みず編著者を引き受けたのは,研修医時代から在宅医療とリハに関心を持ち続けてきたこだわりからであった.病院リハ部門を率いるリハ専門医とかかりつけ医・在宅診療医の経験を合わせもつ山口明医師,病院・施設・在宅の幅広い分野で技術とシステムを追究してきた田中久美子理学療法士が参加されたことで,本書はようやく出版に至った.
ご協力,ご支援を頂いた多くの皆さんに感謝して,序にかえたい.
2011年8月
編著者を代表して 藤井博之
目次
1 章 在宅診療医こそ使えるリハビリテーション医療を
Ⅰ. リハビリテーションは在宅医療の必須要件
a. 医師としてなにができるか
b. リハ診療でできること
Ⅱ. 在宅医療で,いまこそリハ診療を
a. クローズアップされる在宅リハ
b. リハの急性期・回復期・維持期・そして終末期
c. 求められる地域総合リハ
Ⅲ. 在宅リハあってこそ地域リハ
a. 出発点としての在宅生活と在宅リハ
b. 在宅診療医こそ地域リハ医
c. 在宅診療医が地域リハ医になるために
2 章 在宅医がリハビリテーションに取り組むときに
Ⅰ. その人に適う生活を再建するのが先ず在宅リハビリテーションの目的
Ⅱ. 在宅リハビリテーションはどのように始まるか
a. 急性期医療機関で,あるいは回復期リハ専門病棟で十分なリハが実施されて,さあ在宅へと
は単純にいかに場合がよくみられる
b. 回復期リハの病棟で在院期間オーバーとされ在宅へ退院してくる例も少なくはない
c. 突発的なアクシデント時に迅速な医療・リハの対応が必要な場合は結構多い
d. 放っておくと徐々に機能低下するケースにはしばしば出会う
Ⅲ. 在宅医療と街づくり
Ⅳ. リハ患者データバンクの活用
3 章 在宅医がどうリハビリテーションに関与するか
Ⅰ. 生活を支えるリハビリテーション
a. 在宅医療とリハビリテーション
b. 在宅生活を継続的に支えるために
c. リハビリテーションスタッフとの連携とその養成
Ⅱ. 退院からの在宅新規導入
Ⅲ. 在宅医療での継続的リハビリテーション
a. 在宅生活の中で生活機能を維持・向上させる
Ⅳ. 身体疾患などで入院しADL 低下したときの入院・退院援助と在宅再導入
a.「 退院前の自宅訪問」と「自宅に準備するもの」
b. 病院・在宅スタッフとの「退院前合同カンファレンス」で在宅生活のイメー
ジを本人や家族と創る
Ⅴ. 在宅で生活機能低下をきたしたときのブースター入院
Ⅵ. 在宅はチームで支援する
4 章 在宅リハビリテーションのための実践的なチームづくり
Ⅰ. チームをつくる
a. チームはあるのか,つくるのか
b. 今いるメンバーから考える
c. 問題領域と専門職・専門機関
d. 行政機関,相談機関の積極的活用
Ⅱ. チームを動かす
a. 専門職の連携
b. 互いの守備範囲を理解する
c.「 困難ケース」を支えるには
Ⅲ. 陥りやすい諸問題
a. スーパードクターは必要か
b. リハビリテーションはリハ専門職・専門機関が行うものか
c. 医療リハビリテーションと介護リハビリテーション
d. 方針共有のない「連携」
5 章 生活機能と障害をチームで評価する
Ⅰ. 患者の全体像を共有する
Ⅱ. バリアフリー
Ⅲ. 心身機能・身体構造をみる
Ⅳ. 生活機能と障害を評価する
Ⅴ. 活動,参加,環境をみる
6 章 目標(ゴール)をどう立てるか
Ⅰ. 本人の希望を聴き取る
Ⅱ. 診断と病歴を把握する
Ⅲ. 所見をとる
Ⅳ. 住環境をみる
Ⅴ. 予後を予測する
Ⅵ. 優先順位をつける
Ⅶ. 短期目標と長期目標
7 章 在宅医療で必要なリハビリテーションの評価とテクニック
Ⅰ. 全身状態と心身の活動能力をいかに維持・管理するか
Ⅱ. 姿勢管理
a. なぜ姿勢を管理することが大切か
b. 姿勢の持つ意味
c. 悪い姿勢に伴う問題点
d. 基本姿勢(臥位・座位)を評価する視点を持つ
e. 姿勢管理のテクニック(ポジショニング)
Ⅲ. 正常な動作を介護に生かす
a. 不適切な介護とその有害性
b. 介護における正常動作の援用
Ⅳ. 効率的な動作を基本とする介助テクニック
a. 正常な動作と介助方法(ベッド上仰臥位)
b. ADL の組み立て
8 章 ADL と生活の質を高める住環境整備
Ⅰ. 住環境整備で生活の質が変わる
a. 住環境整備の位置づけと意義
b. 住環境整備(住宅改修と福祉機器)の導入と評価ポイント
Ⅱ. 福祉機器導入の意義
a. 福祉機器の選び方と使い方
b. 安楽に眠る・ベッド上の動きを助けるためのモノ選び:マットレス
c. 安全に寝起きするためのモノ選び:ベッドとその周辺用具
d. ベッドから離床するためのモノ選び:ベッド上での移動・移乗用具
e. 座位活動のためのモノ選び:車いす・いす
f. ADL の自立支援を促すモノ選び:自助具など
g. 移動し活動するためのモノ選び:歩行補助用具
h. 生活の拡大:「福祉車両」と称される自動車
i. コミュニケーションを支援するモノ選び
Ⅲ. モチベーションを引き出す
9 章 疾患別・状態別のリハビリテーション・プログラム例
A.脳血管障害
Ⅰ. 脳血管障害(脳卒中)医療連携をめぐって
Ⅱ. 脳卒中リハの到達点
Ⅲ. いよいよ脳卒中患者のお宅を訪問する
a. 具体的診察は
b. リハ診察の手順(MATRIX GRAPE)
c. 訪問リハ処方
B.骨折と運動器疾患
Ⅰ. 大腿骨近位部骨折
Ⅱ. 変形性膝関節症
Ⅲ. 腰部脊柱管狭窄症
Ⅳ. 関節リウマチ
C.廃用症候群
Ⅰ. 廃用症候群の定義
Ⅱ. 廃用症候群の障害学的特徴と「悪循環」
Ⅲ.「 寝たきり」でなくても進行する廃用症候群
D.認知症
Ⅰ. 早期介入
a. 早期介入
b. 軽度認知障害
c. 診断
Ⅱ. リハビリテーション
a. 認知リハビリテーション
b. 運動療法
c. 廃用予防
Ⅲ. 高度の認知症,終末期の認知症に対するケア
E.高次脳機能障害
Ⅰ. 高次脳機能障害
a. 記憶障害
b. 注意障害
c. 遂行機能障害
Ⅱ. リハビリテーション
a. 医学的リハビリテーション
b. 地域リハビリテーション
Ⅲ. 社会制度
F.虚血性心疾患
Ⅰ. 発症からリハビリテーションの流れ
Ⅱ. 運動療法処方
Ⅲ. 生活指導
G.呼吸器疾患
Ⅰ. 在宅における呼吸器疾患
Ⅱ. COPD を中心とした包括的呼吸リハビリテーション
Ⅲ. 在宅酸素療法と在宅人工呼吸療法
Ⅳ. 呼吸不全患者の栄養障害
H.神経難病
Ⅰ. パーキンソン病
Ⅱ. 脊髄小脳変性症
Ⅲ. 運動ニューロン疾患(特に,筋萎縮性側索硬化症)
a. 在宅医療の課題
b. リハビリテーション
I.排尿障害
Ⅰ. 排尿障害の分類
Ⅱ. 排尿障害の治療
a. 薬物療法
b. 排尿補助具の併用
10 章 リハビリテーションを支援する機関や制度をどう活用するか
ケース1 伝い歩き可能で回復期リハ病棟から自宅退院し,在宅ケアプランにつないだ一例
コラム1 外来リハ(医療保険)と通所リハ・通所介護(介護保険)
コラム2 老人保健施設
ケース2 両片麻痺,間欠リハ入院により歩行を再獲得した一例
コラム3 入院リハビリテーション施設
コラム4 訪問リハビリテーション
コラム5 作業所
ケース3 寝たきり状態から訪問リハ・間欠リハ入院で,通所介護につないだ一例
コラム6 介護保険での訪問リハに関する加算
コラム7 介護支援事業所(ケアマネジャー)
コラム8 地域包括支援センター
ケース4 在宅リハで補助器具支援・住宅改修を実施した一例
コラム9 介護実習普及センター
コラム10 障害者支援施設
コラム11 身体障害者更生相談所
コラム12 障害者職業センター
コラム13 身体障害者手帳と特別障害者手当
コラム14 特定疾患治療研究事業
Ⅰ. リハビリテーションは在宅医療の必須要件
a. 医師としてなにができるか
b. リハ診療でできること
Ⅱ. 在宅医療で,いまこそリハ診療を
a. クローズアップされる在宅リハ
b. リハの急性期・回復期・維持期・そして終末期
c. 求められる地域総合リハ
Ⅲ. 在宅リハあってこそ地域リハ
a. 出発点としての在宅生活と在宅リハ
b. 在宅診療医こそ地域リハ医
c. 在宅診療医が地域リハ医になるために
2 章 在宅医がリハビリテーションに取り組むときに
Ⅰ. その人に適う生活を再建するのが先ず在宅リハビリテーションの目的
Ⅱ. 在宅リハビリテーションはどのように始まるか
a. 急性期医療機関で,あるいは回復期リハ専門病棟で十分なリハが実施されて,さあ在宅へと
は単純にいかに場合がよくみられる
b. 回復期リハの病棟で在院期間オーバーとされ在宅へ退院してくる例も少なくはない
c. 突発的なアクシデント時に迅速な医療・リハの対応が必要な場合は結構多い
d. 放っておくと徐々に機能低下するケースにはしばしば出会う
Ⅲ. 在宅医療と街づくり
Ⅳ. リハ患者データバンクの活用
3 章 在宅医がどうリハビリテーションに関与するか
Ⅰ. 生活を支えるリハビリテーション
a. 在宅医療とリハビリテーション
b. 在宅生活を継続的に支えるために
c. リハビリテーションスタッフとの連携とその養成
Ⅱ. 退院からの在宅新規導入
Ⅲ. 在宅医療での継続的リハビリテーション
a. 在宅生活の中で生活機能を維持・向上させる
Ⅳ. 身体疾患などで入院しADL 低下したときの入院・退院援助と在宅再導入
a.「 退院前の自宅訪問」と「自宅に準備するもの」
b. 病院・在宅スタッフとの「退院前合同カンファレンス」で在宅生活のイメー
ジを本人や家族と創る
Ⅴ. 在宅で生活機能低下をきたしたときのブースター入院
Ⅵ. 在宅はチームで支援する
4 章 在宅リハビリテーションのための実践的なチームづくり
Ⅰ. チームをつくる
a. チームはあるのか,つくるのか
b. 今いるメンバーから考える
c. 問題領域と専門職・専門機関
d. 行政機関,相談機関の積極的活用
Ⅱ. チームを動かす
a. 専門職の連携
b. 互いの守備範囲を理解する
c.「 困難ケース」を支えるには
Ⅲ. 陥りやすい諸問題
a. スーパードクターは必要か
b. リハビリテーションはリハ専門職・専門機関が行うものか
c. 医療リハビリテーションと介護リハビリテーション
d. 方針共有のない「連携」
5 章 生活機能と障害をチームで評価する
Ⅰ. 患者の全体像を共有する
Ⅱ. バリアフリー
Ⅲ. 心身機能・身体構造をみる
Ⅳ. 生活機能と障害を評価する
Ⅴ. 活動,参加,環境をみる
6 章 目標(ゴール)をどう立てるか
Ⅰ. 本人の希望を聴き取る
Ⅱ. 診断と病歴を把握する
Ⅲ. 所見をとる
Ⅳ. 住環境をみる
Ⅴ. 予後を予測する
Ⅵ. 優先順位をつける
Ⅶ. 短期目標と長期目標
7 章 在宅医療で必要なリハビリテーションの評価とテクニック
Ⅰ. 全身状態と心身の活動能力をいかに維持・管理するか
Ⅱ. 姿勢管理
a. なぜ姿勢を管理することが大切か
b. 姿勢の持つ意味
c. 悪い姿勢に伴う問題点
d. 基本姿勢(臥位・座位)を評価する視点を持つ
e. 姿勢管理のテクニック(ポジショニング)
Ⅲ. 正常な動作を介護に生かす
a. 不適切な介護とその有害性
b. 介護における正常動作の援用
Ⅳ. 効率的な動作を基本とする介助テクニック
a. 正常な動作と介助方法(ベッド上仰臥位)
b. ADL の組み立て
8 章 ADL と生活の質を高める住環境整備
Ⅰ. 住環境整備で生活の質が変わる
a. 住環境整備の位置づけと意義
b. 住環境整備(住宅改修と福祉機器)の導入と評価ポイント
Ⅱ. 福祉機器導入の意義
a. 福祉機器の選び方と使い方
b. 安楽に眠る・ベッド上の動きを助けるためのモノ選び:マットレス
c. 安全に寝起きするためのモノ選び:ベッドとその周辺用具
d. ベッドから離床するためのモノ選び:ベッド上での移動・移乗用具
e. 座位活動のためのモノ選び:車いす・いす
f. ADL の自立支援を促すモノ選び:自助具など
g. 移動し活動するためのモノ選び:歩行補助用具
h. 生活の拡大:「福祉車両」と称される自動車
i. コミュニケーションを支援するモノ選び
Ⅲ. モチベーションを引き出す
9 章 疾患別・状態別のリハビリテーション・プログラム例
A.脳血管障害
Ⅰ. 脳血管障害(脳卒中)医療連携をめぐって
Ⅱ. 脳卒中リハの到達点
Ⅲ. いよいよ脳卒中患者のお宅を訪問する
a. 具体的診察は
b. リハ診察の手順(MATRIX GRAPE)
c. 訪問リハ処方
B.骨折と運動器疾患
Ⅰ. 大腿骨近位部骨折
Ⅱ. 変形性膝関節症
Ⅲ. 腰部脊柱管狭窄症
Ⅳ. 関節リウマチ
C.廃用症候群
Ⅰ. 廃用症候群の定義
Ⅱ. 廃用症候群の障害学的特徴と「悪循環」
Ⅲ.「 寝たきり」でなくても進行する廃用症候群
D.認知症
Ⅰ. 早期介入
a. 早期介入
b. 軽度認知障害
c. 診断
Ⅱ. リハビリテーション
a. 認知リハビリテーション
b. 運動療法
c. 廃用予防
Ⅲ. 高度の認知症,終末期の認知症に対するケア
E.高次脳機能障害
Ⅰ. 高次脳機能障害
a. 記憶障害
b. 注意障害
c. 遂行機能障害
Ⅱ. リハビリテーション
a. 医学的リハビリテーション
b. 地域リハビリテーション
Ⅲ. 社会制度
F.虚血性心疾患
Ⅰ. 発症からリハビリテーションの流れ
Ⅱ. 運動療法処方
Ⅲ. 生活指導
G.呼吸器疾患
Ⅰ. 在宅における呼吸器疾患
Ⅱ. COPD を中心とした包括的呼吸リハビリテーション
Ⅲ. 在宅酸素療法と在宅人工呼吸療法
Ⅳ. 呼吸不全患者の栄養障害
H.神経難病
Ⅰ. パーキンソン病
Ⅱ. 脊髄小脳変性症
Ⅲ. 運動ニューロン疾患(特に,筋萎縮性側索硬化症)
a. 在宅医療の課題
b. リハビリテーション
I.排尿障害
Ⅰ. 排尿障害の分類
Ⅱ. 排尿障害の治療
a. 薬物療法
b. 排尿補助具の併用
10 章 リハビリテーションを支援する機関や制度をどう活用するか
ケース1 伝い歩き可能で回復期リハ病棟から自宅退院し,在宅ケアプランにつないだ一例
コラム1 外来リハ(医療保険)と通所リハ・通所介護(介護保険)
コラム2 老人保健施設
ケース2 両片麻痺,間欠リハ入院により歩行を再獲得した一例
コラム3 入院リハビリテーション施設
コラム4 訪問リハビリテーション
コラム5 作業所
ケース3 寝たきり状態から訪問リハ・間欠リハ入院で,通所介護につないだ一例
コラム6 介護保険での訪問リハに関する加算
コラム7 介護支援事業所(ケアマネジャー)
コラム8 地域包括支援センター
ケース4 在宅リハで補助器具支援・住宅改修を実施した一例
コラム9 介護実習普及センター
コラム10 障害者支援施設
コラム11 身体障害者更生相談所
コラム12 障害者職業センター
コラム13 身体障害者手帳と特別障害者手当
コラム14 特定疾患治療研究事業
書評
長谷田真帆 先生 (佐久総合病院地域医療部)
在宅医療に携わると,大学では教わらなかったような問題,病院では考え得なかったような状況にしばしば直面させられる.「在宅医療の技とこころ」シリーズは,まさにそのテーマについて知識を得たい,と感じて手にとってみたくなる本ばかりであり,気が付いたときには自分の本棚に一通り揃ってしまっていた.
同シリーズの第8巻である本書は,在宅医療の際に活用できる,リハビリテーション(以下リハ)医療の中のノウハウのエッセンスが詰まっている.
在宅医療の目的は「本人らしく生きることを支えること」であり,在宅医療に従事する医療者には,単なる医学的介入のみならず,生活空間の中で,いかに本人の目標を達成するかという視点が求められる.急性期病院の研修では養うことが難しい,その視点を補う一助となるのが本書である.
序盤は在宅医療におけるリハとしての観点と,多職種協働による評価・目標設定をすることの重要性について,わかりやすく簡潔に述べてある.
中盤からはポジショニング・動作の介助方法などについて,文章にコマ送りの写真数枚がついて説明をされており,非常にイメージをつかみやすい.住環境整備,とりわけ福祉用具の選定における注意点なども同様である.また認知症や心疾患・呼吸器疾患,生活期(維持期)のリハなど,他の職種や時には家族から必要性を理解されにくいものに対しても,リハ的な介入の仕方とその効用について疾患毎に数ページずつ記載されている.
最後は実際の症例4例をICF(国際生活機能分類)のフレームワークを用いて機能構造・活動・参加に分けて評価し統合的に本人を捉えた上で,短期・長期的な目標を立て,どのように働きかけることができるか,という一連の流れを制度上のことも絡めて記載されている.それまでの内容を具体的に活用する作戦とそのメリットを,改めて確認することができる.
いずれの章も,専門的知識が必要と思われる部分はさらりと触れる程度に書いてあり,リハの知識が薄い者でも無理なく読むことができ,最低限の知識は得られるような仕組みになっている.欲を言えば,具体的なケースについて,(現行のもので構わないので)どのような制度をどのような手続きを踏むことで利用可能となり,それによって本人にどのようなメリットがあるのか,という点についてもう少し詳細な紹介が欲しかった.
本書は患者さんの生活を支えたいと想いながらも,その介入に関して悩みを持っているスタッフ(自分のような在宅医療の初学者のみならず,全ての職種)に,比較的手軽に新たなスキルを与えてくれる可能性のある一冊である.
在宅医療に携わると,大学では教わらなかったような問題,病院では考え得なかったような状況にしばしば直面させられる.「在宅医療の技とこころ」シリーズは,まさにそのテーマについて知識を得たい,と感じて手にとってみたくなる本ばかりであり,気が付いたときには自分の本棚に一通り揃ってしまっていた.
同シリーズの第8巻である本書は,在宅医療の際に活用できる,リハビリテーション(以下リハ)医療の中のノウハウのエッセンスが詰まっている.
在宅医療の目的は「本人らしく生きることを支えること」であり,在宅医療に従事する医療者には,単なる医学的介入のみならず,生活空間の中で,いかに本人の目標を達成するかという視点が求められる.急性期病院の研修では養うことが難しい,その視点を補う一助となるのが本書である.
序盤は在宅医療におけるリハとしての観点と,多職種協働による評価・目標設定をすることの重要性について,わかりやすく簡潔に述べてある.
中盤からはポジショニング・動作の介助方法などについて,文章にコマ送りの写真数枚がついて説明をされており,非常にイメージをつかみやすい.住環境整備,とりわけ福祉用具の選定における注意点なども同様である.また認知症や心疾患・呼吸器疾患,生活期(維持期)のリハなど,他の職種や時には家族から必要性を理解されにくいものに対しても,リハ的な介入の仕方とその効用について疾患毎に数ページずつ記載されている.
最後は実際の症例4例をICF(国際生活機能分類)のフレームワークを用いて機能構造・活動・参加に分けて評価し統合的に本人を捉えた上で,短期・長期的な目標を立て,どのように働きかけることができるか,という一連の流れを制度上のことも絡めて記載されている.それまでの内容を具体的に活用する作戦とそのメリットを,改めて確認することができる.
いずれの章も,専門的知識が必要と思われる部分はさらりと触れる程度に書いてあり,リハの知識が薄い者でも無理なく読むことができ,最低限の知識は得られるような仕組みになっている.欲を言えば,具体的なケースについて,(現行のもので構わないので)どのような制度をどのような手続きを踏むことで利用可能となり,それによって本人にどのようなメリットがあるのか,という点についてもう少し詳細な紹介が欲しかった.
本書は患者さんの生活を支えたいと想いながらも,その介入に関して悩みを持っているスタッフ(自分のような在宅医療の初学者のみならず,全ての職種)に,比較的手軽に新たなスキルを与えてくれる可能性のある一冊である.