そうだったのか!
臨床試験のしくみと実務
1版
順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学 主任教授/
順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長 高橋和久 監修
目黒ケイホームクリニック 院長 安藤克利 著
定価
2,750円(本体 2,500円 +税10%)
- A5判 120頁
- 2020年8月 発行
- ISBN 978-4-525-20961-2
誰も教えてくれなかった....治験,臨床試験に携わるすべての勤務医が読んでおきたい本
誰も教えてくれない煩雑な「治験」の実務.そもそも治験ってなに?...このような疑問を持っているかたは多いのではないでしょうか.本書は同じ疑問を持ちながら勤務医時代を過ごし,その後製薬企業で臨床開発にも携わった経験をもとに,一つの薬剤が申請・承認され,治療薬として患者さんに届くプロセスをイラストととともにわかりやく解説.
- 監修の序
- 序文
- 目次
- 書評1
- 書評2
- 書評3
監修の序
順天堂医院は全国で13ある臨床研究中核病院の1つであり,わが国の特定臨床研究,医師主導治験,企業治験を推進していく役割を担っている.順天堂医院全診療科の中でも当科は最も多くの企業治験,臨床試験を行っているが,時に現場の若手から以下の質問(疑問)の声が上がる.
①なぜ治験や臨床試験をしなければならないのですか?
②治験や臨床試験は人体実験では?
③第Ⅰ相試験,第Ⅱ相試験,第Ⅲ相試験とは何ですか?
④そもそも治験と臨床試験の違いは何なのですか?
⑤企業治験と医師主導治験の違いは何ですか?
⑥PMDA, FDA, EMAという単語を聞きますが何ですか?
⑦ARO, CRO, CRA, CRC, SMOという肩書の方が多数来られますが何をしている方ですか?略語が多くて意味不明……
⑧副作用と有害事象の違いがわかりません.
上記①と②はアカデミアとして,新薬や新規医療機器の開発に貢献することが重要であることは疑う余地はない.実際,実地診療で処方している薬や医療機器は治験や臨床試験を経て承認され,多くの患者さんに利益をもたらしている.多くの学会で診断と治療のガイドラインを発刊しているが,治療指針は倫理委員会やIRBで承認された臨床試験や治験の結果を反映したものであり,新しい診断と治療法の創生は治験,臨床試験なくしてなし得ない.これらのことは各診療科で責任者が教育すべきものである.一方,上記③~⑧に関して医学部学生や臨床研修医は学ぶ機会が少なくやむを得ない疑問である.治験や臨床試験について詳細に記載された成書はあるものの難解であり忙しい若手医師にとっては敷居が高い(眠くなってしまう).そういう意味で,本書「そうだったのか! 臨床試験のしくみと実務」はきわめて平易に上記③~⑧について概説しており臨床の合間に気軽に読むことができる.臨床研究や治験を行っている医療機関においては正に待ちに待った手引書(ガイドブック)である.薬や医療機器の開発には莫大な費用と時間,マンパワーが必要である.薬がどのようなプロセスを経てシーズの発見から承認に至るのかを理解することは医師としても重要なことである.昨今,医療の現場ではチーム医療という言葉が使用されるが,臨床開発もまた多職種によるチーム作業といえる.日本は従来から欧米より薬の承認までの期間が長い,いわゆるドラッグラグが解消されないと批判されてきたが,それはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)などで臨床開発に携わる医師が不足していることも一因である.本書は,厚生年金病院(JCHO新宿メディカルセンター),亀田総合病院,順天堂医院,順天堂大学医学部附属練馬病院などで臨床トレーニングを受け,米国医師資格であるECFMGを有し,さらには某製薬企業の臨床開発にも携わった安藤先生が自身の体験をもとに執筆した力作である.本書が若手の臨床医,臨床開発担当の企業の方,CRO, AROの方にとって福音となることを祈念する.
2020年7月
順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学 主任教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長
高橋和久
①なぜ治験や臨床試験をしなければならないのですか?
②治験や臨床試験は人体実験では?
③第Ⅰ相試験,第Ⅱ相試験,第Ⅲ相試験とは何ですか?
④そもそも治験と臨床試験の違いは何なのですか?
⑤企業治験と医師主導治験の違いは何ですか?
⑥PMDA, FDA, EMAという単語を聞きますが何ですか?
⑦ARO, CRO, CRA, CRC, SMOという肩書の方が多数来られますが何をしている方ですか?略語が多くて意味不明……
⑧副作用と有害事象の違いがわかりません.
上記①と②はアカデミアとして,新薬や新規医療機器の開発に貢献することが重要であることは疑う余地はない.実際,実地診療で処方している薬や医療機器は治験や臨床試験を経て承認され,多くの患者さんに利益をもたらしている.多くの学会で診断と治療のガイドラインを発刊しているが,治療指針は倫理委員会やIRBで承認された臨床試験や治験の結果を反映したものであり,新しい診断と治療法の創生は治験,臨床試験なくしてなし得ない.これらのことは各診療科で責任者が教育すべきものである.一方,上記③~⑧に関して医学部学生や臨床研修医は学ぶ機会が少なくやむを得ない疑問である.治験や臨床試験について詳細に記載された成書はあるものの難解であり忙しい若手医師にとっては敷居が高い(眠くなってしまう).そういう意味で,本書「そうだったのか! 臨床試験のしくみと実務」はきわめて平易に上記③~⑧について概説しており臨床の合間に気軽に読むことができる.臨床研究や治験を行っている医療機関においては正に待ちに待った手引書(ガイドブック)である.薬や医療機器の開発には莫大な費用と時間,マンパワーが必要である.薬がどのようなプロセスを経てシーズの発見から承認に至るのかを理解することは医師としても重要なことである.昨今,医療の現場ではチーム医療という言葉が使用されるが,臨床開発もまた多職種によるチーム作業といえる.日本は従来から欧米より薬の承認までの期間が長い,いわゆるドラッグラグが解消されないと批判されてきたが,それはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)などで臨床開発に携わる医師が不足していることも一因である.本書は,厚生年金病院(JCHO新宿メディカルセンター),亀田総合病院,順天堂医院,順天堂大学医学部附属練馬病院などで臨床トレーニングを受け,米国医師資格であるECFMGを有し,さらには某製薬企業の臨床開発にも携わった安藤先生が自身の体験をもとに執筆した力作である.本書が若手の臨床医,臨床開発担当の企業の方,CRO, AROの方にとって福音となることを祈念する.
2020年7月
順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学 主任教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長
高橋和久
序文
「企業に入り,薬の開発に携わってみたいと思います」
順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学の医局で,本書を監修頂いた高橋和久教授に相談したあの日.勇気のなかった私の背中を押して頂いたことが,本書という結果につながったことはいうまでもありません.
元々,一人ひとりの患者さんの診療と同じくらい,自施設での診療データをまとめた臨床研究や,臨床での知見を確認するための基礎研究が好きであった私は,大学という恵まれた環境下で,多くの研究に携わらせて頂きました.
当時の私は,自身が臨床現場で使用した薬の効果を基礎実験で証明することや,新しい実験手技を確立することに自身の情熱を燃やし,学会や論文でその結果を発表することに,モチベーションの多くを見い出していました.
一方,臨床業務を行うなかで,「治験」に携わる機会にも恵まれましたが,「治験」となると,数値を記載したり,サインをしたり,担当者に連絡をしたり,,,と,少なからず煩雑なイメージを持っていました.
しかし,そのような「治験」を通じて,1つの薬剤が申請・承認され,治療薬として世の中に送り出されるのを横目でみたとき,薬の開発というものに興味を覚えはじめました.
製薬企業の開発職となった私は,複数の医療機関を企業側から見ることになり,これまでとは異なる景色が見えるようになりました.
その景色を見るなかで得られた知識や経験は,医学部の授業で習うことはありませんでしたし,勤務医時代に誰かが教えてくれることでもありませんでした.
企業MDとしての経験から,薬がどのように開発されていくのか,学会で副作用に関する報告をすると,なぜ企業から電話がかかってくるのか,などの背景を知りましたが,振り返った際,勤務医時代の私が知っていれば,臨床をもっと深く行うことができたなあ,と感じるようになりました.
このような思いから,自身の企業での経験や知識をまとめたいと思うようになり,本書の作成に至りました.
本書の企画に賛同いただいた南山堂の関係者の皆様,私に多くの知識や経験を与えて頂いた企業の皆様,そしてこのような本書を作る経験の第一歩を送り出して頂き,本書の監修を頂きました高橋教授に御礼申し上げます.
2020年7月
目黒ケイホームクリニック 院長
安藤克利
順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学の医局で,本書を監修頂いた高橋和久教授に相談したあの日.勇気のなかった私の背中を押して頂いたことが,本書という結果につながったことはいうまでもありません.
元々,一人ひとりの患者さんの診療と同じくらい,自施設での診療データをまとめた臨床研究や,臨床での知見を確認するための基礎研究が好きであった私は,大学という恵まれた環境下で,多くの研究に携わらせて頂きました.
当時の私は,自身が臨床現場で使用した薬の効果を基礎実験で証明することや,新しい実験手技を確立することに自身の情熱を燃やし,学会や論文でその結果を発表することに,モチベーションの多くを見い出していました.
一方,臨床業務を行うなかで,「治験」に携わる機会にも恵まれましたが,「治験」となると,数値を記載したり,サインをしたり,担当者に連絡をしたり,,,と,少なからず煩雑なイメージを持っていました.
しかし,そのような「治験」を通じて,1つの薬剤が申請・承認され,治療薬として世の中に送り出されるのを横目でみたとき,薬の開発というものに興味を覚えはじめました.
製薬企業の開発職となった私は,複数の医療機関を企業側から見ることになり,これまでとは異なる景色が見えるようになりました.
その景色を見るなかで得られた知識や経験は,医学部の授業で習うことはありませんでしたし,勤務医時代に誰かが教えてくれることでもありませんでした.
企業MDとしての経験から,薬がどのように開発されていくのか,学会で副作用に関する報告をすると,なぜ企業から電話がかかってくるのか,などの背景を知りましたが,振り返った際,勤務医時代の私が知っていれば,臨床をもっと深く行うことができたなあ,と感じるようになりました.
このような思いから,自身の企業での経験や知識をまとめたいと思うようになり,本書の作成に至りました.
本書の企画に賛同いただいた南山堂の関係者の皆様,私に多くの知識や経験を与えて頂いた企業の皆様,そしてこのような本書を作る経験の第一歩を送り出して頂き,本書の監修を頂きました高橋教授に御礼申し上げます.
2020年7月
目黒ケイホームクリニック 院長
安藤克利
目次
第1章 臨床試験のしくみ
1 「臨床試験」とは何だろな?
─「臨床試験」の定義と分類─
観察研究
介入研究(臨床試験)
二次研究
2 P値が0.05を下回る結果があったぞ! と喜んでいいの?
─統計解析結果の解釈にあたって知っておきたい事項─
そもそもP値とは何?
P値が0.05を下回る結果があったぞ! と喜んでいいの? ─多重性の存在─
多重性の回避方法
「統計学的有意に」という言葉は世界的に使われなくなってきている!
3 医薬品の開発で必要な臨床研究とは?
「臨床試験」と「治験」の違い
申請承認とは?
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
治験における規定:GCP省令とは?
4 治験は,「企業主導」と「医師主導」に大別される!
企業主導治験と医師主導治験の違い
「医師主導治験」の背景
「医師主導治験」は医師の負担が大きい
5 医療上必要な医薬品を患者さんに届けるための治験以外の方法
─公知申請の存在とそのしくみ─
「公知申請」とは?
「公知申請」の実際
6 医薬品の開発を審査する機関とは?
─PMDAとその役割─
PMDAとは?
PMDAの承認申請に関する業務
7 第Ⅰ相試験はSADとMADに分けられる!
─治験の種類(1)第Ⅰ相試験─
第Ⅰ相試験
SAD試験
MAD試験
抗がん剤の第Ⅰ相試験
8 第Ⅱ相試験は,前期(P2a)と後期(P2b)に分けられる!
─治験の種類(2)第Ⅱ相試験─
用量設定試験におけるデザイン
POCとは?
抗がん剤の第Ⅱ相試験
9 グローバルで行われる医薬品の開発
─治験の種類(3)第Ⅲ相試験─
国際共同治験
併用第Ⅰ/Ⅱ相試験(P1/2試験)や併用第Ⅱ/Ⅲ試験(P2/3試験)とは?
10 治験を実施する際のルールについて
─GCP(Good Clinical Practice)─
GCPとは何か?
GCPで定められた治験責任医師の役割
GCPで定められた治験分担医師の役割
11 グローバルで医薬品を開発する際,どの国のルールを適応するの?
─国際共同治験における考え方─
ICH-GCPについて
J-GCPとICH-GCPの違い
国際共同治験における基本的な考え方
外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因
第2章 臨床試験の実務
1 治験を円滑に実施するための人材とは!?
─治験の遂行に係るスタッフ─
治験と実地臨床の違い
治験をサポートする人材─病院側の支援─
治験をサポートする人材─製薬企業側の人材─
医師主導治験では?
2 現場の治験業務を支えるCRAは大忙し!
─治験のモニタリングと試験推進・管理 study management─
モニタリング業務
試験推進・管理
3 マニュアル作りが重要!
─標準業務手順書(SOP)の意義と考え方─
標準業務手順書(SOP)とは?
医療機関におけるSOP作成
Global SOPとLocal SOP
4 医師主導治験で医師がやること
─医師主導治験への応用─
治験責任医師とは?
医師主導治験にかかわる医療機関は1つか? 複数か? ─治験調整医師の存在─
補償・賠償保険への加入
医師主導治験の主な流れ
第3章 安全性対策
1 「有害事象」と「副作用」は意味が異なる!
「有害事象」と「副作用」
医学的な重症度(CTCAEグレード)
CTCAEのグレーディングにおける原則
MedDRA
2 重篤な有害事象(SAE)とは何のこと?
─SAEは医学的な重症度とは異なる!─
重篤な有害事象(SAE)とは?
重篤性(seriousness)と重症度(severity)の違い
3 SAEが副作用であるなら,それが予測できたかを確認!
─SAEに対する対応:予測可能性の判断─
予測可能性
治験中に「未知」から「既知」の副作用へ変更になることがある!?
4 SAEが発生した際の情報の行方
─医師・CRA・企業の対応─
医師の対応
CRAの対応
治験依頼者(企業等)
医師主導治験での対応
5 SAE発生時にはそれが副作用であるかを確認!
─因果関係の判断─
因果関係判定の困難さ
個別症例の因果関係判定
個別症例の因果関係判定
米国における評価法の転換
日本と欧米における副作用の定義の違い
因果関係の判断材料とは?
6 治験中の安全性情報は定期的に報告される
─治験安全性最新報告(DSUR)─
DSURとは?
作成頻度とデータロックポイント
DSURの構成
医師主導治験では
7 医薬品が安全に使用されるための管理体制
─医薬品リスク管理計画(RMP)─
RMPとは?
RMPの基本要素
8 医薬品安全性監視計画
薬剤に関連する内容を学会報告すると,後日情報提供を求められるのはなぜ?
どのように医薬品安全性監視計画が実施される?
個別の副作用症例の情報報告
文献・学会情報
海外措置情報
PMDAからの情報
追加の医薬品安全性監視活動
9 医薬品の安全性調査に関するルール
─GVPとGPSPとは?─
医薬品の安全性にかかわるルールとは?
追加の医薬品安全性監視活動
安全性情報の定期報告
定期的ベネフィット・リスク評価報告
こぼれ話──
1 製薬企業で勤務する医師:メディカルドクターとは?
2 臨床開発部におけるメディカルドクターの役割
3 安全性情報部におけるメディカルドクターの役割
4 メディカルアフェアーズ部におけるメディカルドクターの役割
5 メディカルドクターに必要なスキル
6 「個人」の限界と「組織」の重要性
7 グローバルに仕事をする
索 引
1 「臨床試験」とは何だろな?
─「臨床試験」の定義と分類─
観察研究
介入研究(臨床試験)
二次研究
2 P値が0.05を下回る結果があったぞ! と喜んでいいの?
─統計解析結果の解釈にあたって知っておきたい事項─
そもそもP値とは何?
P値が0.05を下回る結果があったぞ! と喜んでいいの? ─多重性の存在─
多重性の回避方法
「統計学的有意に」という言葉は世界的に使われなくなってきている!
3 医薬品の開発で必要な臨床研究とは?
「臨床試験」と「治験」の違い
申請承認とは?
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
治験における規定:GCP省令とは?
4 治験は,「企業主導」と「医師主導」に大別される!
企業主導治験と医師主導治験の違い
「医師主導治験」の背景
「医師主導治験」は医師の負担が大きい
5 医療上必要な医薬品を患者さんに届けるための治験以外の方法
─公知申請の存在とそのしくみ─
「公知申請」とは?
「公知申請」の実際
6 医薬品の開発を審査する機関とは?
─PMDAとその役割─
PMDAとは?
PMDAの承認申請に関する業務
7 第Ⅰ相試験はSADとMADに分けられる!
─治験の種類(1)第Ⅰ相試験─
第Ⅰ相試験
SAD試験
MAD試験
抗がん剤の第Ⅰ相試験
8 第Ⅱ相試験は,前期(P2a)と後期(P2b)に分けられる!
─治験の種類(2)第Ⅱ相試験─
用量設定試験におけるデザイン
POCとは?
抗がん剤の第Ⅱ相試験
9 グローバルで行われる医薬品の開発
─治験の種類(3)第Ⅲ相試験─
国際共同治験
併用第Ⅰ/Ⅱ相試験(P1/2試験)や併用第Ⅱ/Ⅲ試験(P2/3試験)とは?
10 治験を実施する際のルールについて
─GCP(Good Clinical Practice)─
GCPとは何か?
GCPで定められた治験責任医師の役割
GCPで定められた治験分担医師の役割
11 グローバルで医薬品を開発する際,どの国のルールを適応するの?
─国際共同治験における考え方─
ICH-GCPについて
J-GCPとICH-GCPの違い
国際共同治験における基本的な考え方
外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因
第2章 臨床試験の実務
1 治験を円滑に実施するための人材とは!?
─治験の遂行に係るスタッフ─
治験と実地臨床の違い
治験をサポートする人材─病院側の支援─
治験をサポートする人材─製薬企業側の人材─
医師主導治験では?
2 現場の治験業務を支えるCRAは大忙し!
─治験のモニタリングと試験推進・管理 study management─
モニタリング業務
試験推進・管理
3 マニュアル作りが重要!
─標準業務手順書(SOP)の意義と考え方─
標準業務手順書(SOP)とは?
医療機関におけるSOP作成
Global SOPとLocal SOP
4 医師主導治験で医師がやること
─医師主導治験への応用─
治験責任医師とは?
医師主導治験にかかわる医療機関は1つか? 複数か? ─治験調整医師の存在─
補償・賠償保険への加入
医師主導治験の主な流れ
第3章 安全性対策
1 「有害事象」と「副作用」は意味が異なる!
「有害事象」と「副作用」
医学的な重症度(CTCAEグレード)
CTCAEのグレーディングにおける原則
MedDRA
2 重篤な有害事象(SAE)とは何のこと?
─SAEは医学的な重症度とは異なる!─
重篤な有害事象(SAE)とは?
重篤性(seriousness)と重症度(severity)の違い
3 SAEが副作用であるなら,それが予測できたかを確認!
─SAEに対する対応:予測可能性の判断─
予測可能性
治験中に「未知」から「既知」の副作用へ変更になることがある!?
4 SAEが発生した際の情報の行方
─医師・CRA・企業の対応─
医師の対応
CRAの対応
治験依頼者(企業等)
医師主導治験での対応
5 SAE発生時にはそれが副作用であるかを確認!
─因果関係の判断─
因果関係判定の困難さ
個別症例の因果関係判定
個別症例の因果関係判定
米国における評価法の転換
日本と欧米における副作用の定義の違い
因果関係の判断材料とは?
6 治験中の安全性情報は定期的に報告される
─治験安全性最新報告(DSUR)─
DSURとは?
作成頻度とデータロックポイント
DSURの構成
医師主導治験では
7 医薬品が安全に使用されるための管理体制
─医薬品リスク管理計画(RMP)─
RMPとは?
RMPの基本要素
8 医薬品安全性監視計画
薬剤に関連する内容を学会報告すると,後日情報提供を求められるのはなぜ?
どのように医薬品安全性監視計画が実施される?
個別の副作用症例の情報報告
文献・学会情報
海外措置情報
PMDAからの情報
追加の医薬品安全性監視活動
9 医薬品の安全性調査に関するルール
─GVPとGPSPとは?─
医薬品の安全性にかかわるルールとは?
追加の医薬品安全性監視活動
安全性情報の定期報告
定期的ベネフィット・リスク評価報告
こぼれ話──
1 製薬企業で勤務する医師:メディカルドクターとは?
2 臨床開発部におけるメディカルドクターの役割
3 安全性情報部におけるメディカルドクターの役割
4 メディカルアフェアーズ部におけるメディカルドクターの役割
5 メディカルドクターに必要なスキル
6 「個人」の限界と「組織」の重要性
7 グローバルに仕事をする
索 引
書評1
現場目線で,臨床試験のエッセンスが濃縮された入門書
山﨑隼人(アッヴィ合同会社 リウマチ領域臨床開発部部長)
「〇〇病のメカニズムを動物モデルで解明!新しい薬の開発が期待される!」などという記事はよくニュースで紹介され,新しい治療に希望を抱く人も多いだろう.しかし,実験レベルで解明された新薬のタネが芽を出し花を咲かすまでは,長い年月と莫大な投資が必要な臨床試験が必要である.臨床試験には,極めて多様かつ多数の人が関わり,高い専門性を要する業務が多くあるため,その全体像を理解することは容易ではない.また,臨床試験を適切に行うためには,実際に患者さんの治療に携わる医療従事者の活躍が欠かせないが,多忙を極める医療従事者が臨床試験について学べる時間は限られている.「臨床試験のことを勉強したい」と思って本を読んでも,難しい言葉ばかりで結局何が大事か理解できず,四苦八苦している医療従事者は多いであろう.本稿を書いている私もかつてはそうであった.これまでの臨床試験についての本は,臨床医学,統計学,薬事規制などの個々の分野の専門家が書いた本ばかりで,実務的なことを含めた,臨床試験の全体像を容易に理解できる本はなかったのではないか.
本書は,これまであった臨床試験に関する本とは一線を画し,豊富なイラストを用いた平易な表現で,初学者にとっても容易に臨床試験の全体像が理解できる構成になっている.臨床医,研究医,そして製薬会社Medical Doctorとして臨床試験の実務を経験した筆者だからこそ,本書のような,「痒いところに手が届く」,実務的かつ包括的な本が書けたのであろう.また,本書は医療従事者に限らず,製薬企業及びCROの社員や就職希望者にも非常に有用な必読書であると考える.臨床試験なくして,医学の進歩はない.一人でも多くの方が本書を手に取り,臨床試験について理解を深めることが,よりよい医療につながると確信する.
山﨑隼人(アッヴィ合同会社 リウマチ領域臨床開発部部長)
「〇〇病のメカニズムを動物モデルで解明!新しい薬の開発が期待される!」などという記事はよくニュースで紹介され,新しい治療に希望を抱く人も多いだろう.しかし,実験レベルで解明された新薬のタネが芽を出し花を咲かすまでは,長い年月と莫大な投資が必要な臨床試験が必要である.臨床試験には,極めて多様かつ多数の人が関わり,高い専門性を要する業務が多くあるため,その全体像を理解することは容易ではない.また,臨床試験を適切に行うためには,実際に患者さんの治療に携わる医療従事者の活躍が欠かせないが,多忙を極める医療従事者が臨床試験について学べる時間は限られている.「臨床試験のことを勉強したい」と思って本を読んでも,難しい言葉ばかりで結局何が大事か理解できず,四苦八苦している医療従事者は多いであろう.本稿を書いている私もかつてはそうであった.これまでの臨床試験についての本は,臨床医学,統計学,薬事規制などの個々の分野の専門家が書いた本ばかりで,実務的なことを含めた,臨床試験の全体像を容易に理解できる本はなかったのではないか.
本書は,これまであった臨床試験に関する本とは一線を画し,豊富なイラストを用いた平易な表現で,初学者にとっても容易に臨床試験の全体像が理解できる構成になっている.臨床医,研究医,そして製薬会社Medical Doctorとして臨床試験の実務を経験した筆者だからこそ,本書のような,「痒いところに手が届く」,実務的かつ包括的な本が書けたのであろう.また,本書は医療従事者に限らず,製薬企業及びCROの社員や就職希望者にも非常に有用な必読書であると考える.臨床試験なくして,医学の進歩はない.一人でも多くの方が本書を手に取り,臨床試験について理解を深めることが,よりよい医療につながると確信する.
書評2
臨床試験,治験の違いとは? 答えられないあなたがはじめに読む一冊
藤原 康弘(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)
書店の書棚やインターネットの通販サイトを眺めていて,臨床研究関連領域の書籍として,ふと手に取りたくなる,自然と購入ボタンをクリックしたくなるタイトルである.「しくみ」という平仮名に,まず惹かれ,しかも監修が,小生が学会や内保連の委員会で長らくお世話になってきた順天堂の高橋先生ではないか,思わず扉頁を開いてみた.
すると,この手の書籍に共通の章タイトル「第1章 臨床試験のしくみ」「第2章 臨床試験の実務」「第3章 安全性対策」が並んでいて,いつもの解説本かと思いきや,各項を見ていくと,「P値が0.05を下回る結果があったぞ! と喜んでいいの?」「医療上必要な医薬品を患者さんに届けるための治験以外の方法-公知申請の存在とそのしくみ-」「医師主導治験で医師がやること-医師主導治験への応用-」「SAEが発生した際の情報の行方-医師・CRA・企業の対応-」などなど,当該頁をすぐ開いてみたくなる標題が並んでいる.さらには,「こぼれ話」.製薬企業に勤務する医師という日本ではまだ珍しい経験をもたれた著者,安藤先生の閑話休題に,引き込まれる.
内容を見ていくと,簡潔な文章,1頁あたりの文字が少なく,明快な図が多用され,還暦を過ぎた評者でも心地よく読める.さらに,「臨床試験と治験の違い」「POCとは?」「標準業務手順書(SOP)とは?」「重篤な有害事象(SAE)とは?」「RMPとは?」など,臨床試験をこれから学び始める初学者(研修医や卒後間もない看護師をはじめとするメディカルスタッフ)さらには治験管理室や臨床研究支援部門,CRCへの異動を初めて命ぜられた医療スタッフが,先輩には気軽に聞きにくい専門用語の解説も小気味よくなされている.そして,医師が勤務する先としては,日本ではまだ珍しい審査・規制当局であるPMDAの理事長として嬉しかったのは,医療現場での認知度の低いPMDAや医薬品リスク管理計画(RMP)を第1章29頁からの「医薬品の開発を審査する機関とは-PMDAとその役割-」,第3章106頁からの「医薬品が安全に使用されるための管理体制-医薬品リスク管理計画(RMP)-」として紹介してくれていることだった.
最後に,お願いがある.本書を読破された後には“実践”を試みてほしい.企業治験,医師主導治験,本書では触れられていないが先進医療や患者申出療養に参画,さらには計画・牽引にチャレンジしてほしい.企業やPMDAに勤務してみるのでもよい.ドラッグラグ,ディバイスラグを嘆き,役所批判をする前に,自らがプレイヤーとして患者さんのアンメット・メディカルニーズを率先して解決することに寄与していただききたい.
藤原 康弘(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)
書店の書棚やインターネットの通販サイトを眺めていて,臨床研究関連領域の書籍として,ふと手に取りたくなる,自然と購入ボタンをクリックしたくなるタイトルである.「しくみ」という平仮名に,まず惹かれ,しかも監修が,小生が学会や内保連の委員会で長らくお世話になってきた順天堂の高橋先生ではないか,思わず扉頁を開いてみた.
すると,この手の書籍に共通の章タイトル「第1章 臨床試験のしくみ」「第2章 臨床試験の実務」「第3章 安全性対策」が並んでいて,いつもの解説本かと思いきや,各項を見ていくと,「P値が0.05を下回る結果があったぞ! と喜んでいいの?」「医療上必要な医薬品を患者さんに届けるための治験以外の方法-公知申請の存在とそのしくみ-」「医師主導治験で医師がやること-医師主導治験への応用-」「SAEが発生した際の情報の行方-医師・CRA・企業の対応-」などなど,当該頁をすぐ開いてみたくなる標題が並んでいる.さらには,「こぼれ話」.製薬企業に勤務する医師という日本ではまだ珍しい経験をもたれた著者,安藤先生の閑話休題に,引き込まれる.
内容を見ていくと,簡潔な文章,1頁あたりの文字が少なく,明快な図が多用され,還暦を過ぎた評者でも心地よく読める.さらに,「臨床試験と治験の違い」「POCとは?」「標準業務手順書(SOP)とは?」「重篤な有害事象(SAE)とは?」「RMPとは?」など,臨床試験をこれから学び始める初学者(研修医や卒後間もない看護師をはじめとするメディカルスタッフ)さらには治験管理室や臨床研究支援部門,CRCへの異動を初めて命ぜられた医療スタッフが,先輩には気軽に聞きにくい専門用語の解説も小気味よくなされている.そして,医師が勤務する先としては,日本ではまだ珍しい審査・規制当局であるPMDAの理事長として嬉しかったのは,医療現場での認知度の低いPMDAや医薬品リスク管理計画(RMP)を第1章29頁からの「医薬品の開発を審査する機関とは-PMDAとその役割-」,第3章106頁からの「医薬品が安全に使用されるための管理体制-医薬品リスク管理計画(RMP)-」として紹介してくれていることだった.
最後に,お願いがある.本書を読破された後には“実践”を試みてほしい.企業治験,医師主導治験,本書では触れられていないが先進医療や患者申出療養に参画,さらには計画・牽引にチャレンジしてほしい.企業やPMDAに勤務してみるのでもよい.ドラッグラグ,ディバイスラグを嘆き,役所批判をする前に,自らがプレイヤーとして患者さんのアンメット・メディカルニーズを率先して解決することに寄与していただききたい.
書評3
もう一つのアンサングな物語
高田敦史(九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター 薬剤師/上級医療情報技師)
薬剤師として日々向きあっている「くすり」がみなさまの手元に来るまでに辿った道の物語を想像してみませんか?
土の中からみつけた菌から免疫抑制薬を発見した,といったようなモノの発見についてのドラマチックなお話を耳にしたこともあるでしょう.一方,新薬を世に出すにあたり,必ず通らなくてはならないのに,あまり詳細がわからない,いわばアンサングな分野が臨床試験という分野ともいえます.
そんな「臨床試験」について,臨床現場での治験を担当した後,製薬企業でメディカルドクターとしての勤務経験のある筆者が,丁寧な文書と豊富なイラストを用いて,わかりやすく解説しているのが本書です.
科学的根拠に基づいた臨床試験の仕組みから,その仕組みの元で数多くの人が支えている実務の概要について,更には根底にある医薬品の安全性担保の考え方まで,幅広く記載されており,くすりに関わる医療者にとって必読の一冊になっています.
高田敦史(九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター 薬剤師/上級医療情報技師)
薬剤師として日々向きあっている「くすり」がみなさまの手元に来るまでに辿った道の物語を想像してみませんか?
土の中からみつけた菌から免疫抑制薬を発見した,といったようなモノの発見についてのドラマチックなお話を耳にしたこともあるでしょう.一方,新薬を世に出すにあたり,必ず通らなくてはならないのに,あまり詳細がわからない,いわばアンサングな分野が臨床試験という分野ともいえます.
そんな「臨床試験」について,臨床現場での治験を担当した後,製薬企業でメディカルドクターとしての勤務経験のある筆者が,丁寧な文書と豊富なイラストを用いて,わかりやすく解説しているのが本書です.
科学的根拠に基づいた臨床試験の仕組みから,その仕組みの元で数多くの人が支えている実務の概要について,更には根底にある医薬品の安全性担保の考え方まで,幅広く記載されており,くすりに関わる医療者にとって必読の一冊になっています.