カテゴリー: 総合診療医学/プライマリ・ケア医学
緩和ケア ポケットマニュアル
改訂3版
緩和アカデミー 代表 宇井睦人 著
定価
2,750円(本体 2,500円 +税10%)
- 三五変型判 311頁
- 2024年5月 発行
- ISBN 978-4-525-20983-4
新要素「緩和戦略」が追加された最新版!
医師・看護師・薬剤師などが必要な事をその場でサッと確認できる緩和ケアの定番書!
最新版ではあらたに「緩和戦略」が追加され,現場で必要とされる「考え抜く力」を身につけることができます.病棟・外来・在宅など,さまざまなシーンに対応した豊富な処方例・指示例を中心に,本当に必要な情報を持ちやすく見やすいサイズにまとめました.
ポケットサイズながら,通読すれば緩和ケアに必須の知識を一気に獲得することも可能です.
・スマートフォンと同じサイズ感!
・手帳のようなソフトカバーでポケットに入れても使いやすい!
- 序文
- 目次
- 書評
序文
「痛みや呼吸困難で苦しむ方に対し,医療用麻薬(オピオイド)をスムーズに開始できるようにするためにはどうすれば良いのだろうか?」これが私の近年における最大の探究テーマであり,初学者でも抵抗感なくオピオイドを開始できる方法を開発したいと考えていた.
このように「オピオイド開始時に多くの緩和ケア医が考えている思考を見える化し,ステップ化した方法」が第Ⅲ章で紹介している『7steps+E』であり,それをさらに思い出しやすいゴロにしたものが『Dr.Rods』である.これらの方法論は発展途上であるが,従来の緩和医療教育に抜けていたオピオイドの構造的な開始法は,「医療用麻薬という(医療者にも患者にも)高いハードル」に一石を投じるものと考えている.
ここ数年,患者さんやご家族から「何か苦痛を和らげる方法はないのですか?」と症状緩和を要望されることが増えた.必要とされているのはきちんと症状を緩和できる臨床の技術であり,緩和医療のスキルなくして,良質な緩和ケアは机上の空論であろう.そのための一つの方略として『緩和医療のonlineトレーニングプログラム』,略して【緩トレ】を発足した(著者略歴にWebサイト『緩和アカデミー』のQRコードあり).悪性腫瘍はもちろん,近年増加している非がん疾患への対応などもケーススタディーを通して豊富に扱っている.本書と合わせて,ぜひ日々の学びの参考にしてほしい.
2024年3月
湘南鎌倉総合病院・さくら在宅クリニックの皆様に感謝して
宇井睦人
このように「オピオイド開始時に多くの緩和ケア医が考えている思考を見える化し,ステップ化した方法」が第Ⅲ章で紹介している『7steps+E』であり,それをさらに思い出しやすいゴロにしたものが『Dr.Rods』である.これらの方法論は発展途上であるが,従来の緩和医療教育に抜けていたオピオイドの構造的な開始法は,「医療用麻薬という(医療者にも患者にも)高いハードル」に一石を投じるものと考えている.
ここ数年,患者さんやご家族から「何か苦痛を和らげる方法はないのですか?」と症状緩和を要望されることが増えた.必要とされているのはきちんと症状を緩和できる臨床の技術であり,緩和医療のスキルなくして,良質な緩和ケアは机上の空論であろう.そのための一つの方略として『緩和医療のonlineトレーニングプログラム』,略して【緩トレ】を発足した(著者略歴にWebサイト『緩和アカデミー』のQRコードあり).悪性腫瘍はもちろん,近年増加している非がん疾患への対応などもケーススタディーを通して豊富に扱っている.本書と合わせて,ぜひ日々の学びの参考にしてほしい.
2024年3月
湘南鎌倉総合病院・さくら在宅クリニックの皆様に感謝して
宇井睦人
目次
prologue 緩和医療の現場で心がけていること
第Ⅰ章 緩和ケアの入り口
Ⅰ-1 緩和ケアの定義
Ⅰ-1-A WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義
Ⅰ-1-B 緩和ケアの定義に関する詳細
Ⅰ-2 全人的苦痛(トータルペイン)の考え方
Ⅰ-3 疾患の経過・病の軌跡(illness trajectory)
Ⅰ-4 予後予測
Ⅰ-4-A PiPS models
Ⅰ-4-B PPI
Ⅰ-4-C PaP score
第Ⅱ章 痛みのマネジメント
Ⅱ-1 がんの痛みについての基礎知識
Ⅱ-2 WHO方式がん疼痛治療法
Ⅱ-3 痛みの評価
Ⅱ-4 投与経路選択とオピオイドスイッチング
Ⅱ-5 緩和ケアで欠かせない皮下投与
第Ⅲ章 痛みに使う薬剤のまとめ
Ⅲ-1 非オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-1-A アセトアミノフェン
Ⅲ-1-B NSAIDs
Ⅲ-2 弱オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-2-A コデイン
Ⅲ-2-B トラマドール
Ⅲ-3 強オピオイドの開始法と選択
Step① 呼吸困難の確認
Step② 腎障害
Step③ 投与経路の選択
Step④ オピオイドの選択
Step⑤ オピオイド1日投与量とレスキューの設定
Step⑥ 持続注射の時は組成/速度も設定
Step⑦ 副作用対策(眠気/便秘/嘔気)
最後のStep 患者/家族への説明
Ⅲ-4 強オピオイド使用中の留意点
Ⅲ-5 強オピオイド製剤の特徴
Ⅲ-5-A モルヒネ
Ⅲ-5-B オキシコドン
Ⅲ-5-C ヒドロモルフォン
Ⅲ-5-D フェンタニル
Ⅲ-5-E タペンタドール
Ⅲ-5-F メサドン
Ⅲ-6 鎮痛補助薬
Ⅲ-6-A 抗けいれん薬
Ⅲ-6-B 抗うつ薬
Ⅲ-6-C NMDA受容体拮抗薬
Ⅲ-6-D 抗不整脈薬
Ⅲ-7 ステロイド
第Ⅳ章 痛み以外の身体的苦痛のマネジメント
Ⅳ-1 呼吸器症状
Ⅳ-1-A 呼吸困難
Ⅳ-1-B 死前喘鳴
Ⅳ-2 消化器症状
Ⅳ-2-A 悪心・嘔吐
Ⅳ-2-B 消化管閉塞
Ⅳ-2-C 便秘
Ⅳ-2-D 腹水
Ⅳ-3 その他の重要な病態
Ⅳ-3-A 転移性脳腫瘍
Ⅳ-3-B 脊髄圧迫
Ⅳ-3-C 高カルシウム(Ca)血症
Ⅳ-3-D 上大静脈症候群
Ⅳ-3-E 悪液質と食欲不振
第Ⅴ章 精神的苦痛のマネジメント
Ⅴ-1 基盤となる精神的ケア
Ⅴ-2 不 眠
Ⅴ-3 不安・うつ
第Ⅵ章 スピリチュアルペインのマネジメント
Ⅵ-1 スピリチュアルペインとは
Ⅵ-2 スピリチュアルケアの基本的な姿勢
第Ⅶ章 せん妄
Ⅶ-1 せん妄
第Ⅷ章 鎮 静
Ⅷ-1 鎮 静
第Ⅸ章 コミュニケーション
Ⅸ-1 Serious illness communication
第Ⅹ章 社会的苦痛のマネジメント
Ⅹ-1 社会的苦痛
■巻末資料
①オピオイド持続注射を使用する時の基本原則
②オピオイド持続注射を使用する時の指示記載
③オピオイド持続皮下注の組成表(初級者向け)
④オピオイド持続静注の組成表(初級者向け)
⑤モルヒネ・オキシコドン持続注射の組成表(中・上級者向け)
⑥ヒドロモルフォン持続注射の組成表(中・上級者向け)
⑦内服できる時の頓用指示例一覧
⑧内服困難時における舌下・坐剤の頓用指示例一覧
⑨皮下注射・皮下点滴または経静脈投与の頓用指示例一覧
⑩オピオイドスイッチング・投与経路変更時のタイミング
⑪経口・貼付オピオイド製剤一覧
⑫オピオイド製剤換算表
■Column 一覧
医療者が予後を予測することと,それを伝えることは別問題
STAS-Jの概要
アロディニア
筋膜性疼痛症候群(MPS)
ブプレノルフィンとペンタゾシン
フェンタニル口腔粘膜吸収製剤
放射線治療(Radiation)
神経ブロックとIVR
非がんの緩和ケアは呼吸困難の対応が鍵
吃逆
髄膜播種・がん性髄膜炎
トルソー症候群
皮膚掻痒症
アカシジア・むずむず脚症候群
■索引
第Ⅰ章 緩和ケアの入り口
Ⅰ-1 緩和ケアの定義
Ⅰ-1-A WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義
Ⅰ-1-B 緩和ケアの定義に関する詳細
Ⅰ-2 全人的苦痛(トータルペイン)の考え方
Ⅰ-3 疾患の経過・病の軌跡(illness trajectory)
Ⅰ-4 予後予測
Ⅰ-4-A PiPS models
Ⅰ-4-B PPI
Ⅰ-4-C PaP score
第Ⅱ章 痛みのマネジメント
Ⅱ-1 がんの痛みについての基礎知識
Ⅱ-2 WHO方式がん疼痛治療法
Ⅱ-3 痛みの評価
Ⅱ-4 投与経路選択とオピオイドスイッチング
Ⅱ-5 緩和ケアで欠かせない皮下投与
第Ⅲ章 痛みに使う薬剤のまとめ
Ⅲ-1 非オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-1-A アセトアミノフェン
Ⅲ-1-B NSAIDs
Ⅲ-2 弱オピオイドの選び方と原則
Ⅲ-2-A コデイン
Ⅲ-2-B トラマドール
Ⅲ-3 強オピオイドの開始法と選択
Step① 呼吸困難の確認
Step② 腎障害
Step③ 投与経路の選択
Step④ オピオイドの選択
Step⑤ オピオイド1日投与量とレスキューの設定
Step⑥ 持続注射の時は組成/速度も設定
Step⑦ 副作用対策(眠気/便秘/嘔気)
最後のStep 患者/家族への説明
Ⅲ-4 強オピオイド使用中の留意点
Ⅲ-5 強オピオイド製剤の特徴
Ⅲ-5-A モルヒネ
Ⅲ-5-B オキシコドン
Ⅲ-5-C ヒドロモルフォン
Ⅲ-5-D フェンタニル
Ⅲ-5-E タペンタドール
Ⅲ-5-F メサドン
Ⅲ-6 鎮痛補助薬
Ⅲ-6-A 抗けいれん薬
Ⅲ-6-B 抗うつ薬
Ⅲ-6-C NMDA受容体拮抗薬
Ⅲ-6-D 抗不整脈薬
Ⅲ-7 ステロイド
第Ⅳ章 痛み以外の身体的苦痛のマネジメント
Ⅳ-1 呼吸器症状
Ⅳ-1-A 呼吸困難
Ⅳ-1-B 死前喘鳴
Ⅳ-2 消化器症状
Ⅳ-2-A 悪心・嘔吐
Ⅳ-2-B 消化管閉塞
Ⅳ-2-C 便秘
Ⅳ-2-D 腹水
Ⅳ-3 その他の重要な病態
Ⅳ-3-A 転移性脳腫瘍
Ⅳ-3-B 脊髄圧迫
Ⅳ-3-C 高カルシウム(Ca)血症
Ⅳ-3-D 上大静脈症候群
Ⅳ-3-E 悪液質と食欲不振
第Ⅴ章 精神的苦痛のマネジメント
Ⅴ-1 基盤となる精神的ケア
Ⅴ-2 不 眠
Ⅴ-3 不安・うつ
第Ⅵ章 スピリチュアルペインのマネジメント
Ⅵ-1 スピリチュアルペインとは
Ⅵ-2 スピリチュアルケアの基本的な姿勢
第Ⅶ章 せん妄
Ⅶ-1 せん妄
第Ⅷ章 鎮 静
Ⅷ-1 鎮 静
第Ⅸ章 コミュニケーション
Ⅸ-1 Serious illness communication
第Ⅹ章 社会的苦痛のマネジメント
Ⅹ-1 社会的苦痛
■巻末資料
①オピオイド持続注射を使用する時の基本原則
②オピオイド持続注射を使用する時の指示記載
③オピオイド持続皮下注の組成表(初級者向け)
④オピオイド持続静注の組成表(初級者向け)
⑤モルヒネ・オキシコドン持続注射の組成表(中・上級者向け)
⑥ヒドロモルフォン持続注射の組成表(中・上級者向け)
⑦内服できる時の頓用指示例一覧
⑧内服困難時における舌下・坐剤の頓用指示例一覧
⑨皮下注射・皮下点滴または経静脈投与の頓用指示例一覧
⑩オピオイドスイッチング・投与経路変更時のタイミング
⑪経口・貼付オピオイド製剤一覧
⑫オピオイド製剤換算表
■Column 一覧
医療者が予後を予測することと,それを伝えることは別問題
STAS-Jの概要
アロディニア
筋膜性疼痛症候群(MPS)
ブプレノルフィンとペンタゾシン
フェンタニル口腔粘膜吸収製剤
放射線治療(Radiation)
神経ブロックとIVR
非がんの緩和ケアは呼吸困難の対応が鍵
吃逆
髄膜播種・がん性髄膜炎
トルソー症候群
皮膚掻痒症
アカシジア・むずむず脚症候群
■索引
書評
瀬戸雅美(湘南鎌倉総合病院 総合診療科)
緩和ケアのエキスパートである宇井睦人先生が執筆された緩和ケアポケットマニュアル改訂3版が発売されました.宇井先生とは湘南鎌倉総合病院総合診療科で2年間ご一緒させていただきましたが,臨床力が秀でているだけでなく,温和で人間力が高く物事を正確に柔らかく伝えられる人格者です.先生がよく話してくれたのですが,ご自身がつらい経験をされたことをきっかけに緩和ケアに興味をもたれ,その道に進まれたとうかがいました.実臨床で患者さん,ご家族のつらさ,苦しみを心の底から思い親身になって寄り添い,その方法としての緩和の知識は非常に有用です.
この手法はがん患者さんのみならず,すべてのつらい思いをしている方に応用でき,30年目の私でも目から鱗が落ち,非常にわかりやすいマニュアルとなっています.外来・病棟で,複数の病院で治療の施しようがなく治療困難と宣告され行き場がなくなり当院に来院され,こちらでもがんの治療は何もできないと思う方に対しても,すべてのつらさを和らげる治療,コミュニケーション技術(心も)で患者家族が涙を流して感謝されていたのを何度も目の当たりにしました.すべての一期一会が大切と仰り,患者さんの人生を深く拝聴し残された時間をどう尊厳をもって過ごしていただくかをチームでdiscussionさせていただいた時間は貴重な経験となりました.真の緩和ケア医の凄さを実感し,日本の緩和医療の普及,教育に情熱を注いでいる後ろ姿をみて,当総合診療科でも緩和ケアを勉強したいと思うドクターが増え,今もご指導をいただいております.
改訂3版では現場でサッと開いてすぐわかるをコンセプトに緩和戦略,7steps+E,Dr.Rodsなど学習者が習得しやすい工夫が随所になされ,先生の卓越したコミュニケーション技術,また巻末にあるオピオイド静注組成表は今までのマニュアルにない臨床の場面ですぐ使える使用法も記載されており,すべての医療者にぜひ手にとっていただきたい超絶おすすめの1冊です.
緩和ケアのエキスパートである宇井睦人先生が執筆された緩和ケアポケットマニュアル改訂3版が発売されました.宇井先生とは湘南鎌倉総合病院総合診療科で2年間ご一緒させていただきましたが,臨床力が秀でているだけでなく,温和で人間力が高く物事を正確に柔らかく伝えられる人格者です.先生がよく話してくれたのですが,ご自身がつらい経験をされたことをきっかけに緩和ケアに興味をもたれ,その道に進まれたとうかがいました.実臨床で患者さん,ご家族のつらさ,苦しみを心の底から思い親身になって寄り添い,その方法としての緩和の知識は非常に有用です.
この手法はがん患者さんのみならず,すべてのつらい思いをしている方に応用でき,30年目の私でも目から鱗が落ち,非常にわかりやすいマニュアルとなっています.外来・病棟で,複数の病院で治療の施しようがなく治療困難と宣告され行き場がなくなり当院に来院され,こちらでもがんの治療は何もできないと思う方に対しても,すべてのつらさを和らげる治療,コミュニケーション技術(心も)で患者家族が涙を流して感謝されていたのを何度も目の当たりにしました.すべての一期一会が大切と仰り,患者さんの人生を深く拝聴し残された時間をどう尊厳をもって過ごしていただくかをチームでdiscussionさせていただいた時間は貴重な経験となりました.真の緩和ケア医の凄さを実感し,日本の緩和医療の普及,教育に情熱を注いでいる後ろ姿をみて,当総合診療科でも緩和ケアを勉強したいと思うドクターが増え,今もご指導をいただいております.
改訂3版では現場でサッと開いてすぐわかるをコンセプトに緩和戦略,7steps+E,Dr.Rodsなど学習者が習得しやすい工夫が随所になされ,先生の卓越したコミュニケーション技術,また巻末にあるオピオイド静注組成表は今までのマニュアルにない臨床の場面ですぐ使える使用法も記載されており,すべての医療者にぜひ手にとっていただきたい超絶おすすめの1冊です.