カテゴリー: 総合診療医学/プライマリ・ケア医学 | 内科学一般
Common Diseases Up to date
1版
いたがねファミリークリニック 院長 板金 広 編集
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 部長 上田剛士 編集
国立病院機構 栃木医療センター内科 医長・副部長 矢吹 拓 編集
定価
11,000円(本体 10,000円 +税10%)
- AB判 656頁
- 2022年4月 発行
- ISBN 978-4-525-21071-7
診療は、学ぶほど面白くなる!
ひとりで診療していると,わからないことや疑問点,解決できないことが出てきて,自分の診療に自信が持てない,といった不安・悩みはありませんか? その悩み,本書が解決します.
本書は,内科外来診断の指南書として出版した『プライマリ・ケア 外来診断目利き術50』に続く,適々斎塾指南書の第2弾!
日常診療でよくみる57疾患を,実臨床に役立つ知識にフォーカスし,下記①~③で構成しました.
①Overview:診療に役立つ疾患の要点を「見開き2ページ」で視覚的に解説
②Minimum requirement:最低限押さえたい診療のポイントを「箇条書き」で解説
③Up to date:診療のエビデンスなどを,処方例も盛り込み詳細に解説
「診療は,学ぶほど面白くなる!楽しくなる!」をコンセプトに編集した開業医の教科書.ぜひ日常診療のアップデートにご活用ください.
- 序文
- 目次
- 書評
序文
診療は,学ぶほど面白くなる
一人で診療所で診療していると,さまざまなわからないことや疑問点が出てきて,診断 できなかったり,自分の治療に自信が持てなかったりします.そんなとき,私は疾患のガイドラインや教科書,UpToDateに代表される二次資料,海外の雑誌の特集などで知識を得ることが多いです.
プライマリ・ケア医の目線で書かれた米国家庭医療学会のトピックや米国内科学会のIn the Clinic,病態生理なども詳細に書かれたLancetのSeminar,EBMが散りばめられた JAMAのThe Rational Clinical Examination,症例提示からトピックが簡潔にまとめられた NEJMのClinical Practiceなどは私の定番です.
海外の資料は確かによく書けているものも多く,大変勉強になります.しかし,必ずしもわが国のプライマリ・ケア現場に合致した情報が得られるわけではなく,これらの情報を自分で咀嚼し,消化して現場の状況に落とし込む必要があります.また人工知能(AI)翻訳があるとはいえ,英語の文章は日本語脳には染み込んでこないのです.そして,残念ながらわが国には,よく出会う疾患(common diseases)に特化した書籍があまりありませんでした.それなら,皆でつくろうと思い立ち,誕生したのが本書です.
私たちが働く診療所で出会う疾患は,90の疾患に対処できれば75%がカバーでき,120 疾患に対処できれば90%がカバーされるといわれています.よく出会う疾患への理解を深めることが,診療技術を高めることに直結します.この書籍は,プライマリ・ケア現場をよく知る「21世紀 適々斎塾」の塾生や講師にお願いして,57のcommon diseasesについて,日常臨床に役立つ知識に焦点を当てて執筆いただきました.
本書は各疾患ごとに,疾患の要点を視覚的に捉えた見開きページのOverview,最低限押さえておきたい臨床のポイントを示したMinimum requirement,そしてプライマリ・ケア医に必要な臨床知識を処方例を盛り込みながら詳細に解説した本文(Up to date)で構成されています.どこからお読みになっても役立つように構成されています.しかし,できれば一度は,本文をじっくりお読みになってOverviewを眺めてみてください.あなたの頭の中に疾患の要点が,スッと染み込むことでしょう.診療は,学ぶほど面白くなります.本書で,あなたの診療が楽しくなることを願ってやみません.
2022年3月
いたがねファミリークリニック
板金 広
一人で診療所で診療していると,さまざまなわからないことや疑問点が出てきて,診断 できなかったり,自分の治療に自信が持てなかったりします.そんなとき,私は疾患のガイドラインや教科書,UpToDateに代表される二次資料,海外の雑誌の特集などで知識を得ることが多いです.
プライマリ・ケア医の目線で書かれた米国家庭医療学会のトピックや米国内科学会のIn the Clinic,病態生理なども詳細に書かれたLancetのSeminar,EBMが散りばめられた JAMAのThe Rational Clinical Examination,症例提示からトピックが簡潔にまとめられた NEJMのClinical Practiceなどは私の定番です.
海外の資料は確かによく書けているものも多く,大変勉強になります.しかし,必ずしもわが国のプライマリ・ケア現場に合致した情報が得られるわけではなく,これらの情報を自分で咀嚼し,消化して現場の状況に落とし込む必要があります.また人工知能(AI)翻訳があるとはいえ,英語の文章は日本語脳には染み込んでこないのです.そして,残念ながらわが国には,よく出会う疾患(common diseases)に特化した書籍があまりありませんでした.それなら,皆でつくろうと思い立ち,誕生したのが本書です.
私たちが働く診療所で出会う疾患は,90の疾患に対処できれば75%がカバーでき,120 疾患に対処できれば90%がカバーされるといわれています.よく出会う疾患への理解を深めることが,診療技術を高めることに直結します.この書籍は,プライマリ・ケア現場をよく知る「21世紀 適々斎塾」の塾生や講師にお願いして,57のcommon diseasesについて,日常臨床に役立つ知識に焦点を当てて執筆いただきました.
本書は各疾患ごとに,疾患の要点を視覚的に捉えた見開きページのOverview,最低限押さえておきたい臨床のポイントを示したMinimum requirement,そしてプライマリ・ケア医に必要な臨床知識を処方例を盛り込みながら詳細に解説した本文(Up to date)で構成されています.どこからお読みになっても役立つように構成されています.しかし,できれば一度は,本文をじっくりお読みになってOverviewを眺めてみてください.あなたの頭の中に疾患の要点が,スッと染み込むことでしょう.診療は,学ぶほど面白くなります.本書で,あなたの診療が楽しくなることを願ってやみません.
2022年3月
いたがねファミリークリニック
板金 広
目次
Ⅰ 神経疾患
1 片頭痛
2 認知症
3 本態性振戦
4 パーキンソン病
Ⅱ 内分泌疾患
5 甲状腺機能亢進症
6 甲状腺機能低下症
7 原発性副甲状腺機能亢進症
8 甲状腺結節
9 二次性高血圧
Ⅲ 循環器疾患
10 左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)
11 左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)
12 大動脈弁狭窄症
13 心房細動
14 上室性頻拍症
15 末梢動脈疾患
16 深部静脈血栓症
Ⅳ 呼吸器疾患
17 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
18 気管支喘息
19 市中肺炎
20 非結核性抗酸菌症(NTM)
21 肺結核
Ⅴ 消化器疾患
22 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
23 肝硬変
24 アルコール性肝障害
25 機能性ディスペプシア(FD)
26 ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染症
27 炎症性腸疾患
28 過敏性腸症候群(IBS)
29 大腸がん・大腸腺腫
30 虚血性大腸炎
Ⅵ 生活習慣病
31 高血圧
32 糖尿病
33 脂質異常症
Ⅶ 骨・関節内科疾患
34 偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症:CPPD 症)
35 痛風
36 関節リウマチ
37 リウマチ性多発筋痛症(PMR)
38 腰部脊柱管狭窄症
39 癒着性肩関節包炎(五十肩)
Ⅷ 腎・泌尿器疾患
40 前立腺肥大症
41 過活動膀胱
42 尿路感染症
43 重症慢性腎臓病
Ⅸ 血液疾患
44 小球性貧血
45 大球性貧血
46 血小板血症
Ⅹ 感染症
47 伝染性単核球症
48 インフルエンザ
49 帯状疱疹(疱疹後神経痛)
50 皮膚軟部組織感染症
Ⅺ 女性疾患
51 月経困難症
52 更年期障害
53 乳がん
54 骨粗鬆症
Ⅻ 耳鼻科疾患
55 アレルギー性鼻炎
56 耳鳴
57 睡眠時無呼吸症候群
column
「21世紀 適々斎塾」の紹介
私の勉強法─自分の意見を言えるまでが勉強
私の勉強法─やる気の飼いならし方
私の勉強法─臨床・教育・研究を相互に関連させたアウトプット主体の勉強法
大船中央病院の勉強会
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科の勉強法
「FACE(Fukushima Advanced Course by Experts)」の紹介
市立奈良病院の勉強会
私の勉強法─ベッドサイドでともに学ぶ姿勢を大切に
私の勉強法 ─ すべての学びを記録する
南奈良総合医療センター 総合診療科の勉強会
栃木医療センターの勉強会 ─ CQ カンファレンス
▪索 引
1 片頭痛
2 認知症
3 本態性振戦
4 パーキンソン病
Ⅱ 内分泌疾患
5 甲状腺機能亢進症
6 甲状腺機能低下症
7 原発性副甲状腺機能亢進症
8 甲状腺結節
9 二次性高血圧
Ⅲ 循環器疾患
10 左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)
11 左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)
12 大動脈弁狭窄症
13 心房細動
14 上室性頻拍症
15 末梢動脈疾患
16 深部静脈血栓症
Ⅳ 呼吸器疾患
17 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
18 気管支喘息
19 市中肺炎
20 非結核性抗酸菌症(NTM)
21 肺結核
Ⅴ 消化器疾患
22 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
23 肝硬変
24 アルコール性肝障害
25 機能性ディスペプシア(FD)
26 ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染症
27 炎症性腸疾患
28 過敏性腸症候群(IBS)
29 大腸がん・大腸腺腫
30 虚血性大腸炎
Ⅵ 生活習慣病
31 高血圧
32 糖尿病
33 脂質異常症
Ⅶ 骨・関節内科疾患
34 偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症:CPPD 症)
35 痛風
36 関節リウマチ
37 リウマチ性多発筋痛症(PMR)
38 腰部脊柱管狭窄症
39 癒着性肩関節包炎(五十肩)
Ⅷ 腎・泌尿器疾患
40 前立腺肥大症
41 過活動膀胱
42 尿路感染症
43 重症慢性腎臓病
Ⅸ 血液疾患
44 小球性貧血
45 大球性貧血
46 血小板血症
Ⅹ 感染症
47 伝染性単核球症
48 インフルエンザ
49 帯状疱疹(疱疹後神経痛)
50 皮膚軟部組織感染症
Ⅺ 女性疾患
51 月経困難症
52 更年期障害
53 乳がん
54 骨粗鬆症
Ⅻ 耳鼻科疾患
55 アレルギー性鼻炎
56 耳鳴
57 睡眠時無呼吸症候群
column
「21世紀 適々斎塾」の紹介
私の勉強法─自分の意見を言えるまでが勉強
私の勉強法─やる気の飼いならし方
私の勉強法─臨床・教育・研究を相互に関連させたアウトプット主体の勉強法
大船中央病院の勉強会
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科の勉強法
「FACE(Fukushima Advanced Course by Experts)」の紹介
市立奈良病院の勉強会
私の勉強法─ベッドサイドでともに学ぶ姿勢を大切に
私の勉強法 ─ すべての学びを記録する
南奈良総合医療センター 総合診療科の勉強会
栃木医療センターの勉強会 ─ CQ カンファレンス
▪索 引
書評
清田雅智(飯塚病院 総合診療科)
総合診療科を名乗って外来を行うと,ありとあらゆる患者さんが紹介されてくる.しかし,40 万診療圏でPAANDのような未知の希少疾患に出会うことは,多くのCommon Diseaseの鑑別を深く考察して初めて浮き彫りになる.多くの医師は,かくいう私も含めて,正規の外来トレーニングを受けておらず,専門分野以外の疾患となると,自信をもって診療を行えないのではないだろうか.外来診療での各種マニュアルが世には存在するが,個々の疾患への言及がどうしても薄くなるので,ゲシュタルトと呼ばれる疾患概念が頭に入っていないと使いこなすことはできないだろう.
Common な疾患を深く学び,その疾患概念を身につける本,これが本書である.構成の工夫がなされており,多忙な外来ではまず「Overview」の欄だけで診療を進め,終わった後に「Minimumrequirement」でその背景を理解し,「Up to date」でさらにゲシュタルトを構築していく.すべての章で,内容の質を担保する引用文献を引いている意欲的な本である.
特筆すべき点は,執筆陣が豪華なことである.個人的な意見ではあるが,本の質を決めるのは誰が書いたものかということに尽きる.今回の執筆陣は,私も講師として招かれているので多少内情を知っている,適々斎塾(これは日本の医師の診療の高みを具現している)のメンバーである.現時点で国内で講演を一度聞いてみたいと思う講師が執筆しているので,内容のレベルは折り紙つきである.また,columnで扱われている各施設の勉強会の様子もためになる.いいとこどりで取り入れたいところだ.
本書を診察室のデスクに置き,特定の疾患を思い浮かべるとき,辞書的に使用するとよいだろう.診療が終わったらその日に考えた疾患を読み返すことで,学習効果が得られ,この作業を繰り返すことでゲシュタルトが構成されるだろう.深く疾患を理解することでのみcommon disease rare presentationの診断が可能となる.ぜひとも,続編でさらに疾患の幅を増やしていただきたい.
総合診療科を名乗って外来を行うと,ありとあらゆる患者さんが紹介されてくる.しかし,40 万診療圏でPAANDのような未知の希少疾患に出会うことは,多くのCommon Diseaseの鑑別を深く考察して初めて浮き彫りになる.多くの医師は,かくいう私も含めて,正規の外来トレーニングを受けておらず,専門分野以外の疾患となると,自信をもって診療を行えないのではないだろうか.外来診療での各種マニュアルが世には存在するが,個々の疾患への言及がどうしても薄くなるので,ゲシュタルトと呼ばれる疾患概念が頭に入っていないと使いこなすことはできないだろう.
Common な疾患を深く学び,その疾患概念を身につける本,これが本書である.構成の工夫がなされており,多忙な外来ではまず「Overview」の欄だけで診療を進め,終わった後に「Minimumrequirement」でその背景を理解し,「Up to date」でさらにゲシュタルトを構築していく.すべての章で,内容の質を担保する引用文献を引いている意欲的な本である.
特筆すべき点は,執筆陣が豪華なことである.個人的な意見ではあるが,本の質を決めるのは誰が書いたものかということに尽きる.今回の執筆陣は,私も講師として招かれているので多少内情を知っている,適々斎塾(これは日本の医師の診療の高みを具現している)のメンバーである.現時点で国内で講演を一度聞いてみたいと思う講師が執筆しているので,内容のレベルは折り紙つきである.また,columnで扱われている各施設の勉強会の様子もためになる.いいとこどりで取り入れたいところだ.
本書を診察室のデスクに置き,特定の疾患を思い浮かべるとき,辞書的に使用するとよいだろう.診療が終わったらその日に考えた疾患を読み返すことで,学習効果が得られ,この作業を繰り返すことでゲシュタルトが構成されるだろう.深く疾患を理解することでのみcommon disease rare presentationの診断が可能となる.ぜひとも,続編でさらに疾患の幅を増やしていただきたい.