南山堂

カートを見る

立ち読み
注文数:

在庫あり

電子書籍はこちら

電子書籍はこちら

教えて!専門医の先生

疾患軌道図で学ぶ継続外来

悩みドコロを聞いておきました

1版

口之津病院 内科・総合診療科 寺澤佳洋 編
諏訪中央病院 総合診療科 山中克郎 編

定価

4,180(本体 3,800円 +税10%)


  • B5判  217頁
  • 2024年5月 発行
  • ISBN 978-4-525-21121-9

慢性期を支えることには,意義もあればやりがいもある!

診断がついていて,イベント発生から時間も経過し,比較的安定した状態にある患者さんを引き継ぐことってありますよね?でも,そんな慢性期の患者さんを診るうえでも,「現在の処方をいつまで続けていいの?」「これまでの経緯や治療内容が曖昧」「この検査値どこまで下がったら紹介しよう?」など,悩ましいことはいろいろあります.
本書は,比較的長期の経過をたどることの多いコモンな疾患・症状について,引き継ぎの際に確認すべきこと,フォローの間隔や検査・薬の考え方,専門医との連携やコンサルトのタイミングといった,フォローする立場の医師が知りたいことを専門医に質問し,相談しながら一緒に作りました.
また,各疾患がたどる長期的な経過を疾患軌道図で示し,いつどんな介入が必要になるかをビジュアルにまとめ,その患者さんが自分のところに来る前に何があって,今どの段階にいるのか,今後何が起こりうるのか,という視点がもてるように工夫しました.
将来を予測しつつ患者さんの慢性期を支えていくことで,継続外来がぐっと面白く,やりがいのあるものになる一冊です.

  • 序文
  • 目次
  • 書評1
  • 書評2
序文
~“継続外来”というコウカイをする仲間たちへ~
 
 私はこれまで,まちの診療所,基幹病院や大学病院など,さまざまな環境で“継続外来”を経験する機会に恵まれました.いずれの環境でも,前任の先生や他の医療機関から引き継ぐ紹介患者さんの中には,病歴,診断や処方理由などに曖昧な情報があることを経験しました(決して紹介元を批判しているのではなく,現行の仕組みに潜む課題とも感じています).さらに“継続外来”という時間軸の中で,多くの責任と困難を感じてきました.各科専門医の先生方にすぐアドバイスをいただける環境ばかりではなかったため,たくさん悩みながらどうにか歩んできました.
 一方で,日本各地の同僚も,また同じような葛藤を経験していることを知りました.このような経験を通じて,もし継続外来で抱く障壁を乗り越える考え方,知恵,さらには専門医の思考過程を一冊にまとめることができれば,仲間たちの力になれるのではないかと考え,この書籍作成に至りました(実際は,私自身の悩み解決にも大いに役立てたことは秘密にしておいてください).

 さて,“継続外来”で大切なこととして,患者一人ひとりの短期的な目の前の問題に対処しつつ,併せてwell-beingという長期的な目的を見失わないように対応する必要があります.時には,患者やその家族の一生を通してのケアが求められ,医師として,重い責任を担います.

 この役割は,海を渡る船長にも似ています.目の前の波に立ち向かいつつ,遠くの目的地を見失わないようにしなければなりません.臨床経験の長短にかかわらず,“継続外来”では,数十年間を見据えて診療に当たる必要があります.
 経験の浅い医師にとって,“継続外来”での長期的な経験や視点を持つことは困難です.そこで,今回は仲間たちから実際の臨床現場での悩みや疑問を集め,経験豊富な専門医の先生方と何度も何度も議論を重ね回答していただきました.これらのアドバイスは,私たちの航路を照らす灯台のように大きな助けになるでしょう.

 また,本書で注目すべき構成は,タイトルにもある「疾患軌道図」です.これは,あたかも海図を広げたかのように各疾患や病態の道筋を示してくれます.どのタイミングで,どのような所見に気をつけ,どのような検査や治療が必要になるかが一目瞭然です.
 この書籍が海図となり,“継続外来”において「なぜこんなに長く診ていたのに気づけなかったのか………」という後悔ではなく,well-beingという目的地に辿り着くための素敵な航海になるように願っています.

 最後に,わかりやすいアドバイスをいただいた各専門医の先生方,私を若手時代から支えていただいている山中克郎 先生(共同編者),南山堂 編集部の佃和雅子さん,渋田百日紅さんには私のわがままな要望にも温かく対応していただきました.ここに感謝の気持ちを公開します.

 ………感謝の気持ちを公開(コウカイ),気づかれましたか(笑).
 それでは,お待ちかねの本編も大公開しますので,お楽しみください.

2024年3月
編者を代表して
寺澤佳洋
目次
循環器
1.心不全 
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 パターン①~③の心不全の状態と,現在のステージに関して教えてください
 Q3 パターン①~③の心不全では,左室駆出率(LVEF)が異なります.LVEFごとの心不全の
   治療のポイントなどを教えてください
<パターン①虚血性心疾患(心筋梗塞後,PCIステント留置)>
 Q4 パターン①について,抗血小板薬の基本的な考え方について教えてください
 Q5 ほかの要因で抗凝固薬内服中の場合,抗血小板療法の期間はどうなりますか?
 Q6 パターン①について,引き継ぎ初診時に確認すべき情報や検査,追加で集めるべき情報
   や検査について教えてください
 Q7 パターン①について,検査フォローの間隔や頻度,心エコーなどで何を評価する必要が
   あるかについて教えてください
 Q8 パターン①について,専門医コンサルトや治療適応になるのはどんなときでしょうか?
<パターン②大動脈弁狭窄症(AS)>
 Q9 パターン②について,今後予想される経過などを教えてください
 Q10 パターン②について,専門医へのコンサルトや手術が適応になるのはどのようなとき
   でしょうか?
 Q11 パターン②について,この患者の僧帽弁閉鎖不全症(MR)は軽度ですが,今後
   どのようなことに気をつけてフォローすべきでしょうか?
<パターン③心房細動>
 Q12 パターン③について,今後予測される経過や,診療における注意点について教えて
   ください
 Q13 心房細動患者をフォローする場合の留意点を,アブレーション治療のタイミングも
   含めて教えてください
 mini lecture:心不全治療薬 ~ 知っておくとちょっといい話
 Q1 心不全治療薬の選択に悩むことがあります.心不全治療に関連した代表的な薬剤に
   関して,どう使い分ければよいのかや,ちょっとした違いなどを教えてください
 Column❶ 夜間・早朝高血圧,特に睡眠時無呼吸症候群に伴う高血圧
 Column❷ 利尿薬使用における細かな配慮 ~ ループ利尿薬,サイアザイド系,MRA
 Column❸ HFrecEF ~ 収縮能(LVEF)が回復した心不全,あきらめなくていい時代に!

呼吸器
2.気管支喘息
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 ピークフローメーターの記録などは必ず行う必要があるのでしょうか?
 Q5 急性増悪時におけるプライマリ・ケア医の対処法を教えてください
 Q6 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Column❶ 慢性咳嗽の診かた

3.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 成功率が高い禁煙の勧め方はありますか?
 Q5 急性増悪時におけるプライマリ・ケア医の対処法を教えてください
 Q6 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Column❶ 電子タバコについて
 Column❷ 吸入薬のデバイスの特徴

4.非結核性抗酸菌症(NTM) 
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Column❶ 「オーグメンチン®+サワシリン®」で対応すべきでない肺炎・肺炎様症状
 Column❷ 長引く咳への対応やお勧めの咳止め
 mini lecture:肺の偶発腫瘍
 Q1 検診X線やCTなどで偶発的に発見された肺内結節・腫瘍への,プライマリ・ケア医と
   してのアプローチ法を教えてください

消化器
5.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 NAFLD/NASHの一般的な知識と疾患軌道を教えてください
 Q4 NASHとNAFLDの鑑別には肝生検が必要となりますが,実際にどのようなケースで
   推奨されるのでしょうか?
 Q5 専門医との連携はどのようにすればよいでしょうか?
 Q6 NAFLD/NASHに対する薬物療法の有用性や,実際にどの程度行われているのかについて
   教えてください
 Q7 本症例の患者に対する実際の精査の方法,治療介入を教えてください
 mini lecture:B 型肝炎ウイルス(HBV):HBs 抗原陽性後の対応
 Q1 健診や肝機能異常の精査過程などで,HBs抗原陽性患者に遭遇します.専門医コンサルト
   前の確認項目(特にウイルスマーカ―/各抗原抗体)とその解釈,検査のピットフォールや
   治療対象の目安などを教えてください
 Q2 HBs抗原陽性でもコンサルトや治療が不要な例があれば教えてください
 Q3 おおまかな治療期間と負担額について教えてください
 mini lecture:C型肝炎ウイルス(HCV):HCV抗体陽性後の対応
 Q1 健診や肝機能異常の精査過程などで,HCV抗体陽性患者に遭遇します.『C型肝炎ガイド
   ライン(第8版)』では,HCV抗体陽性(or HCV-RNA陽性)の非代償性肝硬変を含む
   すべてのC型肝炎が治療対象になるとありますが,HCV抗体陽性であれば即時に
   専門医コンサルトでよいでしょうか?
 Q2 HCV抗体陽性でもコンサルトや治療が不要な例があれば教えてください
 Q3 おおまかな治療期間と負担額について教えてください
 mini lecture:アルコール性肝障害(ALD)
 mini lecture:膵臓の偶発腫瘍 
 Q1 CT,MRIまたは腹部エコーで偶発的に発見された膵腫瘍への,プライマリ・ケア医
   としてのアプローチ法を教えてください
 Column❶ MASLDと奈良宣言 ~ NAFLD/NASHに関連した最近の動向  
 Column❷ 肝臓エコーのポイント
 Column❸ 併存膵がんについて
 
脳神経内科
6.パーキンソン病 
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Q5 パーキンソン病(PD)を疑ったときの流れについて教えてください
 Q6 PDの診断をプライマリ・ケア医がしてよいですか? レボドパによる診断的治療はどう
   ですか? また,診断後の難病申請について教えてください
 Q7 パーキンソン症候群について,知っておくべきことにはどのようなものがありますか?
 Q8 薬剤性・脳血管性パーキンソニズムについて,どのようにアプローチすればよいでしょうか?
 Q9 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について,ポイントを教えてください

7.てんかん
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Q5 てんかん患者の一般生活におけるアドバイスの仕方について教えてください.また,
   自動車運転の許可について教えてください
 Q6 高齢者てんかんの診断について教えてください
 Q7 初回発作からの抗てんかん薬の治療介入について教えてください
 Q8 手術適応になるてんかんについて教えてください
 Column❶ てんかん発作分類について

8.脳梗塞後のフォロー 
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 脳梗塞の再発を疑う場合の評価について教えてください
 Q5 頸動脈エコー所見や内頸動脈狭窄症について教えてください

内分泌
9.甲状腺機能低下症  
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください

10.甲状腺機能亢進症 
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 抗甲状腺薬の減量や休薬について教えてください
 Q5 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 mini lecture 甲状腺疾患について知っておきたいこと
 Q1 CTやエコーで偶発的に発見された甲状腺結節・腫瘍への,プライマリ・ケア医として
   のアプローチ法を教えてください
 Q2 甲状腺機能低下症や亢進症の患者における甲状腺エコーのポイントを教えてください
 Q3 TSHが基準範囲外であったときの,その後のフォローについて教えてください
 Q4 甲状腺機能の指標に関して教えてください
 Column❶ 甲状腺疾患に関連する採血項目についてのTips
 Column❷ ヨウ素に関して
 Column❸ ヨウ素の過剰摂取と甲状腺腫・甲状腺機能の関連

血液内科
11.骨髄異形成症候群(MDS) 
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Q5 プライマリ・ケア医でも行える各種血球減少への対応には,どのようなものが
   ありますか?
 Q6 終末期の造血器腫瘍患者に対して,プライマリ・ケア医にもできることはありますか?

腎臓内科
12.慢性腎臓病(CKD)
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Q5 高血圧性腎硬化症と糖尿病性腎症が考慮される状況だと思われますが,分類すべき
   でしょうか? ほかの要因を含めて再評価すべきでしょうか?
 Q6 CKDに対するCa拮抗薬や,糖尿病合併の際のACE阻害薬やARBの使い分けや推奨
   はありますか?
 Q7 CKDに伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の評価の開始時期,間隔や評価項目,
   治療初期の介入方法などを教えてください
 Q8 専門医の先生であれば,本症例に対してどのように介入していきますか?
 Column❶ 透析導入は何歳くらいまで可能?
 Column❷ 患者への説明例 ~ 年齢と腎機能

13.慢性的な血尿
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Q5 膀胱鏡に関する説明の仕方を教えてください
 Q6 腎生検に関する説明の仕方を教えてください
 Column❶ 医師の生涯学習法 ~ どのような方法で勉強を続けているのか?

14.慢性的な蛋白尿
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください

膠原病内科
15.関節リウマチ
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 プライマリ・ケア医にお勧めの疾患活動性の評価方法を教えてください.また,
   どのような頻度で行うべきでしょうか?
 Q5 標準的第一選択薬であるMTXに関して,押さえておくべきポイントを教えてください.
   また,よく行われる調整方法,増減や中止の仕方にはどのような例がありますか?
 Q6 プライマリ・ケア医が担える治療の範囲はどこまででしょうか? MTXの導入や調整
   などを含めて教えてください
 Q7 地方では,特に高齢患者で,病歴や過去のリウマトイド因子/抗CCP抗体の結果も
   あいまいで,漫然とMTXなどが投与されている患者を引き継ぐこともあります.
   少なくとも現状で臨床的寛解状態にあるとわかるときに,MTXなどの中止は可能
   でしょうか?
 Q8 高齢発症関節リウマチの特徴と,鑑別で問題となる疾患について教えてください
 Q9 そもそも,関節リウマチであるかの再評価に意義はあるのでしょうか?(専門医の
   フォローがない場合)
 Column❶ 「D2T RA」とは?
 Column❷ 関節リウマチって難病でしょうか?

眼 科
16.白内障
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 一般的な疾患軌道を教えてください
 Q5 代表的な点眼薬と,その効果について教えてください
 Q6 注意すべきDo処方について教えてください
 Q7 手術に踏み切るタイミング,手術禁忌,耐術能の目安について教えてください
 Q8 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Column❶ 深く勉強したい人へ ~ 参考になるサイトや書籍
 Column❷ 白内障手術時の眼内レンズの選択

17 緑内障
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 一般的な疾患軌道を教えてください
 Q5 代表的な点眼薬と,その効果について教えてください
 Q6 注意すべきDo処方について教えてください
 Q7 手術に踏み切るタイミング,手術禁忌,耐術能の目安について教えてください
 Q8 緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)を疑って夜間でも緊急に眼科を受診させなければ
   ならないのは,どのような症状と身体所見を確認したときでしょうか?
 Q9 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Column❶ 深く勉強したい人へ ~ 参考になるサイトや書籍
 Column❷ 眼科からの診療情報提供書の読み方
 Column❸ 小児の弱視
 Column❹ 点眼の正しい指導方法(げんこつ法)

泌尿器
18.頻尿(前立腺肥大症・過活動膀胱)
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 今後のフォローのタイミング(間隔),必要な検査,処方変更の目安について教えて
   ください
 Q4 専門医にコンサルトするタイミングについて教えてください
 Q5 前立腺肥大症のフォロー時に生じやすいトラブルには,どのようなものがありますか?
 Q6 勃起障害(ED)の合併があるときは,どのように対応すべきでしょうか?
 Q7 夜間頻尿がある場合は,どのように対応すべきでしょうか?
 Q8 肉眼的血尿・顕微鏡的血尿の合併があるときは,どのように対応すべきでしょうか?
 Column❶ 尿路系悪性腫瘍
 Column❷ PSA値の評価の誤解と解釈のポイント
 Column❸ 女性の頻尿症状へのアプローチ
 Column❹ 過活動膀胱の診断と治療について

産婦人科
19.更年期障害
 Q1 症例について詳しく教えてください
 Q2 引き継ぎ初診時に確認することは何ですか?
 Q3 プライマリ・ケア医が行える,更年期障害患者への治療アプローチには何があり
   ますか? 専門医との連携を含めて教えてください
 Q4 ホルモン補充療法(HRT)と各種がんの関係性を教えてください
 Q5 HRTと血栓症の関係性を教えてください
 Column❶ 更年期女性に対する社会的ケアの重要性

・略語一覧

・索 引
書評1
「患者の2歩先を読み1歩先を照らす:疾患軌道図を活用した長期ケアの新視点」だ

大杉泰弘(藤田医科大学 総合診療科)

 本書は,一般外来を行う総合診療医や内科医が患者の長期的な病歴や治療経過を理解し,効果的な治療やケアを提供するための実践的なガイドブックです.
 本書の最大の特徴は,エビデンスに長年の臨床経験と豊富な知識を加味して,疾患軌道図という新しい視点を提供していることです.この疾患軌道図は,患者の病状や治療の進行を視覚的に表現する図であり,医療従事者が一目で患者の状況を理解できるように設計されています.この図を用いることで,治療計画の策定や進捗の確認が容易になり,まさに「患者さんの2歩先を読み1歩先を照らす」,という良医のあるべき姿を体現する手助けをしてくれます.また,患者が複数科にかかったり複数の医療チームが関与したりする場合や,長期にわたる治療が必要な患者に対して包括的に患者の状態を把握するツールとして,とくに有効です.
 本書は具体的な症例を多く取り上げて解説しており,臨床現場での応用例が豊富に紹介されています.これにより,実際にどのように疾患軌道図を活用するかがイメージしやすくなっています.たとえば,心不全患者の長期管理や,甲状腺機能低下症・亢進症患者の治療過程の追跡など,現場で直面する課題に対する実践的な解決策が示されています.
 さらに,本書は医療従事者だけでなく,患者自身やその家族にも有益です.疾患軌道図には的確な病状説明のタイミングが示されており,また疾患軌道図そのものを使って治療経過を説明することで,患者や家族が自分たちの健康状態をよりよく理解し,積極的に治療に参加することも期待できます.このアプローチは,患者中心の医療を推進するうえで非常に重要な観点です.
 著者の豊富な臨床経験とEBM に基づいた解説は,本書の使いやすさを高めています.医師が日々の業務で直面する問題や悩みに対する具体的なアドバイスが,かゆいところに手が届く形で存在していて,実際の臨床現場で即座に役立つ内容になっていることが素晴らしいです.
 すべての疾患で自信をもって診療をできている医師はそれほど多くないと思います.日常診療でよく診る19症候において,不安のある部分を確認したり,自信があっても改めて学び直したりするうえでも本書は役に立ちます.
 長期的な診療を行っていくうえで,継続的な患者ケアの質を向上させるための支えとなる本書は,よりよい医療を目指すすべての人にとって貴重な一冊になると思います.
書評2
野口善令(豊田地域医療センター学術・教育顧問)

 ありそうでなかった疾患軌道図(illness trajectory)の本です.まず,「疾患軌道図とは何か」ですが,これはJoanne Lynnが提唱した,各疾患が終末期にどのような経過をたどるかの模式図で,「悪性腫瘍」「心肺疾患」「認知症・老衰」の3つを代表的なモデルとしています(Lynn J. JAMA. 2001;285:925-32.).個別の疾患への応用として,我が国でも「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」において,心不全の疾患軌道図が公表されました.
 本書では,様々なコモンディジーズの詳細な疾患軌道図が提供されています.もちろん,心不全もその中に含まれています.これらの疾患軌道図は,疾患の時間経過に応じた地図として機能します.臨床診療は個別性が高く,ケースにより多様な対応が求められるため,万人に当てはまる唯一の治療法は存在しません.しかし,多くの患者がたどるであろう「病みの軌跡の地図」を手にすることで,山が見えてきたら次は川を渡らなければならないといった予測が付きやすくなります.このような予測は,継続診療の実践において非常に重要です.
 本書には,軌道上の各ステージでなされるべき標準治療,介入の再評価を考えるべきポイント,各ポイントにおいて標準治療をどう変更するか,処方をどう整理してポリファーマシーになるのを防ぐか,専門医へのコンサルトをどうするか,さらにはACP(Advance Care Planning:事前ケア計画)のタイミングなどの知恵が満載です.
 継続的なケアを行う臨床医が,患者の人生に寄り添って伴走するためには,目の前にいる患者を人生という物語を生きる個人として捉え,疾患の軌道,そして老いによる変化を踏まえながら,必要な医療・ケアを提供していくことが求められます.クリニックでの診療や在宅医療に従事する臨床医にとって,本書は必携の座右の書と言ってよいでしょう.
カートに追加しました。
お買い物を続ける カートへ進む