カテゴリー: 神経学/脳神経外科学 | 検査・診断学
抗アミロイドβ抗体薬治療を見据えたアルツハイマー病診療
実臨床からみたレカネマブ・ドナネマブ治療の実際
1版
八千代病院/愛知県認知症疾患医療センター長 川畑信也 著
定価
4,400円(本体 4,000円 +税10%)
- B5判 148頁
- 2025年3月 発行
- ISBN 978-4-525-21491-3
抗アミロイドβ抗体薬の書籍が早くも登場!
アルツハイマー病の新規治療薬「抗アミロイドβ抗体薬」をまとめた待望の一冊!
実臨床で認知症診療に関わる臨床医が,どのように軽度アルツハイマー病を診断したうえで抗アミロイドβ抗体薬を使用していったらよいのか,困ったときにどう対応したらよいのか,抗アミロイドβ抗体薬を有効に使用するためにどうすればよいのかを,長年にわたり認知症診療に携わってきた著者の考え方を紹介する.
- 序文
- 目次
序文
抗認知症薬としてわが国で初めてドネペジルが1999年に実臨床での使用が開始されたとき,私たち認知症診療に携わる医師を含めた医療関係者はこれでアルツハイマー病の進行を抑制できるのではないかとの多大な希望を抱いたのではないでしょうか.その後,抗認知症薬としてさらに3剤が上市されてきたのですが,これらの抗認知症薬を処方するなかで認知症の進行を抑制できていると実感できた患者さんがどれだけ存在したといえるのでしょうか.これらの症状改善薬といわれる4剤に対する期待感の縮小に伴って,より強力な認知症症状の進行抑制効果を期待できる薬剤の登場が渇望されてきたわけです.その期待のなかで2023年12月に疾患修飾薬のひとつである抗アミロイドβ抗体薬に属するレカネマブが発売されました.本書は,認知症治療の新たな扉を開く役割を担うレカネマブ治療を見据えた認知症診療をテーマに書籍化しようと意図して書き始めたのですが,2024年9月に同種薬効を期待できるドナネマブが製造承認されたことを受けて,ドナネマブに関する内容も追加することになった経緯があります.本書の構成として,レカネマブとドナネマブの作用機序をはじめとする薬剤の知識と具体的な使用手順,抗アミロイドβ抗体薬治療を見据えたアルツハイマー病診療の道筋,特に軽度アルツハイマー病患者さんをどのように掬い上げていくのかの手順,さらにアミロイドPET検査の役割,抗アミロイドβ抗体薬治療を標的とする事例検討などから構成されています.本書の基本的なスタンスは,実臨床でアルツハイマー病患者さんの治療に関わる臨床医がどのように軽度アルツハイマー病を診断したうえで抗アミロイドβ抗体薬を使用していったらよいのか,困ったときにどう対応したらよいのか,抗アミロイドβ抗体薬を有効に使用するためにどう考えたらよいのかなど臨床医の視点での考えかたを提案したものです.本書が実臨床で治療を含めた認知症診療に携わる先生がたのお役に立てることができれば著者の望外の喜びとするところです.
2025年1月
川畑信也
2025年1月
川畑信也
目次
第1章 臨床医が知っておくべき抗アミロイドβ抗体薬の知識
1. レカネマブの作用機序
2. レカネマブ開発時の臨床試験の概要
3. 抗アミロイドβ抗体薬とアミロイド関連画像異常(ARIA)
4. Clarity-AD 試験でみられた注意すべき副作用
5. Clarity-AD 試験におけるARIA
6. レカネマブ投与に際しての禁忌事項と注意点
7. ドナネマブ臨床試験の概要
8. ドナネマブ臨床試験におけるARIA の発現頻度
第2章 実臨床から考えるアルツハイマー病診断への道筋
1. 詳細な病歴聴取の必要性
2. 問診・診察をどう進めていくか
3. 神経心理検査(認知機能検査)
4. 脳画像検査を診断にどのように利用するか
5. アルツハイマー病の臨床診断への道筋―結論
事例1 病歴と問診・診察,神経心理検査で典型的なアルツハイマー病の病像を示す70代後半,女性
事例2 独居で生活障害が目立ってきた70代後半,女性
6. 治療の視点から
第3章 アミロイドPET検査をどのような患者に利用したらよいか
1. アミロイドPET イメージング剤の適正使用ガイドラインの考え
2. アミロイドPET 検査でアミロイドβ病理の有無を判断する目安
3. 抗アミロイドβ抗体薬治療におけるアミロイドPET 検査の利用のしかた
4. 実臨床からみたアミロイドPET 検査を実施する事例
事例3 若年発症であり診断に慎重さが求められる50代前半,女性
事例4 病歴ではアルツハイマー病を疑うが神経心理検査は良好で生活障害が目立たない70代前半,女性
事例5 妄想を主体としアルツハイマー病なのか老年期精神障害なのかの鑑別が求められる70代後半,女性
事例6 妄想が活発な70代後半,女性
事例7 意味性認知症の可能性を考えるがアルツハイマー病も否定できない60代後半,女性
事例8 レビー小体型認知症の臨床診断基準を満たすがアルツハイマー病の併存を否定したい70代前半,女性
事例9 初診時軽度アルツハイマー病と診断したが4年間認知症症状の進行・悪化がみられない60代前半,女性
事例10 双極性障害と診断され経過中に認知症を疑う症状が出現してきた60 代前半,女性
事例11 うつと診断され向精神薬が処方されている70代前半,女性
事例12 免許更新時の認知機能検査で認知症のおそれがあると判定された70 代後半,女性
第4章 実臨床でアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症をどう診断していくか
1. アルツハイマー病による軽度認知障害あるいは軽度認知症の定義
2. 認知症が軽度の段階で受診してくる患者の割合
3. 医療機関を受診してくるまでの期間と認知機能
4. 家族が気づいた症状によって軽度アルツハイマー病を診断することは可能か
5. 独居あるいは家族との同居によって初診時の重症度に違いがあるのか
6. 神経心理検査の総得点で軽度アルツハイマー病を診断できるか
7. 軽度アルツハイマー病におけるMMSE下位項目の解析
8. 軽度アルツハイマー病にみられる行動・心理症状BPSD
9. 日常生活障害から軽度アルツハイマー病を診断するコツ
10. CDR の視点から軽度認知障害あるいは軽度認知症を考える
11. 軽度アルツハイマー病を診断するために脳画像検査をどのように使い分けるか
事例13 アルツハイマー病がやや高度に進展している60代前半,女性
事例14 職場で仕事の遂行ができなくなってきた60代前半,男性
事例15 認知機能障害が軽度なのでアルツハイマー病の診断を下すことに対して躊躇する70代後半,女性
第5章 レカネマブを使用するための実用的手順と注意点
1. 最適使用推進ガイドラインに合致した患者を選択する
2. アミロイドβ病理の存在を確認する.
3. レカネマブ治療の開始を避けたほうがよい病態
4. レカネマブ治療を開始する前に患者や家族に説明すべき内容
5. 院内・関連部署との連携の構築
6. レカネマブ投与時における実際の対応
7. MRI検査をどのように進めるか
事例16 軽度アルツハイマー病でレカネマブ治療を希望するがMRIで微小出血が5個みられる80代前半,女性
8. 注入に伴う反応infusion reaction 出現時の対策と予防
9. 薬剤調整ならびに投与時の注意点と問題点
10. レカネマブ治療中に患者や家族が注意すべきことを伝える
11. 実臨床からみたレカネマブの臨床効果
第6章 ドナネマブを使用するための実用的手順と注意点
1. 最適使用推進ガイドラインに合致した患者を選択する
2. ドナネマブの使用手順
3. レカネマブとドナネマブに使い分けがあるのか
第7章 事例から考えるレカネマブ(レケンビ)治療の実際
事例17 臨床像から軽度アルツハイマー病と診断するも3年後にアミロイド陰性と判明した70代後半,女性
事例18 記憶障害を含む認知機能障害からアルツハイマー病を疑いアミロイド陽性と判明した70代後半,女性
事例19 もの忘れはみられるがMMSEで28点を獲得できた70代後半,女性
事例20 神経心理検査の結果は良好で生活障害が目立たない70代前半,女性
事例21 アルツハイマー病と診断後4年以上にわたって認知症症状が進行・悪化しない初診時50代後半,女性
事例22 記憶の低下はみられるが加齢に伴うもの忘れなのか軽度認知障害なのかの鑑別をしたい70代前半,女性
事例23 夫がアルツハイマー病であると主張しレケンビ治療を強く求めている70代前半,女性
事例24 脳SPECT検査でレビー小体型認知症を疑うがアミロイド陽性と判明した60代前半,女性
事例25 夫に対する妄想が主体になっている70代前半,女性
事例26 交通違反による臨時認知機能検査で認知症のおそれがあると判定された70代後半,男性
第8章 実臨床から考えるレカネマブ(レケンビ)治療Q&A
Q レケンビ治療の対象とする患者をどう集めたらよいか
Q レケンビ治療を開始すべき適切な年齢は存在するのか
Q レケンビの効果を患者や家族に理解し納得してもらう説明をどうしたらよいか
Q レケンビ治療を開始する際の認知機能検査はどのような手順で行うか
Q アミロイドPET検査と脳脊髄液バイオマーカー検査の選択基準はあるのか
Q レケンビ治療の日程をどのように設定すればよいか
Q レケンビ治療後の待機時間をどう考えたらよいか
Q MMSEならびにCDR実施日から1か月以内にレケンビ治療を開始すると記載されているが,1か月を超えると治療はできないのか
Q 注入に伴う反応infusion reactionは,いつ,どのような状態で出現するのか
Q 注入に伴う反応infusion reactionが出現したときにはどのように対応したらよいか
Q レケンビ治療を受ける患者が増加するのに伴ってその治療スケジュールをどのように管理したらよいか
Q レケンビ投与予定日に急病などの理由で投与をできなかったとき,どうしたらよいか
Q 抗血小板薬(アスピリンなど)を服薬している患者がレケンビ治療を希望しているが治療を開始してよいか
Q レケンビの治療効果をどのように判定したらよいか
Q レケンビ治療の効果判定のためにどのような神経心理検査を利用したらよいか
Q なんらかの原因でレケンビ治療を中止した後に再開する場合の手順を教えてほしい
Q ARIAの臨床症状を教えてください
Q レケンビ初回投与6か月以降は他医療機関に紹介をしてよいとされるが,具体的にはどうしたらよいか
Q 透析患者にレケンビ治療を実施することはできるのか
Q レケンビ治療と症状改善薬の併用は可能か
Q レケンビ治療中に脳血管障害を発症した場合の対応はどうしたらよいか
索 引
1. レカネマブの作用機序
2. レカネマブ開発時の臨床試験の概要
3. 抗アミロイドβ抗体薬とアミロイド関連画像異常(ARIA)
4. Clarity-AD 試験でみられた注意すべき副作用
5. Clarity-AD 試験におけるARIA
6. レカネマブ投与に際しての禁忌事項と注意点
7. ドナネマブ臨床試験の概要
8. ドナネマブ臨床試験におけるARIA の発現頻度
第2章 実臨床から考えるアルツハイマー病診断への道筋
1. 詳細な病歴聴取の必要性
2. 問診・診察をどう進めていくか
3. 神経心理検査(認知機能検査)
4. 脳画像検査を診断にどのように利用するか
5. アルツハイマー病の臨床診断への道筋―結論
事例1 病歴と問診・診察,神経心理検査で典型的なアルツハイマー病の病像を示す70代後半,女性
事例2 独居で生活障害が目立ってきた70代後半,女性
6. 治療の視点から
第3章 アミロイドPET検査をどのような患者に利用したらよいか
1. アミロイドPET イメージング剤の適正使用ガイドラインの考え
2. アミロイドPET 検査でアミロイドβ病理の有無を判断する目安
3. 抗アミロイドβ抗体薬治療におけるアミロイドPET 検査の利用のしかた
4. 実臨床からみたアミロイドPET 検査を実施する事例
事例3 若年発症であり診断に慎重さが求められる50代前半,女性
事例4 病歴ではアルツハイマー病を疑うが神経心理検査は良好で生活障害が目立たない70代前半,女性
事例5 妄想を主体としアルツハイマー病なのか老年期精神障害なのかの鑑別が求められる70代後半,女性
事例6 妄想が活発な70代後半,女性
事例7 意味性認知症の可能性を考えるがアルツハイマー病も否定できない60代後半,女性
事例8 レビー小体型認知症の臨床診断基準を満たすがアルツハイマー病の併存を否定したい70代前半,女性
事例9 初診時軽度アルツハイマー病と診断したが4年間認知症症状の進行・悪化がみられない60代前半,女性
事例10 双極性障害と診断され経過中に認知症を疑う症状が出現してきた60 代前半,女性
事例11 うつと診断され向精神薬が処方されている70代前半,女性
事例12 免許更新時の認知機能検査で認知症のおそれがあると判定された70 代後半,女性
第4章 実臨床でアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症をどう診断していくか
1. アルツハイマー病による軽度認知障害あるいは軽度認知症の定義
2. 認知症が軽度の段階で受診してくる患者の割合
3. 医療機関を受診してくるまでの期間と認知機能
4. 家族が気づいた症状によって軽度アルツハイマー病を診断することは可能か
5. 独居あるいは家族との同居によって初診時の重症度に違いがあるのか
6. 神経心理検査の総得点で軽度アルツハイマー病を診断できるか
7. 軽度アルツハイマー病におけるMMSE下位項目の解析
8. 軽度アルツハイマー病にみられる行動・心理症状BPSD
9. 日常生活障害から軽度アルツハイマー病を診断するコツ
10. CDR の視点から軽度認知障害あるいは軽度認知症を考える
11. 軽度アルツハイマー病を診断するために脳画像検査をどのように使い分けるか
事例13 アルツハイマー病がやや高度に進展している60代前半,女性
事例14 職場で仕事の遂行ができなくなってきた60代前半,男性
事例15 認知機能障害が軽度なのでアルツハイマー病の診断を下すことに対して躊躇する70代後半,女性
第5章 レカネマブを使用するための実用的手順と注意点
1. 最適使用推進ガイドラインに合致した患者を選択する
2. アミロイドβ病理の存在を確認する.
3. レカネマブ治療の開始を避けたほうがよい病態
4. レカネマブ治療を開始する前に患者や家族に説明すべき内容
5. 院内・関連部署との連携の構築
6. レカネマブ投与時における実際の対応
7. MRI検査をどのように進めるか
事例16 軽度アルツハイマー病でレカネマブ治療を希望するがMRIで微小出血が5個みられる80代前半,女性
8. 注入に伴う反応infusion reaction 出現時の対策と予防
9. 薬剤調整ならびに投与時の注意点と問題点
10. レカネマブ治療中に患者や家族が注意すべきことを伝える
11. 実臨床からみたレカネマブの臨床効果
第6章 ドナネマブを使用するための実用的手順と注意点
1. 最適使用推進ガイドラインに合致した患者を選択する
2. ドナネマブの使用手順
3. レカネマブとドナネマブに使い分けがあるのか
第7章 事例から考えるレカネマブ(レケンビ)治療の実際
事例17 臨床像から軽度アルツハイマー病と診断するも3年後にアミロイド陰性と判明した70代後半,女性
事例18 記憶障害を含む認知機能障害からアルツハイマー病を疑いアミロイド陽性と判明した70代後半,女性
事例19 もの忘れはみられるがMMSEで28点を獲得できた70代後半,女性
事例20 神経心理検査の結果は良好で生活障害が目立たない70代前半,女性
事例21 アルツハイマー病と診断後4年以上にわたって認知症症状が進行・悪化しない初診時50代後半,女性
事例22 記憶の低下はみられるが加齢に伴うもの忘れなのか軽度認知障害なのかの鑑別をしたい70代前半,女性
事例23 夫がアルツハイマー病であると主張しレケンビ治療を強く求めている70代前半,女性
事例24 脳SPECT検査でレビー小体型認知症を疑うがアミロイド陽性と判明した60代前半,女性
事例25 夫に対する妄想が主体になっている70代前半,女性
事例26 交通違反による臨時認知機能検査で認知症のおそれがあると判定された70代後半,男性
第8章 実臨床から考えるレカネマブ(レケンビ)治療Q&A
Q レケンビ治療の対象とする患者をどう集めたらよいか
Q レケンビ治療を開始すべき適切な年齢は存在するのか
Q レケンビの効果を患者や家族に理解し納得してもらう説明をどうしたらよいか
Q レケンビ治療を開始する際の認知機能検査はどのような手順で行うか
Q アミロイドPET検査と脳脊髄液バイオマーカー検査の選択基準はあるのか
Q レケンビ治療の日程をどのように設定すればよいか
Q レケンビ治療後の待機時間をどう考えたらよいか
Q MMSEならびにCDR実施日から1か月以内にレケンビ治療を開始すると記載されているが,1か月を超えると治療はできないのか
Q 注入に伴う反応infusion reactionは,いつ,どのような状態で出現するのか
Q 注入に伴う反応infusion reactionが出現したときにはどのように対応したらよいか
Q レケンビ治療を受ける患者が増加するのに伴ってその治療スケジュールをどのように管理したらよいか
Q レケンビ投与予定日に急病などの理由で投与をできなかったとき,どうしたらよいか
Q 抗血小板薬(アスピリンなど)を服薬している患者がレケンビ治療を希望しているが治療を開始してよいか
Q レケンビの治療効果をどのように判定したらよいか
Q レケンビ治療の効果判定のためにどのような神経心理検査を利用したらよいか
Q なんらかの原因でレケンビ治療を中止した後に再開する場合の手順を教えてほしい
Q ARIAの臨床症状を教えてください
Q レケンビ初回投与6か月以降は他医療機関に紹介をしてよいとされるが,具体的にはどうしたらよいか
Q 透析患者にレケンビ治療を実施することはできるのか
Q レケンビ治療と症状改善薬の併用は可能か
Q レケンビ治療中に脳血管障害を発症した場合の対応はどうしたらよいか
索 引
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