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カテゴリー: 感染症学  |  衛生・公衆衛生学

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恐ろしい感染症からたくさんの命を救った現代ワクチンの父の物語

1版

Paul A. Offit, M.D. 原著
堀越裕歩 翻訳

定価

2,200(本体 2,000円 +税10%)


  • 四六判  245頁
  • 2020年9月 発行
  • ISBN 978-4-525-23551-2

人は自分が見たいものだけを見,信じたいものだけを信じる

2020年,新型コロナウイルスの影響で,感染症は再び世界中の注目を集めた.感染症に対峙するうえで,ワクチンはなおも人類がもちうる叡智の盾である.現代医学以降,世界中で最も多くの命を救った男,モーリス・ヒルマン博士を通して科学者たちがたどったワクチンの歴史をひも解き,正しい理解を深めてもらえたら幸いである.(「訳者の序」より)

  • 序文
  • 目次
序文
 赴任地のナイジェリアで,仕事で訪れた病院の小児科病棟で黄熱病ウイルスによって小さな子どもが息を引き取った.ワクチンを接種していれば助かったであろう命である.ワクチンが計り知れない数の命や病気の合併症から人類を救ってきた実績と歴史は動かしようがない.しかしながら,世界やアメリカのワクチンの歴史を振り返ると,すべてが順調だったわけではない.今の時代ではとても許容されないが,ワクチン学の先駆者たちの避けることができなかった失敗の歴史があったことは事実である.
 科学の進歩とともに,医療倫理をめぐる考え方や仕組みも大きく変わった.過去に問題があったからこそ,現在の有効で安全なワクチンが開発されて,常にワクチンを科学的に評価できる体制の恩恵にあずかれるようになった.ただし,問題を克服するための大前提として,ワクチンの評価は科学的に行われるべきである.この本で書かれているように,科学者が繰り返してきた試行錯誤の歴史がそれを物語っている.
 ワクチンは洗練された科学の産物で高い専門性を有するにもかかわらず,多くの人が意見を述べて,それ自体は良いことであるが,ときに科学的根拠のない反ワクチン思想が偏った強固な信念をもって語られる.訴訟にまつわる巨額な利得が絡むと,反ワクチンはビジネスですらあり,さらに複雑な問題になる.2019年にWHOは,ワクチン忌避を世界の健康脅威となる10大原因の一つに挙げている.
 インターネットやSNSの普及によって,信ぴょう性のない情報の拡散が容易な時代になった.日本だけでなく世界中で偽科学の情報に惑わされる人が少なくない.今でもヒルマン博士の言動の一部分を切り取り,存在しない陰謀説や危険性を煽ることで,世間に不安が撒き散らされている.情報社会の現代においてワクチンの正しい情報を発信することは,今までになく重要性が増している.
 2020年,パンデミックとなった新型コロナウイルスの影響で,感染症は再び世界中の注目を集めた.感染症に対峙するうえで,ワクチンはなおも人類がもちうる叡智の盾である.2020年6月には,20世紀にあれだけ人々を恐怖とパニックに陥れた野生型ポリオウイルスが,ついにアフリカ大陸から排除された.それを可能にしたのはワクチンの普及である.
 現代医学以降,世界中で最も多くの命を救った男,モーリス・ヒルマン博士を通して,偉大な科学者たちがたどったワクチンの歴史をひも解き,正しい理解を深めてもらえたら幸いである.

2020年7月
堀越裕歩
目次
・プロローグ
・タイムカプセル

Chapter 1 “なんてことだ.これはパンデミックだ.ここまできた”
      
Chapter 2 ジェリル・リン

Chapter 3 8つの扉

Chapter 4 破壊の天使

Chapter 5 咳,感冒,癌,そしてニワトリ

Chapter 6 恐ろしいものをつくりしもの

Chapter 7 政治が絡む科学

Chapter 8 血 液

Chapter 9 微小動物

Chapter 10 不確かな未来

Chapter 11 評価されなかった天才

・エピローグ
・注 釈
・参考文献
・原著者の謝辞

一般索引
人名索引
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