カテゴリー: 神経学/脳神経外科学
症例から学ぶ戦略的認知症診断
改訂2版
昭和大学横浜市北部病院内科 准教授 福井俊哉 著
定価
4,180円(本体 3,800円 +税10%)
- B5判 244頁
- 2011年2月 発行
- ISBN 978-4-525-24122-3
好評書籍の改訂2版!
SPECT画像をeZIS処理したものに更新,新規症例およびVSRADとDLBの項目を追加して内容をさらに充実させた.
まるで,読み手が実際に診断を行っているかのような臨場感溢れる記述は前版から引き継ぎ,患者の主訴に焦点を当て症例を提示.
その裏に隠れた種々の認知症に対する鑑別診断プロセスを体系的に示す.
- 序文
- 目次
序文
早いもので,初版が2007年に発刊されてから3年の年月が経過した.その短い間にも認知症を取り巻く環境が逐次変化してきたことを感じ取ることができる.認知症に関する啓発が功を奏してきているためか,一般の方々の間でも「認知症」や「アルツハイマー病」などの基本的なキーワードが誤りなく理解されてきていることが実感される.さらには,「レビー小体型認知症」などの今まで認知度が低かった病名を知る方が増えていることに驚かされる.さらに,わが国ではmemantine, rivastigmine, galantamineがアルツハイマー病治療薬として2010年2~3月に揃って申請された.また,アメリカではdonepezil 23mg錠に対するFDAの認可が2010年7月に下りた.このようにアルツハイマー病治療法の選択肢が増えることは患者と介護者の福音となるばかりではなく,認知症治療に対する社会的認識が前向きになる副次的効果も期待される.さらに,一部に根強くある,アルツハイマー病治療薬に対する偏見が払拭される起動力になることを願いたい.
認知症の早期発見・早期治療はまだ理想通りではないことも現実である.しかし,従来の「認知症を疑ってもしばらく様子を見る」から「認知症を疑ったらすぐに専門医を受診する」との態度に変化しつつある傾向は喜ばしい.今後,この考え方が患者家族やかかりつけ医に広く浸透していくことを期待したい.
このような世の中の変化を背景に本書を改訂する機会を得た.主な変更点には,①初版で紹介した一部の症例ついて,当該疾患や症状に関するその後の経過・検査結果,または新たな学説に基づいて,症例に対する考え方や解釈を若干修正・補足したこと,②一過性てんかん性健忘の1症例を追加して側頭葉てんかんによる健忘についての解説を追加したこと,③一部症例を除きSPECT画像をeZIS(easy Z-score Imaging System)処理画像に置き換えたことがある.
さらに,④として,「認知症診断に潜む『罠』」を新たに第4章として追加し,最近,頓に汎用されているVSRAD(Voxel-based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Disease)の有用性と限界を実症例の症状と経過に照らし合わせて解説し,次に,未だに診断率が低いことが懸念されるレビー小体型認知症について,特にその発症様式と経過が多彩である点が診断を困難にしていることに焦点を当て多角的に検討した.その中では,通常は入手が困難と思われるレビー小体型認知症患者自身が綴った幻視体験の手記を紹介し,また,やや予測的ではあるが,レビー小体型認知症の発症様式とSPECT所見の関連性についての解説を試みた.「なぜ話題をレビー小体型認知症に特化させるのか」との疑問が自然に生じると思われる.その理由は,初版発刊後の3年間に,レビー小体型認知症でありながらも診断が非常に困難な症例や残念ながら誤診されている症例に筆者が数多く遭遇してきたからである.この章は最近のトピックスとして捉えていただきたい.
この改訂2版を通して,読者の皆様が認知症診断学に関する知識をupdateし,さらに充実したものにしていただければ幸いである.
2011年1月
福井 俊哉
認知症の早期発見・早期治療はまだ理想通りではないことも現実である.しかし,従来の「認知症を疑ってもしばらく様子を見る」から「認知症を疑ったらすぐに専門医を受診する」との態度に変化しつつある傾向は喜ばしい.今後,この考え方が患者家族やかかりつけ医に広く浸透していくことを期待したい.
このような世の中の変化を背景に本書を改訂する機会を得た.主な変更点には,①初版で紹介した一部の症例ついて,当該疾患や症状に関するその後の経過・検査結果,または新たな学説に基づいて,症例に対する考え方や解釈を若干修正・補足したこと,②一過性てんかん性健忘の1症例を追加して側頭葉てんかんによる健忘についての解説を追加したこと,③一部症例を除きSPECT画像をeZIS(easy Z-score Imaging System)処理画像に置き換えたことがある.
さらに,④として,「認知症診断に潜む『罠』」を新たに第4章として追加し,最近,頓に汎用されているVSRAD(Voxel-based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Disease)の有用性と限界を実症例の症状と経過に照らし合わせて解説し,次に,未だに診断率が低いことが懸念されるレビー小体型認知症について,特にその発症様式と経過が多彩である点が診断を困難にしていることに焦点を当て多角的に検討した.その中では,通常は入手が困難と思われるレビー小体型認知症患者自身が綴った幻視体験の手記を紹介し,また,やや予測的ではあるが,レビー小体型認知症の発症様式とSPECT所見の関連性についての解説を試みた.「なぜ話題をレビー小体型認知症に特化させるのか」との疑問が自然に生じると思われる.その理由は,初版発刊後の3年間に,レビー小体型認知症でありながらも診断が非常に困難な症例や残念ながら誤診されている症例に筆者が数多く遭遇してきたからである.この章は最近のトピックスとして捉えていただきたい.
この改訂2版を通して,読者の皆様が認知症診断学に関する知識をupdateし,さらに充実したものにしていただければ幸いである.
2011年1月
福井 俊哉
目次
第1章 戦略的認知症診断
1 プロローグ
2 患者から話を聞く
3 家族から話を聞く
4 再度患者と話をする―長谷川式簡易知能評価スケールを行う
5 時計の絵を描いてもらう
6 診察所見のまとめと鑑別診断
7 再診時の診察と所見
第2章 認知症診断のための認知検査
1 HDS-Rとは
2 戦略的なHDS-Rの使い方
3 Clock Drawing Test(CDT)とは
4 戦略的なCDTの使い方
5 専門的な認知機能検査
6 補助検査
第3章 実症例の主訴別診断法
1 家族が気づき本人が自覚しない物忘れ
症例1 「物忘れに関する夫の指摘を鬱陶しく思う 63歳,女性」
症例2 「進行性の物忘れがあり,すでにパーキンソン病と診断されている 81歳,女性」
2 本人が物忘れを訴え受診する場合
症例3 「本人,家族ともにもの忘れに気がついている 83歳,女性」
症例4 「言葉の意味を忘れると訴える 75歳,女性」
3 二次的な物忘れが疑われて受診した場合
症例5 「物忘れが睡眠導入薬の影響かどうかを心配して来院した 78歳,女性」
症例6 「物忘れがうつ病によるものか知りたい 82歳,女性」
4 物忘れは必ずしも認知症の症状とは限らない
症例7 「自覚のない物忘れを理由に若年性認知症と診断された 47歳,男性」
5 場所の移動が困難・迷子という主訴
症例8 「通いなれた駅構内で迷うようになった 59歳,女性」
症例9 「電車を乗り継いで同窓会に行けなかった 64歳,女性」
症例10 「出先で迷子になりやすい 71歳,男性」
6 着衣困難と場所に迷うという主訴
症例11 「急にエプロンの着かたが分からなくなり,道に迷いやすくなった 71歳,女性」
7 家族が困る言動異常があるという主訴
症例12 「通信販売で同じものを何回も買ってしまう 78歳,女性」
症例13 「社会的に容認できない行動異常を呈する 73歳,女性」
症例14 「2ヵ月前から急に行動全般がおかしくなった 85歳,男性」
症例15 「長年にわたり進行性の異常行動を呈した 60歳,女性」
症例16 「同じことをしつこく繰り返すようになった 72歳,女性」
8 仕事の能率低下
症例17 「ケアレスミスが次第に増え,仕事に支障をきたすようになった 59歳,男性」
9 機器操作ができなくなった
症例18 「テレビのリモコンが使えなくなった 82歳,女性」
10 見えるはずのないものが見える
症例19 「恐ろしい動物が襲ってくるように見える 77歳,男性」
11 言葉の異常
症例20 「言いたい言葉が出なくなった 76歳,女性」
症例21 「話し方と行動パターンが変化してきた 59歳,女性」
症例22 「言葉が出なくなった 75歳,男性」
12 漢字が書けない
症例23 「次第に漢字が書けなくなった 50歳,女性」
13 身体症状:ふらつき
症例24 「歩行時のふらつきを主訴にした 75歳,男性」
症例25 「歩行時のふらつきが主訴であった 75歳,女性」
14 物忘れと身体症状の両方
症例26 「ビタミンB12療法にて認知機能が著明に改善した 73歳,女性」
症例27 「物忘れと転倒しやすさが悪化した 76歳,女性」
15 アルツハイマー病と診断されたが確認したいという主訴
症例28 「『アルツハイマー病と血管性認知症が合併した混合型認知症』と診断された 71歳,女性」
症例29 「『アルツハイマー病とうつ病の合併』と診断された 76歳,女性」
第4章 認知症診断に潜む「罠」
1 VSRADの適切な利用方法
海馬傍回萎縮度(Zスコア)のみでは認知症の診断はできない
2 レビー小体型認知症(DLB)
DLBの発症様式と初発症状は多彩である
幻覚に関するDLB症例自身の手記
DLBにおけるSPECT定量的検討
DLBの初発症状・発症様式とSPECT所見
おわりに
参考文献
1 プロローグ
2 患者から話を聞く
3 家族から話を聞く
4 再度患者と話をする―長谷川式簡易知能評価スケールを行う
5 時計の絵を描いてもらう
6 診察所見のまとめと鑑別診断
7 再診時の診察と所見
第2章 認知症診断のための認知検査
1 HDS-Rとは
2 戦略的なHDS-Rの使い方
3 Clock Drawing Test(CDT)とは
4 戦略的なCDTの使い方
5 専門的な認知機能検査
6 補助検査
第3章 実症例の主訴別診断法
1 家族が気づき本人が自覚しない物忘れ
症例1 「物忘れに関する夫の指摘を鬱陶しく思う 63歳,女性」
症例2 「進行性の物忘れがあり,すでにパーキンソン病と診断されている 81歳,女性」
2 本人が物忘れを訴え受診する場合
症例3 「本人,家族ともにもの忘れに気がついている 83歳,女性」
症例4 「言葉の意味を忘れると訴える 75歳,女性」
3 二次的な物忘れが疑われて受診した場合
症例5 「物忘れが睡眠導入薬の影響かどうかを心配して来院した 78歳,女性」
症例6 「物忘れがうつ病によるものか知りたい 82歳,女性」
4 物忘れは必ずしも認知症の症状とは限らない
症例7 「自覚のない物忘れを理由に若年性認知症と診断された 47歳,男性」
5 場所の移動が困難・迷子という主訴
症例8 「通いなれた駅構内で迷うようになった 59歳,女性」
症例9 「電車を乗り継いで同窓会に行けなかった 64歳,女性」
症例10 「出先で迷子になりやすい 71歳,男性」
6 着衣困難と場所に迷うという主訴
症例11 「急にエプロンの着かたが分からなくなり,道に迷いやすくなった 71歳,女性」
7 家族が困る言動異常があるという主訴
症例12 「通信販売で同じものを何回も買ってしまう 78歳,女性」
症例13 「社会的に容認できない行動異常を呈する 73歳,女性」
症例14 「2ヵ月前から急に行動全般がおかしくなった 85歳,男性」
症例15 「長年にわたり進行性の異常行動を呈した 60歳,女性」
症例16 「同じことをしつこく繰り返すようになった 72歳,女性」
8 仕事の能率低下
症例17 「ケアレスミスが次第に増え,仕事に支障をきたすようになった 59歳,男性」
9 機器操作ができなくなった
症例18 「テレビのリモコンが使えなくなった 82歳,女性」
10 見えるはずのないものが見える
症例19 「恐ろしい動物が襲ってくるように見える 77歳,男性」
11 言葉の異常
症例20 「言いたい言葉が出なくなった 76歳,女性」
症例21 「話し方と行動パターンが変化してきた 59歳,女性」
症例22 「言葉が出なくなった 75歳,男性」
12 漢字が書けない
症例23 「次第に漢字が書けなくなった 50歳,女性」
13 身体症状:ふらつき
症例24 「歩行時のふらつきを主訴にした 75歳,男性」
症例25 「歩行時のふらつきが主訴であった 75歳,女性」
14 物忘れと身体症状の両方
症例26 「ビタミンB12療法にて認知機能が著明に改善した 73歳,女性」
症例27 「物忘れと転倒しやすさが悪化した 76歳,女性」
15 アルツハイマー病と診断されたが確認したいという主訴
症例28 「『アルツハイマー病と血管性認知症が合併した混合型認知症』と診断された 71歳,女性」
症例29 「『アルツハイマー病とうつ病の合併』と診断された 76歳,女性」
第4章 認知症診断に潜む「罠」
1 VSRADの適切な利用方法
海馬傍回萎縮度(Zスコア)のみでは認知症の診断はできない
2 レビー小体型認知症(DLB)
DLBの発症様式と初発症状は多彩である
幻覚に関するDLB症例自身の手記
DLBにおけるSPECT定量的検討
DLBの初発症状・発症様式とSPECT所見
おわりに
参考文献