南山堂

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カテゴリー: 神経学/脳神経外科学

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症例から学ぶ戦略的片頭痛診断・治療

1版

獨協医科大学 教授 平田幸一 編集
神奈川歯科大学附属横浜研修センター・クリニック 教授
五十嵐久佳 編集
東京女子医科大学脳神経センター 頭痛外来講師 清水俊彦 編集
富永病院 神経内科部長・頭痛センター長 竹島多賀夫 編集

定価

3,850(本体 3,500円 +税10%)


  • B5判  292頁
  • 2010年12月 発行
  • ISBN 978-4-525-24771-3

片頭痛は患者それぞれにバックグラウンドが異なり,診療で頭を悩ますことが多い疾患である.本書では症例を切り口に,片頭痛診療のプロの判断を臨場感あふれる記述で掲載.どのように診断・治療したらよいのかの診療現場を体感できるユニークな構成となっている.もちろん片頭痛の病態や薬物療法などについての総論も隙なく網羅している.

  • 序文
  • 目次
序文
推薦のことば

 頭痛診療の手引きとして,画期的な書である.「症例から学ぶ 戦略的片頭痛診断・治療」の書名が意図するところは,症例のポイントを提示したあと,診断と治療のコツをわかりやすく解説することにある.プライマリ・ケア医を対象としているが,頭痛患者の診療に苦労したことのある医師すべてに必携の書である.近年,頭痛を主訴としてクリニック,病院を受診する患者が増えている.慢性頭痛で悩みながら我慢してきた人達が,頭痛が治療すべき病気であることを認識するようになった.患者の要望にこたえるためには,医療側も頭痛診療の正しい診療手順を知る必要がある.
 「症例から学ぶ」ことはいかなる分野にもいえることであるが,とくに頭痛の診療では重要である.患者自身にしかわからない頭痛情報をいかに客観的にとらえるかが,その後の診断・治療を左右する.本書には実際の診療現場でよく経験する症例が多く提示され,どういった診断・治療戦略が適切かの指針が示されている.さらに,問診のコツ,ダイアリーの活用などの実際的な方法がわかりやすく,ていねいに紹介されている.随所に「診療風景」の項がもうけられ,頭痛診療に長年苦労されてきた著者らの秘伝も書かれている.患者中心の医療の理想が徹底的に貫ぬかれており,「患者の頭痛の悩み」をどう診断し治療するかの解説に納得させられる.治療の難しい小児の頭痛,月経関連片頭痛,妊娠・授乳中の片頭痛の治療などのポイントもわかりやすく解説されている.片頭痛の診断にあたって,危険な頭痛を決して見逃さないようにとの警告も随所に見られる.臨床で困った経験を持つ医師にとっては大変に心強いガイドラインである.
 片頭痛患者にとって最も辛いのは「不安」である.「あの辛い頭痛がまたいつ来るか」の不安により生活が大きく制限される.その不安をまず取り除くための治療の工夫と実践については,本書が診断とともに最も力を入れているところである.片頭痛急性期治療薬はトリプタン系薬剤の使用法を中心とし,その他の治療薬も含めた具体的な選択が示されている.「あの辛い頭痛が来てもなんとかなる」という治療法を知ることにより,片頭痛患者の不安の多くが軽減し,医療への信頼と満足感が生ずることになる.片頭痛の予防的治療法についても,本書は徹底的にエビデンスに基づいた戦略を展開している.片頭痛の誘因は多岐にわたり,また個人により様々であることから外的環境因子,内的因子を知った上での予防法の選択が必要であることについても詳細に解説されている.
 本書は頭痛診療の初心者のみならず,かなり経験を持ちながら日常診療で治療に悩むことのある医師に役立つ多くの情報が網羅されている.本書が頭痛診療に興味を持つ医師にとり啓発的でかつバイブル的な書として利用されることを期待する.

2010年10月
日本頭痛学会 理事長
坂井文彦




 第一線の診療において頭痛は最も多い疾患の一つで,きわめて重要な症状・疾患である.当然,急性上気道炎などに伴った頭痛で来院する患者もいるが,重要なのは片頭痛をはじめとする一次性頭痛,しかも慢性化した頭痛に「困って,困って」来院する方たちである.まさにたかが頭痛,されど頭痛なのである.
 近年,わが国でもEBM(evidence-based medicine)に基づいた片頭痛治療のガイドラインが発表され,臨床現場では片頭痛治療における種々のタイプのトリプタン製剤の認可がされるなど,一昔前に比べれば慢性頭痛治療に対する認識,そして診断,治療のレベルは着実に向上してきていることは明白な事実である.しかし,一方で現実には残念ながら,いまだ第一線の診療で片頭痛なのにそう診断されていない.だから,治療されていない片頭痛患者がまだいることもこれもまた明白な事実である.また,小児で不定愁訴として扱われる場合,思春期で学業・登校に関連する場合,就職してからのストレスによる頭痛,子育て,家事をしながら頭痛に悩まされる例,そして更年期に生ずる頭痛と,「この頭痛を何とかしてほしい,治せる医療機関・医師を教えてほしい」というニーズは高い.なぜなら,多くの医療者はこのような困った頭痛に対して明確な答えを持ち合わせていない.だから答えない,あるいは答えられないのである.
 一部の著名な頭痛専門医がすべての頭痛患者の診断・治療をうまくこなせているとはいわないが,少なくとも,まずEBMに基づいた診断・治療,それでだめなら経験に基づいたアプローチ・診断・治療を,的確に素早く行い,それが患者のニーズを最終的に満たすものなのか,ということを常にフィードバックし,診療していることは明らかである.本書では,この技術を特に具体的な症例提示を駆使し,だれにもわかりやすいものにしている.
 具体的には,様々かつ多くの症例を提示し,スペシャリストの方々に,現場を知る者にしか分からない診断・治療のポイントをピックアップして解説いただいている.
 症例の右側に記載されているそのポイントだけを拾い読みしていただいても,頭痛診療に対する「エッセンス」を吸収することができるだろう.また,あえて後半に「総論」を掲載することで,各々の症例での疑問点の解決や振り返りが可能なように構成した.
 頭痛,特に片頭痛患者を診断し治療するには,多様な片頭痛患者の診断の手掛かりをパズルのように紐解き,まとめてゆくことが必要であり,時にそれは至難の技である.しかし,そのパズルがうまく解けたときの喜びはすばらしく,それは当然患者の喜びにつながる.本書の位置づけを一言でいうならば,まさに片頭痛患者の診断・治療のための攻略本である.また,本書は日本の頭痛医学をリードする50代を中心とした比較的若い編者・著者で編集・執筆をした.読者が頭痛診療に難渋したときに,この本を開き,それに対する戦略がひらめいたなら,著者らにとってこれ以上の幸せはないであろう.

2010年10月
編者を代表して
平田幸一
目次
実症例の診断と治療法
1. 成人の片頭痛典型例
  症例1 24歳,女性会社員 毎月1回,2日ほど頭痛で寝込む
  症例2 中年男性 閃輝暗点から始まる頭痛発作
  症例3 33歳,女性 月経に関連して起こる頭痛
  症例4 バリバリ働く中年女性 週末はいつも辛い頭痛
  症例5 40代,女性 最近頭痛がひどくなった

2. 小児の片頭痛
  症例6 腹痛,嘔吐,めまいを伴う9歳小児の頭痛
  症例7 13歳(中学2年),女児 前頭部の拍動性頭痛が続き,不登校となった
  症例8 10歳,女児 母離れできない,子離れできない成長期の片頭痛
  症例9 花粉症,副鼻腔炎で治療されていた小児が頭が痛いと言い出した
  症例10 12歳,男子 一年前より頭痛がひどくなり,学校に行けなくなった
  症例11 15歳,女子 2年前より頭痛がひどくなり,日常生活に支障を生じている

3. 妊婦・授乳婦の片頭痛
  症例12 30代,女性 妊娠しても軽快しない片頭痛
  症例13 30代,女性 お産した後ひどい頭痛に悩まされる

4. 診断に苦慮する片頭痛
  症例14 30代,女性 以前から頭痛があるが鎮痛薬の効果があまりない
  症例15 34歳,女性 肩こり,肩の痛みで始まる片頭痛
  症例16 20代,女性 めまい・耳鳴りを主訴に来院した
  症例17 22歳,女性 就職を契機に頭痛が激烈化した
  症例18 50代,男性 頭頸部手術後に片頭痛が増悪した
  症例19 31歳,女性 群発頭痛と合併しているかとも思える片頭痛
  症例20 44歳,女性 片頭痛と診断されたが,実はくも膜下出血であった頭痛
  症例21 50代,女性 前兆の後に頭痛がなくなった

5. 治療に悩む片頭痛
  症例22 40代,男性 どのような片頭痛治療にも抵抗する
  症例23 40歳,女性 トリプタン以外のどのような治療にも抵抗する慢性片頭痛
  症例24 26歳,男性 低髄液圧症候群と言われ,治療後も寛解しない頭痛例
  症例25 右利きの35歳,女性 頭痛に伴い右上肢脱力と失語が出現し,せん妄状態に至った
  症例26 70代,女性 7~8年前より激しい頭痛のためスマトリプタンを毎日内服している
  症例27 35歳,男性 離職でしか治すことができなかった片頭痛
  症例28 51歳,女性 抗うつ薬を導入し薬物乱用頭痛からの離脱に成功した例
  症例29 20代,女性 妊娠を希望しているが頭痛日数が多く,頻回に複合鎮痛薬を服用している

総 論

戦略的片頭痛診断
Ⅰ 患者から話を聞く
 イントロダクション-2つの診察風景
 患者のニーズと頭痛診療のゴール
 頭痛患者の話を聴く技術

Ⅱ 小児の診察のしかた
 初診時における小児の様子を観察する
 付き添いの父兄の様子も重要な鍵を握る
 既往症や合併症も診断に有用
 小児頭痛患者に必要となる補助検査
 頭痛小児の生活習慣の聴取
 小児頭痛患者における服薬指導

Ⅲ 診察所見のまとめと鑑別診断
 片頭痛の診断における概要
 片頭痛との鑑別診断

Ⅳ 頭痛ダイアリーを渡す
 頭痛ダイアリーを渡すまでの手順
 頭痛ダイアリーの必要性につき説明する
 頭痛ダイアリーの書き方の説明
 頭痛ダイアリーを収集する

Ⅴ 再診時の診察
 診察風景
 再診の際に確認する事項
 頭痛ダイアリーをつけない患者の指導
 服薬しない患者の指導
 共存症の確認
 ライフスタイルの確認
 二次性頭痛の可能性の確認

片頭痛診断のための検査
Ⅰ 問診票の役割
 問診票の怖い話
 問診票の活用
 スクリーニングツール

Ⅱ 頭痛ダイアリー
 頭痛ダイアリーとは
 頭痛ダイアリーの記入法
 頭痛ダイアリーの分析
 頭痛ダイアリーの効用

Ⅲ 画像診断はどこまで?
 頭痛診療における画像診断の意義
 前医での画像診断に対する対処は?
 画像診断に際して特に注意を払う点は?
 頭部CTスキャンとMRI.どちらを行うべきか?

治療法のコツ
Ⅰ 非薬物治療
 生活歴,いま置かれている環境を知る
 睡 眠
 片頭痛誘発因子からの回避:自然環境トリガーを知り対処する
 気温,体温の調節
 頭痛体操と運動
 行動療法を知り,行う
 その他

Ⅱ 急性期治療
 片頭痛急性期治療のゴール
 鎮痛薬,非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
 トリプタン系薬剤
 その他の急性期治療薬
 片頭痛発作重積の急性期治療
 片頭痛の急性期治療薬の使い分け

Ⅲ 片頭痛の予防治療
 どのような患者に予防薬が必要か
 予防薬を開始するにあたり,注意すべきこと
 片頭痛予防薬のターゲット
 どのような予防薬があるか
 どの予防薬を選択するか
 小児にはどの予防薬を選択する?
 効果の判定と経過観察

Ⅳ 困った頭痛の治療法
 すべてのトリプタン製剤で,効果が得られない片頭痛発作の対処
 共存症や他疾患の併発により,片頭痛治療が困難な際の対処
 トリプタン製剤禁忌症例における片頭痛発作への対処

付 録

片頭痛診断基準
緊張型頭痛診断基準
国際頭痛分類一覧

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