免疫不全者の呼吸器感染症
1版
大曲貴夫 編
上田晃弘 編
藤田崇宏 編
岸田直樹 編
荒岡秀樹 編
相野田 祐介 編
定価
7,150円(本体 6,500円 +税10%)
- B5判 380頁
- 2011年11月 発行
- ISBN 978-4-525-24821-5
免疫不全者の呼吸器感染症診療は難しい.原因微生物の予測がつけにくい上に診断手法が確立されておらず,患者自身の状態も相まってマネジメントも困難ということで,ともすれば無手勝流の診療を行ってしまいがちである.この複雑な診療過程に,エビデンスと生々しい臨床のコンテクストを踏まえ,ロジカルに切り込んだ一冊.
- 目次
- 序文
目次
第Ⅰ章 免疫不全者の呼吸器感染症 ~Overview~
1.免疫不全者における呼吸器感染症診療の原則
2.免疫不全患者の呼吸器感染症を見逃さない
3.重症化させないために ~治療上の注意点~
第Ⅱ章 免疫不全とは
1.免疫不全とは
2.免疫不全を起こす薬剤・治療
第Ⅲ章 免疫不全をきたす疾患と各々におきる呼吸器感染症の特徴
1.固形腫瘍
2.血液悪性腫瘍
3.固形臓器移植後
4.脾機能不全
5.HIV/AIDS
6.膠原病
7.炎症性腸疾患
8.腎不全
9.糖尿病
10.肝疾患
11.新生児・低出生体重児
12.Critically ill患者(長期ICU滞在者など)
13.呼吸器疾患(肺癌を除く)
第Ⅳ章 免疫不全者の肺症候群ごとの臨床像
1.びまん性肺異常陰影
2.融合影(浸潤影,コンソリデーション)
3.結節影
第Ⅴ章 原因となる微生物
【細 菌】
1.主に市中肺炎の原因となる微生物 ~肺炎球菌,Moraxella,Haemophilusなど~
2.ノカルジア肺炎
3.緑膿菌肺炎
4.Stenotrophomonas maltophilia肺炎
5.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌methicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)肺炎
6.レジオネラ肺炎
【抗酸菌】
7.結 核 (竹下 望) 203
8.非結核性抗酸菌nontuberculous mycobacteria(NTM)症
【真 菌】
9.アスペルギルス症
10.接合菌症(ムコール症)
11.カンジダ肺炎
12.ニューモシスチス肺炎Pneumosyitis jirovecii pneumonia(PcP)
13.クリプトコックス症
【ウイルス:ヘルペスウイルス】
14.サイトメガロウイルス肺炎
15.単純ヘルペスherpes simplex virus(HSV)肺炎
16.水痘・帯状疱疹ウイルス肺炎
17.その他のヘルペスウイルス科ウイルスによる肺炎
【ウイルス:呼吸器ウイルス】
18.RSウイルスなどの呼吸器ウイルス肺炎
19.インフルエンザ肺炎
第Ⅵ章 異常影を出す感染症以外の病態
A.免疫不全患者の肺病変の診断
B.既存の疾患による肺病変
C.治療の影響で発症する肺病変
D.特殊な免疫状態(移植後GVHDなど)による肺病変
第Ⅶ章 予防はどうするか? ~基礎疾患ごとの日和見感染防止策~
1.HIV感染者で予防すべき微生物と方法
2.同種造血幹細胞移植で予防すべき微生物と方法
3.固形臓器移植で予防すべき微生物と方法
4.ステロイド内服時に予防すべき微生物と方法
5.脾臓摘出者で予防すべき微生物と方法
第Ⅷ章 ケーススタディ
1.集中治療室の重症患者の遷延する呼吸不全
2.SLE患者に出現した肺野異常陰影
3.臍帯血移植後好中球減少時の肺病変:確定診断への過程についての考え
索 引
1.免疫不全者における呼吸器感染症診療の原則
2.免疫不全患者の呼吸器感染症を見逃さない
3.重症化させないために ~治療上の注意点~
第Ⅱ章 免疫不全とは
1.免疫不全とは
2.免疫不全を起こす薬剤・治療
第Ⅲ章 免疫不全をきたす疾患と各々におきる呼吸器感染症の特徴
1.固形腫瘍
2.血液悪性腫瘍
3.固形臓器移植後
4.脾機能不全
5.HIV/AIDS
6.膠原病
7.炎症性腸疾患
8.腎不全
9.糖尿病
10.肝疾患
11.新生児・低出生体重児
12.Critically ill患者(長期ICU滞在者など)
13.呼吸器疾患(肺癌を除く)
第Ⅳ章 免疫不全者の肺症候群ごとの臨床像
1.びまん性肺異常陰影
2.融合影(浸潤影,コンソリデーション)
3.結節影
第Ⅴ章 原因となる微生物
【細 菌】
1.主に市中肺炎の原因となる微生物 ~肺炎球菌,Moraxella,Haemophilusなど~
2.ノカルジア肺炎
3.緑膿菌肺炎
4.Stenotrophomonas maltophilia肺炎
5.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌methicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)肺炎
6.レジオネラ肺炎
【抗酸菌】
7.結 核 (竹下 望) 203
8.非結核性抗酸菌nontuberculous mycobacteria(NTM)症
【真 菌】
9.アスペルギルス症
10.接合菌症(ムコール症)
11.カンジダ肺炎
12.ニューモシスチス肺炎Pneumosyitis jirovecii pneumonia(PcP)
13.クリプトコックス症
【ウイルス:ヘルペスウイルス】
14.サイトメガロウイルス肺炎
15.単純ヘルペスherpes simplex virus(HSV)肺炎
16.水痘・帯状疱疹ウイルス肺炎
17.その他のヘルペスウイルス科ウイルスによる肺炎
【ウイルス:呼吸器ウイルス】
18.RSウイルスなどの呼吸器ウイルス肺炎
19.インフルエンザ肺炎
第Ⅵ章 異常影を出す感染症以外の病態
A.免疫不全患者の肺病変の診断
B.既存の疾患による肺病変
C.治療の影響で発症する肺病変
D.特殊な免疫状態(移植後GVHDなど)による肺病変
第Ⅶ章 予防はどうするか? ~基礎疾患ごとの日和見感染防止策~
1.HIV感染者で予防すべき微生物と方法
2.同種造血幹細胞移植で予防すべき微生物と方法
3.固形臓器移植で予防すべき微生物と方法
4.ステロイド内服時に予防すべき微生物と方法
5.脾臓摘出者で予防すべき微生物と方法
第Ⅷ章 ケーススタディ
1.集中治療室の重症患者の遷延する呼吸不全
2.SLE患者に出現した肺野異常陰影
3.臍帯血移植後好中球減少時の肺病変:確定診断への過程についての考え
索 引
序文
免疫不全者の感染症診療は一筋縄ではいかない.なかでも免疫不全者の呼吸器感染症診療は難しい.
なぜだろうか? 第一に,呼吸器感染という病態であろうことは容易に推測できても,原因微生物の予測がつけにくいということがある.その結果どうしても無手勝流の治療を行ってしまいがちである.第二には診断手法が確立されていないという問題がある.的確な治療を行うためには診断が重要である.しかし,現実には免疫不全者に起こる呼吸器感染症の原因微生物については,微生物学的診断方法が十分にvalidateされていないものが多い.ならば組織診断を行えばよいのではないかという意見もあるが,仮に組織診がgold standardであっても,現実的な診療のコンテクストの中では度外れに侵襲度が高すぎるなどの理由で実際には行いにくいものも多い.第三にはマネジメントの難しさがある.診断の確からしさが不透明な中で,どのタイミングでどのような治療を開始すべきか,という問題は,患者毎に個別性が高く,診療にあたる者の臨床的な技量に強く依存している面がある.
この複雑な診療過程を,何とか少しでも明らかにできないか? という課題に,蛮勇をふるって切り込んだのが本書である.
本書では,臨床の現場の第一線で今現在多く患者を診ている立場の医師に執筆を依頼した.なぜなら,生々しい診療のコンテクストを今現在経験している方々であるからである.説得力のある内容は現場のコンテクストの中からしか生まれないと信じてのことである.学問的に議論のある部分については,現時点で得られるエビデンスを紹介しつつ,説明不能の部分については各執筆者にエキスパートオピニオンを示して頂いた.エビデンスそのものの妥当性を示すのはテキストとして当然であるが,外的妥当性を検証できるのは現場の医師しかいない.
また,免疫不全といってもそれが主として好中球の減少を指すのか,細胞性免疫か,液性免疫かといった判断は重要である.本書では,個別の薬剤,疾患,微生物ごとにそれぞれどのパターンのリスクが考慮されるかを星の数(最大3つ)でご評価いただいた.議論もあるところかとも思うが,診療上の判断の一助としていただければ幸いである.
さらに本書ではケースカンファレンスにも一章を割いている.ケースカンファレンスで得られる個別の知識は多くはない.しかし個別の疾患の教科書的記載では得られないものがある.それはケースマネジメントの実際である.本書は臨床書であり,現実の診療の流れに強くこだわっている.この流れを追って追体験するなかで,ご自身であればどのようなマネジメントをするかを是非考えて頂きたい.知識の詰め込みが臨床力向上に直接に寄与すると思われる風潮があるが,編集にあたった者としては個別の知識を得るための目的でこの項を読んでほしくはないし,個別の知識の量が少ないことでこのケースカンファレンスを過小評価してほしくない.
以上,本社は徹底的に臨床にこだわりながら免疫不全者の呼吸器感染症に取り組んでいる.個別の知識を学ぶことはさりながら,経験の多い医師達が実際にはどのように判断・決断しているかを読む中で,皆さんの今後の判断の参考にして頂ければ幸いである.
大曲 貴夫
なぜだろうか? 第一に,呼吸器感染という病態であろうことは容易に推測できても,原因微生物の予測がつけにくいということがある.その結果どうしても無手勝流の治療を行ってしまいがちである.第二には診断手法が確立されていないという問題がある.的確な治療を行うためには診断が重要である.しかし,現実には免疫不全者に起こる呼吸器感染症の原因微生物については,微生物学的診断方法が十分にvalidateされていないものが多い.ならば組織診断を行えばよいのではないかという意見もあるが,仮に組織診がgold standardであっても,現実的な診療のコンテクストの中では度外れに侵襲度が高すぎるなどの理由で実際には行いにくいものも多い.第三にはマネジメントの難しさがある.診断の確からしさが不透明な中で,どのタイミングでどのような治療を開始すべきか,という問題は,患者毎に個別性が高く,診療にあたる者の臨床的な技量に強く依存している面がある.
この複雑な診療過程を,何とか少しでも明らかにできないか? という課題に,蛮勇をふるって切り込んだのが本書である.
本書では,臨床の現場の第一線で今現在多く患者を診ている立場の医師に執筆を依頼した.なぜなら,生々しい診療のコンテクストを今現在経験している方々であるからである.説得力のある内容は現場のコンテクストの中からしか生まれないと信じてのことである.学問的に議論のある部分については,現時点で得られるエビデンスを紹介しつつ,説明不能の部分については各執筆者にエキスパートオピニオンを示して頂いた.エビデンスそのものの妥当性を示すのはテキストとして当然であるが,外的妥当性を検証できるのは現場の医師しかいない.
また,免疫不全といってもそれが主として好中球の減少を指すのか,細胞性免疫か,液性免疫かといった判断は重要である.本書では,個別の薬剤,疾患,微生物ごとにそれぞれどのパターンのリスクが考慮されるかを星の数(最大3つ)でご評価いただいた.議論もあるところかとも思うが,診療上の判断の一助としていただければ幸いである.
さらに本書ではケースカンファレンスにも一章を割いている.ケースカンファレンスで得られる個別の知識は多くはない.しかし個別の疾患の教科書的記載では得られないものがある.それはケースマネジメントの実際である.本書は臨床書であり,現実の診療の流れに強くこだわっている.この流れを追って追体験するなかで,ご自身であればどのようなマネジメントをするかを是非考えて頂きたい.知識の詰め込みが臨床力向上に直接に寄与すると思われる風潮があるが,編集にあたった者としては個別の知識を得るための目的でこの項を読んでほしくはないし,個別の知識の量が少ないことでこのケースカンファレンスを過小評価してほしくない.
以上,本社は徹底的に臨床にこだわりながら免疫不全者の呼吸器感染症に取り組んでいる.個別の知識を学ぶことはさりながら,経験の多い医師達が実際にはどのように判断・決断しているかを読む中で,皆さんの今後の判断の参考にして頂ければ幸いである.
大曲 貴夫