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神経疾患のリハビリテーション

1版

国立障害者リハビリテーションセンター 顧問 江藤文夫 監修
群馬大学大学院医学系研究科 リハビリテーション医学分野 教授
和田直樹 編

定価

4,400(本体 4,000円 +税10%)


  • B5判  306頁
  • 2019年12月 発行
  • ISBN 978-4-525-24841-3

神経疾患のリハビリテーションに必要な評価や治療手技が理解できるビジュアルテキスト

リハビリテーション医療が必要な神経疾患を取り上げ、疾患特性・評価・治療手技をオールカラーでビジュアルにわかりやすく解説。摂食嚥下障害や認知症など超高齢社会を考慮した項目も掲載。学生の講義から活用できるこれからの神経疾患におけるリハビリテーション医療のベーシックかつ定番となるテキストである.

  • 目次
  • 序文
目次
第1章 神経疾患とリハビリテーション
[1]リハビリテーションからみた神経疾患
  1 リハビリテーションの概念
  2 わが国における神経疾患とリハビリテーション
  3 神経疾患のリハビリテーションの歴史
  4 障害のとらえ方(ICFを中心に)
  5 チーム医療としてのリハビリテーション
  6 リハビリテーションからみた神経疾患の障害の特徴
  7 障害に対するリハビリテーション治療について
  8 発症のタイプによるリハビリテーションの対応
  9 福祉・介護との連携
[2]神経系の可塑性
  1 神経系の構成からみた可塑性
  2 神経の可塑性を利用したリハビリテーション
[3]神経疾患の検査法
  1 電気生理学的検査
  2 画像検査
  3 自律神経検査
  4 動作解析検査

第2章 片麻痺のリハビリテーション
[1]片麻痺の特性
  LECTURE 1. 片麻痺とは
  LECTURE 2. 病変部位による症状の違い
  LECTURE 3. 回復の予測
  LECTURE 4. 皮質脊髄路と片麻痺発症の際の代償機能
  LECTURE 5. 脳損傷後の大脳半球抑制の不均衡
  LECTURE 6. 痙縮について
  LECTURE 7. 上位運動ニューロン徴候について
[2] 片麻痺の評価法
  LECTURE 1. 片麻痺評価の目的
  LECTURE 2. 運動機能評価法
  LECTURE 3. 総合評価法
  LECTURE 4. 上肢機能評価法
[3]片麻痺に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. なぜ,片麻痺リハビリテーションは発症直後から行うべきか?
  LECTURE 2. 急性期→回復期→生活期:一貫した流れをつくって対応する
  LECTURE 3. 痙縮に対するアプローチ
[4]片麻痺に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 超急性期~急性期のリハビリテーション
  LECTURE 2. 回復期リハビリテーション
  LECTURE 3. 装具療法
  LECTURE 4. 生活期リハビリテーション

第3章 パーキンソン病のリハビリテーション
[1]パーキンソン病の特性
  LECTURE 1. パーキンソン病の運動症状と非運動症状
  LECTURE 2. パーキンソン病とパーキンソニズム
  LECTURE 3. パーキンソン病の診断基準
  LECTURE 4. パーキンソン病の薬物療法・手術療法と,長期薬物療法による付随症状
[2]パーキンソン病の評価法  
  LECTURE 1. リハビリテーション介入前の評価
  LECTURE 2. リハビリテーション訓練開始直前の情報
  LECTURE 3. 運動機能・運動症状,非運動症状を評価
[3]パーキンソン病に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. ADLの維持および障害予防によるQOLの維持・向上
  LECTURE 2. パーキンソン病のリハビリテーション
  LECTURE 3. 加齢,廃用を考えたリハビリテーション
  LECTURE 4. 自主訓練とその継続
[4]パーキンソニズムに対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. HYの重症度分類を用いてのリハビリテーションプラン
  LECTURE 2. リハビリテーションの基本手技

第4章 運動失調のリハビリテーション
[1]運動失調の特性
  LECTURE 1. 運動失調の概説・原因
  LECTURE 2. 小脳性運動失調
  LECTURE 3. 感覚障害性運動失調
  LECTURE 4. 前庭機能障害性運動失調
[2]運動失調の評価法
  LECTURE 1. 運動失調・バランスの評価スケール
  LECTURE 2. 定量的評価法
[3]運動失調に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. 急性発症疾患に対する考え方
  LECTURE 2. 慢性進行性疾患に対する考え方
  LECTURE 3. 脊髄小脳変性症の病期別リハビリテーションの具体例
[4]運動失調に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 固有知覚と運動学習を利用する


第5章 筋萎縮性疾患のリハビリテーション
[1]筋萎縮性疾患の特性
  LECTURE 1. 筋原性筋萎縮と神経原性筋萎縮の違い
  LECTURE 2. 筋萎縮を呈する主な疾患
[2]筋萎縮性疾患の評価法
  LECTURE 1. 診察のポイント
[3]筋萎縮性疾患に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. リハビリテーションプログラム作成とゴール設定の考え方
  LECTURE 2. リハビリテーションプログラム作成やゴール設定時に考慮すべき点
[4] 筋萎縮性疾患に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 装具・歩行補助具・車椅子・日常生活用具・コミュニケーション機器の検討・選定のポイント
  LECTURE 2. 呼吸器合併症予防に有用なアプローチ

第6章 脊髄障害のリハビリテーション
[1]脊髄障害の特性
  LECTURE 1. 脊髄の概要と脊髄障害
  LECTURE 2. 縦断像から見た脊髄障害
  LECTURE 3. 横断像から見た脊髄障害
  LECTURE 4. 脊柱の構成要素に由来する脊髄障害と脊髄自体に由来する脊髄障害
  LECTURE 5. 特徴的な脊髄障害・症候群
[2]脊髄障害の評価法
  LECTURE 1. 痙縮を中心とした症状と神経学的所見の評価
  LECTURE 2. 脊髄損傷で用いられる評価スケール
  LECTURE 3. 痙縮,脊髄症,多発性硬化症に関する評価スケール
  LECTURE 4. 神経根症状,脊椎症状,自律神経症状の評価
  LECTURE 5. 脊髄障害の画像検査
[3]脊髄障害に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. 原因疾患ごとの発症形式,経過,予後,治療,リハビリテーション方針
  LECTURE 2. 原因疾患ごとの行うべきではない動作や物理療法
  LECTURE 3. 障害部位による運動麻痺や感覚障害,機能予後
  LECTURE 4. 随伴する機能障害(呼吸機能障害,自律神経障害,膀胱直腸障害)
  LECTURE 5. 廃用症候群・合併症の予防
[4]脊髄障害に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 脊髄損傷急性期
  LECTURE 2. 脊髄損傷回復期
  LECTURE 3. 脊髄損傷生活期(維持期)
  LECTURE 4. 脊椎変性疾患
  LECTURE 5. 多発性硬化症

第7章 末梢神経障害のリハビリテーション
[1]末梢神経障害の特性
  LECTURE 1. 末梢神経障害の症状
  LECTURE 2. 末梢神経の構造
  LECTURE 3. 末梢神経障害をきたす病態
[2]末梢神経障害の評価法
  LECTURE 1. 理学所見での評価
  LECTURE 2. 神経生理学的検査の所見
[3]末梢神経障害に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)
  LECTURE 2. ギラン・バレー症候群(GBS)
  LECTURE 3. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
[4]末梢神経障害のリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 筋力強化訓練など
  LECTURE 2. ROM 訓練と物理療法など
  LECTURE 3. 装具など
  LECTURE 4. 福祉制度

第8章 脳性麻痺のリハビリテーション
[1]脳性麻痺の特性
  LECTURE 1. 脳性麻痺の定義と病型分類
  LECTURE 2. 脳性麻痺のリスクファクターと診断
  LECTURE 3. 脳性麻痺の病態
  LECTURE 4. 脳性麻痺の障害構造
[2]脳性麻痺の評価法
  LECTURE 1. 新生児期の評価
  LECTURE 2. 発達検査
  LECTURE 3. 粗大運動の評価法
  LECTURE 4. 日常生活活動の評価法
[3]脳性麻痺に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. 運動パフォーマンスの最適化
  LECTURE 2. 日常生活での経験とチームアプローチ
  LECTURE 3. 薬物治療と手術療法の併用
  LECTURE 4. ライフステージによるニーズの変化
[4]脳性麻痺に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 関節可動域運動・ストレッチング
  LECTURE 2. 筋力増強運動
  LECTURE 3. 有酸素運動
  LECTURE 4. 姿勢の選択とポジショニング
  LECTURE 5. バランス練習
  LECTURE 6. 歩行練習
  LECTURE 7. 福祉用具
  LECTURE 8. 日常生活場面での育児に対する支援
  LECTURE 9. 呼吸・嚥下機能
  LECTURE 10. 特殊な状況に対する対応

第9章 高次脳機能障害のリハビリテーション
[1]高次脳機能障害の特性
  LECTURE 1. 高次脳機能障害(神経心理学的障害)とは?
  LECTURE 2. 高次脳機能障害は,個々の障害が別々にあるわけではない.最大の難関は“気づき”を得ること
  LECTURE 3. 脳血管障害(脳卒中)の高次脳機能障害の特徴
  LECTURE 4. 外傷性脳損傷や脳炎,低酸素脳症の高次脳機能障害の特徴
  LECTURE 5. 社会的行動障害をどうとらえ対応するか
[2]高次脳機能障害の評価法
  LECTURE 1. 評価の意義
  LECTURE 2. 評価の技法,神経心理学的検査
  LECTURE 3. 前頭葉障害評価は検査の数値だけでなく記述で
  LECTURE 4. リハビリテーション医療の効果測定(評価)に際して
[3-1]高次脳機能障害に対するリハビリテーション診療の考え方(回復期,生活期初期の介入にあたって)
  LECTURE 1. 神経基盤の回復のメカニズムは?
  LECTURE 2. リハビリテーション医療では適切で明確な目標設定が大切
  LECTURE 3. 高次脳機能障害(広義)への対応の原則
  LECTURE 4. 小グループ活動の利用ただし十分なスタッフの数が必要
  LECTURE 5. 自己効力感をいかに高めるか精神科リハビリテーションにおける基本原則を応用
[3-2]高次脳機能障害に対するリハビリテーション診療の考え方(生活期での介入にあたって)
  LECTURE 1. 機能回復が頭打ちになっても社会適応度の改善はある.日中の活動や参加の場の確保が重要
  LECTURE 2. 身につけたスキルを失わないようメンテナンスを行う
  LECTURE 3. 気づきの乏しい者への対応
  LECTURE 4. 社会的行動障害への対応(リハビリテーション医療)
[4]高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 高次脳機能障害へのリハビリテーション医療のポイント(まとめ)
  LECTURE 2. リハビリテーション医療の実際とエビデンス(主に,広義の高次脳機能障害に対して)
  LECTURE 3. 失語症者への対応
  LECTURE 4. (左)半側空間無視,失認,失行への対応

第10章 摂食嚥下障害のリハビリテーション
[1]摂食嚥下障害の特性
  LECTURE 1. 正常の摂食嚥下の運動モデル
  LECTURE 2. 神経機構
[2]摂食嚥下障害の評価法
  LECTURE 1. ベッドサイドで発見できる摂食嚥下障害のサイン
  LECTURE 2. スクリーニングテスト
  LECTURE 3. 標準的検査
  LECTURE 4. 摂食嚥下重症度
[3]摂食嚥下障害に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. 神経疾患の摂食嚥下障害
[4]摂食嚥下障害に対するリハビリテーション治療の手技

第11章 認知症のリハビリテーション
[1]認知症の特性
  LECTURE 1. 認知症は生活障害
  LECTURE 2. 徐々に進行して死に至る
  LECTURE 3. 病識低下が認知症の本質
  LECTURE 4. 自己崩壊の不安
[2]認知症の評価法
  LECTURE 1. 脳病変の評価:MRI・CT,脳血流 SPECT
  LECTURE 2. 認知機能の評価:MMSE, HDS-R
  LECTURE 3. 生活障害の評価:IADL,ADL,コミュニケーション,参加
  LECTURE 4. BPSD の評価:NPI,DBD スケール,BPSD+Q
  LECTURE 5. 影響因子の評価:せん妄,体調,環境,薬剤
[3]認知症に対するリハビリテーション診療の考え方
  LECTURE 1. 認知症リハビリテーションの全体像
  LECTURE 2. 認知機能の改善を目指す
  LECTURE 3. 生活機能の向上を目指す
  LECTURE 4. 心の安定を目指す
  LECTURE 5. 脳活性化リハビリテーション5原則
  LECTURE 6. ユマニチュード
[4]認知症に対するリハビリテーション治療の手技
  LECTURE 1. 回想法
  LECTURE 2. 現実見当識練習
  LECTURE 3. 認知課題
  LECTURE 4. 生活障害
  LECTURE 5. 廃用防止

第12章 神経疾患の装具療法
[1]装具の概要
  LECTURE 1. 装具とは
  LECTURE 2. 装具の目的
  LECTURE 3. 装具の基本
  LECTURE 4. 装具作製にあたって考慮すべきこと
[2]神経疾患の装具の特性
  LECTURE 1. 神経疾患の装具の目的
  LECTURE 2. 神経疾患の装具作製にあたり考慮すべきこと
[3]疾患・目的別にみた装具処方
  LECTURE 1. 脳卒中の起立・歩行のための装具
  LECTURE 2. 脳性麻痺の装具
  LECTURE 3. 脊髄障害の装具
  LECTURE 4. 神経変性疾患,末梢神経障害,ポリオの装具

日本語索引
外国語索引
序文
 私がレジデントとして働いていた当時には,神経のリハビリテーションを学びたいと考えても教科書はほとんどなく,医師として最初に師事した平井俊策 先生が編集された「神経疾患のリハビリテーション」をほぼ唯一のバイブルとして診療にあたっていた.その後,この分野を本格的に学びたいと考えた時に,同書の共同編集者の江藤文夫 先生の元で学ぶ機会を与えていただいた.この度,新版として新たな息吹を吹き込むため,その編集という重責を任されることになり,少なからぬ縁を感じるとともに,神経疾患を取り巻く状況について自分のレジデントの頃と現在とを比較して考えてみた.
 神経疾患は,この20年間で画像診断,遺伝子診断の発達により特に診断の面で飛躍的な進歩を遂げた.早期診断が可能となったおかげで脳梗塞急性期の血栓溶解療法が可能となり,他にも難治性の痙縮に対するボツリヌス毒素療法など当時では考えられなかったような革新的な治療が導入され,その恩恵を受けることができた患者も多数存在する.一方で,いまだ有効な治療方法が開発されておらず,現在でもリハビリテーションが治療の中心となる疾患も数多く存在する分野でもある.将来,再生医療や遺伝子治療が実用化される時代が来ても,この分野におけるリハビリテーションの重要性は変わらないと考える.また,リハビリテーション関連職種の人数は当時の10倍以上に増えており神経疾患に携わる医療者は今後もさらに増えることが予想されるうえ,多職種の連携も当時とは比較にならないほど重要視されている.
 このように神経のリハビリテーションを学ぶ者が増える中,初学者の中には神経疾患に対して苦手意識を持つ者も多いため,医学生や療法士養成校の学生にも理解できるわかりやすい教科書が必要と考え,本書は全面カラー刷とし,図や表を多用し,「リハ科医の視点」,「PT・OT・STへのアドバイス」,「治療手技のTips」などの実際の臨床現場で役立つような項目を設けた.初期研修医やリハビリテーションを学ぶレジデント,既に臨床現場で勤務している療法士にも対応できる専門的な内容を含み,医師と療法士の相互視点で学べる教科書を目指し多方面の専門家に,最新の知見に基づき執筆をお願いした.本書が神経疾患のリハビリテーションを学ぶ多くの方にとっての一助となれば幸いである.本書の刊行にあたり南山堂の秡川氏をはじめとする編集部スタッフの方々の御努力に深謝する.

2019年9月
群馬大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学分野 教授
和田直樹
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