ジョーシキ! 腎生検電顕ATLAS
1版
東北大学大学院病理診断学分野 客員教授 城 謙輔 著
定価
7,150円(本体 6,500円 +税10%)
- A4判 219頁
- 2016年7月 発行
- ISBN 978-4-525-25891-7
腎生検電顕診断の決定版アトラス!
腎生検の電顕は腎臓病の病態を把握するのに有用だが,実地ではどこでどのように使用すれば良いのかがわかりにくいのが実情である.
本書は臨床で腎病理を見続けてきた医師が,電顕でどこまで見ることができてどのように使えるかをわかりやすく解説.明日からの診断に使える知識が満載の一冊.
- 目次
- 序文
目次
総 論
1 腎臓の正常構造とその名称
1 腎臓の肉眼構造
2 腎小体
3 尿細管
4 傍糸球体装置
5 脈 管
2 糸球体の構成要素の変容と疾患との関連
A 導 入
1 光顕レベルでの糸球体の構成成分とその変容
2 電顕レベルでの糸球体の構成成分とその変容,疾患との関連
B 糸球体の各構成要素の変容
1 糸球体上皮(足細胞)の病的変容
2 糸球体基底膜の病的変容
3 糸球体内皮細胞の病的変容
4 メサンギウムの病的変容
3 糸球体沈着物
1 上皮下沈着物
2 基底膜内沈着物
3 内皮下沈着物
4 傍メサンギウム沈着
5 メサンギウム沈着
各 論
1 顕微鏡的血尿関連症候群
1 菲薄基底膜病
2 アルポート症候群
2 非免疫複合体型ネフローゼ関連疾患群
1 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)と巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
2 糖尿病性糸球体症
3 免疫複合体型ネフローゼ関連疾患群
1 膜性腎症
2 ループス腎炎
3 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
4 二次性MPGN疾患群,MPGN様病変
5 IgA腎症
4 遺伝性疾患(アルポート症候群とその類縁疾患を除く)
1 ミトコンドリア異常症
2 先天性リソソーム異常症
3 家族性若年性ネフロン癆
4 爪・膝蓋骨症候群,膠原線維性糸球体症
5 先天性ネフローゼ症候群,フィンランド型
6 びまん性メサンギウム硬化症
5 造血器異常関連腎症(パラプロテイン腎沈着症)
A 導 入
免疫グロブリン関連タンパク沈着症の成立条件
B 各 論
1 腎アミロイドーシス
2 クリオグロブリン血症
3 イムノタクトイド糸球体症と細線維性糸球体腎炎
4 軽鎖沈着症とその辺縁疾患
5 PGNMID
6 家族性分葉性糸球体症,フィブロネクチン腎症
7 結晶構造をもつ疾患群
6 内皮障害関連病変
1 血栓性微小血管症
2 抗リン脂質抗体症候群
3 ANCA関連血管炎
4 POEMS(Crow-Fukase)症候群
7 尿細管・間質,血管病変
1 尿細管・間質の構造
2 移植拒絶腎における間質病変
3 電顕で診断される尿細管疾患
4 血管系
付 録
付-1 腎生検における電子顕微鏡の有用性について:文献的視野から
付-2 電顕標本の作製法
1 電子染色法
2 電顕PAM並松変法,PATSC-GMS染色
3 もどし電顕法
4 免疫電顕
5 補助的手法
付-3 電顕像のartifactとその対処法
Index
トピックス
1 脚突起消失と絨毛状病変:その蛋白尿との関連について
2 糸球体基底膜の基本構造と基底膜の厚さの測定法
3 メサンギウム細胞の糸球体内血流の制御
4 アクチン細線維と糖尿病性細線維症
5 ハンプ
6 分節性菲薄基底膜病の存在意義
7 足細胞嵌入糸球体症
8 一次性膜性腎症と二次性膜性腎症の見分け方
9 C3 glomerulopathyとMPGN
10 電顕PAM の効用
11 腎移植拒絶における電顕の役割
1 腎臓の正常構造とその名称
1 腎臓の肉眼構造
2 腎小体
3 尿細管
4 傍糸球体装置
5 脈 管
2 糸球体の構成要素の変容と疾患との関連
A 導 入
1 光顕レベルでの糸球体の構成成分とその変容
2 電顕レベルでの糸球体の構成成分とその変容,疾患との関連
B 糸球体の各構成要素の変容
1 糸球体上皮(足細胞)の病的変容
2 糸球体基底膜の病的変容
3 糸球体内皮細胞の病的変容
4 メサンギウムの病的変容
3 糸球体沈着物
1 上皮下沈着物
2 基底膜内沈着物
3 内皮下沈着物
4 傍メサンギウム沈着
5 メサンギウム沈着
各 論
1 顕微鏡的血尿関連症候群
1 菲薄基底膜病
2 アルポート症候群
2 非免疫複合体型ネフローゼ関連疾患群
1 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)と巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
2 糖尿病性糸球体症
3 免疫複合体型ネフローゼ関連疾患群
1 膜性腎症
2 ループス腎炎
3 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
4 二次性MPGN疾患群,MPGN様病変
5 IgA腎症
4 遺伝性疾患(アルポート症候群とその類縁疾患を除く)
1 ミトコンドリア異常症
2 先天性リソソーム異常症
3 家族性若年性ネフロン癆
4 爪・膝蓋骨症候群,膠原線維性糸球体症
5 先天性ネフローゼ症候群,フィンランド型
6 びまん性メサンギウム硬化症
5 造血器異常関連腎症(パラプロテイン腎沈着症)
A 導 入
免疫グロブリン関連タンパク沈着症の成立条件
B 各 論
1 腎アミロイドーシス
2 クリオグロブリン血症
3 イムノタクトイド糸球体症と細線維性糸球体腎炎
4 軽鎖沈着症とその辺縁疾患
5 PGNMID
6 家族性分葉性糸球体症,フィブロネクチン腎症
7 結晶構造をもつ疾患群
6 内皮障害関連病変
1 血栓性微小血管症
2 抗リン脂質抗体症候群
3 ANCA関連血管炎
4 POEMS(Crow-Fukase)症候群
7 尿細管・間質,血管病変
1 尿細管・間質の構造
2 移植拒絶腎における間質病変
3 電顕で診断される尿細管疾患
4 血管系
付 録
付-1 腎生検における電子顕微鏡の有用性について:文献的視野から
付-2 電顕標本の作製法
1 電子染色法
2 電顕PAM並松変法,PATSC-GMS染色
3 もどし電顕法
4 免疫電顕
5 補助的手法
付-3 電顕像のartifactとその対処法
Index
トピックス
1 脚突起消失と絨毛状病変:その蛋白尿との関連について
2 糸球体基底膜の基本構造と基底膜の厚さの測定法
3 メサンギウム細胞の糸球体内血流の制御
4 アクチン細線維と糖尿病性細線維症
5 ハンプ
6 分節性菲薄基底膜病の存在意義
7 足細胞嵌入糸球体症
8 一次性膜性腎症と二次性膜性腎症の見分け方
9 C3 glomerulopathyとMPGN
10 電顕PAM の効用
11 腎移植拒絶における電顕の役割
序文
刊行によせて〜本書を推薦する
現今の腎疾患の組織学的分類は,基本的には光学顕微鏡所見,免疫組織学的所見,電顕組織学的所見の3 者を総合した情報に基づいて成立している.したがって電顕情報なしで病理組織診断が可能な例はあるにせよ,分類そのものは電顕情報の存在を前提としているわけであり,最近では,電顕検索なしには全く確定診断不可能な症例も増加しつつある.このため,腎臓医にとって,今や腎組織の電顕所見についての基礎的な知識は不可欠なものとなっている.しかし,腎臓学のテキストの各疾患の解説において,その典型的な電顕画像についての記載はあるものの,臨床腎臓医が電顕所見を読み解いていくうえでの参考となるような,基本的事項の系統的な解説を目的とした腎病変の電顕アトラスは,国内外を通じ,これまでほとんど出版されておらず,電顕写真を前に戸惑いを覚える腎臓医が少なくないようである.本書はこのような現状打破をめざしての適切な指南書というべきもので,良質の電顕写真が豊富に集められており,現時点での最新の情報に基づく解説も充実しており,腎臓専門医が常に参照するにふさわしい信頼性のある内容となっている.
本書は,まず腎臓の電顕像を理解するための基礎的事項として,正常構造の電顕像と腎組織の各部位における基本的な病態の電顕像が総論として解説されており,日常遭遇する様々な症例の複雑な病変像を読み解いていくための足固めとしている.次いで各論として,病変を6 つの症候群のカテゴリーに分類し,それぞれの症候群において認められる種々の病的所見について,その超微形態学的な特徴を的確に示す電顕画像を提示しており,理解しやすい構成となっている.本書の特徴は,電顕所見に基づく鑑別診断の重要性についての心配りがなされており,電顕写真を見るうえでのその要点が示されているところが多く,診断に際しての参考となることが考慮されている.
今一つ,本書の喜ばしい特色は,掲載されている電顕写真のサイズが大きいことである.最近の学術雑誌では,光顕写真のみならず電顕写真もごく小さなサイズで示されることが多く,腎臓学のテキストなどのモノグラフにおいても,掲載されている電顕画像のサイズに対して配慮の行き届いているものは少ないようである.電顕で示される超微形態学的な微妙な所見は,ある程度大きなサイズの画像で見ないと明確に認識することが困難である.特に組織内への沈着物のsubstructure の特徴をよく見分けたりすることは,小さな写真では無理というものである.全般に電顕画像のクオリティも一定の水準が保たれており,アトラスとしての価値が高い.
本書は,単なる絵合わせのためのアトラスとして利用するのではなく,日常おりにふれて全ページの画像と解説に親しむことにより,自分の中に多彩な電顕的所見を見分けていくための座標軸を築き上げていくには好適な成書であり,腎臓医の教養書のひとつとして座右に備えることをお薦めしたい.
2016年5月
東京腎臓研究所・日本医科大学 名誉教授
山中宣昭
序
腎糸球体疾患の診断における電顕的手法の有用性はいうまでもない.しかし,包埋,切片の作製,撮影,写真焼き付けなど電顕資料作製の一連の過程にかかる費用と手間を考え,それに見合った臨床への還元とを比較したとき,全症例をルチーンで行う価値があるかどうかは議論の分かれるところである.さらに,光顕診断や免疫診断のあと,ほぼ1ヵ月遅れて電顕診断をすることになり,大半の症例では電顕診断を待たずに治療に踏み切っている.しかし,電顕診断を待って最終診断となる症例,光顕や免疫診断の正当性を確認するために電顕診断が必要な症例,そして,光顕診断だけでは患者の臨床像や病態が説明できず,電顕診断と対応させて説明しなければならない症例なども多数ある.
腎病理医と腎臓臨床医が信頼と協力関係にあり,より水準の高い治療を目指している高度腎疾患専門施設では,腎生検1 症例ごとに病理医と臨床医が十分な情報を交換しながら,真実に近い経験を積み上げていくことが肝要と思われる.それとは反対に,症例に対して制限された情報からの辻褄あわせの解釈は本当の経験になっていかない.その意味で,電顕的検索は,病気の発症に超微形態の現場を提供し,機能と形態の橋渡しをすることにより,疾患や病態の理解により多くの確かな情報を提供して公正な判断の一助となっている.
本著では腎生検の電顕所見の読み方を総論的に理解し,それを基盤とした各疾患の診断法について,電顕の需要用途別に系統的に整理した.さらに重要であるがまだ解決していない分野をできるだけ明確にして,電顕が光顕や免疫所見の見方に影響を与えるトピックスも掲載した.臨床病態の把握と腎生検の超微形態学が両輪となって,診断のみならず,より正しい病態の把握や,より確かな治療法の選択に役立てば幸いである.
2016年5月
城 謙輔
現今の腎疾患の組織学的分類は,基本的には光学顕微鏡所見,免疫組織学的所見,電顕組織学的所見の3 者を総合した情報に基づいて成立している.したがって電顕情報なしで病理組織診断が可能な例はあるにせよ,分類そのものは電顕情報の存在を前提としているわけであり,最近では,電顕検索なしには全く確定診断不可能な症例も増加しつつある.このため,腎臓医にとって,今や腎組織の電顕所見についての基礎的な知識は不可欠なものとなっている.しかし,腎臓学のテキストの各疾患の解説において,その典型的な電顕画像についての記載はあるものの,臨床腎臓医が電顕所見を読み解いていくうえでの参考となるような,基本的事項の系統的な解説を目的とした腎病変の電顕アトラスは,国内外を通じ,これまでほとんど出版されておらず,電顕写真を前に戸惑いを覚える腎臓医が少なくないようである.本書はこのような現状打破をめざしての適切な指南書というべきもので,良質の電顕写真が豊富に集められており,現時点での最新の情報に基づく解説も充実しており,腎臓専門医が常に参照するにふさわしい信頼性のある内容となっている.
本書は,まず腎臓の電顕像を理解するための基礎的事項として,正常構造の電顕像と腎組織の各部位における基本的な病態の電顕像が総論として解説されており,日常遭遇する様々な症例の複雑な病変像を読み解いていくための足固めとしている.次いで各論として,病変を6 つの症候群のカテゴリーに分類し,それぞれの症候群において認められる種々の病的所見について,その超微形態学的な特徴を的確に示す電顕画像を提示しており,理解しやすい構成となっている.本書の特徴は,電顕所見に基づく鑑別診断の重要性についての心配りがなされており,電顕写真を見るうえでのその要点が示されているところが多く,診断に際しての参考となることが考慮されている.
今一つ,本書の喜ばしい特色は,掲載されている電顕写真のサイズが大きいことである.最近の学術雑誌では,光顕写真のみならず電顕写真もごく小さなサイズで示されることが多く,腎臓学のテキストなどのモノグラフにおいても,掲載されている電顕画像のサイズに対して配慮の行き届いているものは少ないようである.電顕で示される超微形態学的な微妙な所見は,ある程度大きなサイズの画像で見ないと明確に認識することが困難である.特に組織内への沈着物のsubstructure の特徴をよく見分けたりすることは,小さな写真では無理というものである.全般に電顕画像のクオリティも一定の水準が保たれており,アトラスとしての価値が高い.
本書は,単なる絵合わせのためのアトラスとして利用するのではなく,日常おりにふれて全ページの画像と解説に親しむことにより,自分の中に多彩な電顕的所見を見分けていくための座標軸を築き上げていくには好適な成書であり,腎臓医の教養書のひとつとして座右に備えることをお薦めしたい.
2016年5月
東京腎臓研究所・日本医科大学 名誉教授
山中宣昭
序
腎糸球体疾患の診断における電顕的手法の有用性はいうまでもない.しかし,包埋,切片の作製,撮影,写真焼き付けなど電顕資料作製の一連の過程にかかる費用と手間を考え,それに見合った臨床への還元とを比較したとき,全症例をルチーンで行う価値があるかどうかは議論の分かれるところである.さらに,光顕診断や免疫診断のあと,ほぼ1ヵ月遅れて電顕診断をすることになり,大半の症例では電顕診断を待たずに治療に踏み切っている.しかし,電顕診断を待って最終診断となる症例,光顕や免疫診断の正当性を確認するために電顕診断が必要な症例,そして,光顕診断だけでは患者の臨床像や病態が説明できず,電顕診断と対応させて説明しなければならない症例なども多数ある.
腎病理医と腎臓臨床医が信頼と協力関係にあり,より水準の高い治療を目指している高度腎疾患専門施設では,腎生検1 症例ごとに病理医と臨床医が十分な情報を交換しながら,真実に近い経験を積み上げていくことが肝要と思われる.それとは反対に,症例に対して制限された情報からの辻褄あわせの解釈は本当の経験になっていかない.その意味で,電顕的検索は,病気の発症に超微形態の現場を提供し,機能と形態の橋渡しをすることにより,疾患や病態の理解により多くの確かな情報を提供して公正な判断の一助となっている.
本著では腎生検の電顕所見の読み方を総論的に理解し,それを基盤とした各疾患の診断法について,電顕の需要用途別に系統的に整理した.さらに重要であるがまだ解決していない分野をできるだけ明確にして,電顕が光顕や免疫所見の見方に影響を与えるトピックスも掲載した.臨床病態の把握と腎生検の超微形態学が両輪となって,診断のみならず,より正しい病態の把握や,より確かな治療法の選択に役立てば幸いである.
2016年5月
城 謙輔