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カテゴリー: 産婦人科学  |  麻酔蘇生学

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硬膜外無痛分娩

安全に行うために

改訂4版

埼玉医科大学総合医療センター 産科麻酔科診療部長・教授/
日本産科麻酔学会 理事長 照井克生 著
埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科助教 野口翔平 著

定価

4,400(本体 4,000円 +税10%)


  • B5判  171頁
  • 2022年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-30864-3

痛みを取るだけではない!無痛分娩を「安全に」行うために

お産の痛みを和らげてほしいという女性の欲求に応えたい,満足なお産を安全に実現させたいと願う麻酔科医と産科医とでまとめた「硬膜外無痛分娩」の実践書です.
より効果的で安全なお産を行うために必要な無痛分娩の流れとそのポイント,トラブルが起きた際の対処法などを多くの写真や図を使い,目の前で実践しているかのように学べる1冊となっています.
麻酔の母乳への影響や助産師が分娩介助を行う際の関わり方についても,さらにくわしく解説しています.

  • 序文
  • 目次
序文
 改訂 4 版を手に取っていただき大変うれしく存じます.
 本改訂の大きな動機は,2017 年にマスコミ報道を契機として厚生労働省や政治家を巻き込み大きな動きとなった,硬膜外無痛分娩による母体死亡や母児の重篤後遺症の続発です.このような不幸な出来事を防ぎたくて,安全な硬膜外無痛分娩に力点を置いて執筆してきたのが本書だからです.マスコミ報道により硬膜 外無痛分娩に対して妊婦が不安を感じて,硬膜外無痛分娩が減るのではないかと 思いきや,周囲の医療機関を見ても,統計を見ても,硬膜外無痛分娩は増え続けているようです.麻酔による合併症には,生命を脅かすものから一過性のものまでさまざまありますが,合併症の頻度が一定だとすれば,硬膜外無痛分娩を受ける女性が増えれば増えるほど,合併症に悩む女性の絶対数が増えてしまいます. いまいちど,硬膜外無痛分娩を安全に行うためにはどうしたらよいのか,本書でお示ししたいと考えました.
 今回の改訂の大きな特徴は,共著者として野口翔平先生をお迎えしたことです. 野口先生は産婦人科専門医を取得したのち,当院で麻酔科研修を行い麻酔科専門医も取得しました.現在は私のいる産科麻酔科に所属しており,産科麻酔を担う 最適のキャリアをおもちです.野口先生は最新の麻酔科学や産科学の文献にも精通しており,産科医の視点も加えてご執筆いただきました.改訂 3 版をベースにお互いの得意分野を執筆し,新たな章を加え,校正は両名が行いました.野口先生の意見に私が同意して記述を変えるなど,これまで以上に安全性を高めた内容となりました.産科麻酔の世界的な教科書に David Chestnut 教授の名を冠したものがありますが,Chestnut 教授は産科医から麻酔科医に転じた先生です.野口先生は,日本の Chestnut になってくれるものと私は確信しています.
 お陰様で改訂 3 版は,私が担当している助産師教育課程の授業の際に,学生さんたちが持参していることも増えてきました.助産学実習で硬膜外無痛分娩の産婦を担当することが増えてきたとも教員の先生方から伺いました.ある助産学教科書でも無痛分娩の記述を拡充しましたし,県の看護師研修でも無痛分娩について毎年お話しています.安全で満足のいく無痛分娩は,医師だけで達成できるものではなく,常に産婦の傍に寄り添う助産師の働きあってのものです.今回の改訂により本書が,助産師にとってもよき伴侶となることを願っています.
 無事に出版にこぎつけたのは,これまでと同様に高見沢恵さんの励ましと迅速にして的確な編集の賜物です.初版からずっと本書を一緒に育ててくださいましたことに,改めてお礼を申し上げます.
 本書を,2021 年 11 月 26 日にご逝去された,埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科名誉教授,かわごえクリニック元院長,故川添太郎先生に捧げます.川添先生は,日本で初めて本学に産科麻酔部門を設立された立役者でいらっしゃいます.川添先生の産科麻酔に対するご信念とヴィジョンのおかげで私は本学に職を得ました.その後も優しく時に厳しくご指導くださり,褒めて育ててくださいました.そして木下勝之先生とともに本書の初版,改訂 2 版をご監修くださいました.素晴らしい仲間とともに私が産科麻酔に没頭できる環境を作ってくださいましたことに,心より感謝いたしております.

2022 年 5 月
2 年ぶりに現地開催される日本麻酔科学会学術集会を楽しみに

著者を代表して
照井 克生
目次
Ⅰ 硬膜外無痛分娩とは何か
 1. 無痛分娩の歴史
 2. 安全な無痛分娩のための前提
  a.母体安全への提言 2016 から JALA 発足まで
  b. NRFitR 導入について
  c. 現場で安全に行うために

Ⅱ 硬膜外無痛分娩の実践
 1. 適切な産婦選択
  a.適している産婦
  b.適していない産婦
 2. 無痛分娩前の診察と検査
  a.産科的問題点を把握する
  b. 麻酔科的問題点がないか評価する
  c.気道を中心に診察する
  d.必要な検査
 3. インフォームドコンセント
 4. 準備するもの
  a.部屋の環境と設備
  b.輸 液
  c.薬 物
  d.その他準備するもの
 5. 経口摂取制限
 6. 無痛分娩を開始する時期
  a.どの時点で開始するか
  b.麻酔開始を遅らせない
 7. 硬膜外麻酔セット
 8. 手 技 37
  a.輸液と開始前確認事項
  b.体 位
  c.消 毒
  d.硬膜外麻酔セットの準備
  e.穿 刺
  f.カテーテル挿入
 9. 開始直後の観察
  a.血圧測定間隔
  b.低血圧の対処
  c.胎児心拍数と子宮収縮の変化
  d.麻酔範囲の評価
10. 持続硬膜外注入開始
  a.持続注入の内容
  b.持続注入速度の決め方
  c.持続注入中の体位
  d.血圧測定間隔
  e.導 尿
  f.持続注入中の観察事項
   g.持続注入中の血管内誤注入
  h.持続注入中のくも膜下誤注入
11. 分娩第 2 期
  a.痛みの特徴
  b.無感覚のために努責できない場合
12. 娩出時の対応
13. 分娩後の処置
  a.カテーテル抜去のタイミング
  b.無痛分娩後の授乳
  c.麻酔後訪問
14. トラブルシューティング
  a.痛 み
  b.胎児心拍数異常
  c.くも膜下誤注入
  d.血管内誤注入と局所麻酔薬中毒
  e.硬膜穿破の対処と硬膜穿刺後頭痛の治療
  f.お腹の張りがわからない
  g.努責したい感じがない
  h.下肢が動かない
  i.下肢がしびれる
  j.重度裂傷と産後過多出血
  k.分娩中の母体急変と心肺蘇生
  l.分娩後の神経障害
  m.腰痛・背部痛

Ⅲ 硬膜外無痛分娩から帝王切開術への切り替え
 1. 帝王切開術への切り替えの必要事項
 2. 分娩停止の場合
 3. 胎児機能不全の場合
 4. その他の適応

Ⅳ 硬膜外無痛分娩が分娩経過に与える影響
 1. 帝王切開率
 2. 鉗子分娩率

Ⅴ 硬膜外無痛分娩が児に及ぼす影響
 1. 直接的影響
 2. 間接的影響
 3. 長期的影響

Ⅵ 硬膜外無痛分娩での産科管理,助産ケア
 1. 麻酔科医と産科医の連携
 2. 麻酔科医と助産師の連携
 3. 硬膜外無痛分娩と産後うつ
 4. 経腟分娩後の疼痛管理
  a.創部痛
  b.後陣痛
  c.頭痛
  d.骨盤痛
  e.痔核痛
  f.慢性疼痛

Ⅶ 基 礎 編
 1. 分娩出産の痛みと伝達経路
 2. 硬膜外腔の解剖
 3. 局所麻酔薬の特徴と使用量
  a.物理化学的性質と臨床的特徴
  b.無痛分娩に適した局所麻酔薬
 4. 他の鎮痛方法との比較
 5. 昇圧薬と子宮胎盤血流

Ⅷ 応 用 編
 1. 鎮痛導入方法の選択
  a.CSEA の利点
  b.CSEA の欠点
  c.CSEA の方法
  d.CSEA と胎児徐脈
  e.CSEA と帝王切開率
  f.CSEA と麻酔合併症
  g.CSEA と硬膜外無痛分娩の使いわけ
  h.CSEA の派生麻酔法,DPE とは?
 2. 鎮痛維持方法の選択
  A. PCEA と CEI
  a.自己管理による鎮痛法
  b.PCEA の設定
  c.PCEA の利点
  d.PCEA の問題点
  B. PIEB と PCEA
  a.PIEB とは
  b.PIEB の設定
  c.PIEB の利点
  d.PIEB の問題点
 3. 特殊な状況での硬膜外無痛分娩
  a.妊娠高血圧症候群
  b.双 胎
  c.心疾患
  d.高度肥満
  e.腰椎椎間板ヘルニア・側弯症
  f.子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)
  g.抗リン脂質抗体症候群
  h.帝王切開術後の経腟分娩
  i.多発性硬化症などの神経疾患
  j.局所麻酔薬アレルギー疑いへの対応とアナフィラキシーの治療
  k.骨盤位
付 録
索 引
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