南山堂

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カテゴリー: 麻酔蘇生学  |  整形外科学

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症例から学ぶ戦略的慢性疼痛治療

1版

昭和大学病院緩和医療科 教授 樋口比登実 編集

定価

4,620(本体 4,200円 +税10%)


  • B5判  366頁
  • 2013年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-30891-9

慢性疼痛で最も大事なのは痛みのアセスメントをしっかり行うことである.本書では,患者さんから必要な情報をどのように引き出して痛みを評価し治療するかを,臨場感溢れる外来診察時の会話を中心に解説している.薬物療法はもちろん,神経ブロックの施行も考慮に入れた内容となっており,この一冊で痛み治療のテクニックが習得できる.

  • 序文
  • 目次
序文
 私が緩和ケアチームに異動する前は,神経ブロックは熟練が必要だが,薬物療法は“誰がやっても同じ!”と臆面もなく話していた.しかし,同じ薬剤でも処方する医師により効果の大小,副作用の有無など,薬効に差が出現することは,臨床でよく経験することである.2001年10月から緩和ケアチームとしてがん患者と向き合うことが日常となったあるとき,チームの看護師から“ほかの先生が処方したときは全然効かなかった薬が,先生が処方すると本当によく効くのです.どうしてでしょうか?”と聞かれたことがある.同じ薬剤を使用していて一体何が違うのか?
 痛み治療は,まずはアセスメント.痛みの情報を十分聞き取り,問診・視診・神経学的検査・心理検査・画像診断などにより,痛みの原因を見極めることが大切である.しかし,痛みは多岐にわたる原因により,多種多様・多面的な様相を呈する.さらに患者の痛み閾値の変化,環境,心理的要因,個性,今までの痛み体験などにより,痛みの程度や表現方法がまったく異なるうえに,医療者の度量や患者・家族との信頼関係などが影響して評価はますます複雑になってくる.このように,目に見えない複雑怪奇な痛みを上手に的確に評価するためには,患者をどのくらい注意深く観察できるか,患者からどの程度の情報を集められるかにかかっている.痛みの情報は患者の立ち居振る舞いや表情,患者・家族の発する言葉の中に表れてくる.これを引き出すためには研ぎ澄まされた感性とコミュニケーションスキルが必要となるため,聞き手によって患者から得られる情報量に大きな違いが出てきてしまう.だから“痛み治療は奥が深い!”と私は思っている.
 本書は,医師と患者の会話を中心としたものになっている.経験豊かな先生方の外来での会話の中から,どのように質問すれば診断に必要な情報を得られるか,円滑な痛み治療を行うポイントは何か,患者・家族が安心して通院を継続できる術などをみつけていただければと思い,このような企画となった.執筆していただいた先生方には,非常に丁寧に外来の会話を再現していただき,臨場感あふれるものとなっている.諸先輩方の外来を垣間見ることで,正確に痛みのアセスメントを行うためにはどのように情報収集をすればよいかの参考となるはずである.
 痛みを取るということは,単に症状が軽減することではなく,その人の生き方そのもの,周囲の人々の生活そのものを変える力を持っており,患者・家族がその人らしく生きられるように援助をすることは,医療者にとっても大きな価値があると思っている.外来を訪れる患者は,痛みが軽減した先には心地よい日常が待っているという期待感にあふれており,私はいつもその期待に応えたいと考えている.患者・家族が将来に続く道を,信頼できる先生方と穏やかにゆっくり進むことができるように,本書がお役に立てれば幸いである.
 最後に,本書の企画を進めるにあたり,ご多忙の先生方が執筆を快諾してくださったことに対し,厚くお礼申し上げたい.また,今日まで私を育んでくださった昭和大学病院ペインクリニックの先生方にも,執筆をはじめ多大なご協力をいただいたことに心より感謝している.そして,南山堂の大城梨絵子氏ならびに関係各位に深い謝意を表する.

2013年7月
患者さんと日々向き合う診察室にて

樋口比登実
目次
1章 総論

A 慢性痛(慢性疼痛)治療との向き合い方
1 痛みの概念
2 痛みの知覚的・情動的側面
3 急性痛と慢性痛
4 病態による痛みの分類
5 痛みと向き合う 

B 薬物療法と神経ブロックの考え方
1 薬物療法の基礎知識
2 神経ブロックの基礎知識

C 慢性痛(慢性疼痛)外来のコツ
1 診療の進め方 
2 慢性痛(慢性疼痛)の評価 


2章 実症例の外来診察と治療法

A 顔面・頭部の疾患
 症例1 片頭痛
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「43歳女性.頭痛」
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「39歳男性.頭痛」
 ・薬物治療例「33歳女性.頭痛」
 ・薬物治療例「15歳男性.頭痛」

 症例2 群発頭痛
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「29歳男性.頭痛(右が多い,片方のみ)」
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「25歳女性.年に1回,頭痛発作がある」
 ・薬物治療例「39歳男性.右頭痛」

 症例3 緊張型頭痛
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「82歳女性.頭痛および頸部痛」
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「72歳女性.後頸部から頭部にかけての痛み」

 症例4 三叉神経痛
 ・薬物治療例「86歳男性.痛みで食事ができず体重減少,抑うつ傾向」
 ・神経ブロック施行例「90歳男性.テグレトール(R)が効かなくなった」

 症例5 非定型顔面痛・顎関節症
 ①非定型顔面痛
 ・薬物治療例「52歳女性.痛みがどんどん強くなることが心配.心気症,抑うつ傾向」
 ②顎関節症
 ・神経ブロック施行例「32歳女性.境界型人格障害で精神科通院中」

 症例6 舌痛症
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「63歳女性.舌の先端のしびれと痛み」
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「70歳女性.口唇のしびれと痛み」

 症例7 Tolosa‐Hunt 症候群
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「47歳男性.突然に始まった左前額部から目の奥に広がる痛み」

 症例8 後頭神経痛
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「82歳女性.激痛発作で何もできない」

 症例9 末梢性顔面神経麻痺
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「71歳女性.146cm,43kg.左眼面全体の運動麻痺」
 
 症例10 顔面痙攣
 ・神経ブロック施行例「47歳男性.和楽器奏者.片側顔面がピクピク痙攣する」

 症例11 突発性難聴
 ・薬物治療+神経ブロック併用例(完治例)「34歳女性.左難聴.左耳閉感」
 ・薬物治療+神経ブロック併用例(難治例)「54歳女性.左難聴.めまい」

 症例12 アレルギー性鼻炎
 ・薬物治療例「30歳女性.妊娠4ヵ月.花粉症ではないかと思い受診」

 症例13 舌咽神経痛
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「65歳女性.主婦.嚥下に伴う発作痛」


B 頸・肩・腕部の疾患
 症例14 外傷性頸部症候群
 ・薬物治療例「24歳女性.頸部痛,頭痛,めまい」
 ・神経ブロック施行例「38歳男性.後頭部から背部,肩にかけての重苦しい痛み,頭痛」

 症例15 頸肩腕症候群
 ・薬物治療例「45歳男性.身長180cm,体重85kg.ねこ背,なで肩」
 ・神経ブロック施行例「43歳女性.転職によるストレスあり.気分変調をきたす」

 症例16 肩関節周囲炎
 ・薬物治療例「52歳男性.会社員(事務系).左肩関節,上腕外側の痛み」
 ・神経ブロック施行例「58歳女性.主婦.左肩の痛み,可動域制限あり」

 症例17 多汗症・掌蹠多汗症
 ①多汗症
 ・薬物治療例「17歳女性.母親と来院.汗が手とわきの下に出ることで悩んでいる」
 ②掌蹠多汗症
 ・胸腔鏡下交感神経節遮断術施行例「25歳男性.両掌蹠多汗症」

 症例18 頸椎症性神経根症・頸部椎間板ヘルニア
 ①頸椎症性神経根症
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「48歳男性.くり返す首から手指の痛みしびれ」
 ②頸部椎間板ヘルニア
 ・神経ブロック施行例「50歳男性.左肩甲間部から小指にかけてのしびれと激痛」


C 腰・下肢の疾患
 症例19 変形性腰椎症
 ・薬物治療例「69歳男性.156cm,56kg.慢性腎不全」

 症例20 脊柱管狭窄症
 ・薬物治療例「81歳女性.腰部・臀部・下肢の疼痛」
 ・薬物治療例「71歳男性.左下肢痛,臀部痛」

 症例21 脊椎手術後症候群(FBSS)
 ・神経ブロック施行例「81歳女性.腰痛と下肢痛」
 ・神経ブロック施行例「69歳男性.左下肢痛」
 ・神経ブロック施行例「70歳男性.左下肢痛」

 症例22 椎間板ヘルニア
 ・薬物治療+光線治療併用例「50歳男性.腰下肢痛としびれ」
 ・神経ブロック施行例「35歳男性.右腰下肢痛,歩行困難」

 症例23 椎間関節症
 ・神経ブロック施行例「58歳男性.数年にわたって腰痛に悩まされていた.3日前突然上臀部に電撃痛が走り,動けなくなった」

 症例24 骨粗鬆症・圧迫骨折
 ・薬物治療例「75歳女性.転倒後から,動くと腰背部が痛い」
 ・神経ブロック施行例「82歳女性.急に動くと腰に激痛が走るようになった」

 症例25 変形性膝関節症
 ・薬物治療+リハビリテーション±神経ブロック併用例「72歳女性.歩行時に両ひざが痛む,やや肥満,運動量は少ない」

 症例26 painful legs and moving toes
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「43歳女性.左足趾の不随意運動および同部位の痛み」


D 血行障害
 症例27 閉塞性動脈硬化症
 ・神経ブロック施行例「68歳男性.薬物療法では痛みが軽減しない」

 症例28 レイノー症
 ・脊髄電気刺激法施行例「50歳女性.薬物療法,神経ブロックを行っても残存する痛み」


E 帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛
 症例29 帯状疱疹
 ・薬物治療例「74歳男性.右三叉神経1枝領域の帯状疱疹.痛みと熱感,食欲不振,不眠,抑うつ傾向」
 ・神経ブロック施行例「82歳女性.右T11領域の帯状疱疹.痛みが強く,近医皮膚科から紹介される」

 症例30 帯状疱疹後神経痛
 ・薬物治療例「72歳男性.左胸部の痛み,抑うつ傾向,睡眠障害,食欲低下」
 ・神経ブロック施行例「65歳女性.左胸部の痛み,抑うつ傾向,睡眠障害,食欲低下」


F 神経障害性疼痛
 症例31 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
 ・薬物治療例「51歳男性.右下肢痛.歩行困難」
 ・神経ブロック施行例「50歳男性.右上肢・肩の痛み」

 症例32 糖尿病性神経障害
 ・神経ブロック施行例「56歳女性.糖尿病治療を自己中断し,上下肢の痛みとしびれが出現」

 症例33 腕神経叢引き抜き損傷後痛
 ・薬物治療例「33歳男性.バイク事故で左腕神経叢損傷による左上肢の痛み」
 ・神経ブロック施行例「28歳男性.バイク事故で右腕神経叢損傷による右上肢の痛み」

 症例34 視床痛
 ・薬物治療+神経ブロック併用例「59歳男性.左視床出血」
 ・電気痙攣療法(ECT)施行例「67歳男性.右被殻出血」

 症例35 脊髄損傷後疼痛
 ・薬物治療例「33歳男性.両下肢痛」
 ・神経ブロック施行例「67歳男性.両下肢痛」

 症例36 幻肢痛
 ・薬物治療例「42歳男性.左上肢離断術後より痛みが持続,ペンタゾシン注の使用を続けていた」
 ・神経ブロック施行例「57歳男性.左足関節遠位切断術後の左足の激しい痛み」


G がん性痛(がん疼痛)
 症例37 がん性痛(がん疼痛)
 ・薬物治療+放射線治療併用例「37歳女性.右背部から側胸部にかけての痛み」
 ・神経ブロック施行例「71歳男性.旧肛門部痛」


H その他
 症例38 肋間神経痛・開胸後症候群
 ①肋間神経痛
 ・薬物治療例「33歳女性.左胸の痛み」
 ②開胸後症候群
 ・神経ブロック施行例「72歳男性.胸部の痛みでADL障害がある」

 症例39 会陰部痛
 ・薬物治療例「45歳女性.外陰部および会陰部痛と右下腹部痛」

 症例40 低髄液圧症候群
 ・ブラッドパッチ施行例「42歳男性.左肩から後頸部を中心に痛みが出現」

 症例41 線維筋痛症
 ・薬物治療+光線治療併用例「58歳女性.痛みで何もできない,眠れない,抑うつ・心気症傾向」

 症例42 関節リウマチ
 ・薬物治療例「86歳女性.痛みで食事ができず体重減少,抑うつ傾向」
 ・神経ブロック施行例「40歳女性.手の関節痛が増強.原因不明」


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