カテゴリー: 外科学一般
血管外科 基本手技アトラス
改訂2版
名古屋大学大学院 教授 古森公浩 編集
定価
9,350円(本体 8,500円 +税10%)
- B5判 266頁
- 2014年4月 発行
- ISBN 978-4-525-31542-9
血管外科手術手技書の決定版!一般外科医が心得ておくべき血管疾患の知識と対処しなければならない血管再建の基本的手技を,日常よく遭遇する疾患を中心に,詳細な図を多用して手にとるようにわかりやすく解説.改訂2版は新規項目も追加.末梢血管外科をこれから始めようとする医師はもとより,すでに専門として携わっている医師にもおすすめ.
- 序文
- 目次
序文
2007年の初版発行から今年で7年目を迎えた。南山堂編集部から光栄なことに改訂版のお話をいただいた。2007年は日本の血管外科領域における新しい時代の幕開けの年であった。2007年1月に末梢動脈疾患(PAD)に対する新しい治療指針 TASCⅡが発表され、その後、血管内治療の適応が拡大された。一方で2012年度の診療報酬改定で、血管外科医の長年の懸案事項であったdistal bypassの手術点数が認められた。末梢動脈疾患の領域は、近年、症例の数でも医師の数でも循環器内科医に押されがちであるが、このことが血管外科医の励みになり、distal bypass症例が増加することを期待したい。
また動脈瘤も、市販の大動脈瘤ステントグラフトが、腹部は2007年、胸部は2008年に保険適用が認められ、国内で使用可能になった。これによって侵襲の小さい医療が可能となり、これまで全身状態が悪く、手術困難例と考えられていた症例に対しても適応が拡大され、さらには分枝再建を伴うEVAR、TEVARも施行されるようになっている。
今後、ますます血管内治療へのパラダイムシフトが起こると思われるが、外科手術がなくなるはずもなく、かえって困難な症例が増加していくことが考えられる。前述したdistal bypassや、一方で腎動脈遮断を必要とする傍腎腹部大動脈瘤症例も増加している。まさにそのような時代だからこそ、血管外科のわかりやすい手術書が重要かつ必要であるのはいうまでもない。改訂版ではそのようなことを踏まえた上で、時代のニーズに合わせて弓部大動脈ステントグラフトの分枝再建法や、新しく内頚動脈切除術のeversion法などを追加し内容を充実させていただいた。
血管外科の手術は、一言でいえば、多臓器を損傷せずに脈管(動脈あるいは静脈)を露出し、血液がきちんと流れるように吻合することである。そのためには解剖を熟知し、迅速な吻合法を習得する必要がある。本書は解剖を含めて手術の基本から応用まで、わかりやすくまとめた手術書である。さらに血管内治療についても解説している。血管外科疾患を初めて経験する外科研修医や一般外科医の方々にはすぐに役立つ手術アトラスとして、また血管外科医の方々には実際に手術を行う際の参考書として、今回の改訂版が皆様の日常診療で役立つことができれば幸いである。
2014年2月
古森公浩
また動脈瘤も、市販の大動脈瘤ステントグラフトが、腹部は2007年、胸部は2008年に保険適用が認められ、国内で使用可能になった。これによって侵襲の小さい医療が可能となり、これまで全身状態が悪く、手術困難例と考えられていた症例に対しても適応が拡大され、さらには分枝再建を伴うEVAR、TEVARも施行されるようになっている。
今後、ますます血管内治療へのパラダイムシフトが起こると思われるが、外科手術がなくなるはずもなく、かえって困難な症例が増加していくことが考えられる。前述したdistal bypassや、一方で腎動脈遮断を必要とする傍腎腹部大動脈瘤症例も増加している。まさにそのような時代だからこそ、血管外科のわかりやすい手術書が重要かつ必要であるのはいうまでもない。改訂版ではそのようなことを踏まえた上で、時代のニーズに合わせて弓部大動脈ステントグラフトの分枝再建法や、新しく内頚動脈切除術のeversion法などを追加し内容を充実させていただいた。
血管外科の手術は、一言でいえば、多臓器を損傷せずに脈管(動脈あるいは静脈)を露出し、血液がきちんと流れるように吻合することである。そのためには解剖を熟知し、迅速な吻合法を習得する必要がある。本書は解剖を含めて手術の基本から応用まで、わかりやすくまとめた手術書である。さらに血管内治療についても解説している。血管外科疾患を初めて経験する外科研修医や一般外科医の方々にはすぐに役立つ手術アトラスとして、また血管外科医の方々には実際に手術を行う際の参考書として、今回の改訂版が皆様の日常診療で役立つことができれば幸いである。
2014年2月
古森公浩
目次
I.局所解剖学からみた血管露出法
1 上腹部大動脈
1.腹部正中切開法
2.開胸・開腹横隔膜切開法
2 腹部大動脈
1.腹膜経路
2.後腹膜腔剥離
3 腎動脈
1.腎動脈への開腹アプローチ
2.左腎動脈,腎静脈,左副腎静脈への開腹アプローチ
3.左腎動脈への後腹膜アプローチ
4 腸骨動静脈
1.傍腹直筋腹膜外経路
2.斜切開腹膜外経路
5 総大腿動脈ならびに大腿動脈分岐部
1.位 置
2.進入経路
3.露出法
6 浅大腿動静脈
1.大腿上部での露出
2.大腿下部での露出
7 膝窩動静脈
1.膝上膝窩動静脈の露出
2.膝後面における膝窩動静脈の露出
3.膝下膝窩動静脈の露出
8 前脛骨動脈
1.中枢部位へのアプローチ
2.末梢部位へのアプローチ
9 後脛骨動脈
1.中枢側へのアプローチ
2.末梢側へのアプローチ
10 腓骨動脈
1.内側経路
2.外側後方経路
11 足背動脈,足底動脈
1.足背動脈の露出法
2.遠位後脛骨動脈および足底動脈の露出法
12 総頚動脈,内頚動静脈
1.準 備
2.皮膚切開
3.内頚静脈
4.総頚動脈,外頚動脈,内頚動脈
13 腋窩動静脈
14 上腕動静脈
1.上腕部における露出
2.肘部における露出
3.橈側皮静脈
4.尺側皮静脈
15 前腕・手の動静脈
1.前腕の動脈
2.手の動脈
16 腹部下大静脈
1.解 剖
2.コッヘルの授動
3.上行結腸の授動
4.右の腹膜外経路での下大静脈到達法
5.腹斜筋の切開
6.開創器の牽引方向
7.静脈損傷の処理
8.バルーンによる一時的止血法
9.用指的圧迫・ガーゼタンポン
II.基本手術手技
1 血流遮断法
1.大血管の血流遮断
2.中小血管の血流遮断
2 血管吻合の基本事項
1.運針法
2.端々吻合と端側吻合
3.大血管および中血管における血管吻合
4.中小血管における血管吻合
3 血管縫合針・糸とその選択
1.血管縫合針,糸
2.針,吻合部位別縫合糸の選択
4 人工血管の種類
1.材 質
2.形 態
3.透析用シャントに用いる人工血管
5 静脈採取法
1.解 剖
2.グラフト採取の実際
6 静脈弁破壊法
III.血行再建の手技
1 腹部大動脈瘤
A.待機手術(IMA再建を含む)
1.腹膜経路による腹部大動脈瘤手術
2.後腹膜経路による腹部大動脈瘤手術
B.破裂手術
1.病態と初期治療
2.アプローチと中枢大動脈遮断法
3.瘤の剥離と遮断法
4.手術方法
2 末梢動脈閉塞性疾患
A.高位大動脈閉塞症
1.体 位
2.アプローチ
3.準 備
4.手術手技
B.大動脈腸骨動脈閉塞症
1.腹部大動脈—大腿動脈バイパス術
2.腸骨動脈—大腿動脈バイパス術
C.大腿膝窩—下腿動脈閉塞症
1.大腿膝窩動脈バイパス術
2.下腿動脈へのバイパス術
3.足部動脈へのバイパス術
D.非解剖学的バイパス
1.腋窩—大腿動脈バイパス術
2.大腿動脈—大腿動脈バイパス術
E.感染病変の血行再建
1.閉鎖孔バイパス(鼠径部感染)
2.大網充填術(グラフト感染)
F.膝窩動脈瘤,捕捉症候群,嚢腫
1.膝窩動脈瘤
2.膝窩動脈捕捉症候群
3.膝窩動脈外膜嚢腫
G.頚動脈血栓内膜切除術
1.体 位
2.アプローチ
3.準 備
4.手術手技
H.Eversion TEA
1.体 位
2.アプローチ
3.準 備
4.手術手技
I.急性動脈閉塞症
1.大腿動脈の塞栓症
2.膝窩動脈の塞栓症
3.上腕動脈の塞栓症
3 弓部大動脈ステントグラフトの分枝再建
1.1 debranchingの際の分枝再建
2.2 debranchingの際の分枝再建
3.Total debranchingの際の分枝再建
IV.血管内治療
1 腸骨動脈
1.術前検査
2.穿刺方法
3.ガイドワイヤーの通過方法および造影
4.反対側大腿動脈,上腕動脈からのアプローチ
5.計 測
6.圧測定
7.血管拡張
8.ステント留置
9.確認造影
10.慢性完全閉塞例の血管内治療
2 大腿動脈
1.血管内治療の適応
2.血管内治療
3.大腿動脈血管内治療の実際
4.手技の実際
3 下腿動脈
1.適 応
2.治療手段(血管内治療)
3.手 技
4.合併症とその対策
4 腎動脈
1.適 応
2.経皮的腎動脈拡張術(PTRA)の手技
5 塞栓術(腹部内臓動脈瘤)
1.腹部内臓動脈瘤
2.部位別の特徴
3.血管内治療の利点
4.塞栓術
5.治療後
6 IVCフィルター
1.下大静脈フィルターの種類
2.準備と必要物品
3.処置の方法,手順
1 上腹部大動脈
1.腹部正中切開法
2.開胸・開腹横隔膜切開法
2 腹部大動脈
1.腹膜経路
2.後腹膜腔剥離
3 腎動脈
1.腎動脈への開腹アプローチ
2.左腎動脈,腎静脈,左副腎静脈への開腹アプローチ
3.左腎動脈への後腹膜アプローチ
4 腸骨動静脈
1.傍腹直筋腹膜外経路
2.斜切開腹膜外経路
5 総大腿動脈ならびに大腿動脈分岐部
1.位 置
2.進入経路
3.露出法
6 浅大腿動静脈
1.大腿上部での露出
2.大腿下部での露出
7 膝窩動静脈
1.膝上膝窩動静脈の露出
2.膝後面における膝窩動静脈の露出
3.膝下膝窩動静脈の露出
8 前脛骨動脈
1.中枢部位へのアプローチ
2.末梢部位へのアプローチ
9 後脛骨動脈
1.中枢側へのアプローチ
2.末梢側へのアプローチ
10 腓骨動脈
1.内側経路
2.外側後方経路
11 足背動脈,足底動脈
1.足背動脈の露出法
2.遠位後脛骨動脈および足底動脈の露出法
12 総頚動脈,内頚動静脈
1.準 備
2.皮膚切開
3.内頚静脈
4.総頚動脈,外頚動脈,内頚動脈
13 腋窩動静脈
14 上腕動静脈
1.上腕部における露出
2.肘部における露出
3.橈側皮静脈
4.尺側皮静脈
15 前腕・手の動静脈
1.前腕の動脈
2.手の動脈
16 腹部下大静脈
1.解 剖
2.コッヘルの授動
3.上行結腸の授動
4.右の腹膜外経路での下大静脈到達法
5.腹斜筋の切開
6.開創器の牽引方向
7.静脈損傷の処理
8.バルーンによる一時的止血法
9.用指的圧迫・ガーゼタンポン
II.基本手術手技
1 血流遮断法
1.大血管の血流遮断
2.中小血管の血流遮断
2 血管吻合の基本事項
1.運針法
2.端々吻合と端側吻合
3.大血管および中血管における血管吻合
4.中小血管における血管吻合
3 血管縫合針・糸とその選択
1.血管縫合針,糸
2.針,吻合部位別縫合糸の選択
4 人工血管の種類
1.材 質
2.形 態
3.透析用シャントに用いる人工血管
5 静脈採取法
1.解 剖
2.グラフト採取の実際
6 静脈弁破壊法
III.血行再建の手技
1 腹部大動脈瘤
A.待機手術(IMA再建を含む)
1.腹膜経路による腹部大動脈瘤手術
2.後腹膜経路による腹部大動脈瘤手術
B.破裂手術
1.病態と初期治療
2.アプローチと中枢大動脈遮断法
3.瘤の剥離と遮断法
4.手術方法
2 末梢動脈閉塞性疾患
A.高位大動脈閉塞症
1.体 位
2.アプローチ
3.準 備
4.手術手技
B.大動脈腸骨動脈閉塞症
1.腹部大動脈—大腿動脈バイパス術
2.腸骨動脈—大腿動脈バイパス術
C.大腿膝窩—下腿動脈閉塞症
1.大腿膝窩動脈バイパス術
2.下腿動脈へのバイパス術
3.足部動脈へのバイパス術
D.非解剖学的バイパス
1.腋窩—大腿動脈バイパス術
2.大腿動脈—大腿動脈バイパス術
E.感染病変の血行再建
1.閉鎖孔バイパス(鼠径部感染)
2.大網充填術(グラフト感染)
F.膝窩動脈瘤,捕捉症候群,嚢腫
1.膝窩動脈瘤
2.膝窩動脈捕捉症候群
3.膝窩動脈外膜嚢腫
G.頚動脈血栓内膜切除術
1.体 位
2.アプローチ
3.準 備
4.手術手技
H.Eversion TEA
1.体 位
2.アプローチ
3.準 備
4.手術手技
I.急性動脈閉塞症
1.大腿動脈の塞栓症
2.膝窩動脈の塞栓症
3.上腕動脈の塞栓症
3 弓部大動脈ステントグラフトの分枝再建
1.1 debranchingの際の分枝再建
2.2 debranchingの際の分枝再建
3.Total debranchingの際の分枝再建
IV.血管内治療
1 腸骨動脈
1.術前検査
2.穿刺方法
3.ガイドワイヤーの通過方法および造影
4.反対側大腿動脈,上腕動脈からのアプローチ
5.計 測
6.圧測定
7.血管拡張
8.ステント留置
9.確認造影
10.慢性完全閉塞例の血管内治療
2 大腿動脈
1.血管内治療の適応
2.血管内治療
3.大腿動脈血管内治療の実際
4.手技の実際
3 下腿動脈
1.適 応
2.治療手段(血管内治療)
3.手 技
4.合併症とその対策
4 腎動脈
1.適 応
2.経皮的腎動脈拡張術(PTRA)の手技
5 塞栓術(腹部内臓動脈瘤)
1.腹部内臓動脈瘤
2.部位別の特徴
3.血管内治療の利点
4.塞栓術
5.治療後
6 IVCフィルター
1.下大静脈フィルターの種類
2.準備と必要物品
3.処置の方法,手順