乳癌ラジオ波焼灼療法アトラス ー手技と病理効果判定の手順書ー
1版
国立病院機構東京医療センター 副院長/乳腺外科 木下貴之 編
防衛医科大学校病態病理学講座 教授 津田 均 編
定価
9,900円(本体 9,000円 +税10%)
- B5判 136頁
- 2024年5月 発行
- ISBN 978-4-525-31741-6
これ1冊で早期乳癌ラジオ波焼灼療法のポイントがわかる!!
2023年12月に早期乳癌の「ラジオ波焼灼療法(RFA)」が保険適応となった.これに伴い,RFAをはじめて行う医療施設が増えることが予想される.本書では「ラジオ波焼灼術(RFA)早期乳癌適正使⽤指針」に沿い,各施設で安全・効果的に早期乳癌のRFAが実施できるよう,乳腺外科医、放射線医、病理医など関係する医療スタッフに向けて、図や写真を多く用い,専門家が,わかりやすく解説.
- 序文
- 目次
序文
近年の乳癌検診受診率の向上にともなう検診発見早期乳癌患者の増加と,それに対応した局所治療の低侵襲化および簡便化は,乳癌治療の大きな課題である.
RFA(ラジオ波焼灼療法:radiofrequency ablation)は,電極針を病変部に穿刺し,ラジオ波電流を通電することによって腫瘍部位を焼灼する方法であり,乳房への傷を穿刺部位の最小限の傷にとどめることができるという利点がある.乳癌に対するRFAは,これまでに多くの研究者がその効果と安全性を報告してきたが,国内外に,統計学的に十分な精度をもった前向き試験の報告はなく,また,病理判定法の確立にもいまだ至っておらず,RFAの適応とする条件の詳細も定まっていない状況が続いた.
このような背景で,「早期乳癌へのRFAの安全性および有効性の評価」に関する多施設共同研究が,平成20年(2008年)3月31日,臨床的な使用確認試験として実施を認められ,同4月より第3項先進医療(以下高度医療)として臨床試験を実施することが認められた.同研究は,平成19〜21年度厚生労働科学研究費補助金 医療技術実用化総合研究事業の支援を受け,RFAの標準的手技および病理判定法の確立とともに,早期乳癌局所治療におけるその安全性と有効性を確認し,適応例を確立するという成果を得た.
この結果をもとに引き続き高度医療として,早期乳癌に対して非切除RFAにて,有効性と安全性を評価する第II相試験を多施設共同研究「早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法の安全性の検証と標準化に向けた多施設共同研究(RAFAELO試験)」(研究代表者:木下貴之)として開始した.これは,RFA後,厳密に計画された画像診断や針生検により経過観察を行い,中期的な有効性と安全性および本治療の特徴である整容性の評価を目的とするとともに,RFA後の適切な画像診断や病理診断法を開発し標準化していくことを目的としたものである.同試験は先進医療Bとして2013年8月に患者登録を開始し,2017年11月29日に目標登録数372例に到達して患者登録を終了し,現在最終解析に向けて準備中である.2023年7月7日にRAFAELO試験の短期成績が信頼性,有効性および安全性の点で評価され,RFAの早期乳癌に対する適応拡大の薬事承認を取得し2023年12月1日に保険収載された.早期乳癌へのRFAの適応拡大により,現行の標準的治療法である外科的切除術にともなう「患者の苦痛」を取り除くことが可能となり,大幅なQOL改善が期待できる.今回,手術手技としては「乳房部分切除術」に加えて「非切除」という新たな選択肢が加わったわけだが,乳癌RFAは日本乳癌学会が定めた適正使用指針を遵守して実施することが義務づけられている.
本書では「ラジオ波焼灼術(RFA)早期乳癌適正使用指針」に沿い,各施設で安全・効果的に「早期乳癌RFA」が実施できるよう,図や写真を多く用い,専門家の先生方より,わかりやすく解説いただいた.早期乳癌に対して非切除RFAに携わる乳腺外科医,放射線医,医療スタッフに手にしていただき,安全性と有効性の高い治療につなげていただければ望外の幸せである.
2024年春
編者を代表して
国立病院機構東京医療センター 副院長/乳腺外科
木下貴之
RFA(ラジオ波焼灼療法:radiofrequency ablation)は,電極針を病変部に穿刺し,ラジオ波電流を通電することによって腫瘍部位を焼灼する方法であり,乳房への傷を穿刺部位の最小限の傷にとどめることができるという利点がある.乳癌に対するRFAは,これまでに多くの研究者がその効果と安全性を報告してきたが,国内外に,統計学的に十分な精度をもった前向き試験の報告はなく,また,病理判定法の確立にもいまだ至っておらず,RFAの適応とする条件の詳細も定まっていない状況が続いた.
このような背景で,「早期乳癌へのRFAの安全性および有効性の評価」に関する多施設共同研究が,平成20年(2008年)3月31日,臨床的な使用確認試験として実施を認められ,同4月より第3項先進医療(以下高度医療)として臨床試験を実施することが認められた.同研究は,平成19〜21年度厚生労働科学研究費補助金 医療技術実用化総合研究事業の支援を受け,RFAの標準的手技および病理判定法の確立とともに,早期乳癌局所治療におけるその安全性と有効性を確認し,適応例を確立するという成果を得た.
この結果をもとに引き続き高度医療として,早期乳癌に対して非切除RFAにて,有効性と安全性を評価する第II相試験を多施設共同研究「早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法の安全性の検証と標準化に向けた多施設共同研究(RAFAELO試験)」(研究代表者:木下貴之)として開始した.これは,RFA後,厳密に計画された画像診断や針生検により経過観察を行い,中期的な有効性と安全性および本治療の特徴である整容性の評価を目的とするとともに,RFA後の適切な画像診断や病理診断法を開発し標準化していくことを目的としたものである.同試験は先進医療Bとして2013年8月に患者登録を開始し,2017年11月29日に目標登録数372例に到達して患者登録を終了し,現在最終解析に向けて準備中である.2023年7月7日にRAFAELO試験の短期成績が信頼性,有効性および安全性の点で評価され,RFAの早期乳癌に対する適応拡大の薬事承認を取得し2023年12月1日に保険収載された.早期乳癌へのRFAの適応拡大により,現行の標準的治療法である外科的切除術にともなう「患者の苦痛」を取り除くことが可能となり,大幅なQOL改善が期待できる.今回,手術手技としては「乳房部分切除術」に加えて「非切除」という新たな選択肢が加わったわけだが,乳癌RFAは日本乳癌学会が定めた適正使用指針を遵守して実施することが義務づけられている.
本書では「ラジオ波焼灼術(RFA)早期乳癌適正使用指針」に沿い,各施設で安全・効果的に「早期乳癌RFA」が実施できるよう,図や写真を多く用い,専門家の先生方より,わかりやすく解説いただいた.早期乳癌に対して非切除RFAに携わる乳腺外科医,放射線医,医療スタッフに手にしていただき,安全性と有効性の高い治療につなげていただければ望外の幸せである.
2024年春
編者を代表して
国立病院機構東京医療センター 副院長/乳腺外科
木下貴之
目次
第1章 乳癌非切除治療の現状と課題
第2章 ラジオ波焼灼療法の原理
第3章 ラジオ波焼灼療法の臨床への応用─乳癌RFA臨床試験(国内・海外)─
第4章 乳癌RFA臨床試験(公的制度を用いた)─RAFAELO試験とPO-RAFAELO試験─
第5章 適応と治療のながれ
第6章 標準的手技
第7章 Knack & Pitfalls(1)
第8章 Knack & Pitfalls(2)
第9章 RFA後放射線治療の手引
第10章 術後治療と経過観察方法(術後吸引式針生検法を含む)
第11章 術後画像診断の特徴(1)非再発例
第12章 術後画像診断の特徴(2)紛らわしい例
第13章 術後病理診断(1) 組織学的変化とNADH染色,ピットフォールなど
第14章 術後病理診断(2) 治療効果判定と特徴的組織像
第15章 術後整容性
第16章 合併症とその対策(1)
第17章 合併症とその対策(2)
第18章 インフォームドコンセントの要点
第19章 乳癌の非切除治療の将来
付 録 ─説明文書・同意書─
第2章 ラジオ波焼灼療法の原理
第3章 ラジオ波焼灼療法の臨床への応用─乳癌RFA臨床試験(国内・海外)─
第4章 乳癌RFA臨床試験(公的制度を用いた)─RAFAELO試験とPO-RAFAELO試験─
第5章 適応と治療のながれ
第6章 標準的手技
第7章 Knack & Pitfalls(1)
第8章 Knack & Pitfalls(2)
第9章 RFA後放射線治療の手引
第10章 術後治療と経過観察方法(術後吸引式針生検法を含む)
第11章 術後画像診断の特徴(1)非再発例
第12章 術後画像診断の特徴(2)紛らわしい例
第13章 術後病理診断(1) 組織学的変化とNADH染色,ピットフォールなど
第14章 術後病理診断(2) 治療効果判定と特徴的組織像
第15章 術後整容性
第16章 合併症とその対策(1)
第17章 合併症とその対策(2)
第18章 インフォームドコンセントの要点
第19章 乳癌の非切除治療の将来
付 録 ─説明文書・同意書─