在宅整形が得意技になる本
1版
亀戸大島クリニック 院長 飯島 治 著
定価
3,850円(本体 3,500円 +税10%)
- B5判 191頁
- 2013年5月 発行
- ISBN 978-4-525-32141-3
在宅でよく遭遇する問題について,診断のコツ,家族へのちょっとしたアドバイス,簡単で効果的な処置法や,患者さんの状態把握のためのポイントなどを紹介した,明日からできる実践のための知がつまった一冊です.あなたも在宅整形という得意技を身につけ,患者さんやご家族にさらに感謝される在宅スーパードクターを目指しませんか?
- 序文
- 目次
序文
内科,外科 メジャー科の先生方こんにちは.私は臨床研修制度の必須科に入れてもらえなかった整形というマイナー科の医者です.
先生方は,今までに心臓や消化器,呼吸器や脳疾患など人の命にかかわる病気に取り組み,多くの人たちを助けて下さったことと思います.ありがとうございます.そして何かの縁あって訪問診療の世界に興味を持ち,今この本を手にとってくださったのですね.
実は訪問診療をやってみると分かるのですが,在宅の現場ではあまり内臓の検査や処置ができません.CT,内視鏡は当然として,精度の高い心電図やエコーも実際は難しく,ましてやブラック・ジャックのように風船を膨らませて,その中でオペすることなど不可能です.ということで,なかなか内臓の評価と治療が難しいのが現状です.
その一方で,在宅には病院ではマイナーな筋骨格系の患者さんがゴロゴロいます.例えば昨日こんな相談を受けました.「先生3日前からおばあちゃんが足を動かすと痛がるの,どうしよう」,「どれどれ,股関節は大丈夫そうですね.おや右膝に熱感がありますよ.ほら左膝を触ってから右膝を触ってみてください.右膝が熱っぽいのがわかるでしょう.水は溜まってないみたいですね」,「どうしよう」,「まず膝の炎症を抑えるために,ヒアルロン酸の注射を関節にしましょう.害はないですよ」,「そうですか」,「あれ,曲げ伸ばしして痛がる割には膝裏のスジは硬くないですよ.ということは,拘縮になりかけの痛みじゃないですかね,ほら動かしているうちにだんだん痛がらなくなってきたでしょ」,「痛がるもんだから手が出せなくてオムツ替えも大変だったの」,「手足は内臓と違って命にはかかわらないから大丈夫です.ビクビクする必要はありません.これは動かした方がいい膝です.ちょこちょこ動かしてあげてください.いいリハビリになりますよ」こんな感じでした.
さしずめ整形というものは,病院では太陽の影で目立たない月のような存在です.しかし密室で光の当たらない訪問診療の世界では密かにメジャー科目の1つなのかもしれません.
この本は内臓を診ることのできる先生方に,訪問診療の現場で筋骨格系も診られるようになっていただき,在宅スーパードクターになっていただこうと企画した本です.
拙著が医療の本流を行く先生方のお役に立ち,間接的に訪問診療の発展に貢献できればちょっとうれしいです.
2013年4月 飯島 治
先生方は,今までに心臓や消化器,呼吸器や脳疾患など人の命にかかわる病気に取り組み,多くの人たちを助けて下さったことと思います.ありがとうございます.そして何かの縁あって訪問診療の世界に興味を持ち,今この本を手にとってくださったのですね.
実は訪問診療をやってみると分かるのですが,在宅の現場ではあまり内臓の検査や処置ができません.CT,内視鏡は当然として,精度の高い心電図やエコーも実際は難しく,ましてやブラック・ジャックのように風船を膨らませて,その中でオペすることなど不可能です.ということで,なかなか内臓の評価と治療が難しいのが現状です.
その一方で,在宅には病院ではマイナーな筋骨格系の患者さんがゴロゴロいます.例えば昨日こんな相談を受けました.「先生3日前からおばあちゃんが足を動かすと痛がるの,どうしよう」,「どれどれ,股関節は大丈夫そうですね.おや右膝に熱感がありますよ.ほら左膝を触ってから右膝を触ってみてください.右膝が熱っぽいのがわかるでしょう.水は溜まってないみたいですね」,「どうしよう」,「まず膝の炎症を抑えるために,ヒアルロン酸の注射を関節にしましょう.害はないですよ」,「そうですか」,「あれ,曲げ伸ばしして痛がる割には膝裏のスジは硬くないですよ.ということは,拘縮になりかけの痛みじゃないですかね,ほら動かしているうちにだんだん痛がらなくなってきたでしょ」,「痛がるもんだから手が出せなくてオムツ替えも大変だったの」,「手足は内臓と違って命にはかかわらないから大丈夫です.ビクビクする必要はありません.これは動かした方がいい膝です.ちょこちょこ動かしてあげてください.いいリハビリになりますよ」こんな感じでした.
さしずめ整形というものは,病院では太陽の影で目立たない月のような存在です.しかし密室で光の当たらない訪問診療の世界では密かにメジャー科目の1つなのかもしれません.
この本は内臓を診ることのできる先生方に,訪問診療の現場で筋骨格系も診られるようになっていただき,在宅スーパードクターになっていただこうと企画した本です.
拙著が医療の本流を行く先生方のお役に立ち,間接的に訪問診療の発展に貢献できればちょっとうれしいです.
2013年4月 飯島 治
目次
第1章 頸
1 顎関節脱臼の整復は家族にマスターしてもらおう
2 在宅で頸椎症性脊髄症を評価してみよう
3 肩痛の由来をブラジャーの肩ひもで説明しよう
第2章 上 肢
1 ドゥケルバン腱鞘炎への注射療法
2 ばね指への注射療法
3 健側に起こる肘と肩の痛みとは
4 へバーデン結節の質問にどう答えるか
5 手関節は「おつりちょうだい」と覚えよう
第3章 腰
1 腰部脊柱管狭窄症とは何か
2 腰部脊柱管狭窄症の在宅的薬物療法
3 腰部脊柱管狭窄症の予後は
4 骨粗鬆症性椎体骨折に関する私的考察
Column:クイズ 診断は何でしょう
5 介護者に腰椎バンドをプレゼントしよう
Column:坐骨神経痛を疑ったらお尻を押してみよう
第4章 下 肢
1 短下肢装具のチェックポイント
2 装具を作るべきか迷ったら
3 短下肢装具をオーダーしよう
4 手足のしびれに関する私的考察
5 足関節部滑液包炎にどう対処するか
6 足の爪離は抜爪でよい
7 在宅整形的知覚評価法
第5章 手 技
1 往診カバンにクーパー剪刀を入れよう
2 皮膚縫合をできるようにしておこう
3 トリガーポイント注射をしてあげよう
4 ヒアルロン酸関節注射を自分にやってマスターしよう
5 ヒアルロン酸膝関節注射の実際
6 膝関節穿刺の実際
7 可動域制限のある肩痛にヒアルロン酸の注射をしよう
8 身体尺を有効に使おう
第6章 外 傷
1 骨はどれくらいでくっつくの
2 前腕の皮下出血について
3 骨折を疑ったらこれをしてみよう
4 在宅外傷学
Column:困惑する治療現場─とまどう整形外科医たち
5 在宅肋骨学
Column:サバイバル333の法則
第7章 転 倒
1 在宅転倒学─転倒シミュレーション編
2 在宅転倒学─どのような人が転んでいるのか
3 転倒予防,バリアフリーの盲点とは
4 転倒後に起き上がるコツを教えてあげよう
第8章 リウマチ
1 最新リウマチの光の影で
2 在宅リウマチの実態を知る
3 どんな治療を受けているのか
4 在宅リウマチの実状に迫る
5 処置─足のタコを削る
6 病態─リウマチの痛みについて
7 在宅リウマチのリハビリについて考える
Column:【仮説】リウマチ患者さんの在宅リハビリで最も有効なものとは
8 マナー
Column:【仮説】在宅リウマチにリウマチ気質はいない
Column:ルノワールのサポーターから学ぶもの
第9章 処 方
1 痛み止めの薬は何を使ったらいいの
2 骨粗鬆症の薬って意味があるの
3 冷湿布と温湿布どちらがいいの
Column:余談…お尻から薬が出てきた話
第10章 リハビリ
1 在宅リハビリは休みながらほどほどに
2 台所で平行棒のつもりリハビリ
3 ベッド上でできる体操を教えてと言われたら
4 ロコモって何
索 引
1 顎関節脱臼の整復は家族にマスターしてもらおう
2 在宅で頸椎症性脊髄症を評価してみよう
3 肩痛の由来をブラジャーの肩ひもで説明しよう
第2章 上 肢
1 ドゥケルバン腱鞘炎への注射療法
2 ばね指への注射療法
3 健側に起こる肘と肩の痛みとは
4 へバーデン結節の質問にどう答えるか
5 手関節は「おつりちょうだい」と覚えよう
第3章 腰
1 腰部脊柱管狭窄症とは何か
2 腰部脊柱管狭窄症の在宅的薬物療法
3 腰部脊柱管狭窄症の予後は
4 骨粗鬆症性椎体骨折に関する私的考察
Column:クイズ 診断は何でしょう
5 介護者に腰椎バンドをプレゼントしよう
Column:坐骨神経痛を疑ったらお尻を押してみよう
第4章 下 肢
1 短下肢装具のチェックポイント
2 装具を作るべきか迷ったら
3 短下肢装具をオーダーしよう
4 手足のしびれに関する私的考察
5 足関節部滑液包炎にどう対処するか
6 足の爪離は抜爪でよい
7 在宅整形的知覚評価法
第5章 手 技
1 往診カバンにクーパー剪刀を入れよう
2 皮膚縫合をできるようにしておこう
3 トリガーポイント注射をしてあげよう
4 ヒアルロン酸関節注射を自分にやってマスターしよう
5 ヒアルロン酸膝関節注射の実際
6 膝関節穿刺の実際
7 可動域制限のある肩痛にヒアルロン酸の注射をしよう
8 身体尺を有効に使おう
第6章 外 傷
1 骨はどれくらいでくっつくの
2 前腕の皮下出血について
3 骨折を疑ったらこれをしてみよう
4 在宅外傷学
Column:困惑する治療現場─とまどう整形外科医たち
5 在宅肋骨学
Column:サバイバル333の法則
第7章 転 倒
1 在宅転倒学─転倒シミュレーション編
2 在宅転倒学─どのような人が転んでいるのか
3 転倒予防,バリアフリーの盲点とは
4 転倒後に起き上がるコツを教えてあげよう
第8章 リウマチ
1 最新リウマチの光の影で
2 在宅リウマチの実態を知る
3 どんな治療を受けているのか
4 在宅リウマチの実状に迫る
5 処置─足のタコを削る
6 病態─リウマチの痛みについて
7 在宅リウマチのリハビリについて考える
Column:【仮説】リウマチ患者さんの在宅リハビリで最も有効なものとは
8 マナー
Column:【仮説】在宅リウマチにリウマチ気質はいない
Column:ルノワールのサポーターから学ぶもの
第9章 処 方
1 痛み止めの薬は何を使ったらいいの
2 骨粗鬆症の薬って意味があるの
3 冷湿布と温湿布どちらがいいの
Column:余談…お尻から薬が出てきた話
第10章 リハビリ
1 在宅リハビリは休みながらほどほどに
2 台所で平行棒のつもりリハビリ
3 ベッド上でできる体操を教えてと言われたら
4 ロコモって何
索 引