未来の赤ちゃんに出会うために
不妊治療・体外受精のすすめ
改訂4版
医療法人成田育成会成田産婦人科 理事長 成田 収 著
医療法人成田育成会セントソフィアクリニック 院長 伊藤知華子 著
定価
2,750円(本体 2,500円 +税10%)
- B5判 175頁
- 2023年3月 発行
- ISBN 978-4-525-33174-0
専門医がやさしく解説! これでわかる体外受精の基本ステップ
~「体外受精を始めようかな」と思ったら,本書が最適なガイドです~
2022年4月より不妊治療の保険適用範囲が拡大され,体外受精をはじめとする生殖補助医療の敷居もぐっと低くなりました.本書では,体外受精への第一歩を踏み出すときに知っておきたい基本的知識,最新のエビデンスに基づいた治療の実際,体外受精について不安に思う点や疑問を丁寧に解説しています.体外受精を受ける患者さんの心に寄り添う生殖医療専門医からの実践的なアドバイスにあふれた,治療のよき相棒となる一冊です.
- 発刊にあたって
- 序文
- 目次
- 書評
発刊にあたって
2010年に初版を出版してから13年が経過しました.本書は,不妊に悩むカップルの診療を通して感じたことや,体外受精について必要とされる知識・情報をわかりやすく解説しながらまとめたものです.出版後,多くの方々のご支援を得て,2015年には改訂2版,2019年には3版を出すことができました.
しかし,その後も生殖医療分野の進歩は目覚ましく,新しい出生前診断や卵子・卵巣凍結法の改良,抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定の臨床応用場面での普及,子宮移植など新しい技術が次々に発表されてきました.
また,生殖医療分野において遺伝子情報は重要な役割を担うものとなり,着床前遺伝学的検査(PGT)も行われるようになってきました.
日本の生殖医療は世界の進歩に合わせて発展し,その実施回数は世界有数のものとなりましたが,その治療成績はまだ改善の余地を残しています.妊娠・出産を希望する年齢は先進国の中で最も高く,治療開始の遅れは成功率に大きな影響を及ぼしています.
晩婚と晩産化は,日本の少子化の最大の問題であるとともに,不妊治療においても加齢は妊娠・出産を阻む最大の壁となっています.
従来,不妊治療の多くは公的保険の対象外であったため,治療費は自己負担となり,特に高度先進医療の体外受精や顕微授精は,1回数十万円の出費となっていました.体外受精の実施には,高額な治療費と日数を要するため,治療を諦めるカップルが多かったのは事実ですし,不妊治療と仕事の両立に悩む女性も多くいました.
政府はこの事実を踏まえ,不妊治療の保険適用の拡大を決定し,2022年は,わが国における不妊治療の再出発となりました.これは不妊に悩む多くのカップルにとって,大きな喜びとなることと思います.
現在,日本は新型コロナウイルスの流行の影響もあり,婚姻数が大幅に減り,出産数も減少して,人口問題が危機的な状態になると考えられています.
経済的な負担が克服され,出産を希望する人が,安心して子どもを産み育てることができる国づくりが進むことを望みます.
本書を手に取った方々が,余計な不安に惑わされることなく,心に希望とゆとりをもって治療に臨まれ,一刻も早くかわいい赤ちゃんをその胸に抱かれる日が来ることを祈念しています.
2023年1月
成田 収
しかし,その後も生殖医療分野の進歩は目覚ましく,新しい出生前診断や卵子・卵巣凍結法の改良,抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定の臨床応用場面での普及,子宮移植など新しい技術が次々に発表されてきました.
また,生殖医療分野において遺伝子情報は重要な役割を担うものとなり,着床前遺伝学的検査(PGT)も行われるようになってきました.
日本の生殖医療は世界の進歩に合わせて発展し,その実施回数は世界有数のものとなりましたが,その治療成績はまだ改善の余地を残しています.妊娠・出産を希望する年齢は先進国の中で最も高く,治療開始の遅れは成功率に大きな影響を及ぼしています.
晩婚と晩産化は,日本の少子化の最大の問題であるとともに,不妊治療においても加齢は妊娠・出産を阻む最大の壁となっています.
従来,不妊治療の多くは公的保険の対象外であったため,治療費は自己負担となり,特に高度先進医療の体外受精や顕微授精は,1回数十万円の出費となっていました.体外受精の実施には,高額な治療費と日数を要するため,治療を諦めるカップルが多かったのは事実ですし,不妊治療と仕事の両立に悩む女性も多くいました.
政府はこの事実を踏まえ,不妊治療の保険適用の拡大を決定し,2022年は,わが国における不妊治療の再出発となりました.これは不妊に悩む多くのカップルにとって,大きな喜びとなることと思います.
現在,日本は新型コロナウイルスの流行の影響もあり,婚姻数が大幅に減り,出産数も減少して,人口問題が危機的な状態になると考えられています.
経済的な負担が克服され,出産を希望する人が,安心して子どもを産み育てることができる国づくりが進むことを望みます.
本書を手に取った方々が,余計な不安に惑わされることなく,心に希望とゆとりをもって治療に臨まれ,一刻も早くかわいい赤ちゃんをその胸に抱かれる日が来ることを祈念しています.
2023年1月
成田 収
序文
太古の時代から人間も一つの生き物として,自然の摂理に従い,生殖活動を通して種を保存してきました.しかし近年,先進各国では,環境やライフスタイルの変化などから自然妊娠が困難となっている不妊のカップルは増加しています.
日本では1986年から施行された男女雇用機会均等法以後,共働き世帯の割合は徐々に増加し,2021年には約70%を占めるようになりました.そして,女性がキャリアアップやポジション維持のため妊娠を計画する時期は先延ばしになり,年齢によって変化する女性ホルモンの増減で影響を受ける大きなライフサイクルがあることは忘れられがちになりました.生き物である以上,寿命があることはわかっていても,赤ちゃんを産む適齢期があることは,日本の教育現場では性教育とともに,なぜかあまり教えられてこなかったからです.
男女が等しく競争できる時代になっても,月経があり,一月の短い間にもサイクルがある女性と,思春期以降は壮年期までホルモン変動が緩やかな男性とでは,性差があります.それを理解した上で,妊娠を希望するときはお互いへの思いやりをもち,協力と理解をし合っていかなければなりません.
不妊治療において,WebやSNSから得られる情報は溢れていますが,中には根拠が不明なもの,正しくないものもたくさんあります.有名人が受けた治療やマスコミで取り上げられた情報などは注目されやすいですが,赤ちゃんを望むとき,「他人がどうなのか?」ではなく,一人ひとりが正しい知識をもって自分自身に合った治療を選択していただきたいものです.
生殖医療の発展は目覚ましく,先進的な治療や検査が臨床応用されてきていますが,まず自分の体を理解することが大切です.不妊治療も万能ではなく,体がもつ力を引き出すものに過ぎません.特に,どうしても抗えない生殖年齢にはリミットがあります.「チャンスの女神は前髪しかない.通り過ぎたらつかまえられない」のです.赤ちゃんを望みながら,一歩を踏み出せない皆さんに,この諺をおくります.赤ちゃんを産めるライフステージに立っていられるのも,人生の限られた時期だけなのです.
治療の成否で皆さんの価値は何も変わりませんし,十分頑張っています.だからこそ焦ることなく,カップルお二人で協力し,息抜きや楽しみも見つけながら,メリハリをつけて治療に臨まれ,新しい家族を迎える日が来ることを願っています.
2023年1月
伊藤知華子
日本では1986年から施行された男女雇用機会均等法以後,共働き世帯の割合は徐々に増加し,2021年には約70%を占めるようになりました.そして,女性がキャリアアップやポジション維持のため妊娠を計画する時期は先延ばしになり,年齢によって変化する女性ホルモンの増減で影響を受ける大きなライフサイクルがあることは忘れられがちになりました.生き物である以上,寿命があることはわかっていても,赤ちゃんを産む適齢期があることは,日本の教育現場では性教育とともに,なぜかあまり教えられてこなかったからです.
男女が等しく競争できる時代になっても,月経があり,一月の短い間にもサイクルがある女性と,思春期以降は壮年期までホルモン変動が緩やかな男性とでは,性差があります.それを理解した上で,妊娠を希望するときはお互いへの思いやりをもち,協力と理解をし合っていかなければなりません.
不妊治療において,WebやSNSから得られる情報は溢れていますが,中には根拠が不明なもの,正しくないものもたくさんあります.有名人が受けた治療やマスコミで取り上げられた情報などは注目されやすいですが,赤ちゃんを望むとき,「他人がどうなのか?」ではなく,一人ひとりが正しい知識をもって自分自身に合った治療を選択していただきたいものです.
生殖医療の発展は目覚ましく,先進的な治療や検査が臨床応用されてきていますが,まず自分の体を理解することが大切です.不妊治療も万能ではなく,体がもつ力を引き出すものに過ぎません.特に,どうしても抗えない生殖年齢にはリミットがあります.「チャンスの女神は前髪しかない.通り過ぎたらつかまえられない」のです.赤ちゃんを望みながら,一歩を踏み出せない皆さんに,この諺をおくります.赤ちゃんを産めるライフステージに立っていられるのも,人生の限られた時期だけなのです.
治療の成否で皆さんの価値は何も変わりませんし,十分頑張っています.だからこそ焦ることなく,カップルお二人で協力し,息抜きや楽しみも見つけながら,メリハリをつけて治療に臨まれ,新しい家族を迎える日が来ることを願っています.
2023年1月
伊藤知華子
目次
はじめに
第1章 不妊症とは
A 不妊症の定義と実態
参考 海外の学会などによる不妊症の定義
1 年齢とともに高まる不妊症の頻度
2 不妊症の原因としての環境汚染
3 性の乱れが及ぼす影響
4 高まる晩婚化の影響と高齢妊娠
コメント プレコンセプションケアの大切さ
B 不妊症の治療はどのように進歩したか
C 不妊症の原因となる疾患 ─ どんな疾患が増えているのか
第2章 妊娠に必要な条件と不妊症の検査
A 女性側の一般的な検査
1 基礎体温測定
2 経腟超音波検査
3 卵管疎通性検査
4 ソノヒステログラフィー(SHG)
5 性交後試験(ヒューナーテスト)
6 抗精子抗体検査
7 ホルモン検査
参考 甲状腺機能の異常を疑う所見
B 女性側の特殊検査
1 子宮鏡検査(ヒステロスコピー)
2 腹腔鏡検査
3 子宮鏡下選択的卵管通水と卵管鏡下卵管形成術(FT)
4 糖負荷とインスリンの測定
C 男性側の検査と治療
1精液の検査
2 その他の精子機能検査
参考 特殊な精子機能検査
3 男性不妊の治療
4 人工授精(AIH)とは
コメント 人工授精(AIH)の種類と方法
コメント 人工授精のタイミング
コメント 人工授精の手順
コメント 卵子と精子の寿命
第3章 体外受精・胚移植法とは
A 体外受精の定義と適応
コメント 一般不妊治療と生殖補助医療(ART)
1 体外受精を受ける前に
コメント 体外受精を決心する前に
2 体外受精の適応
B 採卵前に必要な検査
C 体外受精の流れ
第4章 体外受精の実際① 調節卵巣刺激(COS)とは
A なぜ卵巣刺激を行うのか
B 卵巣刺激法の選択に必要な卵巣予備能の検査
1 抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定
参考 AMHの特徴
2 胞状卵胞数(AFC)の測定
3 卵胞刺激ホルモン(FSH)の測定
4 インヒビンβの測定
C 抗ミュラー管ホルモン(AMH)値を参考にした卵巣刺激法
D 卵巣刺激法の種類と方法
1 GnRH アンタゴニストを使用する調節卵巣刺激法
コメント hCG 剤に代わってGnRH アゴニストをトリガーに用いる利点
2 GnRH アゴニストを使用する調節卵巣刺激法
参考 GnRH アゴニスト使用時に知っておくべきこと
3 黄体ホルモン併用調節卵巣刺激法
4 自然周期法と低卵巣刺激法(MOS)による体外受精
参考 クロミフェンとレトロゾール
5 ランダムスタートによる卵巣刺激法(ランダムスタート法)
第5章 体外受精の実際② 採卵・採精
A 採卵の実際
B 精液の採取(採精) ─ 男性の出番
1 精子の凍結保存
コメント 無精子症の場合の凍結精子
コメント 顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)の実施
コメント 提供精子を用いた体外受精
Column 男性の妊活に大事なこと ─ 「精子力」を高めよう!
第6章 体外受精の実際③ 媒精・顕微授精
A 卵子・精子の培養と受精
参考 受精方法と異常受精
B 顕微授精
1 顕微授精の進歩と適応
参考 顕微授精法の種類と変遷
参考 顕微授精についてのその他の知識
2 1日遅れの顕微授精(1 day old ICSI)
3 無精子症の場合
参考 その他の精子回収法
4スプリット法
第7章 体外受精の実際④ 胚移植とその後
A 胚移植
コメント 胚移植の際に懸念されること
1 胚の分類と良好胚 ─ どんな胚が着床しやすいか
参考 生殖補助医療に関する認定制度
参考 胚の生存能の評価
2 胚盤胞移植(BT)
3 補助孵化 ─ アシスティッドハッチング(AH)
4 子宮内膜の状態と着床との関係
5 反復着床不全と子宮内膜スクラッチによる着床促進
6 移植胚数についてのガイドライン
B 胚移植後の生活と黄体期の管理
1 胚移植後の日常生活
2 黄体期の管理
第8章 凍結融解胚移植と臨床応用
A 胚の凍結保存
1 胚の凍結保存・融解法の問題点
2 凍結融解胚移植のリスク
B 卵子の凍結保存と倫理的問題
C 凍結保存卵巣組織移植による妊娠・出産
参考 凍結保存技術とがん治療
D 凍結融解胚移植の実際
1 排卵周期での凍結融解胚移植
コメント 凍結融解胚移植時の注意点
2 ホルモン補充周期の凍結融解胚移植
第9章 不妊症の原因となる重要疾患
A 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
1 治療方針
参考 多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性への対策
2 生活習慣の改善
3 体外受精の適応
B 高プロラクチン血症
C クラミジア感染症
1 診断と治療
D 子宮筋腫
E 子宮内膜ポリープ
F 子宮形態異常
G 黄体機能不全
H 早発卵巣不全(早発閉経)
コメント 早発卵巣不全(早発閉経)とは
I 子宮内膜症
コメント 子宮内膜症の疑いがあるときは
1 妊娠を希望する場合の治療法の選択
コメント 子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)の悪性化
参考 EFI(endometriosis fertility index)とは
2 体外受精の適応
J 男性不妊
参考 男性不妊の原因
第10章 体外受精の問題点
A 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生
1 卵巣過剰刺激症候群が起こりやすいタイプ
2 予防策
参考 コースティング法とは
B 多胎妊娠の発生
1 減胎手術とは
C 流産と異所性妊娠(子宮外妊娠)の発生
D 採卵後の合併症の発生
E 胚移植後の合併症
第11章 体外受精の治療成績と先天異常の発生
A 体外受精の成功とは ─ 大切な生産分娩率の評価
B 日本の体外受精と傾向
1 顕微授精治療周期の増加
2 全胚凍結周期と凍結融解胚移植出生児の増加
参考 最近の日本における ART の動向
C 世界の体外受精
1 日本の体外受精の治療成績が低い理由
D 先天異常の頻度
参考 遺伝性疾患に関する用語
E 顕微授精による先天異常発生への影響
F 出生前診断
1 母体血清マーカー検査(トリプルマーカーテスト,クアトロテスト)
2 羊水検査 ─ その安全性
3 母体血胎児染色体検査(NIPT)
G 着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
参考 着床前遺伝学的検査に関する見解
コメント PGT-A後の移植胚の選択
第12章 反復着床不全(RIF)
A 原因と対策
1 子宮内環境の問題
2 受精卵の問題
3 受精卵を受け入れる免疫寛容の異常
4 その他
Column 不妊治療の保険適用拡大 ─ 光と影
第13章 不育症
A 原 因
B 検 査
C 治 療
第14章 不妊症・体外受精に関するQ & A
1 不妊治療・体外受精の基礎知識について
Q1-1 妊娠を希望してからどのくらい妊娠しなければ医療機関を受診した方がいいでしょうか?
Q1-2 体外受精を決心するタイミングを教えてください.
Q1-3 体外受精は1 年間に何回受けられますか?
Q1-4 体外受精は何歳まで続けられますか?
Q1-5 女性の年齢が高いと妊娠しにくくなるのですか?
Q1-6 女性にとって妊娠,出産に適した年齢は何歳くらいですか?
2 胚移植について
Q2-1 凍結融解胚移植はどのようなときに行うのですか?
Q2-2 自然周期で胚移植する方法とホルモン補充周期で胚移植する方法があると聞きましたが,それぞれの長所や短所は何ですか?
Q2-3 受精卵(胚)の凍結保存は実際どのように行われていますか? 長期保存しても問題はないのでしょうか?
3 不妊治療・体外受精における問題点について
Q3-1 不妊治療中なのですが,セックスレスになってしまいました.どうしたらよいでしょうか?
Q3-2 体外受精と卵巣がん,乳がんの発生とに関係はありますか?
Q3-3 不妊治療をやめるのはどのようなときですか?
参考 不妊治療を終わりにするときの動機
第15章 体外受精の社会的問題と未来への展望
A 卵子・精子・胚の非配偶者からの提供と代理出産による体外受精
1 卵子・精子・胚提供による体外受精
2 代理出産
参考 日本における代理出産に関する議論
3 子宮移植による出産
B 体外受精の経済学
参考 高額療養費制度について
1 体外受精の費用
2 不妊専門相談センターの設置
3 不妊治療に対する企業の取り組みについて
C 体外受精の未来への展望
1 老化卵子に対する若返り法はあるのか
2 卵子の凍結保存
参考 がん・生殖医療とは?
3 卵巣組織の凍結保存と移植 ─ 妊孕性温存の救世主となり得るか
4 再生医療の導入
Column 女性のライフプラン
おわりに
引用・参考文献
参考資料
知っておきたい不妊治療関連の略語
索 引
第1章 不妊症とは
A 不妊症の定義と実態
参考 海外の学会などによる不妊症の定義
1 年齢とともに高まる不妊症の頻度
2 不妊症の原因としての環境汚染
3 性の乱れが及ぼす影響
4 高まる晩婚化の影響と高齢妊娠
コメント プレコンセプションケアの大切さ
B 不妊症の治療はどのように進歩したか
C 不妊症の原因となる疾患 ─ どんな疾患が増えているのか
第2章 妊娠に必要な条件と不妊症の検査
A 女性側の一般的な検査
1 基礎体温測定
2 経腟超音波検査
3 卵管疎通性検査
4 ソノヒステログラフィー(SHG)
5 性交後試験(ヒューナーテスト)
6 抗精子抗体検査
7 ホルモン検査
参考 甲状腺機能の異常を疑う所見
B 女性側の特殊検査
1 子宮鏡検査(ヒステロスコピー)
2 腹腔鏡検査
3 子宮鏡下選択的卵管通水と卵管鏡下卵管形成術(FT)
4 糖負荷とインスリンの測定
C 男性側の検査と治療
1精液の検査
2 その他の精子機能検査
参考 特殊な精子機能検査
3 男性不妊の治療
4 人工授精(AIH)とは
コメント 人工授精(AIH)の種類と方法
コメント 人工授精のタイミング
コメント 人工授精の手順
コメント 卵子と精子の寿命
第3章 体外受精・胚移植法とは
A 体外受精の定義と適応
コメント 一般不妊治療と生殖補助医療(ART)
1 体外受精を受ける前に
コメント 体外受精を決心する前に
2 体外受精の適応
B 採卵前に必要な検査
C 体外受精の流れ
第4章 体外受精の実際① 調節卵巣刺激(COS)とは
A なぜ卵巣刺激を行うのか
B 卵巣刺激法の選択に必要な卵巣予備能の検査
1 抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定
参考 AMHの特徴
2 胞状卵胞数(AFC)の測定
3 卵胞刺激ホルモン(FSH)の測定
4 インヒビンβの測定
C 抗ミュラー管ホルモン(AMH)値を参考にした卵巣刺激法
D 卵巣刺激法の種類と方法
1 GnRH アンタゴニストを使用する調節卵巣刺激法
コメント hCG 剤に代わってGnRH アゴニストをトリガーに用いる利点
2 GnRH アゴニストを使用する調節卵巣刺激法
参考 GnRH アゴニスト使用時に知っておくべきこと
3 黄体ホルモン併用調節卵巣刺激法
4 自然周期法と低卵巣刺激法(MOS)による体外受精
参考 クロミフェンとレトロゾール
5 ランダムスタートによる卵巣刺激法(ランダムスタート法)
第5章 体外受精の実際② 採卵・採精
A 採卵の実際
B 精液の採取(採精) ─ 男性の出番
1 精子の凍結保存
コメント 無精子症の場合の凍結精子
コメント 顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)の実施
コメント 提供精子を用いた体外受精
Column 男性の妊活に大事なこと ─ 「精子力」を高めよう!
第6章 体外受精の実際③ 媒精・顕微授精
A 卵子・精子の培養と受精
参考 受精方法と異常受精
B 顕微授精
1 顕微授精の進歩と適応
参考 顕微授精法の種類と変遷
参考 顕微授精についてのその他の知識
2 1日遅れの顕微授精(1 day old ICSI)
3 無精子症の場合
参考 その他の精子回収法
4スプリット法
第7章 体外受精の実際④ 胚移植とその後
A 胚移植
コメント 胚移植の際に懸念されること
1 胚の分類と良好胚 ─ どんな胚が着床しやすいか
参考 生殖補助医療に関する認定制度
参考 胚の生存能の評価
2 胚盤胞移植(BT)
3 補助孵化 ─ アシスティッドハッチング(AH)
4 子宮内膜の状態と着床との関係
5 反復着床不全と子宮内膜スクラッチによる着床促進
6 移植胚数についてのガイドライン
B 胚移植後の生活と黄体期の管理
1 胚移植後の日常生活
2 黄体期の管理
第8章 凍結融解胚移植と臨床応用
A 胚の凍結保存
1 胚の凍結保存・融解法の問題点
2 凍結融解胚移植のリスク
B 卵子の凍結保存と倫理的問題
C 凍結保存卵巣組織移植による妊娠・出産
参考 凍結保存技術とがん治療
D 凍結融解胚移植の実際
1 排卵周期での凍結融解胚移植
コメント 凍結融解胚移植時の注意点
2 ホルモン補充周期の凍結融解胚移植
第9章 不妊症の原因となる重要疾患
A 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
1 治療方針
参考 多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性への対策
2 生活習慣の改善
3 体外受精の適応
B 高プロラクチン血症
C クラミジア感染症
1 診断と治療
D 子宮筋腫
E 子宮内膜ポリープ
F 子宮形態異常
G 黄体機能不全
H 早発卵巣不全(早発閉経)
コメント 早発卵巣不全(早発閉経)とは
I 子宮内膜症
コメント 子宮内膜症の疑いがあるときは
1 妊娠を希望する場合の治療法の選択
コメント 子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)の悪性化
参考 EFI(endometriosis fertility index)とは
2 体外受精の適応
J 男性不妊
参考 男性不妊の原因
第10章 体外受精の問題点
A 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生
1 卵巣過剰刺激症候群が起こりやすいタイプ
2 予防策
参考 コースティング法とは
B 多胎妊娠の発生
1 減胎手術とは
C 流産と異所性妊娠(子宮外妊娠)の発生
D 採卵後の合併症の発生
E 胚移植後の合併症
第11章 体外受精の治療成績と先天異常の発生
A 体外受精の成功とは ─ 大切な生産分娩率の評価
B 日本の体外受精と傾向
1 顕微授精治療周期の増加
2 全胚凍結周期と凍結融解胚移植出生児の増加
参考 最近の日本における ART の動向
C 世界の体外受精
1 日本の体外受精の治療成績が低い理由
D 先天異常の頻度
参考 遺伝性疾患に関する用語
E 顕微授精による先天異常発生への影響
F 出生前診断
1 母体血清マーカー検査(トリプルマーカーテスト,クアトロテスト)
2 羊水検査 ─ その安全性
3 母体血胎児染色体検査(NIPT)
G 着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
参考 着床前遺伝学的検査に関する見解
コメント PGT-A後の移植胚の選択
第12章 反復着床不全(RIF)
A 原因と対策
1 子宮内環境の問題
2 受精卵の問題
3 受精卵を受け入れる免疫寛容の異常
4 その他
Column 不妊治療の保険適用拡大 ─ 光と影
第13章 不育症
A 原 因
B 検 査
C 治 療
第14章 不妊症・体外受精に関するQ & A
1 不妊治療・体外受精の基礎知識について
Q1-1 妊娠を希望してからどのくらい妊娠しなければ医療機関を受診した方がいいでしょうか?
Q1-2 体外受精を決心するタイミングを教えてください.
Q1-3 体外受精は1 年間に何回受けられますか?
Q1-4 体外受精は何歳まで続けられますか?
Q1-5 女性の年齢が高いと妊娠しにくくなるのですか?
Q1-6 女性にとって妊娠,出産に適した年齢は何歳くらいですか?
2 胚移植について
Q2-1 凍結融解胚移植はどのようなときに行うのですか?
Q2-2 自然周期で胚移植する方法とホルモン補充周期で胚移植する方法があると聞きましたが,それぞれの長所や短所は何ですか?
Q2-3 受精卵(胚)の凍結保存は実際どのように行われていますか? 長期保存しても問題はないのでしょうか?
3 不妊治療・体外受精における問題点について
Q3-1 不妊治療中なのですが,セックスレスになってしまいました.どうしたらよいでしょうか?
Q3-2 体外受精と卵巣がん,乳がんの発生とに関係はありますか?
Q3-3 不妊治療をやめるのはどのようなときですか?
参考 不妊治療を終わりにするときの動機
第15章 体外受精の社会的問題と未来への展望
A 卵子・精子・胚の非配偶者からの提供と代理出産による体外受精
1 卵子・精子・胚提供による体外受精
2 代理出産
参考 日本における代理出産に関する議論
3 子宮移植による出産
B 体外受精の経済学
参考 高額療養費制度について
1 体外受精の費用
2 不妊専門相談センターの設置
3 不妊治療に対する企業の取り組みについて
C 体外受精の未来への展望
1 老化卵子に対する若返り法はあるのか
2 卵子の凍結保存
参考 がん・生殖医療とは?
3 卵巣組織の凍結保存と移植 ─ 妊孕性温存の救世主となり得るか
4 再生医療の導入
Column 女性のライフプラン
おわりに
引用・参考文献
参考資料
知っておきたい不妊治療関連の略語
索 引
書評
吉村泰典(慶應義塾大学名誉教授/福島県立医科大学副学長)
少子化の状況下で,生殖医療も激動の真っ只中にあり,これまで上昇基調にあったわが国の生殖補助医療の治療周期数や出生児数も,生殖年齢にある女性の減少によりここ数年高止まりの状況にあります.今来の生殖医療は,クライエントの年齢や病態を考慮し,医療技術にはさまざまな改良が加えられ,個別化医療として発展してきましたが,2022年4月より公的医療保険の適用となりました.しかし,治療技術や科学的手法の開発には,安全性や経済性のみならず,倫理的妥当性も評価されなければなりません.生殖医療は形而上学ではなく,実践を通して学んでいく学問ですが,ヒトを利用した実験的医療の側面も有しており,可能なかぎりエビデンスに基づく医療が提供できるような慎重な対応が望まれます.
この度,『未来の赤ちゃんに出会うために─ 不妊治療・体外受精のすすめ(改訂4版)』が上梓されました.本書は,2010年の初版以来,成田 収先生が生殖医療に長年にわたって培ってこられた深い識見と造詣が凝集された名著であり,改訂のたびに愛読させていただいておりました.本書は患者さん向けに書かれた本でありながらも,新知見とともに生殖医療を実践しようとしている医師へのメッセージも随所に込められており,まさに衣鉢を伝えるための書とも言えます.
改訂4版では,生殖医療の最前線でご活躍されている伊藤知華子先生が共著に参画され,生殖医療の現場で遭遇するさまざまな新しい課題が加筆されており,明日からの診療に役立つプラクティカルな書となっています.本書があれば,患者さんから不妊治療・体外受精について質問されたときでも的確な情報提供ができますし,患者さんに本書をお勧めすることで治療への理解を深めていただくこともできます.また,実践を通して得た知識を整斉するためにも役立てていただきたいと思います.
医師,看護師から胚培養士を目指している若い諸君にいたるまで,clinical expertiseを高める意味での活用を祈ってやみません.本書は,今日の生殖医療の現在をとらえ,新しい動向に対応してゆくための必読の書です.
少子化の状況下で,生殖医療も激動の真っ只中にあり,これまで上昇基調にあったわが国の生殖補助医療の治療周期数や出生児数も,生殖年齢にある女性の減少によりここ数年高止まりの状況にあります.今来の生殖医療は,クライエントの年齢や病態を考慮し,医療技術にはさまざまな改良が加えられ,個別化医療として発展してきましたが,2022年4月より公的医療保険の適用となりました.しかし,治療技術や科学的手法の開発には,安全性や経済性のみならず,倫理的妥当性も評価されなければなりません.生殖医療は形而上学ではなく,実践を通して学んでいく学問ですが,ヒトを利用した実験的医療の側面も有しており,可能なかぎりエビデンスに基づく医療が提供できるような慎重な対応が望まれます.
この度,『未来の赤ちゃんに出会うために─ 不妊治療・体外受精のすすめ(改訂4版)』が上梓されました.本書は,2010年の初版以来,成田 収先生が生殖医療に長年にわたって培ってこられた深い識見と造詣が凝集された名著であり,改訂のたびに愛読させていただいておりました.本書は患者さん向けに書かれた本でありながらも,新知見とともに生殖医療を実践しようとしている医師へのメッセージも随所に込められており,まさに衣鉢を伝えるための書とも言えます.
改訂4版では,生殖医療の最前線でご活躍されている伊藤知華子先生が共著に参画され,生殖医療の現場で遭遇するさまざまな新しい課題が加筆されており,明日からの診療に役立つプラクティカルな書となっています.本書があれば,患者さんから不妊治療・体外受精について質問されたときでも的確な情報提供ができますし,患者さんに本書をお勧めすることで治療への理解を深めていただくこともできます.また,実践を通して得た知識を整斉するためにも役立てていただきたいと思います.
医師,看護師から胚培養士を目指している若い諸君にいたるまで,clinical expertiseを高める意味での活用を祈ってやみません.本書は,今日の生殖医療の現在をとらえ,新しい動向に対応してゆくための必読の書です.