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カテゴリー: 精神医学/心身医学

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うつ病リワークプログラムの続け方

スタッフのために

1版

うつ病リワーク研究会 編集

定価

3,300(本体 3,000円 +税10%)


  • B5判  189頁
  • 2011年6月 発行
  • ISBN 978-4-525-38381-7

うつ病患者さんの職場復帰支援プログラムの研究と啓発を行っている医療機関ネットワーク“うつ病リワーク研究会”による「うつ病リワークプログラム」テキスト実践編.当該患者さんは果たしてうつ病(だけ)なのか?といった診断上の問題,患者さんの問題行動や連携など,実践で生じる「困った」への具体的対応と成功のためのポイントを解説.

  • 序文
  • 目次
序文
 リワークプログラムは,開発途上の援助方法です.NTT東日本関東病院で作業療法の形でプログラムが始められたのが1997年,メディカルケア虎ノ門でデイケアプログラムのモデルが作られたのが,2005年です.
 リワーク研究会が2008年に設立され,2010年6月20日現在で,103施設,307人の会員に加わっていただいています.研究会では,リワークプログラムをより広く行っていただくために,2009年に弘文堂から『うつ病リワークプログラムのはじめ方』というテキストを出版しました.このテキストはその続編ともいえます.
 このテキストでは,リワークプログラムを始めた施設が出会いがちな課題について,比較的経験がある施設のスタッフが,後輩の施設に助言するつもりで書いています.このテキストに書いてあることが,「正解である」とか「絶対正しい」ということではありませんが,「先輩からの誠意あるアドバイス」として読んでいただければと思います.
 まず,リワークプログラムの全体的な状況について,五十嵐良雄先生に書いていただいています.五十嵐先生には,研究会の代表世話人として,発展しているプログラムの全体像を絶えず確認いただいています.五十嵐先生の報告を読んでいただくと,リワークプログラムの動きを把握していただけることと思います.
 次に,診断の問題を取り上げています.診断の問題については,非常に本質的な問題があります.精神科医は,診察室で患者さんに「これまでに,何々という状態になったことがありますか?」と既往歴や経過について質問し,「今のあなたには,何々という症状がありますか?」と現在の症状について質問します.それに加えて,診察室での患者さんの様子を観察します.患者さんは自分の症状をよく把握しているとは限らず,過去や現在の状態について,正確に報告できるとは限りません.この問題はよく知られています.もっと問題なのは,現在の患者さんを医師が診察しても,軽い躁状態や発達障害的な問題を把握できない可能性があることです.それはなぜかというと,精神科外来の診察室での精神科医との面接は,患者さんにとって非常に特殊な状況だからです.こういう状況では,軽い躁状態や発達障害の症状がある人でも,そういう特徴を示さないことが多いのです(軽い躁状態にある人でも,私の診察室で,精神科医である私を怒鳴りつけることはほとんどありません).しかし,リワークプログラムに参加すると,周囲を困らせる特徴が現れてきます.このことについて,「精神科医の誤診だ」という批判をよく受けます.私が思うに,これは誤診ではなく,「面接室における診断の限界」なのです.言い換えれば,リワークプログラムは,生きたプログラムなのです.精神科医の面接室とは違う,はるかに自然な状況の中で行われるため,多様な特徴が示されるのです.ですから,主治医の診断を金科玉条のように頼りにするのではなく,「精神科医の面接室で何々と診断された人が,リワークプログラムではどのような行動を示すだろうか?」という気持ちで参加者にかかわっていただいたほうが,現実的だと思います(プログラム参加時に,「リワークプログラムの中では,ほかの場面ではわかりにくい,軽躁状態,対人関係の問題などが観察されることがありますので,その際には,主治医にご連絡いたします」と,本人,主治医にあらかじめ言っておくとよいでしょう).
 三番目に,スタッフに関することをまとめています.リワークプログラムは,歴史的に日が浅いプログラムです.「どんな人をスタッフとして選抜し,どんな研修をしていただけばよいのか」「仕事をしているときのスタッフの困難をどう援助すればよいのか」など,検討課題がいろいろありますので,私たちの経験をまとめてみました.
 四番目に,皆さんがきっとお困りの,問題行動に対する対処方法についてまとめています.問題行動への対応の原則は,まず,「プログラムに入るときの説明同意書に,『何々という行動があった場合は,プログラムへの参加を一時中断または中止していただくことがあります』と書いておくこと」,次に,「問題行動が示されたら,すぐに介入すること」です.医療過誤について,ヒヤリ・ハットやインシデントに対応して事故を防ぐように,軽微な問題行動にすぐに介入することによって,大きなトラブルを防ぐことができるのです.
 最後に,プログラム外の人たちや組織との連携の問題に触れています.リワークとは,職場への復帰を援助することです.職場の状況は,地域や業種によってさまざまな違いがあります(先日,研究会の総会で「農業に従事する人のリワークをどのように援助したらよいか」という質問がありました).この意味でも,リワークプログラムは生きたプログラムです.地域の状況,プログラムが行われている施設の状況に合わせて,柔軟な連携を進めていただく必要があります.リワークプログラムを行うには,一般に大都市のほうが有利なのですが,連携については,地方や小都市のほうがやりやすいようです.
 私は,日本中でリワークプログラムを行っていただければ,と思っています.日本中の患者さんがリワークプログラムを待っていると思うのです.先輩が誠意を持って書いたテキストです.どうぞ,楽しみながらお読みください.皆さんのお役に立てれば幸いです.

2011年5月
秋山 剛
目次
Ⅰ うつ病リワーク研究会と会員施設におけるリワークプログラムの現況と今後
  A うつ病リワーク研究会発足までの経緯
  B 発足後の活動経緯
  C うつ病リワーク研究会の活動目的と内容
   ⅰ. 研究活動
   ⅱ. 啓発活動
  D 組織・会員について
   ⅰ. 研究会の組織
   ⅱ. 会員数の推移
  E リワークプログラムの実施状況
  F 今後のうつ病リワーク研究会の方向性

Ⅱ 診断によるかかわり
 1 双極Ⅱ型障害
  A 現場の困難
  B 見分け方
   ⅰ. 初診時
   ⅱ. リワークプログラム導入前
   ⅲ. リワークプログラム参加中
  C 対応の要点(当クリニックにおけるリワーク支援)
   ⅰ. 概要(初診~休養~リワーク支援~復職)
   ⅱ. 援助の考え方・行い方
 2 発達障害
  A 発達障害とリワークプログラム
  B 疑いから診断・評価
   ⅰ. 診断の意義
   ⅱ. 発達障害を疑う所見
   ⅲ. 発達障害の診断・評価
   ⅳ. 併存疾患
  C 支 援
   ⅰ. 支援の原則
   ⅱ. カウンセリング
   ⅲ. 関係機関の連携
   ⅳ. 併存疾患の治療
 3 アルコール依存
  A 「うつ」と「アルコール」の深い関係
  B リワークプログラム導入前に知っておくべきこと
   ⅰ. 見過ごされやすい理由
   ⅱ. 問診に当たりチェックしておくべきポイント
   ⅲ. アルコール依存とは
   ⅳ. 家族歴・生育歴インテークのポイント
  C リワークプログラム参加者の飲酒問題
   ⅰ. アルコール依存を見分けるためのサイン
   ⅱ. アルコール依存症専門治療施設への紹介に当たって
   ⅲ. 医療法人 榎本クリニックにおけるデイナイトケアのメリット
  D 具体的な症例について
   ⅰ. うつ病の症状緩和のために飲酒行為が促進され回復の妨げになっているケース
   ⅱ. 既存のアルコール依存により「うつ病」を発症しているケース(二次性うつ病)
   ⅲ. 双極Ⅱ型障害ではないか
 4 パーソナリティ障害
  A 診断と治療原則
   ⅰ. B群パーソナリティ障害
   ⅱ. C群パーソナリティ障害
   ⅲ. 治療原則
   ⅳ. スタッフ間の連携
  B 対応の実際例
   ⅰ. B群パーソナリティ障害
   ⅱ. C群パーソナリティ障害
  C 集団の利点と注意点

Ⅲ スタッフのかかわり
 5 スタッフの研修
  A 社会人としての姿勢・基礎的な能力 ~利用者との関係~
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  B 病気の理解
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  C 企業体制の理解
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  D チームワーク
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  E 集団療法的側面の理解
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  F プログラムの理解
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  G 評 価
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  H リワーク研修会における事例検討
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  I ピアサポート
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
  J 管理能力
   ⅰ. なぜ重要か
   ⅱ. 研修方法
 6 リワークプログラムの要素
  A リワークプログラムの治療的な要素は何か
  B 医療機関で行うプログラムの要素
   ⅰ. 集団で実施
   ⅱ. 対象を限定
   ⅲ. リハビリテーションの要素
   ⅳ. 心理社会療法
  C リワーク活動の要素
  D リワークプログラムの今後の方向性
 7 評価とフィードバック
  A 評価の目的
   ⅰ. 対象者がプログラムに導入できる状態かをみる
   ⅱ. 参加者の状態を把握し,問題点や課題点を見出す
   ⅲ. 参加者の復職準備性が整っているかどうかをみる
  B 評価のフィードバック
   ⅰ. 主治医へのフィードバック
   ⅱ. 産業保健スタッフへのフィードバック
   ⅲ. 職場へのフィードバック
   ⅳ. 本人へのフィードバック
  C 標準化リワークプログラム評価シート
 8 復職できなかったメンバーへの対応
  A 復職できないメンバーの背景とそうしたメンバーへのサポート
   ⅰ. 病状の悪化・不安定さのための中断
   ⅱ. リワークプログラムが合わないと中断
   ⅲ. キャリアの変更・見直しのため中断
   ⅳ. 判定不可群・休職満了群
  B 復職できなかったメンバーのその後の経過
  C キャリアや生き方の見直しへの援助
 9 スタッフのメンタルヘルス
  A 当院の復職デイケアについて
   ⅰ. メンバーとスタッフの間で起こること
   ⅱ. スタッフ同士で起こること
   ⅲ. 各プログラム(集団の中)で起こること
   ⅳ. 考 察
  B グループワーカーとしてのトレーニング
   ⅰ. スタッフレビュー
   ⅱ. グループスーパービジョン
   ⅲ. 体験グループ
   ⅳ. 考 察
10 スタッフの選び方
  A 診療報酬上のスタッフ
  B スタッフの資質
   ⅰ. 医療従事者としての適性
   ⅱ. 精神科医療従事者としての資質
   ⅲ. リワークの専門家として求められること
  C 具体的に欲しい人材とそのみつけ方とは

Ⅳ プログラムで問題が起きたとき
11 プログラムへの不満・批判・遅刻への対応
  A 問題解決と活用 ~復職デイケア参加者・スタッフミーティング~
  B 怒りを伴う不平不満への心理療法的対応
   ⅰ. 心理療法における怒りの理解
   ⅱ. 怒りを伴う不満・批判への2つの介入事例
  C 遅刻への対応
12 プライベートな付き合い
  A 精神科領域での集団プログラム
   ⅰ. 医療観察法指定入院医療機関
   ⅱ. 断酒会
   ⅲ. AA
   ⅳ. SSTグループ(特に,子ども専門病院)
  B リワークプログラム
   ⅰ. 枠組みの必要性
   ⅱ. 参加同意書について
   ⅲ. プライベートな付き合いに関する取り組み
13 暴言・暴力
  A ルールと原則の遵守による予防
  B 事 例
   ⅰ. 暴言への対応
   ⅱ. 暴力への対応
  C 対応上の注意点

Ⅴ よりよい連携を求めて
14 家族とのコミュニケーション
  A 患者と家族
  B メディカルケア虎ノ門での取り組み
   ⅰ. サポート・カレッジの概要
   ⅱ. 申込書
   ⅲ. 家族からの質問
   ⅳ. セッションの内容
   ⅴ. フリートーク
  C 事例の紹介
   ⅰ. ありがちな状況
   ⅱ. 対処方法
   ⅲ. 注意点
   ⅳ. その後
  D 家族とのコミュニケーションについての工夫
  E 今後の課題
15 主治医とのコミュニケーション
  A 主治医をめぐるさまざまなコミュニケーション
  B 医療機関におけるリワークの利用形態
  C 主治医とのコミュニケーションの留意点
  D 主治医とのコミュニケーション ~症例を通して~
   ⅰ. 症例 ~主治医とリワークスタッフのコラボレーション~
   ⅱ. 各ケースの経過・対応・解決まで
   ⅲ. まとめ
16 産業保健スタッフとのコミュニケーション
  A 国のガイドライン
   ⅰ. 4つのケア
   ⅱ. 復職支援の流れ
  B 産業保健スタッフへの情報提供
   ⅰ. 職場復帰判断基準の8要件
   ⅱ. リワークプログラムの基本的4要素
   ⅲ. 品川駅前メンタルクリニックでの職場復帰の基準
   ⅳ. どんな情報を提供すべきか
  C 連携の具体例
   ⅰ. 事 例
   ⅱ. 対応方法
17 職域とのコミュニケーション
  A 基本的な心構え
   ⅰ. リワークスタッフの役割
   ⅱ. きめ細やかな「理解」
   ⅲ.「待つ」より「動く」
   ⅳ.「守秘」しながらの「共有」
   ⅴ.「疾病性」より「事例性」という視点
   ⅵ.「完治」ではなく「適応」を目指す
  B 具体的なコミュニケーションの技法
   ⅰ. 支援内容
   ⅱ. 復職に向けて
   ⅲ. 復職の流れ
18 プログラムのPR
  A PRの方法
   ⅰ. インターネット
   ⅱ. パンフレット
   ⅲ. 産業医活動
   ⅳ. 講演活動
   ⅴ. 見学会や家族への事前説明会の実施
   ⅵ. マスコミへの取材協力
  B 各機関との連携
   ⅰ. 障害者職業センター(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構)
   ⅱ. 産業保健推進センター(独立行政法人労働者健康福祉機構)
   ⅲ. 精神保健福祉センター
   ⅳ. その他の機関
  C 今後の課題
19 地域との連携・地方でプログラムを成功させるコツ
  A 地域との連携
   ⅰ. 保健所・自治体担当部門
   ⅱ. 精神保健福祉センター
   ⅲ. 都道府県産業保健推進センター
   ⅳ. 地域産業保健推進センター
   ⅴ. 障害者職業センター 職場復帰支援(リワーク支援)
   ⅵ. 医師会
   ⅶ. 地域連絡会など
  B 地方でプログラムを成功させるコツ
   ⅰ. どのような「リワーク」を行うのか
   ⅱ. 地方都市でのリワークの実践
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