カテゴリー: 癌・腫瘍学
肉腫化学療法マスタークラス
1版
国立がん研究センター中央病院
骨軟部腫瘍・リハビリテーション科医長 川井 章 編集
定価
7,700円(本体 7,000円 +税10%)
- B5判 366頁
- 2015年6月 発行
- ISBN 978-4-525-42111-3
希少である肉腫に対しても分子標的薬の時代となってきた.また化学療法は徐々に外来投与へ移行し,より良いQOLをより長く維持することを目標として,広く認識されるようになってきた.
本書は肉腫に携わる整形外科医,腫瘍内科医へ化学療法に関する最新かつ最良の知見を盛り込んだ他に類をみない書籍である.
- 序文
- 目次
序文
1980年代,肉腫(悪性骨軟部腫瘍)の治療成績は,ドキソルビシン,大量メトトレキサート療法,シスプラチンなど,当時の新規化学療法の登場により大きく改善した.骨肉腫は不治の病ではなくなり,局所治療法もそれまでの切・離断術のみの時代から患肢温存術に大きく舵を切ることが可能となった.まさしく,肉腫の歴史における“Annus Mirabilis(奇跡の年)”といっても過言ではない.しかし残念ながら,その後,新たな有効薬剤の登場がない年月が続く中で,肉腫の化学療法は過去30年間,進歩の著しい他領域を横目にいささか停滞していた感は否めない.
しかし,21世紀も10年を経過し,希少がんである肉腫の化学療法にも,医師主導治験,新規抗がん剤の開発など新たな動きが生まれている.進行軟部肉腫に対する国際共同第Ⅲ相試験によって,肉腫に対する数十年ぶりの新規薬剤(パゾパニブ)が,2012年日米欧ほぼ同時に承認されたことは,軟部肉腫の治療戦略上大きな出来事であっただけでなく,希少がんにおける今後のグローバルな治療開発を考える上でもエポックメイキングな出来事であった.さらに今後数年の間に,さまざまな作用機序をもつ新たな抗がん剤が肉腫化学療法の領域に次々と登場してくることが予想される.希少かつ多彩な生物学的背景ゆえに治療開発が困難とされてきた肉腫の領域において,今,その多様さが新たなチャレンジの揺籃となろうとしている.
本書は,まさにこのような大きな変革の時に,肉腫の化学療法に関する歴史的背景から最新の知見までを盛り込んだわが国初の医学書として企画された.執筆者は,わが国の肉腫化学療法の第一線でご活躍の気鋭の先生方にお願いした.大変お忙しい中,整形外科から腫瘍内科まで多くの診療科の先生に素晴らしい原稿をお書きいただき,まさに肉腫化学療法の進歩と多様性,集学的治療の実際を映す好書となった.
解説は箇条書きとして重要なポイントをおさえるとともに,豊富な症例提示によって稀な肉腫に対する治療ストラテジーや具体的ノウハウなどを分かりやすく解説するよう心がけた.ぜひ,幅広い診療科の先生に本書を手にとっていただき,肉腫化学療法のエッセンスにふれていただくとともに,今後著しい進歩が予想されるこの領域に興味を持ち,肉腫治療成績の向上に貢献してくださることを願ってやまない.その日まで,本書はその行く先を照らす存在であり続けたい.
2015年4月
川井 章
しかし,21世紀も10年を経過し,希少がんである肉腫の化学療法にも,医師主導治験,新規抗がん剤の開発など新たな動きが生まれている.進行軟部肉腫に対する国際共同第Ⅲ相試験によって,肉腫に対する数十年ぶりの新規薬剤(パゾパニブ)が,2012年日米欧ほぼ同時に承認されたことは,軟部肉腫の治療戦略上大きな出来事であっただけでなく,希少がんにおける今後のグローバルな治療開発を考える上でもエポックメイキングな出来事であった.さらに今後数年の間に,さまざまな作用機序をもつ新たな抗がん剤が肉腫化学療法の領域に次々と登場してくることが予想される.希少かつ多彩な生物学的背景ゆえに治療開発が困難とされてきた肉腫の領域において,今,その多様さが新たなチャレンジの揺籃となろうとしている.
本書は,まさにこのような大きな変革の時に,肉腫の化学療法に関する歴史的背景から最新の知見までを盛り込んだわが国初の医学書として企画された.執筆者は,わが国の肉腫化学療法の第一線でご活躍の気鋭の先生方にお願いした.大変お忙しい中,整形外科から腫瘍内科まで多くの診療科の先生に素晴らしい原稿をお書きいただき,まさに肉腫化学療法の進歩と多様性,集学的治療の実際を映す好書となった.
解説は箇条書きとして重要なポイントをおさえるとともに,豊富な症例提示によって稀な肉腫に対する治療ストラテジーや具体的ノウハウなどを分かりやすく解説するよう心がけた.ぜひ,幅広い診療科の先生に本書を手にとっていただき,肉腫化学療法のエッセンスにふれていただくとともに,今後著しい進歩が予想されるこの領域に興味を持ち,肉腫治療成績の向上に貢献してくださることを願ってやまない.その日まで,本書はその行く先を照らす存在であり続けたい.
2015年4月
川井 章
目次
Lesson 1. 疾病と治療の歴史を紐解く
1 骨 肉 腫
2 Ewing肉腫
3 横紋筋肉腫
4 軟部肉腫(非円形細胞肉腫)
Lesson 2.肉腫化学療法のキードラッグを理解する
1 ドキソルビシン
2 イホスファミド
3 シスプラチン
4 メトトレキサート
5 パゾパニブ
6 デノスマブ
7 ゾレドロン酸
8 エトポシド
9 タキサン系
10 イマチニブ
11 リダフォロリムス
Lesson 3.肉腫化学療法の多剤併用療法を理解する
1 AI療法
2 MAID療法
3 GEM+DOC療法
4 AP療法
5 VDC/IE療法
6 VAIA療法
7 VAC療法
8 IE療法
Lesson 4.新たな治療選択となる薬剤を知る
1 肉腫に対する早期治療(薬物)開発
2 エリブリン
3 トラベクテジン
4 TH-302
Lesson 5.肉腫化学療法の組織別治療戦略を理解する
1 骨肉腫
2 Ewing肉腫
3 横紋筋肉腫
4 軟部肉腫(非円形細胞肉腫)
5 骨巨細胞腫
6 デスモイド
7 肉腫に対する放射線治療
Lesson 6.肉腫化学療法の副作用対策と支持療法を理解する
1 血液毒性
2 感 染 症
3 消化器毒性
4 腎 毒 性
5 神経毒性
6 高血圧・循環器症状
7 薬物アレルギー・薬疹
8 皮膚障害
9 呼吸困難
10 浮 腫
Lesson 7.がん骨転移の薬物療法・支持療法を理解する
1 骨転移の薬物療法
2 転移性骨腫瘍と放射線治療
3 骨転移の保存的治療
Lesson 8.症例から肉腫の転移例を理解する
1 骨 肉 腫
初発時切除可能肺転移病変を有する進行例
2 Ewing肉腫
標準治療後に肺転移を生じた進行例
3 軟部肉腫 ①
原発巣手術治療後に遠隔転移を生じた進行例
4 軟部肉腫 ②
補助化学療法,原発巣手術後に遠隔転移を生じた進行例
5 軟部肉腫 ③
初診時手術不能の転移進行例
6 軟部肉腫 ④
組織特異的な治療効果を示した転移進行例
日本語索引
外国語索引
1 骨 肉 腫
2 Ewing肉腫
3 横紋筋肉腫
4 軟部肉腫(非円形細胞肉腫)
Lesson 2.肉腫化学療法のキードラッグを理解する
1 ドキソルビシン
2 イホスファミド
3 シスプラチン
4 メトトレキサート
5 パゾパニブ
6 デノスマブ
7 ゾレドロン酸
8 エトポシド
9 タキサン系
10 イマチニブ
11 リダフォロリムス
Lesson 3.肉腫化学療法の多剤併用療法を理解する
1 AI療法
2 MAID療法
3 GEM+DOC療法
4 AP療法
5 VDC/IE療法
6 VAIA療法
7 VAC療法
8 IE療法
Lesson 4.新たな治療選択となる薬剤を知る
1 肉腫に対する早期治療(薬物)開発
2 エリブリン
3 トラベクテジン
4 TH-302
Lesson 5.肉腫化学療法の組織別治療戦略を理解する
1 骨肉腫
2 Ewing肉腫
3 横紋筋肉腫
4 軟部肉腫(非円形細胞肉腫)
5 骨巨細胞腫
6 デスモイド
7 肉腫に対する放射線治療
Lesson 6.肉腫化学療法の副作用対策と支持療法を理解する
1 血液毒性
2 感 染 症
3 消化器毒性
4 腎 毒 性
5 神経毒性
6 高血圧・循環器症状
7 薬物アレルギー・薬疹
8 皮膚障害
9 呼吸困難
10 浮 腫
Lesson 7.がん骨転移の薬物療法・支持療法を理解する
1 骨転移の薬物療法
2 転移性骨腫瘍と放射線治療
3 骨転移の保存的治療
Lesson 8.症例から肉腫の転移例を理解する
1 骨 肉 腫
初発時切除可能肺転移病変を有する進行例
2 Ewing肉腫
標準治療後に肺転移を生じた進行例
3 軟部肉腫 ①
原発巣手術治療後に遠隔転移を生じた進行例
4 軟部肉腫 ②
補助化学療法,原発巣手術後に遠隔転移を生じた進行例
5 軟部肉腫 ③
初診時手術不能の転移進行例
6 軟部肉腫 ④
組織特異的な治療効果を示した転移進行例
日本語索引
外国語索引